レギュラトリーサイエンス学会誌
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9 巻, 3 号
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巻頭言
原著
  • 崔 允瑄, 三宅 真二, 種村 菜奈枝, 漆原 尚巳
    2019 年9 巻3 号 p. 123-130
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/30
    ジャーナル フリー

    目的 : 薬学教育モデル・コアカリキュラムに規定された医薬品開発のレギュラトリーサイエンス (RS) に関する教育の実態を明らかにする. 方法 : 全国薬学部・薬科大学の2017年度シラバスから, 「医薬品開発教育に該当する科目」 を特定し, 履修学年, 単位数, 科目数, 履修区分, 一般社団法人薬学教育協議会のRS分野名簿へ登録された教員が講義をしている割合について集計した. 結果と考察 : データが得られた全大学において, 「医薬品開発教育に該当する科目」 が特定され, 78.2%の大学で必修科目とされていることから, 薬学部で医薬品開発教育が定着していることが確認され, その重要性が広く認知されていると考えられる. しかし, 単位数および科目数においてバラツキがみられることから, 教育内容の充実度は大学ごとに異なることが示唆された. 単位数, 科目数, RS名簿へ登録された教員が講義科目を担当する大学割合について, 私立大学が国公立大学よりも有意に高かった. このことより, 国公立大学よりも私立大学で医薬品開発の教育が充実している可能性がある. 結論 : 全国の薬学部においてRSに関する講義科目が定着していることが示された. 大学間での講義内容のバラツキを抑制するために標準カリキュラムを検討し, 国公立大学については特にRSを支える基礎教育のさらなる充実が求められる.

  • 八田 朋大, 三宅 真二, 山川 直利, 漆原 尚巳
    2019 年9 巻3 号 p. 131-140
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/30
    ジャーナル フリー

    医師が実施する医薬品の有効性や安全性調査を目的とした自主臨床試験の結果は, 結果の良し悪しにかかわらず既承認薬の適正使用や未承認適応症等の治療における重要な情報源であり, 治療方針の決定等に活かされる. しかしながら, 医師主導臨床試験の結果が学術論文や臨床試験登録データベースでの公表を通じて, 適切に利用されうる状況となっているかどうかは明らかではない. そこで, 本研究では臨床研究中核病院を対象に, 医師主導型の介入臨床試験の結果公表状況を明らかにすることとした. 2009年4月1日〜2015年3月31日にUMIN-CTRに登録されたものを対象に, 2017年3月1日までに試験が終了されている悪性腫瘍を対象疾患とした医師主導介入臨床試験を検索した. 対象病院は, 前述の条件を満たす試験が10を超える臨床研究中核病院とした. 主な評価項目は, 試験結果公表割合・UMIN-CTRへの結果概要入力割合とした. 対象病院および試験数は, 7病院で計142試験となった. 結果の出版割合は, 7病院全体で73.0% (102/141) であった. UMIN-CTRへの結果概要入力割合は, 4.9% (7/142) であった. 結果が出版されないことで有効に利用されていない臨床試験が約30%も存在し, 病院間でも顕著なばらつきがあることが明らかになった. 各施設で医師を含めた研究者の結果出版への動機づけを強化する必要があるだろう. また, 全病院にわたってUMIN-CTRの結果情報の入力が十分になされていなかった. 臨床研究法により, 特定臨床研究のjRCTへの登録と結果報告が義務づけられたことから速やかな結果報告が期待される.

  • 小林 江梨子, 池下 暁人, 孫 尚孝, 櫻田 大也, 佐藤 信範
    2019 年9 巻3 号 p. 141-150
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/30
    ジャーナル フリー

    後発医薬品への 「変更不可処方せん」 について調査を行った. 2018年7〜8月の任意の1週間における, 一般社団法人日本保険薬局協会の会員薬局2,667薬局で受けつけた全処方せん945,668枚のうち, 変更不可処方せんは103,378枚 (10.93%) であった. 各薬局における変更不可処方せんの割合は, 5%以下の薬局が46.38%と最も多く, つづいて0%の薬局が17.51%であった. 各薬局における変更不可処方せんの割合の平均値は10.22%であるが, 中央値は2.74%であり, 半数以上の薬局で, 変更不可処方せんの割合が2〜3%程度である一方で, 変更不可処方せんの割合の大きい薬局も存在する等, 薬局間でばらつきが大きいことが示された. 九州・沖縄地方では, 中央値が0.70%で最も小さく, 変更不可処方せんの割合が5%以下の薬局が, 75%以上を占めていた. 北海道地方では, 平均値が12.9%で最も大きく, 変更不可処方せんの割合が5%以下の薬局の割合は, 最も少なく, 61.5%に過ぎなかった. 平均値は地域によって異なっており, 北海道地方, 中部地方, 近畿地方, 四国地方で10%以上となっていた. 後発医薬品へ変更可能な処方せんにおいて, 後発医薬品へ変更しない主な理由は, 94.94%の薬局が指摘した “患者の意向” であった. そのほかの具体的な理由 (記述式) のうち, 最も多かったのは, 処方元からの口頭などによる指示であった. 過半数の薬局において変更不可処方せんの割合が小さい一方で, 変更不可処方せんの割合が大きい薬局も存在することから, このような薬局に焦点を当てた政策も必要である. 今後は, さまざまな特性の薬局を含めた調査が必要である.

