関東甲信越ブロック理学療法士学会
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第35回関東甲信越ブロック理学療法士学会
選択された号の論文の314件中51~100を表示しています
ポスター
  • 青木拓也 , 廣江圭史
    p. 235-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
    会議録・要旨集 フリー

    【はじめに】 歩行時の寛骨は前傾後傾を繰り返し行っている.脳卒中片麻痺患者では,不動による関節可動域制限が生じ,仙腸関節の可動性低下も認められ,下肢と体幹の協調性が失われる.本研究では,重度片麻痺患者に寛骨の可動性に対するアプローチを行い,歩行速度が改善した一例を報告する.

    【方法】 症例は左中大脳動脈領域の心原性脳塞栓症により右片麻痺を呈した60 代男性とした.理学療法評価はBrunnstrom Recovery Stage が上肢II,手指II,下肢II,感覚は表在深部覚共に中等度鈍麻,高次脳機能障害は重度の運動性失語・観念運動失行・右上下肢失認を呈していた.発症約6.5 ヵ月で歩行は四点杖と金属支柱付き短下肢装具を用いて近位監視レベルであった.方法はシングルケースデザインのAB デザインを用いて,各3 日間介入

    した.ベースライン期間(A)は従来の運動療法を施行し,介入期間(B)では従来の運動療法に加えて寛骨の可動性に対するアプローチを行った.評価項目は10m 歩行速度と歩幅とした.なお,対象者へは研究内容について十分な説明を行い,書面にて同意を得た.

    【結果】歩行速度がA では8.19 m/min に対して,B では9.35 m/min と増加傾向が見られた.歩幅はA では16.81cm

    に対してB では18.52cm と増加傾向が見られた.

    【考察】 本研究は非麻痺側寛骨の可動性を拡大させることで,重度片麻痺患者の歩行速度や歩幅が改善された.これは仙腸関節の可動域が改善したことで,非麻痺側立脚期に同側寛骨を後傾で保持出来たからと考えられた.この寛骨の動きによって,非麻痺側Terminal Stance~Pre Swing で 同側股関節伸展と骨盤左回旋が拡大し,歩幅の改善に伴い歩行速度が改善したと考えられた.脳卒中発症6 ヶ月以降での歩行改善の報告は散見されるが,筋力増強等による報告が多い.今回,重度片麻痺患者に対して非麻痺側寛骨の可動性による歩行の改善は有用であると考えられた.

  • 桑原奈菜 , 篠田麻衣
    p. 236-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
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    【はじめに】本症例は脳梗塞発症後,右片麻痺を呈しリハビリによって屋内歩行自立したが,自宅退院後,環境因子が外出を阻害する大きな要因となることが予測された.閉じこもりは,活動能力の低下及び要介護状況発生のリスクファクターであると言われている.今回,身体機能面でのアプローチに加え,心理的,環境面にも着目し,外出を支援する手段を検討した.本人に症例発表の目的を説明し同意を得た.

    【症例紹介】60 代男性.H27.9 にアテローム血栓性脳梗塞を発症し右片麻痺,運動性失語を呈した.54 病日目にリハビリ目的にて当院転院となり158 病日目に日中棟内T-cane 歩行自立.Br.StageIII-II-III.FBS 34/56 点.FIM94 点(運動62 点).病前は旅行会社に勤めており,自立心高く,Hope は歩いて帰りたいであった.環境:自宅前に約500m の不整な坂道,階段があり,歩行での移動は困難な身体機能だった.車椅子移動は男性2 人の介助を要した.

    【介入と結果】 入院当初,本人・家族共に退院後の生活に不安を訴えており,外出については諦めの言葉が聞かれていた.環境上の理由から退院後の送迎サービスの利用は月4回までという制限があった.今回,身体的なアプローチに加え,家族の介助で外出が出来るようアシスト型車椅子の提案や訪問リハビリ導入による自宅前の屋外歩行練習の提案,リハビリ特化型デイサービスの利用を検討した.結果,本人・家族共に外出に前向きになり自宅退院となった. 【考察】竹内らは,身体的,心理的,環境要因が相互に関連して閉じこもり症後群が発生してくると述べている.今回環境因子に着目して退院支援を行った事で,外出という希望が心理的不安の軽減に繋がったと考える.入院期間中に身体機能面のみならず環境面に着目して外出手段やサービスを検討することは,閉じこもり防止の一助になると考える.

  • 須藤彩香 , 篠田麻衣 , 白土勇士 , 足立菜央
    p. 237-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
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    【はじめに】本症例は左視床出血発症後,当院にてリハビリ加療し自宅退院となった.今回,自宅で家事動作中に転倒し腰椎圧迫骨折受傷.本人の役割確立とそれが安全に行えるよう自宅の環境設定を行うことで再転倒予防に繋げた.尚,発表に際し本人に学会発表の目的を説明し同意を得た.

    【症例紹介】70 歳代女性.左視床出血発症により右片麻痺を呈し,当院でリハビリ加療後,屋内車椅子自操自立,T 字杖歩行近位監視で可能となり自宅退院した.退院後24 日目,自宅で米櫃から米を取ろうとし転倒.第3 腰椎圧迫骨折受傷した.受傷後17 日に当院再入院.入院時,Br.stage 右3-3-4で腰部にはNRS3~7 の動作時痛が生じて

    いた.FBS は28 点であった.起居動作は支持物あり軽介助,移動は車いす全介助であった.

    【問題点とアプローチ】症例はAid for Decision-making in Occupation Choice(以下ADOC)の結果で料理が挙げられていた.米を炊く動作を本人の役割として提案し家屋調査を再度実施,環境設定を行った.移動は車椅子,米をとぐ動作は立位とし,家具の配置を変更した.受傷機転となった米櫃から米を取る作業は家族の協力を得て,米とぎは1人で行える方法を考案した.訓練では腹部を中心とした筋力訓練と立位バランス訓練を実施した.

    【結果】退院時,腰部の疼痛は消失しFBS は36 点となった.基本動作は自立し,屋内車椅子自操自立となった.現在自宅では掃除等の家事動作も行っており,米を炊く動作をきっかけに活動範囲の拡大に繋がった.

    【考察】症例は夫と娘と同居しており脳卒中発症前,家事全般は症例の役割であった.転倒時の背景とADOC の結果より症例にとっての料理の重要性を感じた.症例に役割として家事動作を提案し,自宅の環境設定を行うことで再転倒の予防に繋げた.今回の症例を踏まえ, ADL の環境設定だけでなく,本人の役割を確立しIADL 獲得に向けた環境設定を行うことが必要であると考える.

  • 曽部健太 , 山本智史 , 遠藤宗幹
    p. 238-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
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    【目的】ASO には,歩行速度2.4~3.2km/h のトレッドミル歩行が有効と報告されている.AMI にASO を合併した症例に心肺運動負荷試験(CPX)を行い,嫌気性代謝閾値(AT)の心拍数(ATHR)を基準としたトレッドミル歩行を実施した症例を経験したので報告する.〈BR〉【症例紹介】60 歳代男性.3 枝病変のAMI を発症し,冠動脈インターベーションを施行した.既往歴にFontaine 分類II 度のASO と糖尿病があり,100m 程度で下肢痛が出現していた.当院入院時,左室駆出率は43.5%,足関節上腕血圧比は右下肢0.54 であった.初期評価の6 分間歩行試験(6MD)では200m で下肢痛が出現し,300m で息切れや中等度の下肢痛により自己中断した.〈BR〉【説明と同意】ヘルシンキ宣言に基づき発表内容を説明し,書面にて同意を得た.〈BR〉【経過と考察】入院9 日目にエルゴメータ10w30 分より開始し,漸増させた.56 日目に初回CPX を実施し,最大酸素摂取量は16.9ml/kg/min であった.エルゴメータでAT レベルの25w30

    分,トレッドミル歩行でATHR や下肢痛の出現を目標に歩行速度1.5km/h 傾斜5%10 分2 セットから開始し,歩行速度1.7km/h 傾斜5%10 分2 セットまで漸増させた.77 日目に再度CPX を実施し,最大酸素摂取量は18.6ml/kg/min と改善し,6MD は350m で下肢痛が出現したが自己中断することなく420m 歩行可能となった.AMI にASO を合併した症例に対し,ATHR を基準とするトレッドミル歩行を実施することで間歇性跛行の改善が可能となった.近年,廃用症候群を呈する高齢者が増加しており,ASO の高齢者は多くの合併症があり,適切な運動処方で運動療法を実施することで間歇性跛行が改善すると考えられる.

  • 村上希 , 鈴木沙矢香 , 大久保恒希 , 早稲田明生
    p. 239-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
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    【はじめに】非代償性肝硬変は、運動により症状悪化に繋がるという報告も多く、安静が推奨されてきた.しかし過度な安静は廃用症候群を引き起こし、生活の質(以下、QOL)の低下に繋がる.今回、非代償性肝硬変に加え大腿骨転子部骨折術後の安静により廃用症候群を呈していた患者を担当したのでここに報告する.

    【症例紹介】90 歳女性.診断名:食道静脈瘤破裂 併存疾患:非代償性肝硬変(child puth 分類 C)、左大腿骨転子部骨折(平成28 年3 月ORIF)、肝細胞癌.他院にて左大腿骨転子部骨折術後、食道静脈瘤破裂を併発し加療目的で当院に入院.入院時はFIM29 点でセルフケア・基本動作・認知機能を減点項目とした.尚、発表に際し本人、家族に同意を得た. 【経過】初回評価時JCS l-1、全身倦怠感、胸腹水貯留、酸素1L 投与.運動負荷量の漸増条件は、他覚症状として血清AST、ALT 値200U/L 以下、腹囲と体重の増加がないこと、SpO2 90%以上、運動後呼吸数30 回以下を条件とした. 4 病日目まで腹水貯留と全身疲労感、離床による呼吸数増悪を認めたため端坐位までとした.10 病日目には他覚症状に改善を認め、腹囲-6.5cm となり移乗練習を開始した.この時点で移乗中等度介助であった.その後12 病日目から17 病日目までアルブミン低下、酸素化不良、熱発により起立訓練までとし、20 病日目の症状軽快に伴い移乗練習を再開、21 病日目より平行棒内歩行練習を開始した.25 病日目にはサークル歩行器軽介助となったが、歩行に対し消極的発言が多くなり、患者と相談の上、歩行獲得からポータブルトイレ自立へ目標設定を変更した.37 病日目には下衣更衣動作獲得によりトイレ動作自立となった.転院時FIM は 73 点.

    【考察】従来、非代償性肝硬変の患者には安静が推奨されている.今回廃用症候群の改善のため、特に他覚症状に注目して運動負荷を考慮し離床を促したことで、動作耐容能向上やADL 再獲得が可能となり、患者のQOL 向上へ繋がると考えた.

  • 黒川望 , 鈴木沙矢香 , 尾戸一平 , 早稲田明生
    p. 240-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
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    【はじめに】 外科的治療において開腹術が選択される場合、呼吸器合併症の予防として呼吸療法を行うことが有効とされている.リハビリテーション(以下リハビリ)効果を高めるために、術前術後の患者教育が必要である.今回リハビリに消極的な患者を担当したので報告する. 【症例紹介】S 上結腸癌と診断後、転移性肝腫瘍に対し外科的治療が必要となった70 代男性.入院前FIM126 点.以前S 上結腸癌術後にリハビリを実施したが、リハビリへの参加が得られなかった.尚、発表に際し本人に同意を得た.

    【経過】外来から介入を開始し、術前術後リハビリを実施した.外来リハビリでは、視覚的に効果が確認できるよう最大吸気持続法(トライボール使用)を用いた.練習方法を記載した書面を渡し自主練習を指導したが、術前リハビリでは患者がトライボールを持参せず再指導は行えなかった.術後は自主練習のチェックリストを作成し、リハビリ介入中に実施内容と回数を確認したことで、術後はトライボール5 回を1 日2 セット、歩行練習160m、座位での筋力強化練習が行えた.呼吸機能評価を比較すると最大吸気持続時間は術前1.44 秒、退院時0.92 秒であった.身体機能評価を比較すると6 分間歩行試験において、歩行距離は術前420m、退院時350m であった.呼吸機能、身体機能共に低下が認められたが、FIM126 点で自宅退院が可能となった.

    【考察】外来より呼吸指導、運動指導を行うことで合併症を起こすことなく自宅退院へ繋がった.リハビリ意欲が低下している患者に対してトライボールによる視覚的な呼吸リハビリは、患者が効果を確認できることで意欲を引き出すことができ、リハビリへの参加を促すことができた.しかし退院時の呼吸機能、身体機能に低下が認められたことから、今後はチェックリストの作成を含め、患者の協力を促せるようなプログラム立案、運動指導を早期から開始する必要があると考えた.

