関東甲信越ブロック理学療法士学会
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第35回関東甲信越ブロック理学療法士学会
選択された号の論文の314件中151~200を表示しています
口述
  • 益子大希 , 阿部愛 , 石垣直輝
    p. 21-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
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    【目的】胸椎可動性の測定法はX 線やスパイナルマウスなどを用いた報告がある。本研究の目的は、より簡易的な方法による胸椎伸展可動性測定の信頼性を検討することである。

    【方法】 対象は、健常成人14 名(男性10 名、女性4 名、平均年齢27.7 歳)とした。測定課題は端坐位での伸展動作、腹臥位での伸展動作とした。測定方法はC7・Th12 棘突起と胸骨上端をマーキングした後、安静座位および腹臥位で脊柱の弯曲に一致させて自在曲線定規をあて、C7-Th12 棘突起間の距離(以下、C7-Th12 距離)を計測した。座位伸展は脊柱を最大伸展させ、腹臥位伸展は両手で支持した状態から臍が離れない範囲で脊柱を最大伸展させ、両課題の安静時と最大伸展時のC7-Th12 距離を自在曲線定規で計測した。座位伸展および腹臥位伸展は、安静時と脊柱伸展時のC7-Th12 距離の差を求めた。加えて腹臥位伸展では最大伸展時の床から胸骨上端の距離をテープメジャーにて計測した。各課題は理学療法士2 名(検者A・B)が行い、測定順は抽選で決定し、互いの測定値を知らせず同一日に実施した。各3 項目において、3 回の測定値の平均値を計測値とした。統計学的処理にはSPSS を用い、日間の検者内の再現性と検者A・B の検者間の再現性を級内相関係数(ICC)で求めた(有意水準

    5%)。本研究は当院倫理委員会の承認を得て行った。

    【結果】 検者内信頼性は、級内相関係数(ICC1,2)が座位伸展で0.75(p=0.00)、胸骨-床距離は0.96(p=0.00)であった。検者間信頼性は、級内相関係数(ICC2,1)が座位伸展で0.85(p=0.00)、胸骨-床距離は0.89(p=0.00)であった。腹臥位伸展は検者内信頼性、検者間信頼性ともに有意な相関が得られなかった(p=0.53, 0.41)。

    【考察】 3 項目の中で胸骨-床距離測定で最も高い信頼性が得られた。胸骨の触知は比較的容易であるため、再現性が得られ易いと考える。本結果から、簡便な方法で胸椎伸展可動性の評価が行えることが示唆された。

  • 大山隆人 , 杉浦史郎 , 志賀哲夫 , 石崎亨 , 木村安見 , 大槻哲也 , 古手礼子 , 渡辺純子 , 武田大輝 , 堤梨奈 , 冨沢 ...
    p. 22-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
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    【目的】成長期腰椎分離症は、若年性腰痛患者の中に多く存在するが、早期診断にはMRI が必要であるため病院を受診しなければ診断は難しい。腰痛を発症しても病院を受診しない場合、成長期腰椎分離症が見逃されている可能性が考えられる。本研究の目的は学校保健やスポーツの現場における、我々が開発した自己記入式腰痛問診票の、成長期腰椎分離症スクリーニングとしての有用性を調査することである。

    【方法】腰痛を主訴として来院した若年性腰痛患者(10-17 歳)145 例に対し、問診票を実施した。その内、発症後1ヶ月以内の急性腰痛で、MRI を施行した69 例を、成長期腰椎分離症を認めた群(成長期腰椎分離群)と認めなかった群(非分離群)に分類した。問診票は、年齢・性別・運動頻度(日数・時間)・疼痛(強度・状況・表現・動作・部位・範囲) を、各設問2~4 項目の選択式で、患者本人による自己記入にて調査した。2 群の問診票の回答を、過去の報告から成長期腰椎分離症である可能性が高い選択肢を高得点として順序付けし、採点した。そしてROC 分析を施行し、cutoff 値、Area Under the Curve(以下AUC)、陽性的中率、陰性的中率を算出した。

    【説明と同意】本研究はヘルシンキ宣言に沿った研究であり、対象者に倫理的配慮を行った。

    【成績】MRI の結果、成長期腰椎分離群24 例(男性21 例、女性3 例、平均年齢13.92±1.81 歳)、非分離群45 例

    (男性28 例、女性17 例、平均年齢14.55±1.90 歳)であった。ROC 曲線からcutoff 値12 点(陽性的中率60.9%・陰性的中率78.3%)が算出され、AUC=0.731 と中等度の信頼性が得られた。14 点以上が最も陽性的中率が高く

    85.7%、9 点以下が最も陰性的中率が高く83.3%であった。

    【結論】本研究の結果より、学校保健やスポーツの現場で腰痛発症の若年者に問診票を実施してもらうことは、成長期腰椎分離症のスクリーニングとして有用であると考えられた。

  • 望月裕太 , 田原直裕 , 渡辺裕之
    p. 23-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
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    【目的】腰椎分離症は治療経過中にMRI,CT などの画像検査が用いられる.しかし,これらの画像検査には高額医療費や放射線被ばく等の問題が挙げられため,診断を補助する簡易的な骨癒合判別方法の確立は有用であると考えられる. 本研究は腰椎骨叩打による振動検査法が,腰椎分離症の骨癒合の判別に有用であるか検証することを目的とした.

    【方法】第5 腰椎模擬骨を用いて正常モデル,腰椎分離症モデル,癒合モデルを作製した.振動信号の測定は,小型加速度変換器を取り付けたハンマーを用いて叩打する方法とした.測定した振動信号から,平均パワー周波数,第一最小周波数,低周波数成分と高周波数成分の積分値の相対比を算出し,各指標を,正常モデル,腰椎分離症モデル,癒合モデル間で一元配置分散分析により比較した.事後検定にTukey の多重比較を用いた.なお,本研究は人工材料を用いた生体のモデル実験であるため,倫理的配慮に関しては実施しなかった.

    【結果】 平均パワー周波数は正常モデルが266.8Hz±1.4,腰椎分離症モデルが356.1Hz±8.4,癒合モデルが

    258.7Hz±3.5 であり,腰椎分離症モデルは他のモデルと比較して有意に増加した.一方,第一最小周波数は,正常モデルが44.5Hz±1.0,腰椎分離症モデルが18.8Hz±1.3,癒合モデルが55.8±1.0 であり,腰椎分離症モデルは他のモデルと比較して有意に低下した.さらに,正常モデルと癒合モデル間においても有意差が見られた.相対比は,正常モデルが7.8±0.5,腰椎分離症モデルが2.0±0.1,癒合モデルが11.3±0.2 となり,腰椎分離症モデルは他のモデルと比較して有意に低下した.

    【結論】腰椎骨叩打による振動検査法は,正常モデルと腰椎分離症モデル,および腰椎分離症モデルと癒合モデル間の判別が可能であることから,腰椎分離症の骨癒合の判別に有用であると考えられた.

  • 大槻哲也 , 杉浦史郎 , 豊岡毅 , 志賀哲夫 , 大山隆人 , 石崎亨 , 古手礼子 , 西川悟
    p. 24-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
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    【目的】 臨床上、若年性スポーツ選手の腰殿部痛の疼痛部位と範囲は、疾患により異なることを経験する。本研究は仙骨疲労骨折と成長期腰椎分離症の疼痛部位と範囲に違いがあるかを検討し、若干の知見を得たので報告する。

    【方法】 対象は2014 年9 月から2015 年3 月に腰殿部痛を有して当院を受診した10 歳から18 歳の若年性スポーツ選手で、MRI にて仙骨疲労骨折と診断された6 名(男4 名、女2 名、右2 例、左4 例)、片側の成長期腰椎分離症と診断された8 名(男8 名、L4 右1 例左2 例、L5 右1 例左4 例)とした。尚、両側、多椎間の成長期腰椎分離症は除外した。診療録より両疾患の疼痛部位(ヤコビー線より上か下か線上か)と範囲(指先範囲か手の平範囲か)を調査し、比較検討した。統計処理にはFisher の直接確率検定を用いて危険率5%にて検討を行った。本研究はヘルシンキ宣言に沿った研究であり、対象者が判別できないよう倫理的配慮を行った。

    【結果】 仙骨疲労骨折の疼痛部位はヤコビー線より下5 例(83.3%)、線上1 例(16.7%)であった。一方、成長期腰椎分離症ではL4 は全例(100%)が上を示し、L5 では上1 例(20%)、下2 例(40%)、線上2 例(40%)であり、両疾患の疼痛部位に有意差(p<0.01)を認めた。仙骨疲労骨折の疼痛範囲は指先1 例(16.7%)、手の平5 例(83.3%)であった。成長期腰椎分離症は指先7 例(87.5%)、手の平1 例(12.5%)となり、有意差(p<0.05)を認めた。

    【考察】 若年スポーツ選手の疼痛部位は仙骨疲労骨折ではヤコビー線より下、L4 の片側性成長期腰椎分離症ではヤコビー線より上を示す傾向が認められた。疼痛範囲は仙骨疲労骨折で広く、片側の成長期腰椎分離症では狭い範囲を示す傾向が認められた。

  • 猪狩寛城
    p. 25-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
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    【目的】ボート競技選手の傷害として腰痛が多い。一般的にスポーツ選手の腰痛に関する報告において体幹筋力との関連性があると報告されているが、高校生ボート競技選手においてはそのような報告は見られない。本研究の目的は、スポーツ現場で高校生ボート競技選手の腰痛と体幹筋力の関連性を調べる事である。

    【方法】対象は県大会に出場する高校生ボート競技選手1~3 年生男女42 名(男性26 名、女性16 名)であり、口頭にて腰痛の有無を確認した。腰痛の有無で腰痛(有)群、過去(有)群、無し群の三群に分類した。各群に対して徒手筋力測定評価器MICROFET(日本メディックス社製)を用いて体幹屈曲・伸展筋力、股関節屈曲筋力を測定し、体幹伸展筋力/体幹屈曲筋力(以下E/F 比)を算出し、3 群間で比較した。また、それぞれの筋力値を体重で除した値を算出し、3 群間で比較した。統計学的解析は3 群間の測定項目に対しクリスカルウォーリス順位検定を行い、有意差がある場合にはボンフェローニ補正マンホイットニー検定を実施し、有意水準は5%とした。

    【倫理的配慮】ヘルシンキ宣言に則り、選手には研究の趣旨を書面と口頭で説明・確認をした上で参加に同意を得た。

    【結果】腰痛(有)群12 名(男性6 名、女性6 名)、過去(有)群12 名(男性8 名、女性4 名)、無し群18 名(男性12

    名、女性6 名)となり、腰痛(有)の割合は28.6%となった。全ての測定項目において各群間で有意差は無かった。

    【考察】本研究の結果、高校生ボート競技選手の腰痛に関してE/F 比や体幹筋力は関与しない可能性が示唆された。これはボート競技において、腹筋群・背筋群の筋バランスや体幹筋力よりもフォーム不良等のスキルの問題が腰痛に関与している、または瞬発的な筋力ではなく筋持久力の低下が腰痛に影響を与えているためではないかと推測された。今後更なる検討により明らかになると考えられた。

  • 金子真人 , 東福寺規義
    p. 26-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
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    【初めに】 陳旧性心筋梗塞に対し冠動脈バイパス術施行後、抗不整脈薬であるアミオダロンの副作用により間質性肺炎を呈し、心不全が悪化した症例を担当した。介入当初はアミオダロン中止により不整脈が頻発し、循環動態が不安定だった。循環動態に配慮した運動負荷量の調整や環境設定を行い、自宅退院へ至った経過を報告する。発表に際し、患者から同意を得た。

    【介入】 当初は低心機能(EF30%)に加え起立性低血圧を認めており、離床に時間を要した。介入X+11 日目には車椅子乗車時に収縮期血圧90mmHg 以上を保持でき、リハビリ室にてADL 訓練を開始した。階段昇降訓練まで可能となったが、X+22 日目に運動時のshort run や息切れ等の自覚症状を認めるようになった。X+24 日目に肺炎及び心不全が再燃し訓練中止となる。X+26 日目に訓練再開したが、起居動作や歩行時にshort run や四段脈を認めた。そのため、医師とバイタルに関する中止基準を再設定し、動作時の負荷量軽減に着目する事とした。運動耐容能向上を目的に、四肢筋力強化訓練を看護師と連携して実施した。また、起居動作においてベッドの高さ等の環境設定を行い、動作負荷量の再調整を行った。訓練時に不整脈が出現する場面を患者にフィードバックし、活動限界を把握しながら訓練を進めた。

    【結果】 安静時及び運動時の不整脈の出現頻度が減少した。循環動態が安定し、訓練時の耐久性が向上した。4 点杖歩行、両手すり使用での20cm 段差昇降等が可能となったが、20m 以上の歩行や階段昇降時にNSVT を認めていた。屋内ADL において不整脈の出現なく杖歩行自立を獲得し、X+63 日目に自宅退院へ至った。

    【考察】 筋力強化により運動耐容能向上を図り、動作時負荷量の調整を患者に対してフィードバックした結果、心不全の増悪なく自宅退院へと至った。今後の課題としては、自宅での環境調整について検討が必要だと考える。

  • 上杉睦 , 高橋茉也
    p. 27-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
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    【目的】維持期血液透析患者(以下HD 患者)では適切なドライウェイト(以下DW)の設定が重要であり,生活上の注意点としては水分,栄養管理が必要である.また,近年HD 患者における運動療法は体力の向上や血液データ改善に効果的であることが明らかとなっている.本研究では当施設入所のHD 患者に対し運動療法,水分,栄養管理を主としたリハビリ入所を実施したところ,適切なDW で肥満の改善およびGA 値が改善した症例を経験したので報告する.

