保育学研究
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55 巻, 2 号
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<巻頭言>
第1部 自由論文
原著<論文>
  • 佐々木 由美子, 関口 吉運, 林 恵, 岡本 拡子
    2017 年55 巻2 号 p. 6-17
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/03/16
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,移民を多く受け入れ,就学前教育改革を積極的に行ってきたドイツの保育実践から,日本の多文化共生保育のあり方を検討することである。本研究では,NRW州の教育指針の検討と少年局への聞き取り調査,及び外国人児童が在籍する5つの保育施設において観察と聞き取り調査を行い,制度と保育実践との両面から,その実態を捉えた。

    その結果,就学前教育において,①公的支援の充実,②早期言語教育の実施,③外国人保育者による保育,④保育者への研修制度の充実,⑤Bildung理解に基づく保育実践が行われていることが明らかになった。これらは,日本の多文化共生保育実践にも示唆を得るものであり,それを実現化する必要があると考える。

  • 川嶋 健太郎
    2017 年55 巻2 号 p. 18-28
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/03/16
    ジャーナル フリー

    本研究では子どもの選択・意思決定を支援するプロセスの全体像を理解するために,幼稚園教諭9名を対象に幼稚園における選択場面での支援について半構造化面接によるインタビューを実施し,修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチ(M-GTA)によって意思決定の発達への幼稚園教諭の支援について質的に検討した。この結果,24の概念と5つのカテゴリーが生成された。子どもの選択・意思決定場面において幼稚園教諭の行う支援のプロセスは次のようなものであった。「支援の準備」では幼稚園教諭は日常の保育で子どもを理解し,選択肢について教育する。次に個々の選択場面で「子どもが選べる選択肢を設定」する。「迷いへの支援」では迷う子どもを見守り,選択を促す。「拒否への支援」では選択を拒否する子どもを見守り,必要ならば説得をする。「こだわりへの支援」では適切な選択をするよう誘導する。

  • 湯浅 阿貴子
    2017 年55 巻2 号 p. 29-39
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/03/16
    ジャーナル フリー

    本研究は,ゲーム遊びに生じる「ずる」への保育者のかかわりについて明らかにすることを目的とした。10名の保育者の逐語録をM-GTAによって分析し,保育者の実践知を図式化した。その結果,保育者のかかわりは《実態を把握する》カテゴリーから《かかわり方の判断》カテゴリーを通して,《教育的かかわり》カテゴリーへと段階を経ていることが示された。そして,保育者は個々の幼児のルールに対する認識によってかかわり方を変化させており,「ずる」に対して問題意識をもつ幼児が出てくる時期を指導の基点としていた。「ずる」に対するかかわりは,〈権威的かかわり〉と,〈認知葛藤的かかわり〉を中心としていることが明らかとなった。

  • ―解決に至らない事例に着目して―
    松原 未季
    2017 年55 巻2 号 p. 40-51
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/03/16
    ジャーナル フリー

    本論文は,幼稚園5歳児は他児の対人葛藤場面に対し,必ずしも解決に至らなくてもなぜ介入を試み続けるのかということを明らかにした。その手法として,5歳児の対人葛藤場面におけるフィールド観察を行った。

    5歳児は,単純な対人葛藤場面しか解決できず,解決に至った事例は少数であったが,頻繁に介入はしていた。5歳児は葛藤状況を理解できない場合にも,介入児同士が情報収集し,意見交換して,葛藤を終結させようと努めていた。また,5歳児は,当事者に葛藤の原因を正確に理解させようとしたり,当事者を何とか説得しようとしていた。さらに,5歳児の介入によって,当事者同士の関係修復や遊びの継続などの状況転換が図られていた。

    これらの結果から,5歳児にとっては,葛藤を解決させること以上に,困難な葛藤場面において状況転換や当事者の心情理解を図り,試行錯誤して介入すること自体に意義があることが示唆される。

  • 甲賀 崇史, 根ケ山 光一
    2017 年55 巻2 号 p. 52-63
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/03/16
    ジャーナル フリー

    保育所のテラスにおける幼児の靴履き行動を観察した。テラスと地面との間にある段差の高さは27㎝であった。1歳児では,テラスの上で足を空中に浮かせたまま踵を押し込む履き方が観察された。2歳児のなかには,一旦靴を地面に落としてから拾い上げて空中に浮かせたまま踵を押し込む子どもがみられた。多くの3歳児が,テラスの上で靴を面に押し付けて固定した状態で靴を履いていた。4歳,5歳児になると,一旦地面に落として拾い上げテラスの縁に靴を押し付けて履いたり,地面に落としてそのまま履いたりする子どもが観察された。以上の結果から,子どもは一人で靴を履けるようになった後も,日々の生活のなかで新しい履き方をみつけ変更していることが示唆された。