  • 安丸直希 , 田沼昭次
    p. 241-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
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    【目的】糖尿病足病変では足部潰瘍から感染を起こし、治療困難な場合は切断に至り、さらに生命予後は不良と言われている。今回、糖尿病足病変の発症リスクがある胸椎圧迫骨折症例を担当した。本症例に対する介入の経過と患者教育について考察する。

    【症例紹介】糖尿病既往のある50 歳代女性。既往に糖尿病網膜症・腎症・神経障害あり。入院前は日常生活動作自立。両下腿浮腫、尿閉、歩行困難を主訴に当院受診。腎不全の診断にて入院。腰椎MRI により第11 胸椎圧迫骨折の所見あり。

    【説明と同意】本人に本報告の旨を口頭にて説明し同意を得た。

    【理学療法評価】第7 病日より理学療法開始。HbA1c15.0%、血糖449mg/dl、Cr6.53mg/dl。医師指示は体幹装具着用し歩行練習可。主訴は下肢筋力低下。希望は家事動作獲得。両足部は皮膚乾燥し、右下腿遠位部の裂傷と前足部胼胝あり。第11 胸椎周囲に背部痛あり(NRS3)。関節可動域は両足背屈0°。筋力MMT は両殿筋群2、両腸腰筋3。軽介助にて杖歩行可能。BI45 点、FIM86 点。目標は屋外杖歩行自立、家事動作獲得、糖尿病足病変予防とし、関節可動域練習、下肢筋力練習、歩行練習、日常生活動作練習、患者教育を実施。

    【結果】第48 病日、HbA1c7.6%、血糖117mg/dl、Cr0.29mg/dl。主訴は四肢末端の痺れ。両足部の皮膚乾燥と前足部胼胝は残存。第11 胸椎周囲に背部痛(NRS5)。関節可動域は両足背屈5°。筋力MMT は両殿筋群2、両腸腰筋4。両側ロフストランド杖使用し屋外歩行自立。BI100 点、FIM119 点。装具装着下で糖尿病足病変のセルフケアが自立し、家屋訪問指導を行い第49 病日に自宅退院。

    【考察】糖尿病診療ガイドラインによると、糖尿病足病変の予防には、足の定期的な診察や糖尿病患者へのフットケア教育、糖尿病足病変のチーム医療を行うことが推奨されている。本症例は装具装着により体幹可動域制限があるため、フットケアに関する患者教育がより必要と考えられた。

  • 新井健介 , 宮村大治郎 , 門手和義 , 姫島美幸 , 坂英里子 , 安部諒 , 谷直樹 , 舘野純子 , 赤池幸恵 , 岩井悠希 , 永 ...
    p. 242-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
    会議録・要旨集 フリー

    【はじめに】骨転移を有する肺がん症例に対して病的骨折のリスクを評価し,環境調整を含めた理学療法(以下,PT)介入を行い自宅退院することができた症例を経験したため報告する.

    【倫理的配慮】本研究はヘルシンキ宣言および当院の臨床研究に関する倫理指針に従って実施した.データは個人情報保護に十分に注意して調査した.

    【症例紹介】診断名:右上葉肺腺癌(cT4N3M1b)/多発骨転移(胸骨,Th7/8,S1)キーパーソン:夫自宅環境:一軒家.寝具は普通ベッドを使用.自宅内は手すりなし.2013 年5 月にCT にて肺腫瘍を指摘された70 代女性.肝転移や多発肺転移を認め,当院呼吸器内科受診.検査の結果,右上葉腫瘤影,多発脊椎転移,多発骨盤転移,胸骨転移,右肋骨転移,多発脳転移あり.同月より化学療法開始.2014 年12 月,疼痛の増強あり,多発脊椎転移(Th7/8,S1)に対して放射線治療(20Gy/5Fr)施行.12 月25 日,定期外来時全身状態不良のため入院.2015 年1 月5 日,PT 開始.

    【経過】入院11日目よりPT開始.意識清明.鎮痛薬の使用なし.下肢筋力はMMT4.運動麻痺はなかった.Performance Status(PS)は3 点.PT 開始時のThe Spine Instability Neoplastic Score(SINS)は5 点で安定性あり.本人の希望は家の中での生活ができるようになることであったが,起き上がりが困難であり,さらに歩行時に動揺がみられ転倒リスクが高い状態であった.したがって,骨病変部への捻れや圧迫による病的骨折のリスクを最小限にする動作の指導を行い,起き上がりの獲得のために電動ベッドを導入,歩行安定のために固定型歩行器の使用を開始し,入院20 日目に自宅退院となった.

    【考察】本症例は,介入開始時からADL 低下がみられていたが,在宅で過ごす時間ができる限り長期間となるように,早期退院に向けて介入を行った.全身状態不良であり,短い期間での介入であったため身体機能の改善は困難であったが,動作指導,環境調整により自宅退院が可能となったと考える.

  • 前田雄太 , 菅沼一男 , 金子千香 , 佐野徳雄 , 五味雅大 , 齋藤孝義 , 丸山仁司
    p. 243-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
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    【目的】近年,大学卒業や資格取得を目的として理学療法学科に入学する学生が存在する.このような学生は,理学療法士の仕事を十分に理解することなく入学することから,入学後に自らの適性や興味の学問の不一致から退学をすることが多い.また,医療系学科は必須科目が多くカリキュラムの自由度が少なく,1 年次から専門的な科目が多く学習面での負担が多いと考えられる.近年,理学療法学科の学生を対象に大学生活不安について調査した報告によると,入学前の大学生活のイメージと入学後のイメージが異なる学生に大学生活不安が高いと報告されている.本研究は,大学入学前の高校生が描く大学生活について調査することを目的とした.

    【方法】対象は高校3 年生341 名(男性177 名,女性154 名)とし,集合調査法にて実施した.アンケートのカテゴリーは学習面,生活面,余暇活動,経済面に関する質問とし4 件法にて回答を得た.統計学的手法は,各設問にχ2 適合度検定を用いた.統計ソフトはSPSS Statistics21 を用い,有意水準は5%未満とした.本研究はヘルシンキ宣言に従い,研究参加に同意を得るため,調査の主旨と研究内容,研究への参加は任意であることを説明し,参加同意署名を得た.

    【結果】,χ2 適合度検定の結果,「一人暮らししたい」の設問以外は有意な偏りを示した(p<0.01).多くの生徒が「そう思う」と回答した設問は,資格取得,就職に関する設問や大学生活(アルバイトなど)についてであった.

    【考察】高校生が考える大学生活は, アルバイトや遊びの時間を自由に確保しながらも大学を卒業し,将来、安定した職業に就くために大学進学や資格取得を考えていると考えられた.医療系大学は,1 年時より必修科目が多く自由な時間が少ないため高校生の思い描く大学生活と異なることが考えられ大学不適応を起こす要因になることがあると考えた.

  • 小口健太
    p. 244-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
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    【目的】 回復期病棟において、退院後に再転倒し再入院する患者を目にする。その原因として、歩行能力に対する歩行補助具の選択が適当でないことも一因として考えられる。歩行補助具の選択に関して、歩行能力、筋力との検討はあるが、バランス能力との関係について報告はない。そこで今回は、歩行補助具とバランス能力との関係性を調べ歩行補助具選択の一助としたいと考える。なお、本研究は、所属施設の倫理委員会の承認を得て実施した。今回用いたデータに関して、本研究以外では使用しないこと、不利益には繋がらないことを説明し、口頭による同意を得た。

    【方法】 対象は当院入院中の患者のうちH27 年8 月から11 月退院予定の患者63 名である。(年齢78,5 歳±10,7 歳、脳血管疾患21 名、運動器疾患42 名)方法は独歩群とT字杖群、固定歩行器群、シルバーカー群のBerg Balance Scale(以下BBS)の各項目との関係性をFisher の直接確立法を用いて比較した。有意水準は1%未満とした。

    【結果】独歩群とT 字杖群では、BBS との間で有意差は出現しなかった。独歩群と固定型歩行器群では片脚立位の項目で有意差がみられた。(p<0.01)独歩群とシルバーカー群では踏み台昇降の項目で有意差が見られた。(p<

    0.01)【考察】独歩とT 字杖ではバランス能力との間に大差がないことが示された。T 字杖を「転ばぬ先の杖」として使用している事も影響していると考えられる。固定型歩行器は左右の支持着底面が比較的広い特徴がある。一方、片脚立位は支持基底面が狭い高度なバランス課題である。臨床的にも片脚立位が困難な症例は多いが、片脚立位の保持時間が適応を考える上で有用だと示唆された。 シルバーカーは前方への重心移動は大きいが、上下の重心偏移は少ない傾向にある。一方、踏み台昇降では後方から前上方への重心コントロールが必要となる。そのため、前後方向の重心コントロールの評価が適応を考える上で有用だと示唆された。

  • 中村美穂 , 安部美幸 , 大久保瑶子 , 亀岡萌子 , 渡辺咲帆 , 渡邉観世子
    p. 245-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
    会議録・要旨集 フリー

    【目的】パーソナルスペース(以下PS)の侵害が姿勢の安定性に与える影響を明らかにし,介助者の適切な立ち位置の参考とするために,PS の侵害および侵害物の違い(実験1),侵害する方向(実験2)が重心動揺に与える影響を検討した.

    【方法】参加者は事前に同意を得た20 代の健常成人女性17 名(実験1), 10 名(実験2)であった.本研究は倫理委員会の承認を得た(15-Io-79).課題はタンデム肢位を30 秒間保持することとし,重心動揺を計測した.実験1 では被験者の前方に侵害物(壁もしくは人)をPS 内(40cm)と外(120cm)に置き,実験2 では実験1 の結果を受けて,PS 内(40cm)の右側方もしくは後方に人を配置した.侵害物を配置しない条件を基準とした重心動揺の変化の有意性を1 標本t検定にて,条件間の比較を2 元配置分散分析およびt検定にて分析した.

    【結果】実験1 では PS 内に人を配置した条件で有意に総軌跡長が増加し(p<0.05),壁を配置した条件で有意に減少した(p<0.05).またY 方向動揺平均中心偏位では人をPS 内に配置した条件で有意に後方に偏位した(p<

    0.05).実験2 ではX 方向動揺平均中心偏位について右側方に人を配置した条件で有意に左方向に偏位した(p<

    0.05).

    【考察】人がPS を侵害した場合に姿勢が不安定性になった結果から,人が侵害となると目線が合うことで圧迫感や緊張感が生じることが不安定さを引き起こしたと考えた.また前方のPS を侵害した場合,拒否反応として重心が後方へ偏位したと考えられた.そのため実験2 では侵害の方向による姿勢の安定性を検証した.その結果,PS の右側方を侵害した場合に反対への重心偏位が認められた.これは侵害物が視界に入る側方のPS が侵害されたことによる拒否反応と考えられた.

    【まとめ】PS 内に人が入ることはバランスを崩す要因になり,前方・側方の侵害は反対へ逃げるように重心が偏位するため,臨床において介助者の立ち位置に配慮する必要がある.

  • 高山崇志 , 野口優人 , 江口勝彦
    p. 246-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
    会議録・要旨集 フリー

    【目的】握力は上肢筋力,あるいは全身筋力の代表値ともなる身近な数値であり,測定には握力計が用いられる.握力計にはSmedley 型握力計,Collin 型握力計,Jamar 型握力計,電気型握力計などの幾つもの種類がある.それぞれ構造も異なり,測定値も異なると言われている.本邦では主にSmedley 型が用いられ,欧米ではJamar 型が一般的である.Smedley 型とJamar 型ではバネ式と油圧式という構造上の違いの他に,標準的な測定肢位も異なるが,それぞれの握力計での測定値をそのまま比較できるかどうかの検証はされていない.本研究の目的は,同一被験者に対し,Smedley 型とJamar 型での握力値の相違について明らかにすることである.本研究は2013 年改訂のヘルシンキ宣言に沿った研究であり,学内卒業研究倫理審査により承認された.

    【方法】対象は本研究の意義,目的,方法,研究に伴う利益と不利益などについて十分な説明を受け,自らの意志で参加した20~24 歳(平均年齢21.27±0.83 歳)の健常成人30 名(男性15 名,女性15 名)であった.基礎情報(年齢,性別,身長,体重,左右の手長,利き手)と共に,Smedley 型とJamar 型それぞれ標準的な測定方法に従い,各左右5 回ずつ握力を測定した.測定の順序は乱数表を用いてランダム配置とし,それぞれの握力計での測定は30

    分以上の間をあけて行った.得られた測定値よりそれぞれ高値3 つを採用し,各90 データを元に相関係数を求めた.さらに平均値の差について対応のあるt 検定を用い比較検討した.統計処理にはJMPver.5.0.1(SAS Inst.)を用い,危険率は5%未満とした.

    【成績】Smedley 型とJamar 型のそれぞれの測定値間には強い相関関係があり(右r=0.87,左r=0.89)測定値の平均

    (Smedley 型=右33.1kg,左=31.2kg.Jamar 型=右34.0kg,左31.7kg)に差は無かった.

    【結論】Smedley 型で測定した握力値とJamar 型で測定した握力値はそのまま比較可能である.