    【方法】対象はHD 患者80 歳代,女性,透析歴2 年.運動療法では理学療法を週3 日実施,内容はマシントレーニング,歩行運動,階段昇降を実施した.また,介護士の付き添いで下肢筋力強化運動,歩行運動を週7日実施した.栄養管理では管理栄養士による栄養評価により管理された透析食を提供した.測定項目は入所期間中のDW,心胸郭比(CTR),およびGA 値等の血液検査値を入所時から1ヶ月ごとに調査した.個人情報の取り扱いは臨床研究に関する倫理指針を順守した.

    【結果】以下,結果を入所時,3 ヶ月後,6 ヶ月後,9 ヶ月後の順に記す.DW(kg)は67.5,64.0,62.0,59.0 であった. CTR(%)は63.5,59.0,64.2,64.3 であった.GA 値(%)は17.4,18.8,17.0,15.8 であった.また,BMI は入所時28.8

    から9 ヶ月後は25.2 となった.

    【考察】本研究の結果よりCTR は変化無くDW が8.5Kg 減少した.また,他の血液検査結果に大きな変化は無く,GA 値が改善する結果が得られた.この結果は透析療法を継続しながら,施設入所による水分,栄養管理,運動療法を継続して実施した効果が考えられる.多職種の専門職による包括的なケアの実施はHD 患者に対して効果的で

    ある.

    【まとめ】HD 患者に対するリハビリ入所により適切なDW 設定や血液データの改善効果が得られる.

  • 奥出聡 , 濱田賢二 , 伊藤卓 , 平川淳一 , 林光俊 , 河合伸
    p. 28-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
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    【目的】肺腺癌の腰椎・骨盤への多発骨転移による病的骨折のリスクに対し前医で高度のADL 制限を受けた統合失調症患者の理学療法を経験した。精神科での癌治療及び理学療法実施にて大幅なADL の改善ができた為、ここに報告する。

    【症例紹介】10 歳代中頃より精神科通院歴のある妄想型統合失調症の60 歳代男性。

    【倫理】患者本人の了承と当院倫理委員会の承諾を得た。

    【経過】X 年に著明な腰痛で歩行困難となり当院入院。整形外科医診察の結果、腰椎・骨盤の腫瘍性病変を指摘。

    数日後、他院へ転院し左肺腺癌・転移性骨腫瘍の診断となる。原発巣に対する積極的治療の適応なしの判断と腰椎・骨盤の病的骨折の強い懸念ありギャッジアップ60°までの安静度となる。転移巣に対する30Gy/10Fr の放射線治療と体幹硬性コルセット作製後、22 日後に当院再入院となる。入院10 日後よりリハ開始。初期評価はEastern Cooperative Oncology Group (ECOG) Performance Status Scale(以下PS) 3、Karnofsky Performance Scale(以下KPS)40%、B.I30 点、股関節・膝関節に軽度のROM 制限、両下肢に運動時痛及びL3・L4 領域に不全麻痺、L1 以下に痺れを伴う異常感覚と中等度鈍麻あり。当院にて経口抗がん剤使用を開始し、この奏功により転移巣の融解像は骨化改善し入院171 日目には軟性コルセットへ移行する。入院179 日目には足部に軽度の感覚障害は残存したがPS1・KPS70%・B.I95 点に改善。その後は自主練習を中心に継続し、入院420 日目にグループホームへ退院する。

    【考察】患者がより高いbenefit を得る為に、当院の各科が専門性を活かして協業しながら必要最大限の治療提供をしたことにより、患者は前医で高度のADL 制限を受けていたが大幅なADL の改善を果たすことができたと考える。

    そして、治療者として患者が重篤な状況にあっても患者の希望を尊重しながら、最大限人間らしく生きるための選択枝を共に模索していくことの重要性を改めて学んだ。

  • 細谷学史 , 高木敏之 , 佐藤大 , 高橋秀寿 , 牧田茂 , 前田智也
    p. 29-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
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    【はじめに】白血病患者の根治治療として行われる造血幹細胞移植(移植)では抗がん剤や放射線照射等の影響により,ADL の制限や臥床状態が長期にわたることから全身の筋力や運動耐容能が低下を来しやすい.移植に使われる造血幹細胞の供給源と細胞数には限りがあるため,体重増加が供給源や生着率の減少を引き起こすと言われている.今回肥満により減量が必要とされ,移植前から理学療法(PT)の開始とリスク管理を図り,移植実施後に自宅退院に至った症例を報告する.

    【理学療法経過】対象は30 代男性,身長174.5cm,体重99.8kg,BMI32.6.急性前骨髄球性白血病の再々再発を来たし,移植目的に入院.入院当初からPT 介入までは全身状態が安定せず,第83 病日からPT 開始.移植に向けて体重70kg 以下を目標とした減量及び運動耐容能や両下肢筋力の維持・改善を目的に介入.当初は病棟内での筋力強化や歩行練習を中心に実施した.第112 病日リハビリ室にて有酸素運動,筋力強化練習を開始した.第

    133 病日に心肺運動負荷試験(CPX)と両下肢筋力の測定を実施した.最大酸素摂取量(PeakVO2)は18.8

    ml/kg/min,無酸素性作業閾値(AT)は10.8 ml/kg/min であった.両下肢筋力は左/右:1.55 /1.56N・m/kg であった.その後の練習はAT レベルでの有酸素運動を1 回30 分,週5 回行った.第250 病日に体重が67.1kg(摂取エネルギー量:850kcal/day)となり,臍帯血移植を施行.移植後は室内にてPT を継続し,第313 病日以降はリハビリ室にてPT を再開し第353 病日に自宅退院.自宅退院前のPeakVO2/AT は22.5/11.6 ml/kg/min,両下肢筋力は

    1.92 /1.95 N・m/kg であった.なお,本報告については患者に十分に説明し,同意を得た.

    【考察】造血幹細胞移植患者に対して理学療法士が移植前後の有害事象に留意しつつ,運動療法を行うことで減量中及び移植後であっても下肢筋力と運動耐容能の低下を抑え,速やかな自宅退院が可能となった.

  • 深田亮 , 古川誠一郎 , 黒岩良太 , 天田裕子 , 村田淳
    p. 30-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
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    【目的】 大腿神経麻痺は膝折れによる転倒の危険性は大きく,歩行を含めたADL に及ぼす影響は少なくない.今回,後腹膜腫瘍(右腸骨筋)摘出に際し右大腿神経切除された完全麻痺症例に対し, Closed Kinetic Chain(CKC)を中心に理学療法を実施し,最終的に復職を達成した症例を経験したので報告する. 本報告についてはヘルシンキ宣言に基づき本人に説明と同意を得ている.

    【方法】 症例は後腹膜脂肪肉腫術後,腸骨筋内再発の70 歳男性.独居で職業は農家,最終的には復職が希望であ

    った. X-2 年2 月,後腹膜腫瘍摘出術施行.X 年9 月,再発のため後腹膜腫瘍摘出術施行され同時に右大腿神経及び小腸部分切除施行.術前理学療法時における右腸腰筋はMMT3,右大腿神経支配領域の筋はMMT2-3, 30 秒間椅子立ち上がりテスト(CS-30)は14 回,歩行は独歩自立で10m 歩行は7.81 秒,階段昇降・ADL は自立であった.術後,右腸腰筋及び右大腿・閉鎖神経支配領域の筋力はMMT0 と悪化した.手術所見より,右大腿神経支配領域の筋力回復は困難と考え,術後理学療法では右大腿神経支配領域の筋を補償する目的で, 大殿筋と下腿三頭筋の協同収縮による股関節伸展と足関節底屈, 筋の特異性によるハムストリングスの股関節伸展・膝関節伸展の促通をCKC 中心に行った.

    【結果】術後5 週におけるCS-30 は9 回, 歩行は屋内Pickup 歩行車にて自立,屋外は独歩で軽介助,10m 歩行は

    23.5 秒,階段昇降は手すり把持にて監視,ADL は清拭以外自立であった.X 年10 月,他院転院を経て,X 年11 月にT 字杖歩行にて自宅退院となり,X+1 年2 月復職に至る.

    【結論】 膝関節自動伸展が不能であっても膝関節の動的安定性を高めた要因として,以下3 点を考えた. 上半身のバランス能力が比較的保たれていた.大殿筋による大腿骨の後方牽引と下腿三頭筋により下腿骨の後方牽引に加え,ハムストリングスと大腿筋膜張筋が補助的に作用した.大腿直筋が股関節伸展により伸張され,膝関節伸展となるtenodesis 効果があった.

  • 高岩伸好
    p. 31-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
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    目的 当院では過去3年間、脳卒中患者重介助者に対して長下肢装具による起立運動と歩行練習を実施してきた。

    認知FIM 高得点群と低得点群の脳卒中患者重介助者で長下肢装具を使用して回復した症例を紹介するとともに、過去3年間のユニット内での長下肢装具治療とFIM の関連性を確認し、診療報酬改正後のユニット運営を考察していく。

    方法 過去3年間における当院回復期病棟に入院された脳卒中患者で運動・認知FIM 高得点群と同FIM 低得点群をそれぞれ長下肢装具装着群・非装着群に分けた。そして、それぞれのFIM 効率とFIM 利得を比較した。

    結果 運動FIM 低得点群の長下肢装具装着群と非装着群にFIM 利得に差が出たが、FIM 効率には差はなかった。

    また、認知FIM 高得点群の長下肢装具装着群と非装着群のFIM 利得には大きな差はなかった。

    考察過去3年間に渡る回復期病棟2C ユニット内での検証結果である。治療用の長下肢装具使用により運動FIM は上昇し脳卒中重介助患者に対する有効性がある。しかし、入院期間の長短には大きな差はなく背景に他の要因があると伺える。今後も継続した調査が必要である。さらに、認知FIM 高得点群に関しては、長下肢装具装着の有無がFIM 利得に大きな影響はなかった為、入院時の認知FIM の得点が早期の装具療法の導入の指標になると示唆された。

  • 坂井麻人 , 秦和文 , 棚谷祐昌 , 奥野美咲 , 足立恵梨 , 齊藤雄大 , 柳沼利弥 , 坂本洋介 , 谷島弥生 , 朝日美佳 , 佐 ...
    p. 32-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
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    【はじめに】渓流釣りは、男性の余暇活動の潜在需要として高く、年齢層も比較的幅広い。当症例は、小脳出血により失調症状を呈していたが、入院時から渓流釣りへの復帰の要望が著しく強かった。その為、早期より目標設定を高くして望んだ症例であり、良好な経過を得たため報告する。

    【倫理的配慮】発表に際し本症例には主旨を説明し了承を得ている。

    【症例紹介】60 歳代、男性。診断名、小脳出血。既往として右大腿骨頸部骨折、高血圧、糖尿病。前医にて保存加療のうえ、発症22 病日目に、リハビリテーション加療目的に当院へ入院された。

    【経過および治療内容】入院時、体幹を含めた左上下肢優位の小脳性失調症状を認め、移乗及び平行棒内歩行は軽介助を要した。入院後6 病日目には移乗及びトイレ動作自立、入院後19 病日目には病棟内独歩自立へと移行した。当初から希望されていた渓流釣りへの参加を目的に、腹斜筋、腹横筋を含めた体幹筋の促通とタンデムゲートなどのバランス練習を行った。支持基底面や床反力を変化させて、徐々にバランス練習の難易度を上げていった。入院後52 病日目には、縁石や車止めブロックの上を渡るなど、多様な環境下での屋外歩行が可能となった。入院後

    62 病日目には試験外泊を実施し、自宅近くの川原での歩行も可能となった。入院後、70 病日目、自宅退院。

    【考察】本症例は、体幹を含めた左上下肢優位の失調症状を呈しており、コアコントロールに着目し、腹部の求心性収縮と背部の遠心性収縮の協調性を高めた。中枢部のコントロールが向上することで、上下肢の失調症状の軽減を期待した。また視覚の代償を含めたフィードフォワードを利用し、多様なバランス練習を実施したことにより、動揺の中での自己調整を促し、中枢神経系での再調整を確立した。今回、患者の生き甲斐である余暇活動が、今後の地域コミュニティへの能動的な社会参加を促すと考えられる。

  • 渡部真由 , 高橋良太 , 池谷聡毅 , 橋爪義隆
    p. 33-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
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    【はじめに】脳卒中患者の歩行は課題の難易度から非麻痺側の過剰努力が生じる等,検討の余地が残る.今回,動作時過剰努力により介助量増加を呈す症例を担当し免荷式リフト(以下POPO)を用いた運動学習にて良好な結果が得られた為報告する.本人・家族に趣旨説明を行い同意を得た.

    【症例紹介】80 歳代女性.診断名は左橋梗塞.発症後54 病日に当院入院.BRS 右上下肢I だが股関節の随意性をわずかながら認めた.MMT 左上下肢4.注意障害・脱抑制を認めた.立位中等度介助.ADL 全介助でFIM44 点.動作全般に非麻痺側上下肢の過剰努力が生じ,麻痺側下肢の立脚は膝折れ,振り出しは困難であった為,手すりを使用したステップは全介助.

    【介入のきっかけ】股関節・骨盤・胸郭が鉛直線上に位置するよう徒手的に胸郭を把持,免荷する事で過剰努力軽減,遊脚の協力動作が出現.上記よりPOPO を使用し姿勢を鉛直線上に保持し残存する下肢支持性範囲内まで免荷する事で,過剰努力を軽減した上で麻痺側の振り出しが促せると仮説.

    【介入】全体重の75%免荷にて過剰努力・膝折れ消失,遊脚の協力動作出現を認めた事から75%免荷から歩行練習を開始.麻痺側下肢の振り出しや支持性,過剰努力の程度で免荷量を調整.介入2 週間後21%免荷にて上記反応が良好となり,杖歩行へ移行.

