非臨床試験におけるトキシコキネティクス (TK) 試験に関しては, 従来, 多くの採血が必要なため, げっ歯類ではサテライト動物の使用が必要であった. しかし近年の機器分析感度の上昇により, マイクロサンプリングと呼ばれる少量の採血での評価が可能となってきた. マイクロサンプリングは, 主試験群動物でのTK評価が可能となるため, 毒性評価値と曝露量を個体ごとに評価しうること, また動物数の削減につながり, 動物福祉への貢献 (3Rs) が期待される. このためICH S3Aガイドラインにおけるマイクロサンプリングに関するQ & A作成が2014年に決定され, 2017年11月に最終化されて, 本邦では2019年3月に発出された. 本Q & Aは, TK評価にマイクロサンプリング技術を導入する際の留意点を述べたものである. マイクロサンプリングに関しては, わが国に比して, その導入が欧米で進んでおり, IND申請やNDA申請中の非臨床試験において使われ始めている. 特に英国では, 国立3Rs研究所が, ワーキンググループを構築し, 産官でその知見を共有し, 公開している. わが国ではAMED研究班が官民共同研究を行っており, その成果は学会などで高く評価されている. 本稿では, ICH S3A Q & A作成の背景, 内容の概説と国内外の動向について紹介する.
抄録全体を表示