レギュラトリーサイエンス学会誌
Online ISSN : 2189-0447
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ISSN-L : 2185-7113
10 巻, 1 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
巻頭言
特集(非臨床安全性評価の動向)
  • 斎藤 嘉朗, 齊藤 公亮
    2020 年 10 巻 1 号 p. 5-10
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/01/31
    ジャーナル フリー

    非臨床試験におけるトキシコキネティクス (TK) 試験に関しては, 従来, 多くの採血が必要なため, げっ歯類ではサテライト動物の使用が必要であった. しかし近年の機器分析感度の上昇により, マイクロサンプリングと呼ばれる少量の採血での評価が可能となってきた. マイクロサンプリングは, 主試験群動物でのTK評価が可能となるため, 毒性評価値と曝露量を個体ごとに評価しうること, また動物数の削減につながり, 動物福祉への貢献 (3Rs) が期待される. このためICH S3Aガイドラインにおけるマイクロサンプリングに関するQ & A作成が2014年に決定され, 2017年11月に最終化されて, 本邦では2019年3月に発出された. 本Q & Aは, TK評価にマイクロサンプリング技術を導入する際の留意点を述べたものである. マイクロサンプリングに関しては, わが国に比して, その導入が欧米で進んでおり, IND申請やNDA申請中の非臨床試験において使われ始めている. 特に英国では, 国立3Rs研究所が, ワーキンググループを構築し, 産官でその知見を共有し, 公開している. わが国ではAMED研究班が官民共同研究を行っており, その成果は学会などで高く評価されている. 本稿では, ICH S3A Q & A作成の背景, 内容の概説と国内外の動向について紹介する.

  • 直田 みさき, 笛木 修, 平林 啓司, 中江 大
    2020 年 10 巻 1 号 p. 11-14
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/01/31
    ジャーナル フリー

    抗悪性腫瘍薬の非臨床安全性評価に関するガイドラインは, 治療の選択肢が限られた進行がん患者の治療を目的として臨床試験を行う抗悪性腫瘍薬の開発にあたっての勧告を行うものである. 「抗悪性腫瘍薬の非臨床評価に関するガイドライン」 に関する質疑応答集 (Q & A) について」 は, 当該ガイドラインの運用において, 規制当局間または規制当局と製薬業界の間で解釈の分かれる課題に関して, 詳細で具体的な説明を加えることを目的に策定された. 本稿は, 当該質疑応答集の概要およびその作成経緯について, 作成にかかわった規制当局の立場から記載するものである.

  • 真木 一茂, 野中 瑞穂, 西村 次平, 三ヶ島 史人, 角田 聡, 直田 みさき, 西村 拓也, 平林 啓司
    2020 年 10 巻 1 号 p. 15-22
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/01/31
    ジャーナル フリー

    医薬品規制調和国際会議 (ICH) では, 世界における公衆衛生の促進を目的に, 臨床での不必要な試験を避け, 安全性および有効性が損なわれることなく動物試験を軽減するために技術的要件に関する国際調和が進められている. 主要な活動としては, 品質, 安全性, 有効性および複合領域において, 国際調和に資する技術的なガイドラインの作成が行われており, 2017年5月から2019年6月にかけて, 安全性に関するトピックについては7つのトピックについて作業部会 (専門家作業部会や実施作業部会) において進捗があった. すなわち, ICH S3A Q & A (マイクロサンプリング手法の利用に関する質疑応答集) およびICH S9 Q & A (「抗悪性腫瘍薬の非臨床評価に関するガイドライン」 に関する質疑応答集) については, ICH総会においてStep 4が承認された. ICH S5 (R3) (医薬品の生殖発生毒性試験ガイドラインの改定) およびICH S11 (小児用医薬品開発の非臨床試験ガイドライン) については, 各参加国で募集したガイドライン案に対するパブリックコメントの対応を行っている. さらにICH S1 (R1) (医薬品のがん原性試験) においては, ガイドライン改定を検討するための評価作業が実施されている. また, ICH S7B (ヒト用医薬品の心室再分極遅延 (QT間隔延長) の潜在的可能性に関する非臨床評価) およびICH M7 (R2)〔潜在的発がんリスクを低減するための医薬品中DNA反応性 (変異原性) 不純物の評価及び管理〕のQ & A作成がICH総会で承認され, それぞれの作業が開始されている.

  • 松本 清
    2020 年 10 巻 1 号 p. 23-31
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/01/31
    ジャーナル フリー

    近年, 小児用医薬品開発は医薬品開発プロセスの中で重要になってきている. 医薬品メーカーは小児医薬品開発をサポートするために戦略を立て幼若動物試験の必要性を判断する. 幼若動物試験は, 開発医薬品の臨床背景や薬理学ならびに臨床および非臨床試験データなどの既存情報を考慮し, 必要と判断された場合に小児集団への懸念に対応した試験が計画され実施される. しかし, 幼若動物試験の必要性の判断基準や試験計画の詳細について, 規制地域間での調和が十分ではなく, 幼若動物試験の実施を複雑にしている. 本レビューでは幼若動物試験に関する背景と現状を概説するとともに, ISH S11の議論も踏まえながら試験の必要性とデザインに関する要点を紹介する. さらに, 幼若動物試験に関する問題点についても議論する.

シリーズ(医薬品・医療機器評価をめぐる最近の話題)
  • Yoshiaki MARUYAMA, Satoshi TSUNODA, Yuka SAIGO, Yuka NOZAKA, Shinichi ...
    2020 年 10 巻 1 号 p. 33-40
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/01/31
    ジャーナル フリー

    induced pluripotent stem cell (iPS細胞) は, 2007年に山中らにより初めて樹立されて以来, 技術の普及と共に様々な研究が進み, 医薬品開発においては, ヒト由来iPS細胞を用いた医薬品の安全性評価や, 患者由来iPS細胞を用いた病態解析や治療薬の探索・開発への応用が期待され, またiPS細胞を利用した再生医療等製品については, 治験がはじめられたものもあるなど, 実用化に向けた取組みが進められている. 一方で, iPS細胞の利用にあたっては, iPS細胞の特徴を背景として, 特別に留意すべきポイントが存在するため, 独立行政法人 医薬品医療機器総合機構として, iPS細胞の利用の公表情報や医薬品開発へのiPS細胞の利用およびiPS細胞を利用した再生医療等製品の相談における経験も踏まえ, 現時点におけるiPS細胞の創薬および再生医療への利用についての留意点等を取り纏めた. 本稿ではその内容を紹介し, 更なる医薬品開発促進の一助としたい.

追悼文
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