  • 和田 一葉, 西村 (鈴木) 多美子
    2019 年9 巻3 号 p. 151-163
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/30
    ジャーナル フリー

    臨床試験の実施の基準 (GCP) は医薬品規制調和国際会議で調和されたガイドラインである. 医薬品医療機器総合機構 (PMDA) の信頼性保証部は, 医薬品GCP実地調査と新医薬品承認申請資料適合性書面調査をわが国で行っている. この2つのタイプの査察は原資料 (診療録, 検査伝票, 患者日誌など) から申請資料までの信頼性を保証するために重要である. 私たちは, 2013〜2017年度まで薬事・食品衛生審議会で審議された新医療用医薬品の審査報告書を用いてGCPへの適合性を調査した. 一部の医療機関で不適切な案件が発見された新医療用医薬品が4件あり, PMDAは申請者にこれらのケースを承認申請書から削除するよう求めた. その頻度は3%以下であった. 修正された承認申請資料は, PMDAの審査に受け入れられる. 治験に関するすべての情報は, 正確な報告, 解釈および検証が可能なように記録し, 取扱い, および保存することとされているが, 3品目の治験を行ったいくつかの治験実施施設では, 診療録がみつけられなかった. 一方, 新医薬品承認申請資料適合性書面調査では, 自主的な改善を求める事項の頻度が増加しており, 2017年度には12.7%であった. 私たちは, 2013〜2017年のわが国におけるCDERのバイオリサーチモニタリングの件数も調査したところ, 自主的改善を求められた治験責任医師は2名であった. わが国の治験の環境は改善しているが, データの信頼性やデータの統一性を計るさらなる努力が求められると考える.

報告
  • 森田 務, 井手 眞喜雄, 赤羽 優燿, 能城 裕希, 益山 光一
    2019 年9 巻3 号 p. 165-174
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/30
    ジャーナル フリー

    医療用医薬品から一般用医薬品への移行について日本の新たな仕組み (スイッチOTC成分の新評価システム) が2015年5月に了承され, 本システムで一般用に転用が適当なものとして公表された成分を製造販売承認申請する際には, 原則として, 添付文書理解度調査の結果を提出することとなった. 本調査の目的は, 2016年1月21日に発出された 「要指導医薬品の添付文書理解度調査ガイダンス案」 を実施するための課題を明確にすることである. 本調査は, ガイダンス案にもとづいてパイロットスタディの位置づけで実施された. 有効成分が実在しない医薬品について添付文書記載要領にもとづき, 模擬添付文書を作成し, 理解度調査をインタビュー方式で実施した. 調査の結果, 合格基準を満たさなかったものの, 本試験において見いだされた注意点をふまえ, 運用上の工夫をすることで, ガイダンス案を遵守した調査実施は可能であると推察された.

特集(添付文書記載要領の改正)
  • 木下 奈津美
    2019 年9 巻3 号 p. 175-182
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/30
    ジャーナル フリー

    平成29年6月に医療用医薬品の添付文書等の記載要領が改正され, 平成31年4月1日に施行された. 今般の改正は, 重複記載の解消, 注意事項の集約化等を図り, より理解しやすく活用しやすい添付文書等とすることを目的としている. 中でも投与に際し注意を要する患者集団への注意事項は大きく変更された. 従来の記載要領では 「禁忌」, 「原則禁忌」, 「慎重投与」, 「高齢者への投与」, 「妊婦, 産婦, 授乳婦等への投与」, 「小児等への投与」 に分散して記載されていた特定の患者集団への注意事項は, 「特定の背景を有する患者に関する注意」 の項を新設し, 集約して記載することになった. 本稿では, 改正の背景や従来の記載要領と異なる点も含め, 新しい記載要領にもとづく添付文書等を確認する上でのポイントについて紹介する.

  • 後藤 伸之
    2019 年9 巻3 号 p. 183-189
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/30
    ジャーナル フリー

    医療の進歩や高齢化, IT技術の進歩など, 医療を取り巻く状況が大きく変化していることから, 添付文書等について, より理解しやすく活用しやすい内容にするため, 「医療用医薬品の添付文書等の記載要領」 が改正された. 厚生労働省は 「処方薬の添付文書の添付説明書」 (2017年6月8日付け厚生労働省告示第0608-1号) を通知し, さらに, 日本病院薬剤師会も 「医薬品インタビューフォーム2018」 を公表した. そこで, 本稿では, 臨床薬剤師がその運用上考慮すべき点についてまとめた.

  • 古口 貴子, 金子 亜紀子, 佐藤 真苗, 宮田 直子, 大平 隆史, 鳥山 五月, 池島 幸男, 服部 洋子
    2019 年9 巻3 号 p. 191-195
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/30
    ジャーナル フリー

    医療用医薬品添付文書の記載要領は, 実際に使用する医療関係者に, これまで以上に理解されやすく, 患者指導などに役立てられることを目的に, 2017年6月に新記載要領として改正された1) . この改正は, 旧記載要領で課題としてあげられていた添付文書内での重複記載の解消や, さまざまな項目に分かれて記載されている注意事項の集約化などを図ったものである. またあわせて添付文書情報の電子化書式の変更も行われた. 今回, 医療用医薬品添付文書の新記載要領における変更の概要および製薬企業の現状ならびに課題について紹介する.

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