本稿の目的は,日本の幼稚園教育の「学校評価」の課題を踏まえ,ドイツの「状況的アプローチ(Situationsansatz)」における質とその評価方法に関する研究成果を明らかにすることである。その手がかりとして,ベルリンの学術研究所であるINA (Internationale Akademie)の研究グループの成果を検討した。この研究グループでは,次の2点において成果をあげている。1点目に質とは,自明のマクロの理論と経験によるミクロの視点が融合する基本方針を構想するという,ダイナミックな取り組みによって,常に刷新されるものであることを明らかにした。2点目には,質改善の参加型アプローチである具体的な内部評価,外部評価を作成した。以上から,質の改善にかかわる様々な立場の人の自己啓発プロセスと成長プロセスの促進,さらに保育者のモチベーションを土台とした自律的な専門性の確立,および民主的な共同体としての組織開発が目指されていることを明らかにした。
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