  • 川住美喜 , 池田由美
    p. 247-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
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    【目的】運動学習における学習者の思考過程の違いが、動作獲得までの所要時間に与える影響について分析した。

    【方法】対象はけん玉をけんに刺す動作(以下、とめけん)を行えない健常成人女性9 名とし、対象者には研究内容について説明し同意を得て実施した。とめけんを5 回試行後、熟練者と対象者の動画を見比べながら思考内容の口述を行うことを1 セットとして動作獲得まで繰り返した。また、10 セット目に動作の助言を行った。動作獲得が7~9 セット目であった4 名を成功群、13~14 セット目であった3 名を助言後成功群、15 セット行っても動作未獲得であった

    2 名を未成功群とした。口述内容はKH Coder を用いて、各群における発話件数を算出し、抽出したコードを6 つのカテゴリー(1.剣の持ち方、2.リラックス、3.足は肩幅に右足は半歩前に、4.剣を構える高さ、5.膝の屈伸、6.玉の穴の位置)に分け作成したコーディングファイルをもとにカテゴリー分布の算出とクロス集計を行った。

    【結果】各群における発話件数の平均値は、成功群・助言後成功群・未成功群の順に1 セットあたり12 件・10 件・8

    件と成功群が最も多かった。また、カテゴリーに該当しない発話は、44.2%・52.5%・50.2%と成功群で最も低い割合を示した。全発話のカテゴリー分布においては、6 つのカテゴリーのうち一般的に特に重要とされる〔5.膝の屈伸〕で

    34.2%・24.8%・28.2%、〔6.玉の穴の位置〕で18.1%・13.5%・16.0%であり、共に成功群で最も高い割合を示した。

    【考察】成功群と助言後成功群・未成功群とを比較分析した結果より、動作獲得までの所要時間短縮には、動作獲得の要点をおさえた上で熟練者と自身の違いにできるだけ多く気づき、それぞれの要点の重要度に見合った注意の配分を行うことが重要であると考える。

  • 知識愛花 , 岡本夏穂 , 島田理奈 , 谷口鮎子 , 田代千絵 , 今井祐子
    p. 248-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
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    【目的】車いす操作の経験差が空間認知能力に影響するかを検証するため,手動車いすで障害物の間を通過できる幅の知覚と経験差の関係を明らかにすることが目的である.

    【方法】対象は視力1.0 以上の健常成人32 名とし,車いす操作経験の少ない群16 名と多い群16 名に分けた.倫理的配慮として,対象者に研究の目的・方法・個人情報の取り扱いについて事前に説明し,同意を得た上で研究を実施した.さらに倫理委員会の承認を受けた.使用機器は,普通型車いすを用いるとともに,通過幅を設定するため手動式パネルを使用した.課題は車いすの後方に立ち,5m 先の様々な幅を観察し障害物に接触せずに通過できるかを口頭にて答える(課題1).その後,通過の可否を口頭にて答えた後にハンドルを把持し実際に通過できるか体験する(課題2).いずれの課題も通過幅は車いす幅(62.5 cm)を基準とし,±7.5cm(2.5 cm 間隔)の7 段階をランダムに

    7 試行実施する. 統計処理は,各課題の試行順とcm ごとのそれぞれの誤答数を比較するため,カイ二乗検定で統計処理を行った.

    【結果】車いす操作経験の少ない群と多い群に有意差は認められなかった.また全体的な傾向として,車いす幅を実際よりも大きく見積もることが明らかとなった.

    【考察】本研究により,設定条件下では経験差による結果の違いは得られなかったが,車いす幅を実際よりも大きく見積もる傾向が明らかとなった.その要因として,本研究の比較対象は操作経験の差が数年であったことからが空間認知能力に影響を与えるほどではなかったと考えられる.また,課題が容易であったことから,本研究の結果は経験ではなく課題に依存した傾向になったと考えられる.さらに,今回は他者を乗せたことを想定した車いすを操作するという面から,危険回避の心理がより働き車いす幅を実際よりも大きく見積もったと示唆された.

  • 馬場都 , 山口健太 , 江口勝彦
    p. 249-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
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    【目的】血圧は運動時のリスク管理の指標のひとつである.高血圧の高齢者は,運動負荷後の血圧が正常血圧者より上昇しやすいという報告があるが若年者に関するデータは少ない.本研究の目的は運動時リスク管理に資するため,若年者を対象に安静時収縮期血圧値より2 群に分類し,軽度の運動負荷を加えた時の血圧変動の特徴を明らかにすることである.本研究は2013 年改訂のヘルシンキ宣言に沿った研究であり,学内卒業研究倫理審査により承認された.

    【方法】対象は説明を行い自らの意志で参加した21~22 歳の健常な大学生32 名(男性18 名,女性14 名)とした.安楽な椅子座位で10 分間安静後,左上腕で水銀柱式血圧計を用い,聴診法により血圧測定を行い,その結果から至適血圧と正常血圧(収縮期血圧129mmHg 以下)を正常値群,正常高値血圧とI 度高血圧(収縮期血圧130~

    159mmHg)を高値群とした. 運動負荷はMaster’s double two-step test を行った.運動負荷後,安楽な椅子座位で,運動直後から運動前の血圧値に戻るまで2 分ごとに血圧を測定した.安静時血圧値を100%とした時の収縮期血圧と拡張期血圧の変化率を算出した.変化率と運動後血圧が安静時血圧まで戻るまでの時間について正常値群と高値群間の平均値の差を対応のないt 検定により比較検討した.いずれも危険率は5%とした.

    【成績】収縮期血圧の変化率は正常値群16.6±7.46,高値群14.0±9.12 と有意差はなかった.拡張期血圧の変化率は正常値群4.22±9.4,高値群3.57±8.10 と有意差はなかった.収縮期血圧が安静時血圧値に戻るまでの時間は正常値群7.92±2.55,高値群10.00±3.83 と有意差はなかった.

    【結論】本研究で用いたMaster’s double two-step test の負荷量は6~7METS 程度と日常生活での労作をほとんどカバーしているが,若年者では血圧が高めでも日常生活程度の運動負荷における血圧変動は正常値者と違いはない.

  • 三小田健洋 , 吉田啓晃 , 滝川麻美 , 中山恭秀
    p. 250-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
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    【目的】大腿骨近位部骨折後の歩行予後予測については、術後早期の動作能力をもとに検討したものは少ない。今回は、術後早期動作能力を簡便に評価し、歩行予後を予測できるかを検討した。

    【方法】受傷前に屋外歩行が可能であった大腿骨近位部骨折術後症例72 例(男性17 例、女性55 例、平均78.8±9 歳)を対象とし、退院時に屋外歩行が自立した群(自立群)と自立しなかった群(非自立群)の2 群間で早期動作能力を比較した。早期動作能力は、術後一週の時点における基本動作(寝返り、起き上がり、立ち上がり)自立度は四段階に分け、立位テストは、0:困難、1:健側荷重優位での立位、2:患側荷重優位での立位、3:片脚立位可能の四段階に分けた。また、歩行(平行棒、歩行器、T 字杖)自立度に関しては可否の二段階に分けて評価した。統計は、2 群間の差をMann-Whitney U 検定、χ2 検定にて比較した後、予測関連因子の検討に退院時屋外歩行自立度を目的変数とした多重ロジスティック回帰分析を行った。有意水準は5%未満とした。本研究は本学倫理委員会の承認を受け、ヘルシンキ宣言に則り実施した。

    【結果】自立群(29 例)と非自立群(43 例)間において、すべての項目で有意差を認めた。多重ロジスティック回帰分析では、立位時の患肢支持性(オッズ比4.29、95%信頼区間:1.04-4.17)と、寝返り(オッズ比5.16、95%信頼区間:

    1.09-3.59)が採択され、判別的中率は75.0%だった。

    【考察】大腿骨近位部骨折患者における退院時の屋外歩行自立度は、術後1 週の時点での寝返り動作と患側下肢へ支持する能力が関与していた。寝返り動作は、術後早期から獲得しやすい動作であり、離床する上で必要な動作である。よって、早期から獲得できれば、離床時間にも影響し、退院時までの活動量と関連すると考えた。また、術後早期から患側下肢への荷重量が多いことが、患側の立脚時間を延長し、退院時の屋外歩行能力の安定化に貢献する可能性が示唆された。

  • 石原清 , 高塚博 , 小野寺忠男 , 坂本麻里子 , 鈴木麻里子 , 岡村武 , 保谷純一
    p. 251-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
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    <はじめに>イージーストライドは、1990年に開発された、底屈制動機能付きプラスチック短下肢装具であるが、今まで、使用される機会の少ない装具であった。2005年より、川崎市で支給が開始され、現在、脳卒中片麻痺者の短下肢装具支給の約20%を占めている。全国的には知られていない装具であるので、今回その特徴と適応について紹介する。<イージーストライドの概要>足継手はタマッラックを使用し、後方の左右にプラスチックダンパーを設置したAFO で、ダンパーは4種類の硬度を選択でき、ストローク、足継手の初期角度が調整可能である。<イージーストライドの特性の計測方法>イージーストライドのみで特性を計測すると、プラスチックに歪が生じ、正しい計測が困難であるため、木製下腿モデルを作製した。下腿モデルは、球状足関節を有し、前後左右に自由に可動する。木製下腿モデルの上部に角度計、左右前後方向にフックを固定した。下腿モデルに装具を装着し、足部を万力で固定し、フックに装着したバネばかりを前後・左右方向に軸に垂直に引き、変位角度とモーメントを計測した。計測は、4種類のダンパーおよびストローク長の設定を変え行った。<イージーストライドの適応>川崎市更生相談所、北部リハセンター、中部リハセンターで過去5年間にイージーストライドを給付した脳卒中片麻痺者の特徴からその適応について考察した。<計測結果と本装具の特徴>イージーストライドの特性は、発表時にグラフで報告する。本装具の特徴として、1)タマラック足継手と後方左右のダンパーにより左右の安定性、復元性が高く、内反足のコントロールに優れている。2)踵接地時の足関節底屈位からの復元力を適切に調整することで、弛緩性下垂足から中等度の痙性尖足まで適応範囲が広い。3)他の装具からの変更により、歩幅、歩行速度、反張膝の改善が得られた。

  • 大野健太 , 岡邨直人 , 関根裕之 , 田中康雄 , 西沢岳之 , 加藤健太郎 , 山本智章
    p. 252-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
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    【目的】上腕骨小頭離断性骨軟骨炎(以下OCD)は,投球障害の中でも将来に重篤な機能障害を生じやすいと言われている.新潟市ではH19 年より野球肘検診を開始し,長岡市ではH22 年より開始し昨年で5 年経過した.今回,5 年間で発見されたOCD 疑いの選手数,投球障害有無と受診率をまとめたので以下に報告する.

    【対象と方法】対象はH22 年からH26 年に長岡市野球肘検診を受けた学童野球選手827 名(H22 年149 名,H23

    年146 名,H24 年130 名,H25 年172 名,H26 年230 名)とした.検診で医師による超音波検査にてOCD を疑われた選手数を集計した.また問診票から,現在肩肘に疼痛のある選手数,整形外科受診者数を集計した.なお事前に各チームの監督,保護者に対し,検診目的,内容を文章と口頭で説明し同意を得た.

    【結果】OCD 疑いの選手は5 年間で23 名(2.8%),内訳H22 年4 名(2.7%),H23 年5 名(3.4%),H24 年5 名

    (3.9%),H25 年5 名(2.9%),H26 年4 名(1.7%)であった.現在肩肘に疼痛のある選手はH22 年34 名(22.8%),H23 年21 名(14.4%),H24 年12 名(9.2%),H25 年17 名(9.9%),H26 年30 名(13.0%)であった.その内、整形外科受診率はH22 年3 名(8.8%),H23 年2 名(9.5%),H24 年4 名(33.3%),H25 年1 名(5.9%),H26 年6 名

    (20%)であった.

    【考察】OCD 発症率は約2~3%と報告されており,今回と同様の結果であった.現在肩肘に痛みのある選手は,検診開始当初に比べ減少傾向であった.これは検診やH24 年に配付された野球手帳を通じて,選手や指導者の投球障害への理解や予防への認識が高くなっているからと考えられる.一方で整形外科への受診率は低く,投球障害にはX 線診断が重要であるということが保護者や指導者にまだ普及していなことが考えられる.今後はH27 年に県内全チームに配付された野球の指導教本である新潟メソッドを活用し,継続的な啓発を行っていく必要がある.

