レギュラトリーサイエンス学会誌
Online ISSN : 2189-0447
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11 巻, 3 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
巻頭言
報告
  • 小林 江梨子, 成川 衛
    2021 年 11 巻 3 号 p. 173-179
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

    一部変更承認と,市場拡大再算定の状況について,調査することを目的とした.2008年度から2019年度までに承認された433医薬品について,2020年12月までの一部変更承認の審査レポートを(独)医薬品医療機器総合機構から,市場拡大再算定の報告について厚生労働省の中央社会保険医療協議会から情報を得た.433医薬品のうち,36.5%にあたる158医薬品が一部変更承認を得ていた.効能追加に該当する一部変更承認は,131医薬品にのべ214回行われていた.腫瘍用薬の50.5%(46医薬品)に一部変更承認(新効能)が行われており,薬効分類の中で最も多かった.一品目当たりののべ一部変更承認(新効能)の回数も,腫瘍用薬において0.87回/品目と高かった.初回承認から一部変更承認(新効能)までの期間の最小値は,薬効群別では,消化器官用薬の13.7±5.5カ月(mean±S. D.)および中央値11.0カ月が最も短かった.続いて,生物学的製剤の23.5カ月,腫瘍用薬の24.0カ月,アレルギー用薬24.5カ月であった.一部変更承認(新効能)が行われた131医薬品のうち,25医薬品に27回の市場拡大再算定が行われていた.中枢神経系用薬,その他の代謝性医薬品および腫瘍用薬で,市場拡大再算定を受けた品目が多かった.一品目当たりののべ一変回数(新効能)は,再算定対象品目では2.2回,再算定対象外品目では1.5回であった.

特集(再製造SUDを巡る最前線)
  • 武内 彬正, 大原 拓
    2021 年 11 巻 3 号 p. 181-189
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

    再製造単回使用医療機器(R-SUD)は,医療機関で一度使用された単回使用医療機器(SUD)を収集し,製造所にて分解,洗浄,再組み立て,滅菌した上で再度製造販売されるものであり,日本を含む各国においてR-SUDに関する制度が導入されている.R-SUDの特徴としては,医療機関からの収集,品質を確保した運搬,登録製造所での分解,洗浄および再組み立てがあげられる.また,製造業者は,市販後において,R-SUDのために再製造の原材料となった医療機器の変更状況を監視する必要がある.そして,製造業者は,医療機器の使用中に発生した不具合や健康被害の発生状況の監視も必要である.これらのR-SUDの特徴を踏まえて日本では制度を実装した経緯がある.日本におけるR-SUD制度の普及に向けて,これまでに,医療機関からの使用済みSUDの引き取り,製造所への運搬,製造所での受け入れ,洗浄,分解,再組み立てに関するガイドラインを取りまとめている.R-SUDの今後のさらなる普及のためには,患者への医療の質と安全性を確保した上で,R-SUDの有効で合理的な活用方法や運用をどのように行うかを議論することが必要である.

  • 水谷 光
    2021 年 11 巻 3 号 p. 191-194
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

    再製造SUDの原材料となるSUDは,国内の医療施設で使用されたSUDに限定される.つまり,医療施設が使用済みSUDを収集して提供しなければ,この再製造SUD制度は成立しない.本稿では,医療施設の手術部管理者の視線で,この収集について述べる.これは前任地の大阪労災病院の手術部で行っていたことである.どの手術室でどの品目が何個使われるかを予測し,収集用の箱を置いておく.その箱を手術室内のどこに置くかは,実際に箱に投入する看護師ら現場職員の意見を重要視して決める.手術終了後に使用済みSUDを箱に投入するタイミングや,誰が投入するかを明確にしておく.各手術室に置いていた箱をそのまま院外に搬出することはできないので,梱包し,専用トラックに積んで搬出する.看護師の業務をできるだけ少なくわかりやすくする工夫が,軌道に乗せるために最も重要である.収集から搬出までの工程の全体設計も苦労するが,看護師への周知もしくは教育も苦労が多い.しかも,ゴミではなく原材料なので,ていねいに扱うことにも留意してもらわなければならない.

  • 野村 祐介, 宮島 敦子, 植松 美幸, 蓜島 由二
    2021 年 11 巻 3 号 p. 195-204
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

    単回使用医療機器(single-use device: SUD)の再製造は,医療機関で使用されたSUDを製造販売業者の責任において適切に収集し,分解,洗浄,部品交換,再組み立て,滅菌などの必要な処理を行い,原型医療機器と同等の品質,有効性および安全性をもったSUDとして再使用できるようにすることである.厚生労働省は平成29年7月31日付けでSUDの再製造に関する新たな仕組みの創設を発表し,法整備に関する通知を発出した.再製造SUDに求められる清浄度の水準は,該当する原型医療機器の水準と同等であることが求められる.しかしながら,再製造SUDの清浄性評価に関する公的基準が国内外ともに整備されていなかったことから,再使用可能な医療機器を対象とした既存のガイドラインを参考として検討することとされている.本稿では,再使用可能な医療機器の清浄性評価に関する国内外の規格の動向,並びに主要な清浄性評価マーカである残留蛋白質および残留エンドトキシンの評価法について概説する.

  • 江嶋 敦
    2021 年 11 巻 3 号 p. 205-212
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

    2017年7月,単回使用医療機器(single-use device: SUD)の再製造に関する法体制が整備され,事業者が使用済みSUDを医療機関から収集し,分解,洗浄,部品交換,再組み立て,滅菌などの処理を行い,性能検査の上,再製造SUD(Remanufactured SUD: R-SUD)として販売することができるようになった.実際にR-SUDを販売するためには,品目ごとの承認が必要であり,現時点で2社4品目が承認されている.使用済みSUDは,感染性廃棄物と区分けをして収集・運搬する必要がある.本稿では,われわれがR-SUDを事業化するために今まで進めてきた,使用済みSUDの収集,行政との相談(厚生労働省・環境省),単回医療機器再製造推進協議会(JRSA)における活動を通じて得られた知見について述べる.

シリーズ(医薬品・医療機器評価をめぐる最近の話題)
  • 柏谷 祐司, 高山 裕典, 丸地 一世, 金子 薫, 杉原 正, 千田 俊彦, 長谷川 泰宏, 吉原 由佳莉, 阿部 享生
    2021 年 11 巻 3 号 p. 213-221
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

    日米欧においては希少疾病用医薬品の指定制度が存在するが,その指定基準に違いがある.日本においては,AMEDが2017年から希少疾病用医薬品指定前実用化支援事業を開始したが,この支援事業は開発費用の補助が中心であり,開発早期の研究開発を促進するという企業のニーズを必ずしも満たしていないと考えられた.そこで,日本での希少疾病用医薬品の開発をさらに促進できる環境にすべく,日本製薬工業協会 薬事委員会では,過去,規制当局に対し,希少疾病用医薬品の指定制度に関する要望を行ってきた.さらに,2020年,希少疾病用医薬品指定制度の現状の運用において企業が問題と考える点についてアンケート調査を行った.その結果,指定相談の際に既存薬・既存治療と比較して著しく高い有効性・安全性が示されていないことなどを理由に,指定要件を満たさないと判断された事例が多いことが明らかとなった.指定されなかったことにより開発の優先順位が下がる,開発が遅延する,開発自体を中止するなど,開発計画に影響を与えている事例が複数あった.さらに,指定された品目においても欧米と比較すると日本の指定時期は遅く,開発後期もしくは承認申請の直前に指定された事例が多くみられた.より早期に,より幅広く希少疾病用医薬品への指定が行われ,開発早期の研究開発を促進する仕組みが望まれる.

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