    【結果】介入1 週間後,立位保持最小介助,排泄は2 人介助にて可能.介入3 週間後,BRS 右下肢II,移乗最小介助,排泄は1 人介助にて可能,FIM55 点.介入5 週間後,BRS 右下肢III,杖歩行最小介助,FIM61 点.

    【考察】POPO により姿勢アライメントを鉛直線上に保持し,症例の残存能力範囲内で段階的に荷重量を調整する事で非麻痺側の過剰努力を伴わず麻痺側の随意運動を促す事が可能であったと考える.また再現性の高い介入を反復した事が高次脳機能障害を呈した症例に対して能動的な運動学習に繋がったと考える.非麻痺側の過剰努力や高次脳機能障害を呈した症例に対しPOPO による歩行練習の導入が有効であると考える.

  • 藤沢遼 , 田中直樹 , 金森毅繁
    p. 34-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
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    【はじめに】 既往の脳梗塞による下腿三頭筋の痙性によりADL が制限されていた症例に対する電気刺激療法を経験したので若干の考察を加えて報告する.

    【症例紹介】 80 歳代女性.2014 年9 月急性膵炎の診断で当院入院.同12 月療養棟転棟.2015 年5 月下旬に当院併設の老人保健施設に入所.既往歴は右脳梗塞,左大腿骨頸部骨折.入所1 日目に理学療法開始.入所8 日目より演者担当.発表にあたり本人・家族に口頭で説明し同意を得た.

    【入所8 日目評価】運動麻痺はBrunnstrom Recovery Stage にて左上肢ll-手指ll-下肢lll.関節可動域(右/左;°) は足関節背屈5/-5°.筋力は右上肢4・下肢3,体幹3.下腿三頭筋の筋緊張はModified Ashworth Scale(MAS)2.ADL では,移乗は手すり把持で見守り.ADL の排泄動作は左立脚時踵接地を認めず把持なしでの立位保持ができず下衣更衣全介助.

    【経過】 入所70 日目までは関節可動域練習,ADL 練習を実施し,左足関節背屈0°と改善を認めたが,移乗はステッピングが不十分のため見守り,ADL の排泄動作は下衣更衣全介助と改善を認めなかった.入所70 日目より電気刺激療法を追加.入所73 日目に左足関節背屈10°,MAS1+と改善を認め,基本動作はステッピングを十分に認め移乗自立となった.入所94 日目に左足関節背屈15°,MAS1+とROM の改善を認め,排泄動作見守りとなった.入所148 日目にMAS1,立位での下衣操作が可能となり,排泄動作自立レベルとなった.

    【考察】本症例において,電気刺激療法を加えることにより排泄動作に改善が認められた.これは電気刺激により痙性が改善し,踵接地での立位が可能となり,安定した立位動作が可能となったことが考えられた.このことから,維持期脳卒中患者の痙性治療に対する電気刺激療法重要性を再確認した.

  • 谷津信乃
    p. 35-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
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    【はじめに】小脳梗塞により右片麻痺と四肢の運動失調を認める患者に対し, 軽介助下での歩行練習をおこなって

    いた. しかし, 従来の歩行練習では転倒防止のため介助者が支え過ぎ, 自身のバランスを崩す状況に対する姿勢制御反応の出現を妨げていた. そこで今回, モリトー社製レール走行式追随型免荷リフト(SS-100)を使用し, 歩行不安定性改善のためアプローチした結果, 歩行能力の向上を認めたので報告する.

    【対象】対象は70 歳代女性. 右運動麻痺はBrunnstrom stage 上肢4, 手指4, 下肢5, 体幹・右股関節筋群の低緊張と四肢の運動失調により, 右下肢立脚期に股関節屈曲・内転・内旋接地となりやすく, 方向転換時麻痺側後方へのふらつきを認めた. またバランス評価では, Berg Balance Scale(BBS)18 点と転倒の危険性を有し, 4 点杖歩行は軽介助レベルであった.

    【倫理的配慮】本研究は所属機関における倫理審査委員会の承認を受け,研究内容を対象患者に説明し,書面にて同意を得た(承認番号 船H27-72).

    【方法・結果】免荷機能は用いず自由歩行速度に合わせ, ハーネスを装着し, 免荷リフトを追随させた. また, 4 点杖を使用し横歩きや, スラローム歩行などの応用歩行練習を見守り下にて1 日20 分, 約3 週間毎日実施した. その結果, 歩行能力は4 点杖歩行軽介助レベルから4 点杖歩行見守りレベルに向上した. BBS は22 点であった.

    【考察】レール走行式追随型免荷リフトを用いた歩行練習により, 歩行時に大きくバランスを崩すことに対し過剰な介助をおこなうことなく, 歩行練習が可能となった. これにより自身の四肢運動失調に対し, 姿勢制御を学習することが可能となり, 動的バランス能力の向上に繋がった. 結果歩行不安定性は改善し, 4 点杖歩行見守りとなったと考える.

  • 清水夏生 , 橋立博幸 , 太田智裕
    p. 36-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
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    【目的】本研究は小脳出血症例における歩行中のめまいに対する頭位変換・視運動課題を付加した歩行練習の効果を検討することを目的とした。なお、本研究は施設内倫理委員会の承認後に、本人に本研究の概要を説明し同意を得て実施した。

    【症例】69 歳、女性、左小脳梗塞により35 病日に回復期病棟に入院した。入院時、明らかな運動麻痺や運動失調は認められなかったが、めまいを伴う悪心により積極的な離床が困難であった。65 病日には悪心が軽減し、屋内歩行器歩行自立に至ったが、残存するめまいによる身体動揺により完全自立は困難であり、modified gait efficacy scale

    (mGES) 43 / 100 点、歩行速度 (GS) 55.7 m/分、dynamic gait index (DGI) 17 / 24 点、DGI 下位項目の頭部水平回旋 (HHT) 2 / 3 点、頭部垂直回旋 (VHT) 1 / 3 点であった。屋内外での歩行の完全自立を目的に65 病日から

    10 日間 (A 期) は屋外歩行練習と階段練習を実施した。

    【経過】A 期終了時、mGES 84 点、GS 68.1 m/分 に改善したが、歩行安定性はDGI 20 点、HHT 2 点、VHT 1 点と改善が乏しく、屋内外での歩行の完全自立は困難であった。そのため75 病日から11 日間 (B 期) は屋外歩行練習とともに頭位変換・視運動課題を付加した歩行練習を実施した。B 期終了時、歩行中のめまいが減少し、歩行安定性はDGI 24 点、HHT 3 点、VHT 3 点と明らかに改善し、屋内外での歩行が完全自立となった。また、GS はA 期終了時とほぼ同等であった。

    【考察】A 期では歩行の自信や速度は改善したが、歩行中のめまいや歩行安定性の改善は乏しく、特別な課題を付加しない歩行練習では歩行中のめまいや身体動揺の改善を促進できなかった。一方でB 期を通して歩行中のめまいや歩行安定性に明らかな改善が認められたことから、小脳損傷者のめまいによる歩行中の身体動揺に対して、頭位変換を伴う視運動課題を付加した特異的な歩行練習を実施することが有益である可能性があると推察された。

  • 小蒲京子 , 水野啓
    p. 37-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
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    【はじめに】感覚情報は運動学習において主要な役割を果たしている。臨床場面においては視覚情報から運動学習を促進させることが多くあり、効果も報告されている。今回、視覚情報が遮断されている全盲の症例に対して、聴覚フィードバックや前庭迷路系に着目し理学療法を施行した結果、基本動作の改善が認められたので報告する。

    【倫理的配慮】本研究はヘルシンキ宣言に沿って対象者に対して発表の趣旨を十分に説明し、同意を得た上で実施した。

    【症例紹介】1 歳の時に網膜芽細胞腫により両眼球を摘出し全盲となった、病前ADL 自立した40 歳代女性。今回、脳梗塞の疑いで当センター入院され、当日に右頭頂葉皮質下出血を発症し開頭血腫除去術を施行した。第5 病日に静脈洞血栓症を診断され抗凝固療法開始した。

    【経過と理学療法】脳静脈洞血栓症に伴う脳圧管理に難渋を呈し、第22 病日より離床開始した。離床開始時の理学療法評価は、GCS13 点、BrunnstromStage(左)I-I-II、感覚重度鈍麻、基本動作全介助、SCP6 点、FIM34 点(運動項目13 点・認知項目21 点)であった。症例は日常会話の聴覚刺激に対して多様な興味を示していたので、理学療法においても症例の周囲の環境や姿勢を詳細に伝えた。また、非麻痺側手掌でも実際に触れて頂いた。抗重力位では身体正中軸が大きく麻痺側へ偏倚していた為、座位や立位練習では軽介助にて頭頸部や身体軸を正中位に戻る運動を反復し前庭感覚を刺激した。

    【結果】第66 病日で基本動作は全介助から一部介助~監視、SCP は6 点から3.5 点、FIM は34 点から47 点(運動項目17 点、認知項目30 点)と改善が認められた。

    【考察】視覚以外の聴覚や前庭迷路系を主とした感覚フィードバックを行なうことで運動学習の一助になれたと考える。

    【おわりに】症例を通して盲人に対しての理学療法や関わり方を学べた。今回の報告に協力して頂いた症例や家族に感謝する。

  • 桑田真理奈 , 西澤賢人 , 関根康文 , 伊藤雅史
    p. 38-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
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    【はじめに】脳卒中治療ガイドライン2015 では機能的電気刺激(以下FES)、トレッドミル訓練共にグレードB で推奨される。我々は先行研究で脳卒中患者に対し表面電極型FES であるウォークエイド(TEIJIN 社製)を使用し10m歩行・TUG に有意差を認めた。今回、当法人老健に設置している可動式免荷装置アンウェイシステム(Biodex 社製)を使用した免荷式歩行訓練(以下BWSTT)と併用し歩行改善を認めた為ここに報告する。

    【方法】症例は当院回復期でのリハビリ後、当法人老健へ入所となった60 代男性。脳梗塞(後頭葉~側頭葉)左片麻痺、発症から約11 か月経過、下肢BRSIII。移動能力はSLB にてT-cane 歩行監視レベルであった。プロトコルは先行研究を基に週3 回・4 週間、免荷量20%、トレッドミル速度は0.8~1.0km/h、時間は計10 分とした。効果判定として2 条件(BWSTT 前SLB のみとBWSTT 後SLB+FES)での10m 歩行を2 回計測した平均値とアンウェイ上で記録される項目を、介入時と4 週後に数値比較を行った。尚、本研究はヘルシンキ宣言に基づき倫理的配慮として研究の趣旨を説明し同意を得て行った。

    【結果】BWSTT 前後の10m 歩行共に優位に歩行速度(秒)[前11.8、後12.4]・歩数(歩)[前3、後4]の改善を認めた。アンウェイ上の数値では、歩幅のばらつき(%)が[右9.22、左8.42]低くなり、立脚期時間(%)は[右58→53、左

    42→47]となり50%へ近似した。

    【考察】今回はSLB+FES を使用し背屈補助でなく電気刺激により生体筋活動での制御によって運動学習が図れ立脚期安定に繋がったと考える。また、BWSTT の効果として低負荷高頻度での規則的なステップ運動によりCPG 賦活、免荷下で対称性が改善した上で運動したことも麻痺側単脚支持期安定に繋がったと考える。これらの相乗効果により10m 歩行はいずれも10 秒以上速くなったと考え、翌日以降もcarry over される結果となり、FES+BWSTT の効果は歩行能力の向上に繋がることを示唆した。

  • 土岐哲也 , 藤本義道
    p. 39-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
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    【はじめに】多系統萎縮症(以下,MSA)は進行すると,嚥下障害を併発することが多く,また同時に自律神経障害も合併する.今回在宅で,嚥下障害に対して食道分離術を施行し,食事摂取が可能となったが,自律神経障害のうつ熱によって嚥下機能に影響を及ぼしたため報告する.

    【説明と同意】口頭にて説明し承諾を得ている.

    【症例紹介と経過】60 歳代男性,疾患名はMSA,現病歴は平成19 年に発症.平成25 年誤嚥性肺炎を発症し,気管切開,胃瘻造設,バルーン装着し臥床状態となり,訪問リハビリが開始となった.平成26 年に食道分離術を施行した後,半年間の介入によりYahr 分類5,運動構音検査(以下,AMSD)呼吸4 点,発声0 点,鼻咽腔閉鎖4 点,口腔構音では運動22 点,速度13 点,筋力10 点,改正水飲みテスト4,RSST は2 回,食形態は介護食となった.FIM は77 点,基本動作軽介助,座位監視,歩行軽介助となり血液データとしては,電解質,炎症反応に問題は認められなかった.その後,外気温の上昇によって体温が38 度となった.38 度時に全身倦怠感,動作緩慢が出現しAMSD が呼吸2 点,発声0 点,鼻咽腔閉鎖1 点,口腔構音として運動10 点,速度3 点,筋力6 点,改正水飲みテスト3,RSST は0 回と変化したが血液データには影響は認められなかった.

    【治療と結果】関節可動域,基本動作練習,体位変換,室内温度調節,両脇下に氷嚢と水分補給によって,体温が36 度台までに低下した.またAMSD も半年間介入後直後のレベルに変化した.

    【考察】MSA は進行とともに発汗障害が高度となるとうつ熱を併発する.うつ熱は脊髄中間外側核の機能障害によって起こり,進行とともに上行していく.今回,うつ熱から体内の水分量低下,軽度脱水症状によってドパミン神経機能が低下し錐体外路症状が強く出現し嚥下機能に影響を及ぼしたと考える.今後,MSA などの自律神経障害を呈する神経変性疾患は,体温調節機能を考慮し対応する必要があると考える.