  • 朝山信司 , 三澤香織 , 成田春香 , 安美菜子
    p. 253-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
    会議録・要旨集 フリー

    【目的】大腿骨頸部骨折患者は多くの場合手術が適応になり、その後に理学療法を実施するが、受傷前の状態に到達しないことも多い。また認知症を併せ持つ患者が多く、経過に難渋する機会もしばしば経験する。今回の調査では、ADL に関わる要素について受傷前後での違いと認知症の影響を明らかにすることを目的とした。

    【方法】当院整形外科で手術を受け、平成27 年1 月より一年間に理学療法の処方を受けた患者109 名を対象とした。受傷前と退院時における歩行レベル、ADL 自立度、そして生活環境を調査した。また認知症の影響についても検討した。

    【結果】患者の歩行レベルを独歩、杖歩行、歩行器歩行、車椅子使用に分類したところ、受傷前に多かった独歩と杖歩行は退院時には減少し、反対に歩行器歩行と車椅子使用が増加した。ADL 自立度は受傷前に多かった自立と一部介助が退院時に減少し、半介助と介助が増加した。生活環境では受傷前に多かった自宅が退院時に減少し、福祉施設と療養型病院が増加した。また認知症を併せ持つ患者は、歩行レベルの改善度がそうでない患者に比較し、下がっている傾向がみられた。

    【考察】今回の調査結果から大腿骨頸部骨折を受傷し、手術と理学療法を実施した後においても、受傷前より歩行レベルとADL 自立度が下がってしまう傾向があることが確認できた。これらは自宅に復帰できない要素になっているものと考えられた。また認知症の患者は歩行レベルの改善がより小さいことから、歩行を再獲得する予後にも影響することが考えられた。

    【まとめ】大腿骨頸部骨折を受傷した患者は、退院時に受傷前の歩行レベルとAD L 自立度に到達しない者が多い。

    また認知症の患者は退院時における歩行の改善が良くないことから、理学療法士は患者のADL を保つために、より丁寧な指導と反復練習が重要になるのではないかと思われた。

  • 田中友也 , 美崎定也 , 杉本和隆
    p. 254-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
    会議録・要旨集 フリー

    【目的】人工膝関節全置換術(TKA)後患者における膝前面痛は術後の問題点として報告されているが、その要因は手術と機種に関することが多く、身体・精神機能についての調査は少ない。本研究の目的は、歩行時に膝前面痛を呈するTKA 後患者における術前後の身体・精神機能の経時的変化について検討することである。

    【方法】対象者は初回片側または両側TKA の症例とした。調査項目は年齢、BMI、歩行時の疼痛部位、疼痛に関する破局的思考(PCS)、身体機能(膝屈曲・伸展角度、足背屈・底屈角度、等尺性膝伸展筋力、等尺性股外転筋力、オーバーテスト、トーマステスト、ハムストリングス短縮テスト)とし、手術前日と術後3 週に実施した。疼痛部位の測定はPhotographic Knee pain map:PKPM (Elson,2011)を使用し、外側関節ライン、内側関節ライン、膝蓋骨外側、膝蓋骨内側に疼痛を訴えた場合に膝前面痛と定義した。統計解析は、術後3 週時の膝前面痛の有無より疼痛有り群(P 群) と疼痛無し群(NP 群)に分け、各群に対して対応のあるt 検定またはMcNemar 検定を用いて術前後の変化の特徴を検討した。有意水準は5%とした。本研究は、研究代表者が所属する病院の倫理審査委員会の承認を得た。なお、ヘルシンキ条約に基づき、対象者には事前に研究の趣旨を説明し、同意を得た。

    【結果】調査は30 名、51 膝に対して行い、対象者は平均年齢72.0 歳、平均BMI26.5kg/m2 であり、膝前面痛を訴えた膝数は24 膝となった。術前後の変化として、P 群は等尺性股外転筋力の低下、足底屈可動域の増加、NP 群はPCS 向上、トーマステストの陽性から陰性への変化、足背屈可動域増加が特徴として見られた。

    【結論】TKA 後の膝前面痛は、術前後における股・足関節機能や疼痛に関する破局的思考の変化が要因となり、発生していることが示唆された。

  • 田中亮造 , 中村隆 , 前野崇 , 飛松好子
    p. 255-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
    会議録・要旨集 フリー

    【目的】我が国では病院の情報と義肢装具士の情報が単一施設に集約されていないことが多く、切断者の統計資料が少ないのが現状である。当院では、入院中の患者の基礎情報、評価結果、義肢製作時の義肢に関する情報を入出力できるデータベース(以下:DB)を活用している。今回、当院で使用しているDB をもとに切断者が入院中に測定した10m 歩行時間を個人因子の違いによって比較・検討したので報告する。

    【方法】対象は片側下肢切断者88 名(男性69 名、女性19 名)とした。統計解析は、まず大腿切断者(46 名)と下腿切断者(42 名)に分け、切断原因が外傷(43 名)と疾病(38 名)の2 群間、切断時の年齢が65 歳未満(67 名)と65

    歳以上(21 名)の2 群間の10m 歩行時間を対応のないt 検定を用いて比較した。解析ソフトはSPSS Statistics Version 22.0 を使用し、有意水準は5%未満とした。本研究はヘルシンキ宣言に基づき、対象者の保護には十分留意し、当院の規定に準じて十分な説明と同意を得て実施した。

    【結果・考察】切断原因の違いによる10m 歩行時間の比較では、下腿切断者では2 群間に有意な差が認められなかった。一方、大腿切断者では、切断原因が疾病の群が外傷の群に比べ、有意に大きい値を示した(p<0.01)。今回の結果から、下腿切断では切断原因の違いによる10m 歩行時間への影響は認められなかった。しかし、大腿切断では膝関節がないことで、義足歩行の難易度が高くなり、より高い身体機能が必要となるため、全身状態が悪く二次的障害を持っていることが多い疾病による大腿切断者は大きい値を示したと考えられる。年齢の違いによる結果は大腿切断者、下腿切断者ともに65 歳以上の群の10m 歩行時間が大きい値を示した(p<0.05)。今回の結果は、概ね臨床の見解と一致しており、臨床の見解を数値として実証できたと思われる。

  • 穂谷優二 , 志田康成 , 守屋智史 , 柳英利
    p. 256-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
    会議録・要旨集 フリー

    【目的】脊椎圧迫骨折(圧迫骨折)は治療上の安静臥床が必要となるが,安静臥床の至適期間や理学療法の開始時期の明確な指標はあまり知られていない.そこで,本研究の目的は圧迫骨折患者における理学療法開始時期の違いが在院日数と理学療法経過に及ぼす影響を調査することとした.

    【対象と方法】対象は2012 年7 月から2014 年7 月までに当院へ入院した圧迫骨折患者209 例のうち,歩行可能で保存的加療の後自宅退院となった109 例とした.入院後に理学療法を1週間以内に開始した群(A 群47 例)と1 週間以降に開始した群(B 群62 例)に分類し,患者背景(年齢,性別, BMI,骨折椎体数,入院前の移動形態),治療経過

    (歩行練習開始日,歩行自立日),在院日数を比較検討した.統計解析はR version.3.2.1 を用い単変量解析にて2 群間を比較検討した.有意水準を5%とした.

    【倫理的配慮】本研究はカルテから抽出した後ろ向き研究であり,個人が特定されるデータは残さず全て数値化し分析を行い,結果の公開は研究対象者のプライバシー保護に十分配慮した.

    【結果】患者背景は有意差を認めなかった.治療経過は,A 群がB 群よりも歩行練習開始日(15.4±4.7vs17.2±4.1,p <0.05)が有意に早かったが,歩行自立日(22.5±7.3vs22.0±6.5) ,在院日数(35.7±16.0vs 38.1±18.6)では有意差を認めなかった.

    【考察】A 群はB 群よりも早期に理学療法を開始したことにより廃用症候群を軽減し,歩行練習開始日が早くなったと考えられる.しかし, 歩行自立日および在院日数はA 群に有利な要因があるのにも関わらず,差を認めなかった.経過に影響する可能性のある患者背景に差がなかったことより,理学療法の開始時期や内容,自宅退院に向けた社会的環境調整等の未知の因子が在院日数へ寄与した可能性が考えられた.

    【結論】早期の理学療法開始は,歩行練習開始日を早めるが,歩行自立病日や在院日数へは影響しない可能性を示

    した.

  • 櫻井理嵩 , 重綱玲南 , 池田潤 , 和田栄二 , 加藤仁規子
    p. 257-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
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    【目的】 2008 年7 月より当院では腰部脊柱管狭窄症(LSS)患者に腰椎後方除圧固定術(PLF)を施行し,2014 年より術後の身体活動性の向上を目的としてノルディックウォーキング(NW)を術後理学療法に導入している.本研究は,術前より身体機能と活動量が低下したLSS 患者の術後身体機能改善と活動量低下対策としてのNW の有効性と意義を2 ステップ値とロコモ25 値で検証し報告する.

    【対象と方法】対象:2015 年1 月から2016 年3 月にPLF を施行したLSS 患者31 名.全例術後翌日から退院時までNW を行い,退院後もNW の継続を指導.術後1 ヶ月と術後3 ヶ月で退院時からのNW 継続状況を確認し,NW 中断(D)群17 名,NW 継続(C)群14 名の2 群で比較検討.方法:2 ステップ測定を術前,術後2 日目,術後9 日目(退院時),術後1 ヶ月と術後3 ヶ月で施行.ロコモ25 の調査は術前及び術後1 ヶ月と術後3 ヶ月で実施.結果解析は対応のあるt 検定で実施.

    【結果】 2 ステップでは術後→退院時で両群とも有意に改善.退院時→術後1 ヶ月→術後3 ヶ月でD 群は

    1.24→1.28→1.3 と有意な改善認めず,C 群は1.08→1.19→1.24 と有意に改善(p<0.01).ロコモ25 では術前→術後1 ヶ月→術後3 ヶ月でD 群が25.5→13.8→9.7 であり,C 群で44.8→19.6→14.9 と両群ともに有意に改善.(p<

    0.01).

    【考察】 NW の特徴は多点支持による歩行時不安解消と上下肢・体幹筋の使用による運動効果の増加,バランス能力向上が挙げられる. 2 ステップ値における術後から退院時で両群の有意な改善と術後3 ヶ月時点のC 群の有意な改善,ロコモ25 値でのC 群の改善度の大きさから,NW の実施及び継続は体幹・下肢筋群の筋パワー向上と身体的活動性の向上を認めた. NW は,ポールを持つことで意識して全身を使用する歩行となり,体幹・上下肢筋群の筋パワー向上が可能で,退院後も患者自身で実施可能な点からロコモ高値LSS 患者の術後の身体機能改善と活動量低下対策に理想的なアイテムだと考える.

  • 渡邉司 , 古西勇 , 白井瑞樹
    p. 258-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
    会議録・要旨集 フリー

    【目的】開発途上国において腰痛は先進国と同様に大きな問題であるが,スペイン語圏諸国における腰痛の治療に関する報告は少ない.本研究の目的は,コスタリカの慢性腰痛のある患者に対して筆者らが開発したスペイン語版の自主練習メニューの有用性を明らかにすることである.

    【方法】対象はコスタリカの診療所に通う慢性的な痛みを主訴とし,腰痛の診断を受けた患者(男性4名,女性19名,平均年齢49.2 ± 14.5 歳)とした.自主練習メニュー作成ソフト(リハビリの自主トレ3D)のスペイン語版を開発し,個々の症状に適した自主練習メニューを印刷し提供した.介入期間は2015 年1 月から9 月までとし,初回と3 回目の診療時に実施したアンケート結果を比較した.本研究はヘルシンキ宣言の趣旨に則り計画され,筆者の所属する機関の倫理委員会で承認された研究の一部である.

    【結果】対象者の腰痛の罹患期間は平均6.6 ± 9.4 年であった.生活満足度(NRS)は,介入前後で6.73 ± 2.84 から8.60 ± 1.90 と有意に向上した(p<0.01).疼痛(NRS)は,7.52 ± 1.67 から4.00 ± 2.79 と有意に低下した(p<

    0.01).運動習慣は運動頻度を5 段階で評価し,1.17 ± 0.57 から3.52 ± 1.20 と有意に改善した(p<0.01).自主練習メニューに対する満足度は93%であった.

    【考察】本研究は,日本で用いられている自主練習メニューからスペイン語版を開発し,スペイン語圏諸国における慢性腰痛患者に対して適用した,筆者らの知る限り初めての報告である.今回の自主練習メニューはコスタリカにおける慢性腰痛のある患者に高い満足度が得られたことから,有用性のある可能性が示唆された.今回は通常の診療に加えての自主練習の指導であったため,介入の効果を明らかにするには更なる研究が必要である.

    【まとめ】自主練習メニューは,スペイン語圏諸国における慢性腰痛のある患者に対して有用な治療手段となりうる可能性がある.

  • 松下紗和子 , 袴田暢 , 宇佐美かおり , 中山裕子
    p. 259-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
    会議録・要旨集 フリー

    【目的】大腿骨近位部骨折症例において患側下肢の荷重練習による効果を検討した報告は少ない.今回,荷重練習の即時効果と効果に影響する要因について検討することを目的とした.

    【方法】対象は,大腿骨近位部骨折術後症例15 例(年齢86.7±3.9 歳,男性2 例,女性13 例,介入時期:術後

    40.7±10.4 日)とした.荷重課題は2 つの体重計の上に片脚ずつ接地した立位で患側下肢への最大荷重を5 秒間,10 回実施した.比較課題は足底接地しない椅子坐位を2 分間とした.効果判定の評価として10m 最大歩行速度,FRT を測定した.測定手順は,評価―比較課題―評価,評価―荷重課題―評価の順で行い,2 日間で測定した.その後,改善が得られた項目に関して,荷重課題改善量の中央値で改善良好群,改善不良群の2 群に分類,改善に関連があると考えられた,年齢,介入時期,歩行能力,下肢痛(NRS)について比較検討した.統計学的検討はt検定,マンホイットニ検定,X²検定を用い有意水準は5%とした.また,本研究は対象者に研究の主旨を十分に説明し,同意を得て行った.

    【結果】10m 最大歩行速度は,比較課題前0.67±0.18m/s,課題後0.66±0.19m/s であった.荷重課題前

    0.66±0.18m/s,課題後0.67±0.18m/s であり差を認めなかった.FRT は比較課題前25.65±7.16cm,課題後

    23.23±6.0cm であり課題後で有意に低下していた(p<0.05).荷重課題は課題前24.3±7.47cm,課題後

    26.9±7.0cm であり,課題後において有意に改善していた(p<0.05).FRT 改善良好群と改善不良群との比較では,すべての項目で有意差は認められなかった.

