本研究では,日常生活にみられる日本語の話しことばは,遊びの中でどのように音楽的表現として生み出されるのか,また,その音楽的表現は周囲の子どもたちにどのように共有されていくのかを明らかにすることを目的とする。公立幼稚園4歳児の遊びを対象に観察を行い,遊びにみられる子ども同士の音楽的表現を対象に,内界,外界,表現界の相互作用の視点から検討した結果,次の3段階を導き出した。1.1人の遊びの場ではなく,遊びの中で友だちとのかかわりが生まれる場において,自分の感情やイメージを他者に伝えたいという欲求が生じ,表現が生み出される。2.遊びの中で生み出された音楽的表現は,友だちによって模倣され,イメージや感情の共有が行われる。3.身体的同調を伴う音楽的表現は何度も繰り返される中で,拍節的・旋律的にまとめられ,音楽的コミュニケーションによる遊びが生み出される。以上に述べた3段階で重要な役割を果たすのが,友だちの存在である。音楽的表現が遊びの中で生まれ,発展していくには,友だちとのかかわりが必要不可欠といえる。
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