  • 仲里美穂 , 間嶋満 , 國田広規 , 伊藤有希 , 神子嶋誠
    p. 40-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
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    【はじめに】GBS は幼少期から成人に至るまで幅広い年齢層で発症する疾患であるが、小児の報告例は少ない。また多くは近位筋優位に回復を認めるとされている。今回、四肢末梢から近位筋へと回復を認めた幼少期発症のGBS 例を経験し、対象となる児のご両親に本報告の趣旨を説明し同意を得たので報告する。

    【症例】2 歳男児。上気道炎後に四肢脱力を認め、当院小児科に緊急入院。入院時、頸部を含めた完全四肢麻痺を示し、それまでの経過と髄液所見からGBS と診断され、入院日から5 日間免疫グロブリン静注療法施行。9 病日から理学療法(以下、PT)開始。

    【理学療法(PT)評価と経過】初期評価では筋力は右手指の屈伸・両足関節底背屈がわずかに認められるようになっていたが、その他四肢・頸部・体幹では筋出力は認められなかった。また両下肢に触覚過敏を認め各関節最終可動域前後で疼痛を訴え、基本動作は全介助であった。PT では児の意欲を促し姿勢保持を中心に基本動作練習を施行し、17 病日で定頸獲得、21 病日に立位・歩行練習を開始、44 病日で長座位自立しLLB 装着下での立位保持が自立し自宅退院した。退院後は週2~3 回の頻度で外来でのPT を継続。下肢筋力の回復は著しく54 病日で裸足での立位保持可能、独歩が数歩可能となった。肩甲骨周囲や体幹筋力の回復は遅延し、PT では中枢部の筋力強化を積極的に取り入れ介入した。受傷から6 ヶ月たった時点で両下肢の過敏や疼痛は消失し、基本動作や独歩は自立した。

    【考察】本症例は全身性に重度の筋力低下を呈し、頸部、下肢、上肢・体幹の順で、遠位筋から近位筋へと徐々に改善を認めた。姿勢に関しては座位・立位での遊びを好んでいたため、PT 介入当初から補装具を使用し児の意欲が高い座位・立位姿勢から動作展開を行った。その影響もあり、比較的早い段階で座位・立位が獲得でき、加えて近位筋の筋力強化を取り入れたことで基本動作や独歩獲得に至ったと考える。

  • 五月女宗史 , 竹沢友康
    p. 41-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
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    【目的】多くのADL 評価法がある中,階段昇降動作も一定の基準が示されている。しかし,内容は曖昧であり,評価者の主観に依存する側面がある。そこで,腰部術後患者のバランス能力と階段昇降動作の関係を明らかにし,階段昇降動作尺度(Scale for stepping the stairway:以下SSS)の開発を試みた。

    【方法】対象は当院で腰部観血的手術を施行した20 名(男性15 名,女性5 名)。歩行能力で独歩群と杖群に分類し,左右片脚立位,10 ステップテスト,2 ステップテストを測定した。階段昇降動作の評価としてSSS を開発して測定した。それら結果をMann-Whiteny のU 検定を用い,有意水準は5%未満として群間比較を行った。各バランステストとSSS でSpearman の順位相関係数を用いた単相関分析を行った。倫理的配慮として本研究はヘルシンキ宣言に従った。

    【結果】独歩群と杖群では全てのテストで優位差が認められた(P<0.05)。また右片脚立位保持時間(r=-0.46,P <0.05),左片脚立位保持時間(r=-0.61,P<0.01),10 ステップテスト(r=0.80,P<0.01),2 ステップテスト(r=-0.57,P<0.05)は,SSS と有意な相関関係が示された。

    【考察】階段昇降動作は多重課題である。星らは,支持基底面と重心線の関係に基づき3 つのレベルにバランス能力を分類している。片脚立位保持と10 ステップテスト,2 ステップテストは,3 つのバランスレベルを網羅した評価である。歩行動作で支持基底面の拡大で安定性が獲得できるかで,独歩群と杖群では明らかな差がみられた。SSS は,星らのバランス要素を包含したテストであることが示唆され,特に動的バランスとの関係性が強かった。腰部術後患者の階段昇降能力向上のために,動的バランス評価の意義及び動的バランス練習の有効性が示唆された。

    【まとめ】独歩群と杖群には静的・動的バランス能力ともに差があり,SSS は星らのバランス能力レベルを概ね網羅したテストである可能性が示唆された。

  • 長谷川亮之 , 福井勉
    p. 42-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
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    【目的】階段降段時に膝関節痛患者は支持脚足部を外転させることが多く足角が膝関節痛に影響する印象をもつ。

    本研究では階段降段時の膝関節回旋運動に着目し、足角が与える影響について検討した。

    【対象と方法】対象は健常成人15 名(24.9±1.8 歳)とした。計測課題は20cm 台上からの降段運動とし、足部肢位は正中位(以下;n),n に対してtoe out5°,10°,toe in5°,10°の5 条件とした。関節角度は3 次元動作解析装置にて股,膝,足関節の屈曲,背屈角度を、加速度計積分値を用いて大腿下腿回旋角度を計測し、時間で正規化した。計測区間を立脚時間(以下;ST1~100%)とした。各条件5 回の内3 回目のデータを採用し、被験者15 名分のデータの平均値を得た。統計解析は対応のある一元配置分散分析を実施後、多重比較を行い危険率は5%未満とした。本研究はB 大学倫理委員会で承認され被験者に研究内容を説明し同意を得た。

    【結果】足関節ではn, toe out5°,10°がtoe in10°に対し有意に背屈した(p<0.05)。大腿回旋運動はtoe in10° がn, toe out5°,10°に対し有意に外旋し(p<0.05)、toe in ではST70%付近から、toe out ではST85%付近から外旋運動が増大した。下腿回旋運動はtoe in5°がtoe out5°,10°に対し有意に外旋し、toe in10°ではn, toe out5°,10°に対し有意に外旋した(p<0.05)。toe in では経過に連れ外旋運動が、toe out では内旋運動が生じ、ST85%以降toe out は内旋運動が停滞した。膝関節回旋運動に有意差を認めなかったがtoe out はn, toe in よりも小さな内旋位を呈した。

    【考察】toe out の降段運動は足関節背屈運動を大きくするが、大腿回旋運動を制限し膝関節屈曲時の内旋運動を生じ辛くすることが考えられた。大腿下腿回旋運動の結果より、大腿が下腿回旋運動に対応した運動を示すことが考えられた。ゆえに、大腿回旋運動が膝関節に対する水平面上での負荷を軽減させる為に重要な機能であることが考えられた。

  • 大谷知浩 , 澁澤佳佑 , 小杉寛 , 服部将也 , 外山晴菜 , 大山祐輝 , 篠原智行 , 臼田滋
    p. 43-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
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    【目的】転倒自己効力感の評価特性から入院患者を対象にした報告は少ない。本研究の目的は、入院早期に測定したFalls Efficacy Scale-International(FES-I)の妥当性について検討することである。

    【方法】対象は、整形外科に入院し歩行獲得が見込まれた15 名(平均年齢71.6±12.0 歳、男性7 名)であった。疾患別では、大腿骨頸部骨折7 名、他の下肢骨折6 名、肋骨骨折1 名、変形性脊椎症1 名であった。FES-I の測定時期は、医師から車椅子乗車が許可された1 週間後、歩行が10m 以上見守りで行えた時点と、退院時とし、退院時の状態を推測して測定した。統計解析は、FES-I 合計得点の各時期間のSpearman の順位相関係数を算出した。上出ら(2010)のFES-I 得点の分布から算出した最小可検変化量(minimal detectable change;MDC)14 点を参考に、FES-I 得点の変化について検討した。また、項目毎に2 点以上の差があった対象数の多い項目を抽出した。尚、本研究は日高病院医療倫理委員会の承認を得ている(第104 号)。

    【結果】FES-I の測定時期(入院日からの日数)と合計得点の平均値±標準偏差は、車椅子許可1 週間後12.4±4.1

    日、42.3±12.7 点、歩行獲得時点26.9±13.4 日、41.8±12.0 点、退院時63.9±19.6 日、43.7±10.9 点であった。

    FES-I 合計得点の退院時と車椅子許可1 週間後および歩行獲得時の相関係数は0.55(p<0.05)と0.71(p<0.01)であった。各時期のFES-I 合計得点の差がMDC を越えた対象は1 名のみであった。項目毎の差が2 点以上あった対象数で多かった上位2 項目は「床の上の物、または頭上の物を取る」と「親しい友人や親戚を訪ねる」であった。

    【考察】各時期における相関係数やMDC を越える対象数から、入院早期におけるFES-I の妥当性が示唆された。また、項目によって変化のしやすさが異なり、対象者数を増やして今後の詳細な検討が必要である。

  • 脇野俊貴 , 小林量作
    p. 44-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
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    【目的】つま先立ち時の上肢支持量と足関節底屈角度の変化が下腿三頭筋活動に及ぼす影響を明らかにし,効果的なカーフレイズについて検討することである.

    【方法】対象は健常若年者男性10 名,測定筋は腓腹筋内側頭,腓腹筋外側頭,ヒラメ筋の3 筋とした.課題動作は上肢支持量3 条件;1指による「軽度接触」,体重「10 %支持」,体重「20 %支持」および足関節角度3 条件;「底屈

    15°」,「底屈30°」,「最大底屈」の組み合わせによる計9 条件で行った.各動作の筋活動は%MVC で求めた.統計的解析は2 元配置分散分析を用いた.倫理的配慮は,ヘルシンキ宣言に則り被験者全員に文章による説明をして書面による同意を得た.

    【結果】1.上肢支持量と足関節角度の2 要因は,3 筋ともに主効果を認めた(p < 0.01).交互作用は認められなか

    った.2.上肢支持量条件では,3 筋活動とも「軽度接触」(「最大底屈」における腓腹筋内側頭71%MVC,腓腹筋外側頭60%MVC,ヒラメ筋70%MVC,以下同順)>「10 %支持」(52%,45%,53%),「軽度接触」>「20 %支持」

    (44%,35%,45%)であった.3.足関節角度条件では, 3 筋にとも「底屈15°」(「軽度接触」における49%,40%,

    50%) <「底屈30°」(54%,46%,55%),「底屈30°」<「最大底屈」であった.

    【考察】筋力増強のためには,40 %MVC 以上の強度が必要であり,一般的には60 %MVC 以上が効果的とされて

    いる.腓腹筋内側頭,ヒラメ筋において,上肢支持量条件の「軽度接触」あるいは足関節角度条件「最大底屈」のいずれにおいても,他方の条件に制約されずに40%MVC 以上の筋活動を示した.また,「軽度接触」と「最大底屈」においては,ほぼ70%MVC の活動を保証できる.これらのことから,各条件を組み合わせることで対象者の能力,目的に合わせたカーフレイズトレーニングを提供できることが示唆された.

  • 山岸保則 , 松田梓 , 大森豊 , 隆島研吾 , 高塚博
    p. 45-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
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    【はじめに】先行研究では正常歩行に必要な膝伸展筋力は体重の20%~40%と言われている.しかし,先行研究における膝伸展筋力測定は高価な機器を使用しており,測定機器のない施設や訪問場面において歩行自立度を判断することが困難な状況である.そこで我々はセラチューブ(The Hygenic Corporation 社)に着目した.セラチューブはトレーニング器具として活用されており,これを用いて膝伸展筋力測定ができれば,簡便な道具で歩行自立度を評価することが可能となる.本研究は膝伸展筋力測定を行うセラチューブがどの程度の抵抗力を発生するのか,抵抗力の定量化を行った.

    【方法】セラチューブは黄,赤,緑,青,黒,銀の6 種類とした.抵抗力測定は,ばね式手秤(三光精衡所)を使用した.セラチューブの長さは折り返した状態の長さが20cm の環状とした.環状となったセラチューブをばね式手秤のフックに通し,検者が手で牽引を行った.伸びの長さは15cm,20cm の2 条件とし,それぞれの長さで保持させた際のばね式手秤の値を読み取った.各条件の測定は検者A,B の2 名で行い,日を変えて2 度,合計2 試行実施し平均値を測定値として採用した.本研究は当施設倫理委員会の承認を得て実施した.

    【結果】セラチューブの抵抗力は伸びの長さ15cm で黄が20.1±0.8N,赤が28.2±0.9N,緑が31.4±1.0N,青が

    31.9±0.8N,黒が39.4±1.5N,銀が58.1±2.4N であった.伸びの長さ20cm で黄が23.8±0.6N,赤が35.3±0N,

    緑が38.5±1.4N,青が39.2±1.7N,黒が50.7±0.6N,銀が73.5±4.7N であった.

    【考察】6種類のセラチューブを利用することで20.1N から73.5N まで測定することが可能と考えられた.この値を用いることで測定機器のない施設や訪問場面において,対象者の体重と下腿長から算出し,簡便に歩行自立度の判断に活用できる可能性が考えられた.今後,セラチューブを利用した膝伸展筋力測定の妥当性を検討する必要があると考える.

