保育学研究
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53 巻, 1 号
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<巻頭言>
第1部 自由論文
原著<論文>
  • ―アイデンティティ探求の過程に着目して―
    西 隆太朗
    2015 年 53 巻 1 号 p. 6-17
    発行日: 2015/08/31
    公開日: 2017/08/04
    ジャーナル フリー
    倉橋惣三の保育者論については,主にその理論的・概念的な検討がなされてきたが,保育者の資質が単に機械論的に身につけられるものではなく,自己を通して実現されることからは,倉橋の思想も概念のみならず具体的な過程や体験を通して理解されるべきであろう。本研究では,倉橋が保育者のアイデンティティ探求の過程を描いた小説「夏子」をもとに,物語から彼の保育者論を具体的に検討する方法を取った。保育者のアイデンティティ探求の過程において,コミットメント(主体的・全人的関与;commitment),意識を超えたインキュベーション(孵化;incubation)の過程,対象とかかわって自ら学ぶことの意義が示された。また,現代に残された課題として,保育者の省察が論じられた。
  • ―INA研究所の試みを通して―
    相賀 由美子
    2015 年 53 巻 1 号 p. 18-30
    発行日: 2015/08/31
    公開日: 2017/08/04
    ジャーナル フリー
    本稿の目的は,日本の幼稚園教育の「学校評価」の課題を踏まえ,ドイツの「状況的アプローチ(Situationsansatz)」における質とその評価方法に関する研究成果を明らかにすることである。その手がかりとして,ベルリンの学術研究所であるINA (Internationale Akademie)の研究グループの成果を検討した。この研究グループでは,次の2点において成果をあげている。1点目に質とは,自明のマクロの理論と経験によるミクロの視点が融合する基本方針を構想するという,ダイナミックな取り組みによって,常に刷新されるものであることを明らかにした。2点目には,質改善の参加型アプローチである具体的な内部評価,外部評価を作成した。以上から,質の改善にかかわる様々な立場の人の自己啓発プロセスと成長プロセスの促進,さらに保育者のモチベーションを土台とした自律的な専門性の確立,および民主的な共同体としての組織開発が目指されていることを明らかにした。
  • ―判断基準としての他者参照―
    辻谷 真知子
    2015 年 53 巻 1 号 p. 31-42
    発行日: 2015/08/31
    公開日: 2017/08/04
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,幼児が規範の必要性を他者との関係を通していかに理解していくのかを明らかにすることである。幼児が他者に許可を求める発話に着目して,異なる2年度にわたる4歳児クラスを観察した。そしてエピソードを(1)幼児が規範の判断基準として参照する他者関係の構造,(2)幼児が自ら規範の必要性に気付いていくための援助について検討した。その結果,幼児が大人の権威を参照するばかりでなく,他児に対してもその意図を参照していること,さらに許可を求められた際の保育者の応答が,幼児白身に考えさせ,自ら規範の必要性に気付かせる援助につながることが明らかになった。本研究の知見をもとに,年齢・時期や保育者の応答による変容について今後検討する必要がある。
  • ―占有物・共有物に着目して―
    平野 麻衣子, 小林 紀子
    2015 年 53 巻 1 号 p. 43-54
    発行日: 2015/08/31
    公開日: 2017/08/04
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,片付け場面における経験内容を物とのかかわりという視点から明らかにすることである。3歳児男児の一年間の片付け場面を観察・記録し,得られた事例を,占有物・共有物とのかかわりの視点から分析した。片付け場面において,子どもは自分で占有し見立てたり創造したりして遊んでいた物を共有物に戻す過程を経験していた。その過程には,占有過程で得られた楽しさや物への愛着を基盤に,子ども自ら納得して物を解体し共有物に戻していく豊かな経験内容が含まれていた。また他者の創造物を通して他者の意図を読み取る経験を育む場面としての意義が明らかになった。
  • ―父母の比較から―
    石井 道子, 江上 園子
    2015 年 53 巻 1 号 p. 55-65
    発行日: 2015/08/31
    公開日: 2017/08/04
    ジャーナル フリー
    2歳児は自他が分化しはじめ,他者理解の能力に関連する自己認識能力が大きく成長する時期であり,それが共感性の発達につながる。本研究では,父親と母親との比較検討を通してどのようなかかわり方が2歳児の共感的な行動を引き出すのかを探索的に検討することを目的に,研究Iにおいて子どもへの感情表出の仕方について尋ね,研究IIにおいて夫婦と子どもの三者による自由遊び場面と共感性喚起の実験場面の観察を行った。その結果,共感性を示す要因として,父親か母親かという別ではなく,どのくらい子どもと接しているかという量的な側面とどのように普段子どもと接しているのかという質的な側面の両面での影響が示唆された。
  • 松井 剛太, 越中 康治, 朴 信永, 若林 紀乃, 鍛治 礼子, 八島 美菜子, 山崎 晃
    2015 年 53 巻 1 号 p. 66-77
    発行日: 2015/08/31
    公開日: 2017/08/04
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,保育者が障害児を含むクラスの保育経験をどのように意味づけているのかを明らかにすることであった。障害児を受け持った経験のある22名の保育者にインタビューを行い,「参加/不参加」の二項対立的構図を包含しているナラティヴを対象に分析を行った。結果,「行事」,「集団活動」,「環境構成」,「加配教員の存在」に関連する実践的示唆を得た。結論として,「安心できるように見守る」といった保育における不易性が子どもたちの学びに通じていることが再確認された。そして,脱構築実践を生み出すサイクルのために記録と議論を通した実践の見直しが必要であることを提起した。
  • 林 悠子
    2015 年 53 巻 1 号 p. 78-90
    発行日: 2015/08/31
    公開日: 2017/08/04
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,保育の過程の質を構成する保護者と保育者の関係性の視点から連絡帳の記述に焦点を当て,連絡帳の意義を明らかにすることである。ある保護者の連絡帳の1年間の記述内容を質的に分析した結果,保護者と保育者の記述内容は時間経過に伴い広がりが確認でき,以下の点が考察できた。(1)連絡帳は保護者と保育者の相互理解の進展の記録にもなり得る。(2)保護者と保育者の関係性は保育の過程の質を構成するものである。(3)保育者の保護者認識・発達観の共有が必要である。(4)保育の構造の質の改善の必要性が示唆できる。
応募要項
第2部 保育の歩み(その1)
英文目次
編集後記
奥付
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