    【考察】歩行速度に関しては各課題間で有意差を認めず,荷重課題による明らかな即時効果はみられなかった.FRT については,荷重課題後に有意な改善が認められ,荷重練習による即時効果を示した.改善良好群,不良群の比較ではすべての項目に差を認めず,今回検討した項目以外の要因が関与していることが考えられた.

  • 重綱玲南 , 櫻井理嵩 , 池田潤 , 櫻井運雄 , 和田栄二 , 加藤仁規子
    p. 260-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
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    【目的】2009 年より当院では頸椎症性脊髄症(CSM)患者に対して頸部椎弓反転式拡大形成術(RLR)を施行し,

    2014 年から術後理学療法としてノルディックウォーキング(NW)を取り入れ軸性痛やロコモ対策を行っている. 本研究ではRLR 術前後におけるロコモ25 値や2 ステップ値,軸性痛の推移から頸椎術後NW の意義と有効性を検証した.

    【対象と方法】対象:2015 年5 月~2016 年3 月にRLR を施行したCSM 患者30 名.全例術後翌日からNW を行い,退院後もNW 継続を指導.術後1 ヶ月で退院時からのNW 継続状況を確認し,NW 継続(C)群15 名,退院後NW 中断(D)群15 名の2 群で比較検討.方法:2 ステップを術後2 日目,退院時,術後1 ヶ月で施行.術後より軸性痛評価(NRS)を加え,ロコモ25 の調査は術前,術後1 ヶ月で実施. 【結果】2 ステップは術前→術後→退院時→術後1 ヶ月でD 群1.4→1.26→1.37→1.45,C 群1.31→1.12→1.38→1.49 と術後から両群とも有意に改善(p<

    0.01).軸性痛評価は術後→退院時→術後1 ヶ月でD 群5.5→3.2→3,C 群5.8→2.5→1.4 と退院時まで両群とも有意に改善(p<0.01).退院時→術後1 ヶ月でD 群は変化乏しく,C 群は有意に改善(p<0.05).ロコモ25 では術前→術後1 ヶ月でD 群11.8→10 と有意な改善認めず,C 群18.8→7.6 と有意に改善(p<0.01).

    【考察】NW は歩行動作に対する不安解消及び運動効果の増加が報告されている.軸性痛が術後から退院時で両群とも有意に改善し,術後1 ヶ月でC 群が有意に改善したことから,肩甲帯周囲筋を使用するNW は頸部椎弓形成術後の軸性痛軽減が期待できる.C 群の2 ステップ値とロコモ25 値が術前から術後1 ヶ月で有意に改善したことから,上下肢の連動した動きとなるNW はCSM 患者の低下した筋パワー訓練として有効であり,NW 使用による筋パワーの向上が,日常の身体的活動性の改善に寄与したと考える.よってNW は頸椎疾患も含めた脊椎疾患合併ロコモ高値患者の活動力の改善に有効である.

  • 来住野健二 , 中山恭秀 , 山本裕子 , 井上優紀
    p. 261-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
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    【目的】パーキンソン病(PD)は無動や寡動などによる疾患特異的な動作遂行のバラつきを生じることが問題となる。

    動作遂行のバラつきにも着目した介入として、当院ではPD 患者に対し、課題遂行型であり、運動学習や廃用性機能障害の改善を目的とした、10 回繰り返し動作を実施している。今回は、繰り返し起き上がり動作練習を介入として行った症例の動作遂行時間の変化について、重症度による違いを明らかにするために、10 回繰り返し動作の平均値(Mean)、標準偏差(S.D.)を指標とし検討を行った。

    【方法】対象は2013 年1 月から2016 年3 月に当科に依頼があり、PD の診断を受け介入と評価が可能であった17

    例とした。繰り返し起き上がり動作練習は、毎理学療法実施日に10 回ずつ行い、初日および最終日のMean、S.D.

    を算出、Hoehn and Yahr staging scale(H&Ystage)の重症度別に比較し検討を行った。本研究は当大学倫理委員会の承認を得ている。

    【結果】H&Ystage の内訳はじゅI:8 例、II:3 例、III:4 例、IV・V:2 例であった。H&YstageIII 群では、Mean が8.76 秒

    から5.63秒へ、S.D.が4.18秒から1.97秒へ減少が認められた。その他の重症度では大きな変化はなく、H&YstageI・

    II では、症例ごとのバラつきも少なかった。

    【考察】H&YstageI・II において、初日および最終日のMean およびS.D.に大きな変化はなく、動作遂行が安定して行えており、天井効果を生じていることが推測される。H&YstageIII においては、Mean およびS.D.の減少がみられ、10

    回繰り返し動作練習による動作速度の向上、動作遂行のバラつきの軽減が得られたことが考えられる。無動や固縮、姿勢反射障害による動作遂行のバラつきは、H&YstageIII の症例から顕著になることが示唆された。

  • 野嶋素子 , 保地真紀子 , 小川幸恵 , 中山裕子
    p. 262-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
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    【はじめに】腰椎変性疾患においてL4/5,L5/S 椎間は障害されやすい部位である.L5 神経根は前脛骨筋,中殿筋をS1 神経根は下腿三頭筋,大殿筋を優位に支配するとされており,その神経根症状により歩行障害を呈することは少なくない.今回S1 神経根障害による筋力低下と歩行の関係について検討を行うため単椎間のヘルニア症例を対象に検討を行った. 【対象と方法】対象は2013.3~16.3 に術前評価を実施したL4/5 椎間板ヘルニア47 例中,前脛骨筋または中殿筋に低下(MMT3 以下)が見られた8 例(以下L5 群 48.9±13.4 歳 男6 例 女2 例),L5/S 椎間板ヘルニア43 例中,下腿三頭筋または大殿筋に低下が見られた11 例(以下S1 群 42.4±13.8 歳 男9 例 女2 例)とした.両領域に筋力低下を呈する症例は除外した.検討項目はTimed Up and Go Test(以下TUG),10m 最大歩行速度(以下歩行速度),10m 歩行歩数(以下歩数),歩行率,階段昇降時の手すり使用の有無とした.比較にはt 検定を用いた(有意水準5%).尚,本研究は当院の倫理委員会の承認を得て行った.

    【結果】L5 群,S1 群でTUG は8.34±1.20,12.93±4.96 秒,歩行速度は1.60±0.26,1.26±0.41m/s,歩数は

    14.25±1.67,18.72±5.83 歩であり有意差を認めた.歩行率は2.27±0.32,2.16±0.35 歩/s と有意差を認めなかった.階段昇降時手すり使用の割合はL5 群37.5%,S1 群62.5%であった.

    【考察】S1 群はL5 群と比較しTUG,歩行速度は低下,歩数は増加,階段昇降時に手すり使用者が多く,S1 神経根障害による下腿三頭筋,大殿筋の筋力低下は前方推進力,バランス能力,敏捷性,日常生活機能の低下に関与することが示唆された.S1 神経根障害を含む症例は歩行自立の可否だけでなく,応用的な動作にも注意して評価する必要があると考える.

  • 板摺美歩 , 阿部翔悟 , 井澤菜苗 , 小泉周也 , 藤森大吾
    p. 263-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
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    【目的】急性期脳卒中患者における退院先の予測は困難であり,先行研究ではFunctional Independence Measure(FIM),Barthel Index,National Institutes of Health Stroke Scale(NIHSS),高次脳機能障害,Ability for Basic Movement Scale II(ABMS II)などが退院先に関連する因子として報告されている.しかし,報告は少ないのが現状である.本研究の目的は,発症早期の評価から退院先に関連する因子を検討することとした.

    【方法】対象は,平成27 年4 月から平成28 年3 月に自宅から当院に入院した脳卒中患者146 例のうち,退院先が自宅61 例と回復期病院41 例の計102 例とした.評価項目は年齢,性別,入院前modified Rankin Scale,既往歴,病型分類,病巣, 治療内容,入院時NIHSS,理学療法開始までの日数,初回車椅子乗車実施までの日数,神経症状増悪の有無,合併症の有無,理学療法開始時の高次脳機能障害・感覚障害・嚥下障害・運動失調の有無,FIM,第5 病日のBrunnstrom Recovery Stage(BRS),Trunk Control Test(TCT),Motricity Index(MI),座位機能,理学療法開始時・初回車椅子乗車時のABMS II を挙げた.統計処理は,単変量解析で有意差を認めた項目に対して,多重ロジスティック回帰分析を行い,ROC 曲線から,感度,特異度およびカットオフ値を算出した.有意水準は5%未満とした.なお,患者もしくは家族に本研究についての目的を説明し同意を得た.

    【結果】単変量解析の結果,病巣(中大脳動脈領域梗塞),治療内容(t-PA 治療の有無),NIHSS,神経症状増悪の有無,感覚障害・嚥下障害・高次脳機能障害の有無,FIM,BRS,TCT,MI,座位機能,ABMSII で有意差を認めた.多重ロジスティック回帰分析の結果,病巣,治療内容,NIHSS で有意差を認めた.NIHSS は,ROC 曲線よりカットオフ値を3.5 点と算出した. (感度82.9%,特異度77.0%)【考察】本研究の結果では,先行研究と異なり,中大脳動脈領域梗塞,t-PA 治療の実施,NIHSS で3.5 点以上の場合,回復期病院へ転院となる可能性が示唆された.

  • 鈴木昭広 , 柳澤千香子 , 押見雅義 , 斉藤康人 , 藤本光美 , 鹿倉稚紗子 , 林祥代 , 洲川明久
    p. 264-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
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    【目的】 脳卒中症例に対する上肢ミラーセラピー(MT)を外来指導にて行い、その効果や方法について検討すること。

    【対象】 当センターに外来通院している2 症例。症例1 は、67 歳男性。発症から1 カ月後の脳梗塞左片麻痺。BRS 左上肢4、手指3、下肢4、感覚は手指重度鈍麻、他は軽度鈍麻であった。症例2 は、79 歳男性、発症から15 年後の脳梗塞右片麻痺。BRS 全て5、感覚は軽度鈍麻であった。

    【方法】 ミラーボックスを使用し、非麻痺側上肢で5 種類の運動項目を各3 分ずつ連続して実施してもらった。運動項目は、手掌背屈、総指屈伸、母指対立、前腕回内外、肩屈伸とした。確実に行えるか確認後、自宅でMT を午前・午後、1 日2 セット(計30 分)を2 週間実施してもらった。また、実施毎にMT 日記(動き、感覚、心理など)を記載してもらった。 評価として、MT 実施前と、2 週間MT 実施後に麻痺側の、前腕回内外回数、指タッピング回数、握力を測定し比較検討した。また、MT 日記の内容を検討した。本研究は、当センター倫理委員会の承認を受け、対象者にも同意を得て実施した。

    【結果】 回内外回数は、症例1は1 回→19 回/30 秒、症例2 は75 回→85 回/30 秒であった。指タッピング数は、症例1は前後とも0回、症例2は87回→105回/30秒であった。握力は、症例1は前後とも0kg、症例2は21.kg→23.kg であった。MT 日記には、症例1は「麻痺の手が動いている気になる」「眠くなる」「2 つの運動を組み合わせた方が良い」などの意見があった。症例2 は「上手く運動出来た後は麻痺の腕がすっきりする」「疲れる」「集中が続かない時がある」などの意見があった。

    【考察・まとめ】 2 症例とも機能向上の傾向が認められたが、症例1 の指機能に関しては今回の評価項目では変化が認められなかった。日記に記された内容は、自宅での自主トレーニングを有効に進めるための情報としては有用なものであり、MT 実施時の患者指導にも利用できると考える。

  • 田平侑佳 , 藤井智 , 安川拓 , 中川淳一郎 , 山口綾菜
    p. 265-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
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    【目的】 今回、当診療所において、回復期に引き続き入院理学療法を実施した人の効果を再思し、若干の考察を加え報告する。

    【対象】 2014 年4 月からの2 年間に、在宅生活開始を目的に当診療所に入退院した人のうち、入院時より10m 歩行が可能であった脳卒中・片麻痺者12 名(男性9 名、女性3 名)を対象とした。平均年齢は51.7 歳、発症からの期間は約7 ヶ月で、Br.Stage の変化はなかった。

    【方法】 「膝伸展筋力」、「片脚立位時間」、「最大一歩距離」、「10m 歩行速度」、「6 分間歩行距離」、「サイドステップ」、「重心移動距離」および「歩行での移動範囲」を評価項目として、入院時と平均入院期間である2 ヶ月後を、倫理的承諾を得て、カルテより後方視的に調査した。

    【結果】 麻痺側先行「最大一歩距離」、「6 分間歩行距離」が100%、「10m 歩行速度」が92%、非麻痺側「片脚立位時間」、「サイドステップ」、「歩行での移動範囲」が91%、非麻痺側先行「最大一歩距離」が90%と改善した人の割合が9 割以上示す項目が多くあった。改善した人の割合が最も低い項目は、左右への「重心移動距離」の50%であった。歩行練習により、「交通機関利用」1 名、「屋外800m 以上」1 名、「屋外450m 以上800m 未満」3 名、「屋外450m