  • 河野英美 , 小町利治 , 中島卓三 , 西垣有希子 , 嶋根貴博 , 谷川本明 , 柏村浩一 , 藤谷順子
    p. 46-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
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    【はじめに】階段昇降能力は実際に階段を用いて評価されるが、諸事情で階段を用いることが出来ない場合がある。

    階段昇降能力に影響する運動能力が示されれば、間接的であっても効果的な評価や練習が可能になると考える。

    本研究の目的は、8 種類の運動能力テストを実施し、階段昇降能力に影響を及ぼす運動能力を検討することである。

    【方法】対象は、歩行が可能な入院患者101 名(男性46 名、女性55 名、年齢72.7±14.0 歳)である。階段昇降能力および運動能力を評価した。運能能力テストは、継ぎ足立位10 秒、4m 歩行速度、立ち上がり(上肢支持なし)、閉眼立位10 秒、前方リーチ、片脚立位5 秒、片脚スクワット、交互片脚立ち(1・3・5 秒)を評価した。統計は、階段昇降能力を3 群(1:不可・要介助 2:手すりありで昇降可 3:手すりなしで昇降可)に分け従属変数とし、各運動能力テストと年齢・性別を説明変数として重回帰分析を行った(p<0.05)。本研究は当院の倫理委員会の承認を得て実施した。

    【結果】重回帰分析の結果、片脚立位、片脚スクワット、継ぎ足立位、交互片脚立ち(5 秒)、立ち上がりが選択された。

    調整済み決定係数はR2=0.665 であった。

    【考察】選択された説明変数のうち、片脚スクワットと片脚立位に関しては、筋力やバランス面から、過去にも階段昇降能力との関連性が報告されている。上肢支持なしの立ち上がりは、下肢筋力に加え前方への姿勢制御能力も評価可能である。また、継ぎ足立位は側方バランス制御能力を反映しており、単脚支持期への影響が予測される。交互片脚立ち(5 秒)は動的バランスの要素を含んでおり、安全に昇降するためには必要な能力であると考える。

    【まとめ】階段昇降能力に影響を及ぼす運動能力について検討することができた。今回の結果を踏まえ、今後は実際に評価や治療に取り入れその効果を検証したい。

  • 山根達也 , 浅野翔平 , 外山晴菜 , 澁澤佳佑 , 関香那子 , 小澤美貴 , 飯塚優子 , 篠原智行
    p. 47-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
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    【はじめに】生活意欲の低下は、リハビリテーション(以下リハ)を行う上で最大の阻害因子の一つとする報告がある。

    今回、生活意欲の程度が異なる心不全患者において、リハの費用対効果に関連する因子の違いを検証した。

    【方法】当院医療倫理委員会の承認を得た上で調査を実施した(第116 号)。対象は、平成24 年4 月から平成27

    年8 月に当院で心不全と診断されリハを実施し退院した187 名中、死亡退院やリハ介入が5 日及び1 単位/日未満等のcaseを除外した137名とした。費用対効果のOutcome は、リハ介入期間で変化したFunctional Independence Measure(以下FIM)をFIM 満点(126 点)と入院時FIM との差で除したものをリハ総単位数で除したFIM 改善効率とした。入院時Vitality Index が8 点以上の高得点群(以下H 群)、7 点以下の低得点群(以下L 群)の2 群において、従属変数をFIM 改善効率、独立変数を年齢、開始時FIM 運動項目(以下motor FIM)、開始時FIM 認知項目

    (以下cog FIM)、入院からリハ処方までの日数(以下処方日数)として重回帰分析(ステップワイズ法、有意水準5%)を行った。個人情報の取り扱いはヘルシンキ宣言に従い、また連結可能匿名化した。

    【結果】各変数の平均はH(51 名)/L(86 名)群の順に、FIM 改善効率0.017/0.011、年齢79.2/83.5 歳、motor

    FIM54.2/25.6 点、cog FIM31.1/18.5 点、処方日数6.9/5.9 日であった。重回帰分析でH 群は年齢(β=-0.32)、処方日数(β=-0.69)、L 群は年齢(β=-0.33)、cog FIM(β=0.50)、処方日数(β=-0.20)が採択され、自由度調整済み決定係数はH 群0.51、L 群0.40 であった。

    【考察】心不全患者は生活意欲の高低に関わらず、より早期に介入することで効率的なADL 改善が期待でき、とりわけ生活意欲の低い患者では入院時の認知機能が高いことも重要な因子であると示唆された。ただし、費用対効果に関連する他の因子の検証のためには、重症度や心機能等を含める必要がある。

  • 伊藤申泰 , 大関直也 , 田中良太 , 倉形裕史 , 西山徹 , 中島弘 , 田中宏和 , 安達仁 , 福田昭宏 , 大久保信司
    p. 48-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
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    【はじめに】近年,多職種連携に注目が集まっており,循環器分野では心不全カンファレンス(以下,カンファ)が重要視されている.当院でも2015 年4 月より循環器内科にて多職種による心不全カンファを導入した.しかし,心不全カンファの効果に関する報告は少ない.今回,心不全カンファを導入したことによる入院期間について比較し,検討した.

    【方法】対象は心不全の診断で当院に入院した患者のうち,リハビリテーション(以下,リハ)実施となった179 名とした.心不全カンファ導入前の2014 年度に入院した47 名(平均年齢;79.7±12.8 歳)をカンファ未実施群とした.心不全カンファ導入後の2015 年度に入院し,心不全カンファの対象となった132 名(平均年齢;79.9±11.4 歳)をカンファ実施群とした.検定項目は重症度,在院日数,入院からリハ開始までの日数,リハ終了時に200m 歩行を獲得した割合(以下,歩行獲得率)を両群間で比較した.統計解析は重症度と歩行獲得率の比較をPearson のカイ2 乗検定で行った.在院日数と入院からリハ開始までの日数の比較を対応のないt 検定で行った.有意水準は5%とした.倫理的配慮はオプトアウト方式とした.

    【結果】在院日数は,カンファ実施群で有意に減少した(未実施群:37.9±24.8 日vs 実施群:28.3±16.2 日,P=

    0.017).入院からのリハ開始までの日数は,カンファ実施群で有意に減少した(未実施群:10.2±8.1 日vs 実施群:

    6.7±4.1 日,P=0.006).歩行獲得率は,カンファ実施群で有意に増加した(未実施群:21%vs 実施群:46%,

    P=0.003).

    【考察】心不全カンファ導入前後の比較で,導入後は入院からリハ開始までの日数が短縮した.さらに歩行獲得率が増加し,最終的に在院日数が短縮した.心不全カンファでの情報の共有により,包括的な心不全治療におけるリハ実施の判断に共通認識が得られたと考えられる.

  • 鈴木拓也 , 藤崎公達 , 馬場玲子 , 西井優瑠 , 毛利悦子 , 成田雄一 , 宗村明子
    p. 49-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
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    【はじめに】 平成25 年12 月から糖尿病支援チームが発足し,糖尿病患者を対象に教育入院での療養指導,地域の方々へ予防・啓蒙を目的とした市民公開講座の開催をしている.「多職種協同」を理念に,専門医を中心にコメディカル(看護師,薬剤師,管理栄養士,臨床検査技師,理学療法士,作業療法士)が活動してきた内容を振り返り,課題を検討したので報告する. 対象者には本報告の趣旨を説明し同意を得た.

    【糖尿病教育入院について】 糖尿病教育入院患者34 名(男性:26 名,女性:8 名,年齢:58.9±26.9 歳, HbA1c:9.6±3.1%)に対し,治療効果の推移を追跡した.入院中は,各職種が個別対応を重視し療養指導を実施した.リハビリテーション科においては,理学療法士・作業療法士が介入し,身体機能面だけでなく,精神・心理面への評価・介入を行っている.病室への訪問や,リハ室での運動実施にて療養指導を行う.退院時には,治療継続・生活指導を中心とした介入を実施している.

    【市民公開講座における調査】 一般参加者(31 名:男性4 名,78±4 歳,女性27 名 ,75.7±13.7 歳)に糖尿病に関連する検査を実施.項目は,身長,体重,BMI,血圧,ウエスト周囲径,随時血糖値,神経障害簡易検査(振動覚,アキレス腱反射),SpO2,である.結果として,収縮期血圧>130mmHg かつ/または拡張期血圧>85mmHg である男性が75%,女性が78%であった.男性においては,ウエスト周囲径>85cm が100%,随時血糖値>140mg/dL が75%と,生活習慣病のリスクが確認された.

    【まとめ,今後の課題】 教育入院終了後は,外来診察での経過観察となるが, 今後は,コメディカルによる継続的な療養指導を重視した介入方法の強化が必要であると考える.また,市民公開講座における調査結果からも,生活習慣病のリスクがある地域住民が多いことが確認できた.入院患者だけでなく,地域住民へのサポート体制として,糖尿病支援チームが継続的な療養指導を実践出来るようなシステム作り,包括的な介入の検討が課題である.

  • 岩田一輝 , 武井圭一 , 森本貴之 , 山本満
    p. 50-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
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    【目的】歩数を用いた身体活動(PA)量を継続する自信(SECPA)の評価法を開発し、その信頼性と妥当性を明らかにすることである。

    【方法】当院教育入院に参加した糖尿病患者30 名を対象に、退院前日にSECPA と岡らが作成したPA セルフ・エフィカシー尺度(SEPA)を評価した。SECPA は、8 日間の歩数の平均を軸に平均±2000 歩・±1000 歩の5 つの階級を設定し、「週3 日以上の頻度でその歩数を継続できる自信」を0-100%で他記式にて評価した。SEPA は、歩行や階段などのPA について時間や階数で5 つの階級を設定し、各階級を遂行できる自信を0-100%で表す評価法である。分析は、SECPA とSEPA 歩行・階段の5 階級の平均値を求め、2 群を比較した。SECPA とSEPA の5 階級平均、およびSECPA の平均歩数以上の階級とSEPA の5 階級平均について相関分析を行った。あらかじめ、健常者

    20 名に対してSECPA を2 週間の間隔をおいて2 回評価し、α係数と検査・再検査間の級内相関係数を求めた。

    本研究は、当院倫理委員会の承認を得て実施した。

    【結果】SECPA のα係数は0.93、級内相関係数は0.63 であった。SECPA 各階級の平均は、-2000 歩から順に

    95%、92%、84%、77%、68%であった。5 階級平均は、SECPA が83±16%、SEPA 歩行が59±30%、階段が

    69±21%であり、SECPA の方が有意に高かった。SECPA の5 階級平均および平均歩数とSEPA の間に有意な相関はなかった。SECPA の+1000 歩・+2000 歩とSEPA 歩行の間に有意な相関(r=0.37・r=0.47)を認めた。

    【考察】SECPA の信頼性は概ね確保されたと考えた。SECPA は、過去に達成した平均歩数を軸に対象者個々に階級設定するためSEPA より高くなったと考えた。SECPA の高階級とSEPA 歩行に関連を認めたことから、SECPA が歩行というPA を遂行する自信度を反映した評価法であると考えた。また、SECPA が実際に達成できた平均歩数に対して84%程度であったことは、今後の継続性を反映していることが示唆された。

  • 石谷周士 , 高下大輔 , 玉置友夏子 , 田中伸弥 , 浅川賢 , 増田卓 , 横山美佐子
    p. 51-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
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    【背景】乗馬療法の効果は、馬のリズミカルな揺れが人間の脳や身体を刺激することで得られると考えられている。横山らは乗馬中騎乗者が受ける上下運動に1/fゆらぎがあり、副交感神経活動が賦活化して自律神経活動を是正すると報告した。一方、有酸素運動の効果として血管内皮機能の改善がある。有酸素運動により血流が増大し、血管内のずり応力で血管内皮細胞より一酸化窒素が放出され、改善を促進すると考えられている。乗馬は有酸素運動であるが、自律神経活動の是正も関与して血管内皮機能を改善すると考えられる。しかしその機序は十分に検討されていない。

    【目的】1/fゆらぎを持つ機械乗馬への単回の騎乗が血管内皮機能に与える影響を明らかにすること。

    【方法】健常成人男性29 名を対象とし、喫煙歴・乗馬経験を有する者、運動器・中枢神経・呼吸・循環器疾患を有する者は除外した。馬の動きを再現した1/fゆらぎを持つ乗馬機器に騎乗する群(1/fあり群)、1/fゆらぎを持たない乗馬機器に騎乗する群(1/fなし群)、運動課題を課さない群の3 群に無作為に割り付けた。単回15 分の乗馬の前後で心拍変動と瞳孔径を自律神経活動の指標、反応性充血指数(以下RHI)を血管内皮機能の指標として測定した。なお、本研究は研究倫理委員会の承認と対象者に説明と同意を得て実施した。

    【結果】乗馬の前後で1/fあり群では瞳孔径が有意に低下し、他群と比較した際にも有意に低下した。また騎乗前後でRHI は1/fあり群と1/fなし群で有意に増加したが3 群間において有意差を認めなかった。

    【考察】1/f あり群では副交感神経活動が賦活化し、先行研究を支持する結果であった。これは1/f ゆらぎが扁桃体に快刺激を与えたためと考えられた。RHI は1/f あり群と1/f なし群で乗馬の騎乗前後で有意に増加したが、3 群間では有意差を認めなかった。単回の乗馬におけるRHI の増加には、有酸素運動による筋収縮による血流増加が関与したと考えられた。

  • 井出篤嗣 , 前野里恵 , 江井佐知恵 , 塚本佐保 , 三橋拓 , 鈴木智高 , 高橋素彦
    p. 52-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
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    【目的】当院リハビリテーション部では、2015 年8 月よりPT のICU 専任配置を開始した。今回、配置前にはICU 在室内で介入機会が少なかった心臓血管外科に焦点を当て、専任配置後の効果を後方視的に検証した。

    【対象・方法】対象は心臓血管外科術後で、配置前の2014 年9 月から2015 年2 月までICU に在室した患者13 例

    (冠動脈バイパス術5 例、弁置換術5 例、弁形成術3 例)と配置後の2015 年9 月から2016 年2 月までの13 例(冠動脈バイパス術10 例、弁置換術2 例、大動脈置換術1 例)とした。重篤な合併症がある患者や元々のADL が自立していない患者等は除外した。評価項目はICU 在室期間・在院日数・ICU 入室から座位までの期間・退院時のBarthel Index(以下BI)とした。在院日数は対応のないt 検定、その他はMann-Whitney のU 検定を実施し、それぞれ有意水準5%とした。また、ICU 在室中のPT 介入率や自宅退院率についても後方視的に検討した。本研究は倫理的配慮を持って実施した。

    【結果】在院日数(平均:前23.8±6.8、後19.2±4.8)や年齢(中央値:前77、後68)、BI(中央値:前後とも100)においては有意な差がなかった。ICU 在室期間(中央値:前4、後3)と座位までの期間(中央値:前4、後3)は有意な差があった。また、PT 介入率は配置前15%(2 例)・配置後100%であった。PT 開始までの日数は配置後平均2.5 日であり、自宅退院率は前後とも100%であった。

    【考察】ICU 専任配置後は、ICU 在室期間や座位までの期間が有意に短縮した。この結果は全症例に対するPT の早期介入による身体機能向上だけでなく、医師やコメディカルと密な連携を取り、リスク管理や治療方針などがチーム医療として共有できたことが大きいと考える。在院日数に有意な差がなかったのはPT 以外の要因と症例数不足に因るところが大きいと考え、症例数を増やして次の研究に繋げたい。

    【研究の意義】ICU 専従体制が議論される中、このようなデータの蓄積は必要である。

  • 原豊寛 , 遠藤隆史 , 藤井理恵 , 吉田政人 , 長谷川卓哉 , 早坂豪 , 仲田紀彦 , 侭田敏且
    p. 53-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
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    【はじめに】 骨粗鬆症性椎体骨折(以下OVF)は,ADL 低下を引き起こすことがあり注意を要する疾患である.今回,OVF に対して2 度の手術加療を行い,疼痛と歩行能力の改善がみられた症例を経験した.再手術後の疼痛と歩行能力の改善に焦点を当て,若干の考察を加えて報告する.