  • ―2歳児から4歳児までの3年間の縦断的検討―
    松井 愛奈
    2017 年55 巻2 号 p. 64-72
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/03/16
    ジャーナル フリー

    保育における物的環境の想定外の使い方について,保育所における2歳児から4歳児まで3年間の縦断的観察調査を行った。想定外の使い方により本来の想定とのずれが生じ,視覚的刺激となってその使い方を用いた遊びが浮き彫りになること,子どもの発想力を軸としながら,(1)おもしろさ,(2)遊びの発展,(3)物とかかわる経験,(4)相互作用のきっかけが生まれることが見出された。また,年齢とともに,想定外の使い方が共有され,遊びの発展につながっていた。安全が保障されていれば,想定外の使い方を認めることは,保育において子どもの遊びを育む一助となることが示唆される。

  • ―幼児への言葉かけの内容に着目して―
    小川 翔大, 原田 理恵, 中澤 潤
    2017 年55 巻2 号 p. 73-84
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/03/16
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,虫飼育活動に熟達した保育者の実践を通して,虫飼育活動における保育者の幼児に対する質の高い働きかけを明らかにすることである。調査1は,虫飼育活動に熟達した保育者を観察して,虫飼育活動中の保育者の言葉かけの内容を検討した。調査2と調査3は,熟達した保育者クラスの5歳児と他クラスの5歳児で,「チョウの知識」,「虫との接触経験」,「命の理解」,「幼虫に触れない幼児への助言」の違いを検討した。それらの結果,保育者の「虫に対する感情の表現」や「虫の扱い方」の言葉かけは幼児の虫や仲間との交流を促していた。さらに,保育者の「虫の知識」の言葉かけが幼児の虫への興味と虫の知識の獲得を促していた。

  • 林 牧子, 髙橋 敏之
    2017 年55 巻2 号 p. 85-96
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/03/16
    ジャーナル フリー

    本論の目的は,集団フィンガーペインティングの体験が,保育者の自己理解及び子ども理解の深化と,保育者の専門性の向上に与える影響を明らかにすることである。大学3年時に集団フィンガーペインティングを体験した現保育者12名を対象とし,同様のワークを実施した後の面接データを基に,修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いて分析した。分析の結果,学生時代には出現しなかった,子どもの心情の理解に対する意識が表出し,そこから保育者としての自分を振り返って専門性について言及する思考の流れが確認された。また,集団フィンガーペインティングが有する独自性が,保育者の子ども性を喚起させ,子どもの心情の間主観的理解を促し,保育者の専門性を意識させることが明らかになった。

  • 太田 研, 遠藤 愛, 大石 幸二
    2017 年55 巻2 号 p. 97-108
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/03/16
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,幼児の身体画の描出に能動的触知覚活動が効果的に作用するのかを検証することであった。都内幼稚園と埼玉県内保育所の年長児58名が参加した。能動的触知覚活動は,カブトムシふれあい活動,サツマイモ掘りや泥団子作りであった。身体画を評価するために,能動的触知覚活動前後に,参加児は活動の様子を画用紙上に描いた。データは,グッドイナフ人物画知能検査の判定基準をもとに算出された身体描出得点であった。能動的触知覚活動前後の身体描出得点の差を統計的に検定した。その結果,全ての活動において,活動後の身体描出得点は有意に高かった。能動的触知覚活動により身体像が向上する作用機序について検討した。

  • ―理解しやすい表情素材と大人から見た幼児の意図表情の適切性―
    鏡原 崇史
    2017 年55 巻2 号 p. 109-119
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/03/16
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,幼児にとって理解しやすい表情素材(線画・イラスト・大人写真・幼児写真)とはどのようなものであるか,さらに,大人から見て幼児の意図表情は表情としてどの程度適切であり、理解しやすいものであるのかという点について明らかにすることである。実験の結果,表情理解に関しては,年少児頃には表情素材の種類を問わず基本的な表情の理解が可能であることが示された。表情表出に関しては,喜び表情では大人が理解しやすい表情を表出することができるものの,悲しみや怒り表情は大人から見て理解しにくい表情であることが明らかとなった。

  • 奈田 哲也
    2017 年55 巻2 号 p. 120-130
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/03/16
    ジャーナル フリー

    他者とのやりとりのあり方は,ペアの相手に対する親密性に加え,ジェンダーの影響も受けると考えられる。そのため,これらの要因がいかにペアのやりとりのあり方に影響を及ぼし,個の知識獲得の程度を異ならせるのか検討した。具体的には,5歳児にペア(ピア)で課題解決させ,その際のやりとりにおいて,どのようなサポートをペアの相手に提供していたのか分析した。その結果,親密性が高いピアの場合は,ジェンダーによってその種類は異なるものの,相手の課題理解を阻害するようなサポートが提供されており,結果として,知識獲得があまり促進されないことが判明した。

第2部 国際的研究動向
英文目次
編集後記
奥付
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