    未満」3 名、「屋内のみ」4 名であった人が、「交通機関利用」5 名、「屋外800m 以上」4 名、「屋外450m 以上800m

    未満」2 名、「屋内のみ」1 名と、11 名で歩行範囲が向上した。

    【考察とまとめ】 回復期に続く集中的な理学療法によって、立位・歩行に関連する評価項目が主となったが、随意性の変化がなくとも、身体機能の改善傾向が図られていた。対象者の背景として、家事や復職などの活動に向け、周辺環境の整備とともに、立位・歩行能力を底上げし、生活適応に向けた移動範囲の拡大が理学療法における大きな課題の一つだと考えられた。

  • 石井大輔 , 宇佐美祥子 , 阿部夏織
    p. 266-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
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    【はじめに】COPD 患者に対して理学療法だけではその効果が日常生活に反映されず再入院となる症例が少なくない。今回作業療法との協業にて病態に即した生活動作の習得により復職とQOL 向上に至った症例を経験したので報告する。

    【症例紹介】57 歳男性、身長166cm、体重48kg、BMI17.4、診断名:COPD、主訴:労作時呼吸困難、現病歴:平地歩行が10 分で限界となり入院、職業:自営業。

    【説明と同意】本症例には今回の発表の主旨を説明し同意を得た【経過】2 病日より理学・作業療法開始。初期は経鼻酸素(2.0L/min)で呼吸数:25 回/分、修正Borg スケール:安静時1/労作時7、6MD:210m、ADL:更衣、洗体、掃除、物品運搬でSpO2 90%以下、PR 100bpm 以上。7 病日までコンディショニングを実施。その後理学療法では21 病日まで筋力トレーニングと全身持久力運動、22 病日から復職への動作練習を実施。作業療法では8 病日より動作時の呼吸方法指導と日常生活動作の手順、方法の修正、15 病日より復職への動作練習を実施。29 病日に自宅退院、

    1 週間後に復職。退院時は経鼻酸素(1.0L/min)で呼吸数:15 回/分、6MD:450m、修正Borg スケール:安静時0/労作時3、ADL:更衣、洗体、掃除、物品運搬にてSpO2 95%以上、PR 100bpm 以下。

    【考察】COPD 患者は健常者より安静時エネルギー消費量が1.2~1.4 倍、呼吸筋エネルギー消費量が約10 倍とも言われている。本症例は理学療法による運動耐容能の改善が日常生活に活かされていなかった。その背景には病態を考慮していない日常生活の実態があった。今回作業療法との協業により運動耐容能の改善に加え、動作の手順や方法を見直し、日常生活におけるエネルギー消費量の軽減を図った事が復職とQOL の向上に至ったと考える。医療が病院から地域へ移行する中、地域医療の円滑化には再発予防の視点が重要と考える。COPD 患者に対する作業療法との協業は再発予防と地域医療の円滑化に寄与するものと考える。

  • 長渡英和 , 岩本久生 , 衣田翔 , 高橋優子 , 松谷春香 , 小島明大
    p. 267-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
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    【はじめに】先行研究にて脳卒中急性期治療後に自宅や回復期病院へ転帰する際の関連因子を明らかにした報告は多い。しかし、当院の脳卒中治療は病院完結型であり、転帰先が介護保険施設を含む場合もある。そこで本研究は当院での脳卒中急性期治療後の転帰先として介護保険施設を含め、その関連因子を明らかにする事を目的とした。

    【方法】対象は脳卒中患者で当院の急性期リハビリを実施した54 症例とした。方法は転帰先を自宅群・回復期群・施設群とし、身体機能、入院中の経過、患者背景からなる23 項目をカルテより後方視的に調査した。統計はχ<SUP>2</SUP>検定及び多重比較検定を用い3 群で比較し、有意水準は5%とした。χ<SUP>2</SUP>検定は調整済み残差より3 群の各項目に有意差が認められるかを調査した。倫理的配慮としてヘルシンキ宣言に則り診療録データの外部への使用許可を確認し同意を得た。

    【結果】χ<SUP>2</SUP>検定では身体機能、患者背景に有意差が認められた。多重比較検定では自宅群と回復期群では全項目に有意差が認められなかったが、身体機能、患者背景では回復期群と施設群、自宅群と施設群で有意差が認められる項目があった(p<0.05)。調整済み残差では自宅群と施設群に有意差のある項目が多かった。

    【考察】本研究では自宅群と回復期群では有意差が認められなかった。先行研究では自宅群と回復期群では身体機能で有意差が認められたと報告されている。これは当院回復期に転棟する対象者が比較的身体機能障害が少ない為、自宅群と回復期群で差がなかったと考えられる。また、本研究では自宅群と施設群では身体機能のみならず、患者背景にも各群に有意差のある項目が多かった。八木らの報告では、急性期病院での転帰先の関連因子では患者背景に有意差はみられなかったが、当院のような急性期病院でも転帰先が介護保険施設を含む場合は患者背景も考慮されることが分かった。

  • 岸本敬史 , 原田真二 , 大工廻賢太郎 , 平安名常宏 , 小金丸真司
    p. 268-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
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    【目的】近年、術後感染症の軽減や早期社会復帰を目的に低侵襲心臓手術(minimally invasive cardiac surgery、以下MICS)が普及しつつある。そこで今回、MICS による肋間小開胸法の特徴を明らかにするため、従来の正中開胸法と比較し検討した。

    【対象と方法】2015 年1 月から2016 年3 月の間に当院で単独の心拍動下冠動脈バイパス術を行った82 例中、緊急症例や透析患者、抜管遅延患者などを除外した64 例を対象とした。これらを、正中開胸群45 例(男女34:11、平均69.6±10.8 歳)、肋間小開胸群19 例(男女17:2、平均68.9±11.9 歳)に分け、性別、年齢、術前駆出率、バイパス本数、手術時間、麻酔時間、術中インアウトバランスとその体重率、抜管までの時間、リハビリ進行度、術後1 週間以内のWBC とCRP および体重変動率を比較した。なお、統計はMann-Whitney のU検定を用い、有意水準はp<

    0.05 とした。対象者には本研究の説明と同意を得た。

    【結果】正中開胸群と肋間小開胸群はそれぞれ麻酔時間(325.5±60min vs 385.9±92min)、術中インアウトバランスの体重率(104.6±1.8% vs 103.6±1.4%)、抜管までの時間(301.5±178min vs 424±245min)、20m 歩行実施日

    (1.13±0.4 日 vs 1.42±0.5 日)、術後1 週間以内のCRP(12.0±4.5mg/dl vs 15.0±4.2mg/dl)で有意差を認めた。

    【結論】肋間小開胸法は従来の正中開胸法に比べ、麻酔時間と挿管時間が長く、術後1 週間以内のCRP が高く、術中インアウトバランスの体重率は低く、20m歩行実施日は遅いという特徴が分かった。以上より肋間小開胸法は術後感染症の軽減や早期社会復帰などのメリットがある一方、上述したデメリットも存在するため適応症例を選択するべきであると考える。

  • 平山次彦 , 五十嵐祐介 , 中村智恵子 , 中山恭秀
    p. 269-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
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    【はじめに】我々は、第1報として自宅退院できている患者は家族協力有りの割合が有意に高かったことを報告している。また、第2 報でBarthel Index(BI)が40 点以上のもので転退院に影響する因子は、更衣と排便自制であることを指摘した。今回は独居者における入院前の生活自立度に着目し、年齢、BI、介入期間と転帰について比較したので報告する。

    【対象と方法】2014 年4 月から2015 年12 月までで依頼のあった廃用症候群患者のうち独居者18 名を対象とし、厚生労働省が定める障害高齢者の日常生活自立度からJ1 群とJ2 以下群にわけ、年齢、介入時BI、終了時BI、介入期間で比較した。統計手法はt 検定とMann-Whitney のU 検定を用いた。本研究は倫理委員会に申請し、同意が得られた患者についてのみを対象としている。

    【結果】独居者18 名中J1 が13 名、J2 が3 名、A2 が1 名、B1 が1 名であった。J1 群とJ2 以下群の比較では、年齢はJ1 群で78.5 歳、J2 以下群では84.2 歳で有意差はなく、介入時BI はJ1 群で67.3、J2 以下群では58.0 で有意差は無かったが、退院時BI ではJ1 群で98.9 点、J2 以下群では71.0 点で有意差を認めた。介入期間に有意差はなかった。

    【考察】独居者の入院前の活動性が退院時のADL にも大きく影響し、自宅退院を可能とする結果となった。J2 の3 名の退院時BI は、廃用症候群診断の水準となる85 点を超えておらず、基準以下では自宅退院ができていなかった。植松ら(2002)は、脳卒中患者においてトイレ動作が要介助かつ家族構成人数が2 人以下の場合は自宅退院が困難(自宅退院率21.7%)であり、年齢でも有意差がなかったことを報告している。年齢が関係しないことは我々の結果と一致している。つまり独居者では、J1 とJ2 が転機を分ける可能性がある。J2 群の指標である、近隣なら外出が可能というレベルでは、ギリギリで生活していたと推察され、退院後の自宅復帰を難しくさせる可能性が示唆された。

  • 佐藤祐 , 坂井亮太 , 出口亜衣 , 石田茂靖 , 荒川武士 , 松本直人
    p. 270-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
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    【目的】随意運動介助型電気刺激装置は、従来の電気刺激装置よりも周波数が低く、低電流で施行するために主観的不快感につながる危険性がある。本研究では、随意運動介助型電気刺激装置を用いて舌骨上筋群へ経皮的電気刺激を行う際の電流強度が主観的不快感におよぼす影響を検証することを目的とした。

    【方法】 対象は、健常成人10 名(平均年齢27.3±3.5 歳、BMI21.4.±2.3)とした。方法は、背臥位にて電気刺激

    (川村義肢社製MURO Solution)を行いながら、頭部反復挙上運動を30 回3 セット施行する課題と、頭部挙上位保持1 分を3 セット施行する課題の2 種類とした。電流強度は痛みなく耐えうる最大値とし、この電流値を計測した。刺激部位は、舌骨上縁から2cm 上縁、正中から2cm 外側とした。主観的不快感の評価として、施行後にアンケートを実施した。項目は、熱さ、痛み、痒み、吐気、眩暈、頭痛とし、4 段階(なし、ややあり、あり、強くあり)とした。客観的指標として、施行後に刺激部位の写真撮影を行い皮膚の状態を比較し、施行前後に血圧と1 分間の心拍数および呼吸数を計測した。血圧、心拍数、呼吸数において、実施前後の値を対応のあるt検定にて解析した。有意水準は5%とした。

    【説明と同意】 すべての被験候補者に対し研究内容を口頭にて説明し、同意を得られた場合のみ実施した。

    【結果】 電流強度は、両課題ともに最小値0.09±0.01mA、最大値0.18±0.02mA であった。アンケート結果は、両課題ともに不快感の訴えは認められなかった。両課題ともに、皮膚状態、血圧、心拍数に差はなかった。呼吸数に施行後の有意な増加を認めた。

    【結論】 両課題とも主観的不快感がなく施行することが可能であった。一方、両課題とも呼吸数の増加を認めた。これは息を止めて頭部挙上運動を行うためと考えられ、頭部挙上時に呼吸法を指導する必要性が示唆された。

  • 中島誠
    p. 271-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
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    【背景】臨床実習や新人教育におけるケースレポートの作成に際し、多くの学習者にとってハードルになっているのが、収集したケースの情報から障害構造を把握するための「統合と解釈」であろう。学んできた知識と技術を活用しても、ケースについて「考えられていなかった」ことが露呈してしまう場面である。ここで必要となるのはクリニカルリーズニング(臨床推論)の能力と考えられるが、その教育は臨床実習や卒後教育にゆだねられているのではないだろうか。理学療法教育ガイドライン第1 版に記載されたコア・カリキュラムでは、「リーズニング」はEBPT と同項目にされ、到達目標は「キーワード認識レベル」に過ぎない。臨床推論能力が不十分な者にとってケースレポートの作成は貴重な学習チャンスだが、実習の負担軽減を理由にケースレポートを課さない養成校も存在する。また、臨床推論の基礎となる論理的思考の教育として、高等学校では数学Iの「集合と論理」が該当すると考えられるが、入学試験に数学を課さない養成校も多く存在する。

    【目的】論理的思考を苦手とする理学療法士に対し、ある程度の助言・指導のもとに担当患者のケースレポートを完成させられる能力を育てる。

    【介入方法】 認知バイアスによる誤診について知る目的で「医者は現場でどう考えるか(ジェローム・グループマン)」を読んでもらい、論理的思考力を向上させる目的でNHK 高校講座「ロンリのちから」を視聴してもらう。対象者には説明と同意を得た。

    【結果】 介入前は初期評価開始からケースレポート完成まで11 カ月を要したが、介入後は別患者の初期評価開始からケースレポート完成まで5 カ月であった。

    【考察】障害構造をチャート(概念地図)化するには、まず基礎として因果関係を理解できる論理的思考力が必要となる。指導される理学療法士のレベルを把握して基礎に立ち戻り、能力に合った教材を利用したことが効果的であったと考える。

  • 根本敬
    p. 272-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
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    【はじめに】湘南鎌倉総合病院(以下、当院)では世界で最も厳しい基準を持つ医療施設評価機構であるJCI(Joint commission international)の認証を得ている.医療の質や安全性の担保と、この継続的・組織的な改善活動が求められるなか、2016 年度の新規的な取り組みとして「待ち時間のクレーム低減化」を掲げ、この遂行にあたり「AIDET」の導入を決定した.