    【症例紹介】70 代後半女性で,既往にうつ病がある.2015 年5 月,第2 腰椎圧迫骨折に対し,後方椎体間固定術(以下PLIF)を施行.術前後で理学療法を実施し,同7 月に自宅退院するも,疼痛が再燃し同11 月に再入院となった.

    【説明と同意】 症例に対し発表の趣旨や個人情報保護等に関して説明し書面で同意を得た.

    【経過】 2016 年1 月,PLIF 施行.術後4 日目,安静時の腰部痛(NRS:8/10),体動時やTilt table90°5 分で腰部・両大腿部痛(NRS:8/10)がみられ,歩行困難であった.術後22 日目,サークル歩行時に両殿部痛(NRS:右5/10,左3/10) がみられ,ネガティブな発言が度々みられた.その後,段階的に歩行の難易度を上げ,自己効力感を高めるようなメンタル面へのアプローチを開始したところ,術後46 日に痛み消失.術後55 日目,T 字杖歩行見守りで240m 可能となり,術後60 日目に自宅退院となった.

    【考察】 本症例において歩行能力の改善に時間を要した点として,腰椎変性疾患とは本質が異なり,OVF においては骨折部の安定化に時間を有すること,また,疼痛遷延化に伴いリハビリに対する意欲低下があげられる.尾崎ら

    (2014)は,疼痛に応じて安静臥床を行うことは有効と述べている.また,渡辺(2013)は,うつ病の方に対し「頑張れ」などの励ましは厳禁と述べている.OVF にうつ病を合併した症例は,充分な時間をかけた段階的なプログラムとメンタル面に配慮した声かけを行うことが肝要であると考えた.

  • 相馬大作 , 三橋明穂 , 木村亮太 , 山口善史
    p. 54-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
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    【はじめに】今回、複数疾患による右大腿切断(短断端)に加え、重複障害で左下肢の支持性が低下し立位保持が重介助であった症例を担当した。立位保持能力の向上、移乗・トイレ動作能力の獲得を目標に運動パターンに着目し介入を行ったので以下に報告する。

    【症例紹介】50 歳代、女性、BMI40.9、独居。X 日に左変形性膝関節症・腰部脊柱管狭窄症の診断で入院、X+73 日に右大腿切断・断端形成術施行、X+119 日に回復期病棟へ転棟、X+158 日断端部の治癒遅延あり断端形成術を施行された。尚、本発表に際し対象者に主旨を説明し同意を得た。

    【初期評価】ROM は両下肢に伸展制限あり、 MMT は両股関節周囲筋が概ね2 レベル、左膝に荷重時痛あり。FIM

    は49 点であった。

    【経過】立位姿勢は骨盤後傾・右回旋・左挙上、両股関節屈曲・外転・外旋、左膝関節屈曲、左踵骨回外位であった。左膝の疼痛軽減、対称的な立位姿勢獲得のためTilt table、平行棒内で立位練習を行った。 義足完成

    (ottobock 社骨盤帯吊り下げ式)。(X+170 日)立位姿勢は骨盤右回旋位で完成後も左荷重優位が残存していた。基本動作より切断側の股関節屈曲・外転パターンでの代償的な動作みられ、起居動作では股関節伸展筋の促通と体幹・下肢の協調的な筋活動を促し、立位では体幹の抗重力伸展活動を誘導した。 体幹・下肢の伸展活動が得られ、切断側の荷重量が増加し、左膝の疼痛は増悪しなかった。

    【結果】両手支持で10 分程度の立位保持が可能となった。ADL は移乗・トイレ動作見守り、pick up walker にて5m

    程歩行可能、FIM80 点で自宅退院となった。

    【考察】今回、自宅復帰を目標に義足装着を見据え装着前より立位能力向上へ介入したが、装着後に十分な効果を得られなかった。義足装着後は基本動作・立位で共通した運動パターンを評価し、効率的な運動の促通に変更したことで立位での切断側へ荷重の増加、立位の安定性が向上し、ADL 能力の向上に繋がったと考える。

  • 秋山智則
    p. 55-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
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    【目的】 右肩関節周囲炎を呈した症例に対し、評価を行い結帯動作に注目した運動療法を実施する機会を得たので報告する。

    【方法】 ヘルシンキ宣言に基づき評価・治療を行った。症例は右肩関節周囲炎を呈した50 代女性。2014 年に肩痛自覚、2015 年に更衣動作困難となり当院受診され上記診断にて2016 年に理学療法処方。治療内容は棘下筋、小円筋のリラクセーション、ストレッチ、肩甲骨のモビライゼーションを1 単位、自主練習として肩関節後方関節包に焦点を当てたストレッチを週2 回、5 か月間実施予定。介入前後で肩関節伸展、外転、2nd 内旋、3rd 内旋の関節可動域(以下ROM)、肩峰下角から床間距離、第7 頸椎棘突起(以下C7)から橈骨茎状突起間の距離を測定。 ROM は日本整形外科学会に準じた方法(以下ROM1)、肩甲骨内側縁を基本軸とし、上腕骨を移動軸とした測定方法(以下ROM2)にて実施。

    【結果】 ROM1:肩 伸展右側25°→35°、外転140°→160°、2nd 内旋50°→60°、3rd 内旋20°→35° ROM2:肩 伸展15°、外転85°,2nd 内旋10°、3rd 内旋-30° 肩峰下角-床間距離4 横指、C7-橈骨茎状突起間34.0cm→28.0cm

    【考察】 結帯動作は、肩甲上腕関節伸展、内旋、外転、肩甲胸郭関節下方回旋-前傾の複合運動となる。本症例の動作制限因子として肩後面筋を中心とした柔軟性低下と肩甲骨マルアライメントによる肩上方組織のインピンジメントと考える。林らはoblique translation が生じた症例に対して関節周囲組織の伸張性と滑走性の改善を図ることが重要とし、棘下筋、小円筋に柔軟性の改善により、上腕骨頭の後下方への動きが出現し、動作改善を認めたと考える。

    【まとめ】介入1 ヶ月現在、動作改善を認めたが右上肢を使用しての更衣動作の獲得には至っていない。本田らは、結帯動作においてTh12 より高位は肩甲骨運動が主体となると報告している。本症例はTh10 であるため今後は肩甲骨に焦点を当てた治療を実施していく。

  • 小澤哲也 , 大山由廉 , 新山祐貴 , 小松里絵 , 布施勇貴 , 佐藤隆一
    p. 56-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
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    【はじめに】洗濯物干し動作で右肩の疼痛が残存している鏡視下肩腱板修復術(ARCR)後症例に対し、肩甲骨周囲筋と挙上位での腱板エクササイズを実施したところ、疼痛が改善したため考察を含めて報告する。

    【症例紹介】 60 歳代、女性。自転車で転倒し、右肩腱板断裂を受傷。ARCR 後1 年が経過した時点での主訴は洗濯物干し動作時の右肩痛であった。なお、対象者には本発表について説明を行い,同意を得た。

    【評価とCR】 安静時痛、夜間痛なし。軽量物の挙上動作において、右上腕外側に疼痛を認めた。右上腕外側の疼痛を精査すると、Neer のインピンジメントテストで疼痛の再現を認めた。インピンジメントを惹起する因子として、1.肩甲上腕関節(GH jt.)、肩甲胸郭関節(ST jt.)の可動性、2.肩甲骨周囲筋、3.腱板機能について評価した。GH jt.の可動性は、下垂位外旋45 度、外転位外旋70 度、内旋60 度、屈曲165 度、外転150 度であり、骨頭の前方偏位を認めた、ST jt.の可動性は後傾・外旋方向の可動性が低下していた。肩甲骨周囲筋は、前鋸筋、僧帽筋中部、下部の筋力低下を認めた。腱板機能に関しては小円筋、棘下筋の斜走繊維の筋力低下を認めた。また、Empty、Full can テストにおいて大結節周囲に疼痛を認めた。上記の評価から、肩甲骨周囲筋の筋力低下による棘上・下筋に対するストレス増大、腱板機能低下による肩峰下インピンジメントが生じていると推測した。

    【治療】 小胸筋のマッサージとストレッチング、肩甲骨周囲筋の筋力トレーニング、肩挙上位にて肩関節外旋運動を実施した。

    【結果】 当初は500g の重錘を持ち上げる際に肩甲骨の挙上動作と疼痛を認めたが、3 ヶ月が経過し、1kg の重錘まで疼痛なく持ち上げることが可能となった。

    【考察】 肩甲骨の安定性が向上し棘上・棘下筋の負担が軽減したこと、腱板による骨頭の求心性が改善したことで、肩峰下のインピンジメントに伴う疼痛が軽減したと考えた。

  • 清原麻衣子
    p. 57-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
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    【はじめに】 下肢切断患者のADL における先行研究によると「Amputee Mobility Predictor(;AMP)とBarthel Index(;BI)の間に優位に高い相関関係を認めた」とある.今回AMP を主軸とし,移乗・トイレ・移動の介助量軽減を目的に,右下腿切断術後にPatellar Tendon Bearing 式下腿義足(;義足)で自宅復帰を目指した症例を以下に報告する.

    尚,ヘルシンキ宣言に則り説明,同意を得た.

    【症例紹介】 80 歳代女性,高齢の夫と2 人暮らし.前院で右下腿切断術施行,リハビリ(;RH)目的で当院へ転院.転院

    4 週後に胆管炎を発症,2 週のRH 中止期間もあり,入院生活の長期化からRH 意欲の低下を認めた.

    【治療】 義足採寸時期は,断端部の荷重訓練,全身筋力・バランス・ADL 訓練を行った.さらに自主トレーニング・集団RH 参加・病棟スタッフと連携したトイレ訓練を行った.義足完成後は義足装着練習・トイレ・歩行・移乗訓練を行った.

    退院前は自家用車での移乗訓練,家屋での動作確認,紙面によるリスク注意・家族指導を行った.尚,各フェーズでAMP・BI・Functional Independence Measure(;FIM)の点数開示を行った.

    【結果】 [AMP]:義足<U>無</U>8 点(要介助群)→17 点(要介助群)/義足<U>有</U>0 点→35 点(屋内自立群)

    [BI]:30 点→80 点 [FIM]:48 点→73 点(運動28 点→50 点/認知20 点→23 点) [移乗]:軽介助→自立 [トイレ]:下衣更衣(全介助)→全て自立 [移動]:車椅子(全介助)→Pick Up Walker15m 自立・車椅子(自立)の併用.目標動作は自立,RH 再開後13 週で退院.

    【考察】 ADL 動作を細分化し,AMP 項目の選択・照合を実施したことで,苦手項目やADL の集中的・反復訓練や明確な動作指示が可能となり,それぞれの動作に合わせて治療介入ができた.また,評価点数の開示により患者様とセラピスト間で問題点の共有が図れ,成功体験がRH 意欲の向上となり,離床時間・義足着用時間の延長になった.今回,AMP をもとに切断後RH をすすめることは,身体機能向上さらにADL 向上に影響すると推察された.

  • 松本渉 , 鈴木厚太 , 竹内大樹 , 青山倫久
    p. 58-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
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    【はじめに】上腕骨外側上顆炎は短橈側手根伸筋(以下ECRB)腱の微小断裂で生じる付着部症である。今回前腕のストレッチを行ったが疼痛が残存し超音波診断装置(以下超音波)を用いて再評価を行い橈骨頭へアプローチを行ったところ症状が改善した患者を経験したのでここに報告する。尚、症例発表には発表の主旨を説明し承諾を得ている。

    【方法】1.症例紹介50 代女性。2015 年4 月から原因なく疼痛が出現。8 月に当院受診し右上腕骨外側上顆炎と診断された。理学療法は前腕のストレッチを中心に行ったが疼痛消失には至らなかった。日常生活では主婦業と英会話教室の講師で、手作業が多い環境である。主訴は手を使えば痛い。既往歴は右肩関節周囲炎がある。2.理学療法評価関節可動域(右/左)は肘関節屈曲145/140、回内90/100、回外90/100 だった。整形外科テストはChair test、Thomsen test、示指伸展テストが陽性、圧痛は腕橈関節、橈骨頭、上腕骨外側上顆に認めた。再評価として超音波で橈骨頭の動態評価を行い前腕回内時に健側に比べて橈骨頭の腹側への移動量が少なかった。3.PT のアプローチ第一選択としてECRB 等の伸筋群のストレッチを行い即時的な効果はあったが所見に著変なし。再評価し橈骨頭へのアプローチとして回外筋、上腕二頭筋、橈骨頭に対しモビライゼーションを行ったところ症状は改善した。

    【結果】超音波の動態評価は橈骨頭が腹側へ2.5mm から5.0mm と移動量の改善を示した。外側上顆と橈骨頭、腕橈関節の圧痛は消失しThomsen test、示指伸展テストは陰性になり、chair test は疼痛が減弱した。

    【結論】第一選択の治療として前腕のストレッチを行ったものの症状は改善しなかった。再評価として超音波で橈骨頭の動態評価を行い橈骨頭への理学療法を行った結果、移動量と症状の改善を認めた。橈骨頭の可動性低下に回外筋や上腕二頭筋の拘縮が関与していた可能性がありその評価に超音波が有用だったと考える。

  • 佐藤圭祐 , 北地雄 , 原島宏明 , 宮野佐年
    p. 59-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
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    【目的】近年の脳卒中後片麻痺患者のリハビリテーション(以下リハビリ)については、早期から積極的なリハビリ介入が推奨されている。今回、当院脳卒中患者における早期離床訓練が患者に対し効果的か否か検討を行うことを目的とした。

    【方法】対象は平成26 年4 月から平成27 年5 月までに脳卒中で当院の急性期病棟に入院された、患者150 名(男性:80 名、女性:70 名)とした。方法は、対象者がベッドから車椅子への移乗訓練を開始した日を早期離床訓練開始日とし、5 以内に開始出来た群をA 群(115 名)、6 日以上で開始した群をB 群(35 名)とした。両群について転帰先

    (在宅退院か施設退院)をカイ2 乗検定、在院日数、離床訓練開始日をA 群、B 群とで退院時BI との相関、比較を行った。解析はSPSS17.0jForWindows を用い、5%未満を有意水準とした。

    【説明と同意】ヘルシンキ宣言に基づき、対象者、家族へ研究目的の説明し同意を得た。

    【結果】転帰先はA 群91 人、B 群16 人が在宅退院となり、A 群が有意に多かった。在院日数はA 群36.8±40.8

    日、B 群82.9±58.0 日となり群が有意に短縮できた。早期離床訓練と退院時BI とは相関が認められ、退院時A 群

    74.52±32.85points(内在宅退院患者86.9±20.4 points)、B 群46.71±37.62points(内在宅退院患者77.5±25.1

    points)とA 群のBI が有意に高かった。

    【考察】今回の研究では、離床までの日数とBI、転帰先、在院日数に関係が認められた。急性期早期離床訓練は脳梗塞片麻痺の退院時BI 向上及び在宅復帰、退院日数の短縮が確認できた。今回の研究では、発症後5 日以内に離床訓練を行った脳卒中患者に、BI、在院日数の短縮、在宅退院に対し有効な効果を発揮していた可能性が考えられる。

    【まとめ】急性期早期から離床訓練を開始する事で、退院時までにかけ脳卒中片麻痺の運動能力改善を促すきっかけとなった可能性があり、退院時の予後予測にも関与する可能性が示唆された。

  • 佐藤惇史 , 藤田貴昭 , 山本優一
    p. 60-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
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    【目的】回復期リハビリテーション病棟で重要な役割となる対象者の自宅復帰は、対象者自身の日常生活活動(ADL) 自立度に加え、家族の介護力にも依存すると考えられる。本研究の目的は脳卒中患者において、入院時から自宅復帰の可否を予測し得るADL 自立度のカットオフ値を、家族の介護力別に算出することである。

    【方法】対象は、「日本リハビリテーション・データベース協議会」の脳卒中回復期病棟版に登録された4949 名のうち、選択基準を満たし、欠損値、異常値を示すものを除外した1574 名とした。除外基準として、死亡、急変や胃瘻造設による転科、発症前より施設などの自宅以外で生活していた者とした。分析は、従属変数を自宅退院の可否、独立変数を入院時Functional Independence Measure(FIM)としたReceiver Operating Characteristic(ROC)解析を、家族の介護力無し、介護者1人、介護者2人以上の対象者および全対象のそれぞれで行った。

    【結果】介護力なしが75 点(AUC0.84、感度74%、特異度82%)、介護者1 人が62 点(AUC0.84、感度69%、特異度88%)、介護者2 人以上が48 点(AUC0.82、感度71%、特異度84%) 、全対象が56 点(AUC0.81、感度76%、特異度74%)であった。

    【考察】自宅退院の可否を分ける入院時ADL 自立度は家族の介護力によって変化すること、および定量的な基準を示すカットオフ値が明らかになった。同カットオフ値は自宅退院を見据えたADL 向上の具体的数値目標の設定に活用できると思われる。

    【まとめ】自宅復帰可否に関する脳卒中患者の入院時ADL 自立度のカットオフ値は家族の介護力によって変化する。

    【倫理的配慮】本データは、日本リハビリテーション医学会研究倫理審査会で、疫学調査の倫理指針に照らして倫理上の問題がないと確認されている。

  • 米田若奈 , 高木優太 , 遠藤敦 , 小沼亮
    p. 61-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
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    【目的】くも膜下出血発症後の続発性正常圧水頭症(以下sNPH)では,一般的にシャント術の有効性は高いとされて

    いる.臨床ではシャント術を施行し回復するまでには個人差があり,早期より予後を予見する事に苦慮する事もある.今回我々はシャント術後の機能回復に影響を及ぼし得る因子を挙げ,検討を行い,理学療法の一助となる事を目的とした.

    【方法】対象は2013 年4 月から2015 年12 月までにくも膜下出血後,sNPH によりシャント術(V-P シャント,L-P シャ

    ント)を施行した22 名(65.6±10.6 歳)女性12 名,男性10 名を対象とした.方法はシャント術前後でJapan Coma Scale,長谷川式簡易知能評価スケール,歩行能力で何れか一つの改善を2 週間以内に認められたものを早期改善群,2 週間以降の改善を遅延改善群の2 群に分けた.検討因子は年齢,sNPH の診断日から手術日までの日数,入院時のBMI 値,術前のAlb 値・血圧とし,術後の回復過程の影響を検討した.統計学的処理はMann-Whitney 検定を用い,有意水準は5%未満とし,統計ソフトはStatcel3 を使用した.今回の研究は個人情報の取り扱いに十分配慮し当院の倫理規約に沿って行った.

    【結果】BMI 値は早期改善群(13 名) で20.8±2.1kg/m<SUP>2</SUP> ,遅延改善群(9 名) で

    25.2±4.1kg/m<SUP>2</SUP>となり有意差が認められた(p<0.05).年齢,sNPH の診断日から手術日までの日数,Alb 値,血圧については有意差が認められなかった.

    【考察】今回,シャント術後の回復過程に影響する因子について後方視的に検討した.文献では脳室拡大の期間,肥満,血圧異常,低栄養が機能回復に影響する可能性があると報告されている.有意差を認めたBMI 値において,肥満傾向では腹腔内圧が上昇しシャント流量不足を引き起こす可能性がある為,機能回復に影響を及ぼす事が示唆された.今回BMI 値が一因子となったが,今後は更に症例数を重ね,影響因子を再考する事で急性期より重要とされる予後予測まで望めるのではないかと考える.

  • 長谷川智 , 幸地大州 , 渡辺真樹 , 柳澤正 , 臼田滋
    p. 62-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
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    【目的】Balance Evaluation Systems Test(BESTest)はI 生体力学的制限、II 安定性限界/垂直性、III 予測姿勢制御、IV 姿勢反応、V 感覚適応、VI 歩行安定性の6 セクション、36 項目で構成されるバランス評価指標である。バランス障害を有する患者に対する介入方針を明確化することを目的に開発されているが、各セクションと身体機能障害の関連性を明らかにした報告はない。回復期リハビリテーション(リハ)病棟入院の脳卒中患者おけるBESTest の各セクションと身体機能障害との関連性を検討することを目的とした。

    【方法】回復期リハ病棟入院の脳卒中患者のうち、同意の得られた19名を対象とした。入院後1ヶ月以内にBESTest とStroke Impairment Assessment Set(SIAS)の麻痺側下肢運動項目、下肢感覚、下肢関節可動域、疼痛、体幹筋力、非麻痺側下肢筋力を測定した。BESTest 各セクションとSIAS 下位項目間のSpearman の順位相関係数を算出した。なお、本研究は対象施設の倫理委員会の承認を得て実施し、対象者から紙面にて同意を得た。

    【結果】対象者は77.2±9.4 歳、男性12 名、女性7 名、脳梗塞15 名、脳出血3 名、クモ膜下出血1 名であった。

    BESTestはI:56.1±26.1%、II:78.4±23.7%、III:47.4±27.9%、IV:46.8±36.2%、V:53.3±31.1%、VI:35.6±32.0%、合計53.1±26.7%であった。SIAS は中央値で麻痺側股関節5、膝関節5、足関節4、表在感覚3、深部感覚3、関節可動域2、疼痛3、体幹筋力2、非麻痺側筋力3 であった。麻痺側運動項目、表在感覚は全項目と弱い~中等度の相関(r<SUB>s</SUB>=.218~.559)がみられた。体幹筋力は全項目と中等度の相関(r<SUB>s</SUB>=.427~.677)がみられた。深部感覚、疼痛、非麻痺側筋力はセクションにより弱い相関を示すか、ほとんど相関を示さなかった。

    【結論】BESTest のセクション毎で特定の身体機能障害と関連性する可能性が示唆された。今後、さらに症例数を増やし詳細な検討を行う必要がある。

  • 榎育実 , 下瀬良太 , 清水忍 , 市野沢由太 , 武村奈美 , 平勝也 , 濱川みちる , 山城貴大 , 中地祐貴 , 呉屋盛彦 , 山 ...
    p. 63-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
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    【目的】筋出力の特性を表す指標には最大筋力だけでなく、歩行等の瞬発的な動作で求められるRate of Force Development(RFD)がある。脳卒中片麻痺者の下肢の筋出力を評価した報告では、非麻痺側との比較から最大筋力よりもRFD の低下率が大きいことが報告されている。しかし、他の先行研究では片麻痺者の非麻痺側の最大筋力も低下していることが指摘されていることから、片麻痺者の下肢の筋出力特性の詳細は未だ不明な点が多い。本研究は、片麻痺者の下肢の最大筋力とRFD を同年代の健常者と比較することで片麻痺者の筋出力特性を検討することを目的とした。

    【方法】片麻痺者25 例(65±12 歳、男性13 例、右麻痺11 例)と地域在住の健常高齢者54 例(67±9 歳、男性25

    例)を対象とした。等尺性膝伸展筋力の計測時に得られる力-時間曲線の最高値を体重で標準化した値を最大筋力、筋力発揮開始時点から50ms の区間の平均勾配をRFD として算出した。解析は、片麻痺者の筋出力値における麻痺側と非麻痺側の比較には対応のあるt 検定、片麻痺者と健常者の比較には対応のないt 検定を用い、有意水準は5%とした。また、健常者の平均値を100%としたときの片麻痺者の筋出力値の比率を求めた。

    【倫理的配慮】対象者に本研究の趣旨を十分に説明した上で同意を得て測定を行った。

    【結果】片麻痺者の最大筋力とRFD はいずれも、麻痺側の値は非麻痺側に比べて有意に低値を示し、また両側ともに健常者と比べて有意に低値を示した。片麻痺者の最大筋力については、麻痺側は健常者の58.0%、非麻痺側は

    74.1%であった。一方、片麻痺者のRFD については、麻痺側は健常者の19.5%、非麻痺側は30.8%であった。

    【結論】片麻痺者の最大筋力とRFD は麻痺側、非麻痺側ともに健常者と比べて低下していることが認めれた。特に、片麻痺者のRFD は両側ともに最大筋力と比べて健常者との比率が著しく小さいことから、RFD の低下率がより大きいことが推察された。

  • 山本純一郎 , 松本直人 , 安彦鉄平 , 廣澤全紀 , 山川諒太 , 佐藤義尚 , 高城翔太
    p. 64-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
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    【目的】脳卒中片麻痺に対する体幹へのアプローチは様々なものが存在する.本研究ではコアセラピーで推薦されている運動補助器具リアライン&reg;・コア(ReaLine&reg;CORE)を用いた.体幹機能向上に対する運動補助器具での介入効果を明らかにすることを目的とした.

    【方法】脳卒中片麻痺により回復期病棟に入院した男性13 名,女性2 名の15 名を対象とした.年齢61.1±8.8 歳,測定病日100.5±39.7 日,クロスオーバー比較試験を用い,対象者をランダムに先行群(8 名)と後行群(7 名)に割り当てた.先行群は運動前後測定および器具使用での運動を実施し,1 週間の洗い出し期間を経て,運動前後測定および器具未使用での運動を実施した.後行群も方法は同様に,先行群と逆の流れで実施した.運動課題は10 種類10 分程度の運動を立位監視下にて実施した.測定項目は体幹ROM,下肢荷重力,Functional Reach Test,片脚保持時間,Time Up & Go Test,10m歩行(歩行時間,歩数)とした.各測定項目において,運動実施前後の変化率を算出した.統計は対応のあるt 検定を用い,有意水準は5%とした.尚、本研究は東京都リハビリテーション病院倫理審査委員会の承諾のもと,事前に本研究の内容を書面で説明し,同意を得て実施した. 【結果】器具未使用と比較し器具使用で介入した場合,運動実施前後の変化率で体幹ROM,FRT,片脚立位保持時間(非麻痺側),TUG(麻痺側回り),10m最大歩行(歩行時間)において有意な改善が認められた.

    【考察】脳卒中片麻痺に対し運動補助器具を使用した介入効果として,体幹の可動域が向上し,運動パフォーマンスが向上したことを明らかにした.これは,脳卒中片麻痺であっても運動補助器具によって体幹および骨盤のアライメントが改善し,体幹筋群の機能が向上できると考えられた.