    【目的】AIDET の考え方を紹介し、本邦の病院組織における患者満足度向上の一助とされたい.また実施上の問題にかかる、社会背景や医療文化に関しての提言を書き添える(本稿は当院倫理委員会の承認を得ている).

    【AIDET とは】1.概要 顧客サービスを生業基盤とする企業組織において職員の行動規範を示したもので、本邦では医療機関単位での体系的導入自体がほぼ皆無でありエビデンスは確立されていないが、国外では奏功例が報告されている.後述に表されるフレームワークを患者に提供することで尊敬を示すと共に信用を確立し、相互の臨床結果や満足度を向上させる手段である.2.内容と意義 頭文字AIDETは職員の患者応対法として、A → Acknowledge

    (挨拶・歓迎)、I → Introduce(自己紹介)、D → Duration(時間の説明)、E → Explanation(治療内容の説明)、T →Thank you(感謝)、を示す流れの遂行である.来院中に患者が感じる、治療への不安・待ち時間・医療者との関係等、しばしば曝されうる多面的ストレスへの緩和策として期待される.

    【提言】本邦での病院マネジメント問題のひとつは、職員に対する帰属意識教育の欠如、社会的評価やその公開が普及していないことである.片や国外の先進的組織は、より良い組織構築のために職員個々にマネジメントへ協力するインセンティブが働いている点には着眼すべきである.加えてAIDET の内容を日本文化に合ったコミュニケーションツールとしてアレンジする柔軟性が必要であることに論争の余地はない.

  • 前野里恵 , 井出篤嗣
    p. 273-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
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    【目的】当院は平成23 年夏から、小学4 年生~高校生を対象に、一日無料で医療職場体験企画を開催している。リハビリテーション部(以下、リハ部)は「リハビリテーションって何?どんな仕事をするの?」をテーマに企画参加したので、アンケート調査も含めて報告する。また、全ての参加者は、申し込みと同時に説明と同意が得られている。

    【方法】病院内の25 部門が時間ごとに区切られており、各個人が先着順に予約受付けをして、自由に医療専門職の講義や指導による体験学習ができる。リハ部は30 分枠に最大10 名を受付け、理学療法士2 名と作業療法士1 名が15分度に講義と実技を行った。理学療法では職種、器具の名称、使用方法とその注意点を説明してから平行棒、杖、歩行器、松葉杖歩行、車いす乗車と操作・介助方法を体験してもらった。

    【結果】全体の参加者313 名、見学者279 名合計592 名、リハ部門参加者は56 名とその小学生の保護者であった。

    様々な年齢に体験してもらったが、高校生の一部に将来の目的を持って参加する者がいた。アンケート調査は、リハ部の内容に対して40 名の回答があった。「とてもよかった」72.5%、「よかった」25.0%、「ふつう」2.5%であった。自由意見に普段体験することができない松葉杖や車いすがよかった、不自由な人の気持ちがわかったなどがあった。

    【考察】子供を対象にした医療職場体験の目標は、遊び心を混ぜ合わせた内容でありながら、病気、その予防や医療職に対する関心を持ってもらうことである。リハ部のアンケート結果はほとんどが好印象であり、体験を通して病気や高齢者・障害者に対する理解や思いやりの視点を持って頂けた。反省は、年代により知識や体格に差があるので、それらに応じた分かりやすい内容や表現を用い、器具は小児~大人用と人数分用意する必要があった。また、参加者が質問しやすいように、医療者側から疑問点の確認を行うことであった。

  • 竹内弥彦 , 薄直宏 , 田中康之
    p. 274-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
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    【はじめに】2014 年6 月に医療介護総合確保促進法が成立し、市町村が実施主体である介護予防・日常生活支援総合事業に「地域リハビリテーション活動支援事業」が位置づけられた。千葉県士会では2014 年度から県高齢者福祉課が主催する市町村の介護予防事業担当者とリハ専門職との意見交換会に協力するなど連携して取り組んでいる。2015 年度には、県内8 か所において意見交換会を実施したところであり、その状況と今後の課題について報告する。

    【方法】意見交換会は県高齢者福祉課が開催し、千葉県士会では地域包括ケア・介護予防推進リーダーを取得した会員を中心に参加者を募集した。意見交換会の内容は「地域リハ活動におけるリハ専門職の役割」「リハ専門職の協力を得るための課題」についてで、行政担当者とリハ専門職の混合によるグループワークを実施した。終了後、5 か所においてアンケートを実施した。

    【結果】参加者の内訳は行政担当者が市町村67 名、地域包括支援センター32 名であり、リハ専門職がPT91 名(うち、医療機関41 名)、OT20 名であった。5 か所で実施したアンケート結果を抜粋して記載する。行政担当者(50/69

    名) Q:リハ専門職と連携する際の連絡窓口や相談先を得ることはできたか A:できた78%,どちらともいえない18%であった。リハ専門職(68 /90 名) Q:一般介護予防事業における市町村との連携について具体的なイメージができるようになったか A:できた52.9%,どちらともいえない45.6%であった。

    【考察】リハ専門職へのアンケート結果において「市町村との連携について具体的なイメージができた」が53%に留まったことは、リハ専門職の多くが医療機関に勤務し、患者個人に対しての心身機能障害の改善に関わる機会が多いことが一つの要因と考えられる。今後、対象者の「地域における活動や参加」を意識した行政との連携がイメージできるように、研修会等を通じて県士会がサポートしていく必要性が伺われた。

  • 平林佳織
    p. 275-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
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    【はじめに】労働者健康状況調査から、仕事に関するストレスを抱える労働者は、約6 割以上であり「事業場において、より積極的に心の健康保持増進を図ることは、非常に重要な課題である」と労働安全衛生法に明記されている。

    当院リハビリテーション科(以下、リハ科)では、メンタルヘルスケアは行われていない現状であった。リハ科は、20 歳代から30 歳代の若年者が占め、経験不足から医療専門職としての期待に十分応えられないことから、ストレスを受けやすいと推測される。また、仕事と生活の調和がうまく図れず、自身のストレスに気づかない可能性もある。そこで、メンタルヘルスケアに関する認知度とストレスに関する実態調査を行い、その結果からメンタルヘルスケアの取り組みを実施した。尚、本研究において、倫理的配慮に考慮し調査を行った。

    【目的】メンタルヘルスケアの取り組みを通し、自身のストレス状態に気づき、セルフケアの必要性の認識がうまれること。職業性ストレス調査と職場環境改善への取り組みにより、働きやすい職場づくりを開始すること。

    【方法】対象者:リハ科内スタッフ48 名 調査方法:アンケート形式 期間:平成27 年6 月29 日~11 月12 日 内容:

    (1)メンタルヘルスケアに関する認知度調査、(2)職業性ストレス簡易調査票とリハ科内ストレス要因チェックリスト実施【結果】リハ科内において、メンタルヘルスケア認知は、84.9%が理解できていない状態であった。職業性ストレス簡易調査票から、仕事の質、身体負担の項目で、約70%が高ストレスを示す結果であった。そこで、メンタルヘルスケア教育とストレス軽減法指導、グループ討議を検討し、リハ科内でのメンタルヘルスケアの取り組みを実施した。結果、メンタルヘルスケアの必要性、継続を希望する割合は98%、職場改善の効果があったとする割合は96%であった。今後も継続した取り組みが必要であることが示唆された。

  • 柴田和彦 , 下瀬良太 , 星敏博 , 筒井俊行 , 深野綾一 , 清水忍 , 松永篤彦
    p. 276-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
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    【はじめに】膝蓋骨骨折術後に膝伸展筋力低下が長期に遷延していた症例を担当した。本症例は約30 年前に同側の大腿骨骨折を受傷し、それ以降、膝関節可動域制限が残存していた症例であった。今回、本症例に対する理学療法評価に際し、筋電図測定を取り入れ、筋力低下が遷延した理由を検討したので報告する。

    【対象】40 歳代男性。右膝蓋骨骨折を受傷しTension band wiring 法を施行した後、術後51 日で全荷重となり、術後

    116 日以降は外来にて理学療法を実施した。約30 年前に右大腿骨遠位部の粉砕骨折の受傷歴があり、その後、杖を使用せず歩行は自立していたが、今回の膝蓋骨骨折による入院前の膝屈曲可動域は90°であった。なお、本症例に関するデータの使用については院内規定に基づいて内容を十分に説明し書面にて同意を得た。

    【理学療法評価と処方内容】外来での理学療法開始日と終了日(術後148 日)の2時点において膝伸展0°位での等尺性収縮時の筋電図を大腿直筋より測定した。また、μTasF-1(anima 社)を用いて、膝屈曲60°位での等尺性膝伸展筋力を測定した。外来での理学療法の頻度は週2回とし、関節可動域練習、筋力トレーニング、および動作練習を実施した。

    【結果】2時点の筋電図測定結果、健側の二乗平均平方根(rmsEMG)は0.31mV から0.48mV、患側は0.14mV から

    0.15mV となった。また、健側の平均周波数(MPF)は64.7Hz から68.7Hz、患側は47.8Hz から46.6Hz となった。なお、等尺性膝伸展筋力は体重比で健側は41.7%から53.7%、患側は11.8%から13.1%となった。

    【考察】筋電図所見により、患側の膝伸展筋力低下の遷延は運動単位の動員数と発火頻度の著明な低下によるものと考えられた。本症例は、30 年前から今回の受傷部位と同側の膝関節の可動域制限を有していたことから、既に廃用性の筋力低下が生じていた可能性があり、今回の受傷による運動制限の重複が著明な筋活動の低下を引き起こしたと考えられた。

  • 小林章 , 村木貴洋 , 園尾萌香 , 久保田圭佑 , 村田健児 , 国分貴徳 , 金村尚彦
    p. 277-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
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    【はじめに】リバース型人工肩関節置換術(以下、RSA)は徐々に増加している。今回術後早期に自宅復帰後、訪問リハビリテーションにて介入し、術前後の3 次元動作解析を行う機会得たので報告する。

    【目的】RSA 術後のリハビリ介入によって生じた上肢の運動円滑性をNormlized Jerk(以下、NJ)により評価する【方法】動作課題:上肢前方リーチ動作を術前後、および右側上肢で実施使用機器:3 次元動作解析装置VICONNJ:FIN マーカー座標の3 階微分によりJerk を算出し、先行研究を参考に算出した。(平成28 年2 月14 日及び3 月30 日に計測)【症例紹介】・基本情報:60 歳代女性、専業主婦。主訴は左肩を動かすと痛い。・既往歴:リウマチ、右肩人工肩関節・診断:左肩亜脱臼、左肩腱板完全断裂・現病歴:平成27 年、A 病院にて人工骨頭挿入術後、8 月自宅退院、訪問リハビリテーション介入開始。平成28 年2 月上旬肩の痛みを訴え、平成28 年2 月18 日RSA 施行。平成

    28 年3 月1 日より訪問リハビリテーション再開。

    【理学療法評価】・ROM:[術前] 挙上(100°/175°)、[術後]挙上(140°/175°)・NJ(y 軸/z 軸方向):[術前] 左

    (98.5±11.2/125.8±37.1)、右(94.6±38.7/97.7±48.1)、[術後] 左(77.9±8.4/69.0±18.7)【考察】上肢運動のキネマティクス的理解は術後のリハビリに重要である。術後のNJ は低値を示し、特にz 軸方向への円滑性が改善した。これはRSA の力学的特性を反映していると考えられる。三角筋中部繊維のレバーアームは90°付近で最大になるとされ、同じ筋出力でもより大きなトルクが発生するためz 軸方向のNJ の低下につながったと考えられる。今後、上肢運動の円滑性を長期的な調査を行い、どのようなリハビリ介入が長期的な上肢機能の温存に有効なのかを明らかにする必要がある。

    【倫理に関する項目】症例には本研究の目的を説明したうえでご本人の同意を得ております。

  • 松井剛 , 加藤宗規
    p. 278-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
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    【目的】実習中のレポート課題ができず,実習施設に行くことができなくなった実習生に対する穴埋めレポートによる介入効果を検討した.

    【事例紹介】臨床実習中にレポート課題が困難で,実習施設に行くことができなくなり留年となった学生である.実習からの逃避は「レポート課題が困難であること」が原因であり,それによる度重なる強い注意指導が不安や緊張を引き起こし,さらに実習レポート課題の存在自体が不安や緊張を引き起こすように条件づけられたと推察し,それらに対する介入の必要性が考えられた.

    【介入方法】当院での課題レポートでは,評価は当院指定のルーチン評価のみとし,レポートのひな型は考察を含めて用意されており,評価結果や考察中の空欄を埋めること(穴埋め)により完成できるファイルが用意されている.そして,その日に指定した部分の穴埋めができた場合には称賛することとした.また,業務時間内にレポート作成時間を設け,レポート以外の課題は課さないこととした.そして,実習は絶対に不合格にはしないことを口頭で約束した. 【結果】評価開始から13 日間でレポートを作成することができた.10 日目には「業務時間内はレポート作成よりも患者を見たい」と自ら希望するようになり,その後レポートは自宅で作成することに変更したが,予定通りの進行で完成させることができた. 【考察】穴埋めレポートという介入によって難易度調整を行うことにより,適切な行動が強化され,学生と指導者とのポジティブな関わりが増え,成功体験を積み重ねることが可能となったと考えられた.また,これにより,レポート課題に条件づけられた不安や緊張が解消され,最終的には指導者と積極的に自ら関わるように行動が変容したと考えられた.

    【倫理的配慮,説明と同意】本研究は,当院生命倫理審査委員会の承認を得て実施し,対象者および家族に口頭及び書面で説明し許可を得た.

  • 富田博之 , 井田真人 , 鈴木公二 , 鈴木宏政
    p. 279-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
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    【はじめに】右足趾多発骨折の患者に対し入院初期より前足部免荷装具(以下:装具)を作製した。作製時期は完全免荷の指示であり、完全免荷での採型を選択したが、仮合わせ時荷重において装具の不適合が生じた。今回の結果より、今後の装具処方においての検討項目として本症例の傾向を捉え考察した。発表に際しヘルシンキ宣言に則り書面にて同意を得た。

    【装具処方の経過】80 代女性、右足趾多発骨折にて入院となる。翌日に装具を完全免荷にて採型し装具完成後、歩行練習を開始予定。装具はプラスチック製、Rigid type、足角5°、下腿前傾角20°、アウトソールを楔状型に作製し免荷時期は踵のみで荷重できるよう設定。仮合わせ時、荷重において、過度の前足部内反により母趾が脱落し不適合が生じた。

    【理学療法評価】(右/左)足関節背屈20°/20°、距骨下関節回内20°/20°、回外10°/20°、横足根関節は距骨下関節中間位にて15°/10°(前足部内反)、果部捻転10°/10°、Craig test15°/10°、Q-angle15°/20° 【結果】果部捻転の評価より両側とも果部捻転が欠如しており、横足根関節の可動域評価から両側とも前足部内反足を呈していた。

    【考察】装具処方において運動連鎖を考慮し、立位荷重採型が臨床的に行われる事があるが、本症例においては完全免荷時期であった。結果より果部捻転の評価は脛骨捻転の指標となり、果部捻転が欠如している場合、荷重では距骨下関節回内可動域が著しく制限するとされている。また横足根関節は隣接する距骨下関節と密接に関わっており、荷重での前足部内反に対する足底接地は距骨下関節回内によって補償されるが、本症例は果部捻転の評価からも荷重において距骨下関節回内が制限される事で、横足根関節回外の動きに伴い母趾が脱落したと考える。今回の装具処方を経験して、完全免荷時期の装具処方においても足部アライメントなどから荷重での運動連鎖の予測が必要であると感じた。

  • 上村朋美 , 加藤宗規
    p. 280-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
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    【目的】腰背痛により車椅子での離床時間が改善しない症例に対して入浴を用いた応用行動分析学的介入を行い,車椅子座位時間への影響を検討した.

    【方法】対象は,施設入所中に食物の窒息により救急搬送され,翌日に当院へ転院となった80 代女性.施設では車椅子使用.翌日よりベッドサイドでの理学療法を開始,8 病日目よりリハビリテーション室へ移行した.腰背部痛により車椅子での離床は最長10 分,食事はベッドアップ40°で介助だが痛みのため摂取量1/3 程度であった.また,15

    病日時点でも理学療法評価も実施困難であった.入院前の腰背痛はなく,腰背痛の原因は整形外科的にも特定困難であった.施設からの希望は,(できれば車椅子座位での)食事動作の自立であり,車椅子での離床が求められて

    いた.そこで,介入の変更として,理学療法中の会話で症例が強く望んでいた入浴を車椅子座位保持練習前に行い,それに引き続き車椅子座位を行い,終了後は介入変更前と同様に保持時間のフィードバックをした.座位保持時間の目標は90 分とし,乗車時間が延長した場合,90 分を達成した場合は職員で注目・称賛,翌日の入浴を約束

    した.疼痛により座位保持が困難と感じた場合,すぐに部屋に戻ることを約束した.介入効果は介入変更前の座位保持時間と比較した.本研究はヘルシンキ宣言に則り行い,内容を対象者と家族に書面で示し,同意を得た.また、当院の生命倫理審査委員会の承諾を得た.

    【結果】介入変更初日は40 分,7 日目には90 分に達した.保持時間延長,90 分達成率は10 日間で80%,1 日以外は40 分以上であった.介入変更2 日目からは食事動作が可能となった.

    【考察】入浴後に座位保持練習をすること,および座位保持時間の改善により次回も入浴をする約束を行うことが座位保持時間の延長に寄与したと考えられた.そして,保持時間の延長は食事動作の自立に般化したと考えられた.

  • 石井佑穂 , 水田宗達
    p. 281-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
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    【はじめに】生活環境と身体機能の変化により右坐骨部の褥瘡を繰り返した胸髄損傷者に対し褥瘡予防アプローチを行った一症例について報告する。

    【症例】20 代男性、H18 年に第6 胸髄損傷、外傷性くも膜下出血、右肘脱臼骨折を受傷し、対麻痺、高次脳機能障害を呈した。退院後無職であったが、その後就職し褥瘡再発を繰り返しH24 年9 月他病院で手術を受け完治せず翌年4 月に治療、シーティング目的に当センター転院。症例には口頭にて説明を行い書面で同意を得た。当センター倫理委員会にて承認を得た(H28-2)。

    【理学療法評価】FrankelA、ROM(R/L)肘関節伸展‐45°/0°、足関節背屈‐15°/‐15°(初期入院時0°/‐5°)。

    座クッションは特殊空気室構造使用。車椅子乗車姿勢は重心右偏倚、骨盤後傾、左回旋位、胸腰椎屈曲位。体圧は大腿部の接触がなく右坐骨部が高値。駆動時は左上肢リーチに右上肢を合わせるため体幹左回旋での代償と臀部の前方滑りあり。通勤は自走と電車を利用し片道60 分。

    【方法】背張りで腰部を支持し上部体幹伸展位で座位をとれるように調整した。クッションへの接触面積を増やすため座板での前座高調整、フットサポート高調整を行った。右上肢リーチに左上肢を合わせるように駆動方法指導を行った。体圧分布測定装置で体圧を測定し、臀部の前方滑りはシートと膝窩の距離で測定した。

    【結果】骨盤中間位の姿勢で座位保持ができ、体圧は大腿部の接触面積が増え坐骨部の圧が減少した。駆動時の前方滑りは調整前右1.0cm 左1.5cm、調整後左右0cm。褥瘡は治癒し退院後再発はない。

    【考察】退院後の生活変化により足関節背屈制限、座位姿勢の変化、屋外駆動時間の増加が起こり右坐骨部の褥瘡リスクが上昇した。適切な座位姿勢調整、体圧評価、駆動方法指導が褥瘡改善の一助となり、その後の褥瘡リスクの軽減につながったと考えられる。褥瘡予防には身体機能だけでなく生活、環境等の多面的視点が必要である。

  • 青柳法大 , 大久保智明
    p. 282-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
    会議録・要旨集 フリー

    【はじめに】当社は、外出困難な方への訪問美容やリテールサービスを担い、訪問リハビリテーション部門(以下、訪問リハ)を起ち上げると、併用される方も増加してきた。今回、保険外サービスの利用が訪問リハに好影響を与えた事例について報告する。

    【症例紹介】S 様、85 歳女性、左大腿骨頸部骨折後に回復期病院を経て、サービス付き高齢者向け住宅(以下、サ高住)に入居。介入時は、居室内ADL 自立が目標だったが、環境変化から自主練習表やヘルパー記録を破るなど不穏行動を認めた。そのため、できるADL は自立レベルも、ヘルパーを要した。しかし、結婚式のために訪問美容を利用後、『きれいになったでしょ』と次第に発言が変化し、以前から利用していた美容室へ通いたいと外出希望も聞かれた。現在では不穏行動も落ち着き、屋外杖歩行獲得という明確な目標ができた。I 様、81 歳女性、サ高住に入居。

    胆管炎で入院し廃用症候群に陥り、杖歩行獲得を目的に介入。歩行器歩行は可能だったが、しているADL は車いす介助であった。昔から買物が好きであり、リテールサービスを利用し、車いすでは商品が見づらいからと次第に歩行器歩行で買い物をするようになった。それが自信となり、食堂までの歩行器歩行は自立された。

    【考察】今回の症例は、環境変化や自信のなさから生活範囲を狭めていたと考えられる。しかし、外出や買い物をといった目的ができたことで訪問リハの取り組みやADL に好影響を及ぼしたと考えられる。訪問リハをされる方で特に施設入所中の方は、活動性が低い傾向にあり、当社のようなサービスを提供できることは、一つのきっかけとしてADL 向上に結び付きやすいと考えられる。ADL 向上を図るには専門職の連携のみならず、保険外サービスを提供、提案することも訪問リハには効果的であると考えられる。

    【倫理的配慮、説明と同意】報告にあたり、当社における倫理審査委員会の承認、ご利用者様の同意を得ている。

  • 渡邊雅恵
    p. 283-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
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    【目的】右片麻痺の男性が右膝蓋骨骨折にて手術施行し理学療法を行った。装具不適合のため反張膝で歩行を行っていたため再製作を行い良好な結果を得たので報告する。

    【方法】17 年前に脳出血後右片麻痺を呈した60 歳代男性。BRS 右上肢II 手指II 下肢III。受傷前は、日常生活はT 杖使用プラスチック型短下肢装具(以下AFO)を装着してすべて自立していた。今回、家の階段から落ち右膝蓋骨を骨折し当院で観血的整復固定術施行し理学療法を行った。歩行可能となったがAFO の足関節角度が15 度底屈位で歩行中反張膝を呈していた。また右下肢立脚期に右下肢荷重困難で体幹前傾右屈が著明だった。そこでAFO を製作し歩容改善のための理学療法を行った。

    【結果】装具は足関節5 度背屈位のAFO を製作した。理学療法では、歩行時体幹前傾右屈・右下肢荷重困難に対して体幹伸展(特に右側)や股関節伸展位での右下肢荷重の練習を施行。右下肢荷重時に大腿四頭筋の収縮が微弱だったのでスクワット、1 足1 段での階段練習など膝関節運動を伴った大腿四頭筋収縮練習を行った。その結果、体幹伸展位で右下肢荷重可能となり反張膝も軽減した歩行を獲得できた。

    【考察】慢性期の片麻痺者に対し理学療法を行うことで麻痺側の筋収縮が得られ歩容が改善できたことを確認できた。一番の問題点は日常生活や歩行が自立していたために17 年間理学療法士に関わることが全くなく装具も更生相談に行かず書類判定で行っていたことである。理学療法士が関わらなかったために装具の足関節角度が底屈位で反張膝を呈していても本人や家族は全く問題にしていなかった。長期間底屈位で歩行していたために今回は角度を変更するまでに留めた。3 年後には更生相談に行き、足関節遊動の装具の適応か判断してもらうよう本人・家族に説明した。

    【倫理的配慮、説明と同意】本症例および家族に本研究の趣旨と倫理的配慮について説明し、書面により同意を得た。

  • 田口雅大 , 山田友春 , 益永真理 , 山崎紗由利
    p. 284-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
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    【はじめに】今回、障害者総合支援法と介護保険法の各サービス間連携から在宅復帰を果たした一方で、疾病・介護予防への関わりが困難となった症例を経験した。本症例との関わりから、在宅チームでの連携における訪問リハビリテーション(以下、訪問リハ)の役割と利用者と目標共有することの重要性を学ぶ機会を得たためここに報告する。

    尚、今回の報告に際してご本人に口頭・書面にて同意を得た。

    【症例紹介】50 歳代男性。独居。要支援2。脳出血後遺症により右上下肢麻痺、失語症、全般性注意障害を呈している。Barthel index 95 点で入浴以外自立。移動は屋外歩行自立。病前は自給自足の生活、持家を自然園として開放するなど生活スタイルには強い拘りがあった。 【経過】 注意障害等から持家での生活は困難と判断され、村営アパートへ退院となったが、在宅復帰への希望が強く退院2 か月後に訪問リハ開始となる。多くのサービスが関わる中で、当初は連携を図ることが難しかったが、次第にチームとしてまとまった関わりが行えるようになり、訪問リハ開始5 か月後に在宅復帰することができた。また、友人等の協力から農業も再開された。しかし、在宅復帰後のサービス目標の変更や生活スタイルの再構築が進むにつれて服薬等に拒否がみられ、訪問リハでも予防的な介入が困難となった。 【考察】今回、連携に関して「訪問リハ=機能訓練」というイメージが他サービスにあり、当初は提案や意見が通り難かったが、継続して連携を働きかけたことで訪問リハへの専門性の理解につながった。また、“在宅復帰”というサービス全体で共有しやすい目標があったことで協働して自立支援を促す関わりが行えたと考える。一方で在宅復帰後、症例自身の主体性が強化され、元々の個性が取り戻されてきたこと。また、サービス主体の目標となり症例と目標共有できていなかったことが、結果として予防的な介入を難しくしてしまったと考える。

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