  • 関田惇也 , 坂本美喜 , 渡邊裕之 , 松永篤彦 , 岩崎麟太郎 , 岩村元気 , 大野敦生 , 湯田健二 , 角南浩史 , 草場敦 , ...
    p. 65-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
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    【目的】片側性変形性股関節症(股OA)患者の下肢筋力は,患側のみならず健側においても低下が生じることが指摘されているが,健常者と比較した報告は少なく,筋力低下の出現部位や低下の程度に関する調査は未だ不十分である.そこで本研究は,股OA 患者の両側の下肢筋力を健常者と比較し,筋力低下を認める筋群とその低下の程度を把握することを目的とした.

    【方法】 対象は末期片側性股OA と診断された女性21 名(股OA 群)(63±8 歳,罹患期間:12±9 年)とした.除外基準は健側股関節に疼痛や変形を伴う者,股関節以外の運動器疾患や神経学的疾患を有する者とした.対照群は地域在住健常女性47 名(63±12 歳)とし,下肢関節痛を伴う者は除外した.両側の股関節の外転,伸展,屈曲,ならびに膝関節の伸展,屈曲の等尺性筋力を測定した.測定にはhand-held dynamometer(μTas F-1,Anima)を用い,トルク体重比を算出した.対照群の筋力値は両側を平均して求めた.統計的解析は対照群と股OA 群における筋力の差異をt検定を用いて比較し,有意水準は5%とした.また,対照群の筋力値を100%としたときの股OA 群の筋力値の比率を求めた.なお,本研究は当院の研究倫理委員会で承認を得て実施した.

    【結果】 対照群の筋力(Nm/kg)は,股屈曲1.27±0.21,股伸展1.43±0.41,股外転1.29±0.26,膝伸展

    1.41±0.34,および膝屈曲0.69±0.18 であった.股OA 群の患側筋力は対照群と比べて全ての部位で有意に低く,股屈曲は対照群の50%,股伸展56%,股外転56%,膝伸展71%,および膝屈曲71%であった.一方,股OA 群の健側筋力は,膝伸展以外の全ての部位で有意に低く,股屈曲は対照群の79%,股伸展81%,股外転65%,膝伸展89%,および膝屈曲74%であった.

    【結論】 片側性股OA 患者であっても,下肢筋力は患側および健側ともに低下しており,患側の筋力は最大で健常者の5 割,健側では6 割までに低下していることが推察された.

  • 浮貝美穂 , 渡部幸司 , 渡邉善行 , 大槻暁
    p. 66-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
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    【目的】当センターは昨年、人工股関節全置換術(以下、THA)に対する術式として、前方アプローチ(以下、DAA)と、後方アプローチ(以下、PA)の両方を行っていた。DAA は低侵襲侵入法のひとつであり、PA と比較して機能回復がより早期であると報告されている。しかし、入院期間については報告によって結果が異なり、一定の見解が得られていない。そこで、当センターにおいてDAA 群とPA 群を比較し、検討した。

    【方法】平成27 年4 月1 日から平成28 年3 月31 日までに当センターでTHA を施行した24 名を対象とした。DAA 群は9 名(男性1 名、女性8 名)、PA 群は15 名(男性1 名、女性14 名)であった。各群の基礎情報の値は、年齢はDAA 群72.8 歳、PA 群69.5 歳、BMI はDAA 群24.5kg/m&sup2;、PA 群21.5 kg/m&sup2;と有意差は認められなかった。各群の術後入院日数を対応のないt 検定にて比較した(有意水準5%)。さらに、手術前のDAA 群とPA 群、退院時のDAA 群とPA 群の歩行能力を独歩、杖歩行、バギー歩行、車椅子の4 段階とし、Mann-Whitney 検定にて比較した。なお、データは個人が特定できないように管理して行った。

    【結果】DAA 群の術後入院日数は23.3±7.7 日(平均±標準偏差)、PA 群の術後入院日数は34.6±10.1 日となり、

    2 群間に有意差を認めた。手術前のDAA 群とPA 群、退院時のDAA 群とPA 群の歩行能力に有意差は認められなかった。

    【考察】早期退院を目指す際に、歩行能力の獲得が必須である。今回、手術前、退院時の歩行能力に有意差が認められなかったことより、手術方法が入院期間に影響を及ぼす一つの要因となり得るのではないか。しかし、当センターのプロトコールでは、DAA に比べPA は1 週F.W.B.になるのが遅い。そのため手術の侵襲の違いが早期の歩行獲得を齎したとは言えない。今後の課題は、術式により侵入方法に違いがあるため介入方法が異なることを考慮し、治療を行う必要があると考える。

  • 鈴木則幸 , 川井誉清 , 山本晋士 , 神川康也
    p. 67-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
    会議録・要旨集 フリー

    【目的】当院では人工股関節全置換術(以下THA)に対し、THA 術前後の評価として日本整形外科学会股関節疾患評価質問表(以下JHEQ)を用いている。斎藤らはJHEQ スコアに術後3 ヶ月以降有意差はないと報告しており、術後3 ヶ月におけるJHEQ スコアを向上させることが重要と考える。本研究の目的は、THA 術後3 ヶ月において良好群・不良群に分類し、不良群に関連する因子を検討することを目的とした。

    【方法】対象は片側THA を施行し、術後3 ヶ月まで経過観察可能であった48 名(男性12 名、女性26 名、年齢

    67.7±8.8 歳、全例変形性股関節症、前方アプローチ)とした。除外基準は術後合併症例、両側THA 例とした。対象者にはTHA 術後3 ヶ月に術側・非術側の股関節可動域(以下ROM:屈曲、伸展、外転、内転、外旋、内旋)、JHEQ を測定した。検討項目は術後3 ヶ月JHEQ スコアを60.0 点(中央値)で良好群、不良群の2 群に分類し、年齢、体重、BMI、ROM、術後3 ヶ月JHEQ 総点、JHEQ(痛み、動作、メンタル)とした。統計処理は、SPSSver17.0 を使用し、各項目についてMann-Whitney`s U test を行い有意水準は1%とした。対象者にはヘルシンキ宣言に基づいて研究の趣旨を十分に説明し、同意を得た上で研究を行った。

    【結果】屈曲は不良群90.4°、良好群102.3°、伸展は不良群2.1°、良好群6.0°、外旋は不良群22.2°、良好群

    32.5°、痛みは不良群21.4 点、良好群26.4 点、動作は不良群9.7 点、良好群20.7 点、メンタルは不良群13.4 点、良好群24.4 点、JHEQ 合計点は不良群44.4 点、良好群71.57 点であった。

    【考察】成嶋らは不良群では痛み、動作、メンタル項目が低く、改善度が満足度に影響すると報告している。本研究結果では、術後3 ヶ月における不良群の関連因子として、特にJHEQ 総点、痛み、動作、メンタルに関連がみられたことから、成嶋らの報告に類似して痛み、動作、メンタル項目の合計点が低いほど術後3 ヶ月においても不良群となる傾向にあった。

  • 小柳健太 , 本間大介 , 中村暢之 , 中村可愛 , 堀川昌子 , 白井信行 , 本間大輝 , 長岡小夏 , 礒辺純代 , 五十嵐佳南 , ...
    p. 68-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
    会議録・要旨集 フリー

    [はじめに,目的]変形性股関節症患者は人工股関節全置換術(以下,THA)後,靴下着脱動作の獲得に難渋する.

    靴下着脱動作は可動域に着目した報告が多いが,筋力との関係に関する報告は少ない.その為,本研究の目的は片側THA 施行症例を対象とし,靴下着脱動作と術前股関節周囲筋力との関係を明らかにすることとした. [方法]対象は2015 年4 月から2016 年1 月に当院で片側THA を施行した7 症例(男1,女6,年齢66.5±9.5 歳,身長

    149.4±11.4cm,体重52.6±8.8kg)であった.術前評価より,後方視的に分析した.抽出項目は,術前の体幹筋力(屈曲,伸展),股関節筋力(屈曲,伸展,外転),膝関節筋力(屈曲,伸展),荷重時痛(NRS),術後靴下動作獲得日数とした.各筋力の評価はハンドヘルドダイナゴメ-タ-(徒手筋力計モ-ビィ MT-100,酒井医療社製)を使用した.体幹屈曲,伸展筋力の計測は遠藤らの報告に準じ,股関節,膝関節筋力の計測は徒手筋力検査の肢位に準じた.各筋力の計測は等尺性収縮にて計測し,各対象者の最大値を体重で除し正規化した値を代表値とした.各項目の関係はピアソンの相関係数を用い,有意水準はp<0.05 とした.尚,本研究はヘルシンキ宣言に則り実施され,対象者には本計測や評価の趣旨について口頭と書面にて十分な説明を行い,書面にて同意を得た上で行われた.[結果] 靴下動作獲得日数は16.4±4.5 日で,股関節屈曲筋力(1.0±0.5N/kg,r=-0.84),膝屈曲筋力1.0±0.3N/kg,r=-0.8),体幹伸展筋力(1.5±0.5N/kg:r=-0.79),荷重時痛(5.7±2.4,r=-0.76)と有意な負の相関を示した. [考察]靴下着脱動作は体幹の保持と下肢の引付けが必要になる.その為,靴下動作獲得日数と体幹伸展筋力や股関節,膝関節の屈曲筋力に有意な負の相関を示したと考えた.[まとめ]術前の体幹,下肢筋力は靴下着脱動作の早期獲得に影響を与える可能性が示唆された.

  • 大野敦生 , 関田惇也 , 豊田裕司 , 岩村元気 , 湯田健二
    p. 69-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
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    【目的】臨床上,腰痛を呈している患者において骨盤水平面アライメントの左右差により,姿勢に問題が生じていると疑われる患者を多く経験する.この骨盤水平面アライメントは内方腸骨(以下,インフレア),外方腸骨 (以下,アウトフレア) で表現されることがあるが,明確な測定方法は存在しない.そこで本研究は骨盤水平面アライメントの評価法に関する検討を行った.

    【方法】対象は腰部疾患を有している成人男女30 名(年齢67.8±12.5 歳)とし,特定の放射線技士により撮影された第2 仙椎棘突起レベルでの骨盤水平面におけるCT 画像を用い,左右の寛骨の角度と第2 仙椎棘突起と寛骨下端との距離(以下,2 点間距離)を計測した.左右の寛骨の角度は仙骨前面を基準とし,寛骨の上端と下端の結んだ線との成す角度で算出した.加藤らが提唱する方法に準じて,角度を左右で比較し,角度が大きい側をアウトフレア,小さい側をインフレアと定義し,左がアウトフレアであるものをアウトフレア群,反対に左がインフレアであるものをインフレア群と

    した.2 点間距離に関しては左右の和に対する左の長さの割合(以下,比較距離)を算出した.そして両群における比較距離の差を比較検討するため,t-検定を行った.有意水準は1%とした.

    【説明と同意】ヘルシンキ宣言に基づき,目的及び方法を説明し同意を得た.

    【結果】骨盤水平面アライメントにおいてアウトフレア群が14 名,インフレア群が16 名であった.比較距離はアウトフレア群で48.64±1.88%,左インフレア群で52.12±2.27%であり,インフレア群が有意に長かった(p<0.01).

    【考察】2 点間距離はアウトフレアに対し,インフレアであると長くなる傾向を認めた.そのため,アウトフレアとインフレアを判別する際に,左右の2 点間距離を比較することが有用である可能性が示唆された.

    【理学療法学研究としての意義】本研究は骨盤水平面アライメントの客観的評価方法を確立する際の一助となる.

  • 川島雄太 , 岩崎翼 , 入山渉 , 金子貴俊
    p. 70-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
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    【はじめに】人工膝関節全置換術(以下、TKA)後の1 年後にVisual Analog Scale(以下、VAS)が40mm 以上であった症例が13.1%であったと報告され、術後の疼痛が問題視されている。しかし、術後早期から1 年時の疼痛に影響する因子を検討した報告はない。

    【目的】術後1 年時の疼痛に影響する術後3 ヶ月時の因子を明らかにすること。

    【方法】対象は、当院にて平成25 年4 月から平成27 年3 月にTKA を施行した患者のうち、1 年後まで追跡可能であった128 名(男性19 名、女性109 名;平均年齢72.8±6.3 歳)とした。評価期間は術後3 ヶ月・1 年とした。評価項目は膝関節可動域(以下、ROM)の屈曲・伸展、膝伸展筋力、日本版膝関節症機能評価尺度(以下、JKOM)、歩行時痛とした。歩行時痛はVAS を用いて100mm 法で測定した。先行研究に基づき、術後1 年時にVAS が40mm 以上ある群を疼痛残存群、40mm 未満の群を良好群として2 群に分類した。術後1 年時の歩行時VAS を目的変数、術後3 ヶ月時の歩行時VAS、膝ROM、膝伸展筋力、JKOM の下位項目を説明変数として多重ロジスティック回帰分析を行った。選択された項目に対してROC 曲線を用いて、術後3 ヶ月時のカットオフ値を算出した。有意水準は5%とした。なお、事前に研究内容を十分説明し、同意を得られた者のみを対象とした。

    【結果】術後1 年の歩行時痛に影響を与える因子としてJKOM の「日常生活の状態」(以下、JKOM-ADL)と歩行時VAS が選択された(P<0.01)。また、術後1 年で歩行時VAS が40mm 未満となるためのカットオフ値はJKOM-ADL

    が13 点(感度0.80、特異度0.86)、歩行時VAS が24mm(感度0.80、特異度0.79)であった。ROC 曲線下面積はJKOM-ADL が0.90、歩行時VAS は0.80 であった。

    【考察】術後1 年時の疼痛に関連する項目としてJKOM-ADL と歩行時VAS が選択された。術後3 ヶ月時点でJKOM-ADL が13 点より高い、もしくは歩行時VAS が24mm より高い患者は術後1 年で疼痛が残存する可能性が高いことが示唆された。

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