レギュラトリーサイエンス学会誌
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5 巻, 2 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
原著
  • Akira ONOMURA, Takamichi YAMAMOTO, Hiroshi ISEKI, Kiyotaka IWASAKI, Mi ...
    2015 年5 巻2 号 p. 111-120
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/06/11
    ジャーナル フリー
    迷走神経刺激装置(Vagus Nerve Stimulation system)は完全植込み型の電気刺激装置で,左側の迷走神経を電気的に刺激することで薬剤抵抗性のてんかん発作を抑制したり軽減したりするものである.本邦では承認されてから3年が経過し,500例以上が植え込まれたものの直接医療費の変化については未だ報告が見られない.そこで本邦においてVNS植え込みの前後2年間の直接医療費を比較することでその変化が見られるかを検討した.聖隷浜松病院は2010年7月の承認以後2013年11月までに87例を植え込んだ.2年以上の迷走神経刺激治療を受けた患者の直接医療費を後方視的に調査するとともに,植込み前2年間と植込み後2年間の薬剤費も調査した.17症例(平均年齢28.6歳,16-56歳)がこの基準に達した.総直接医療費は薬剤費を除いて,植込み前2年間では¥21,519,870だったが,植込み後2年間では¥11,597,610だった.この医療費減少は,てんかん診療に係る診察費や脳波等の検査費および画像診断費の節減に負うところが大きい.4種類の新しい抗てんかん薬が2006年以降非常に高い薬価が付いて承認されたために迷走神経刺激による薬剤費の変化を論じることはできなかった.この調査により迷走神経刺激以降は薬剤費を除く直接医療費に変化が生じていることが明示された.しかしながら費用対効果を論じるまでには至っていない.加えて本調査は植え込み前2年間と植え込み後2年間の医療費の比較のために,調査期間が短く,そのために医療費が電池寿命による交換費用が含まれていない.今後は植え替えを含めた長期調査が必要と思われる.
特集(未承認薬問題への取り組み)
  • 井本 昌克
    2015 年5 巻2 号 p. 121-134
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/06/11
    ジャーナル フリー
    未承認薬の問題への取り組みは,平成17年頃より「未承認薬使用問題検討会議」,「小児薬物療法検討会議」,「治験のあり方検討会」,「有効で安全な医薬品を迅速に提供するための検討会」を通じて,多面的に検討がなされてきた.企業へのインセンティブの不足を解消するために,平成21年度の補正予算事業「未承認薬等開発支援事業」,その後の「新薬創出・適応外薬解消等促進加算」の試行導入により,未承認薬等の解消が図られた今,更なる取り組みとして,「未承認薬迅速実用化スキーム」,「人道的観点からの拡大治験」といった枠組みの整備が始まっている.
  • 佐藤 弘之
    2015 年5 巻2 号 p. 135-140
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/06/11
    ジャーナル フリー
    未承認薬・適応外薬問題への対応は,医療上必要な未承認薬・適応外薬検討会議での検討や製薬企業が自主的に取り組むことにより多くの成果を上げてきた.しかしまだそれらの課題がすべて解決したわけではない.未承認薬・適応外薬に密接に関連するドラッグラグの問題の根本的な解決策は日本での新薬開発・審査のスピードアップである.日本の製薬企業を取り巻く環境はかなり変化してきており,新薬を創生するためにはオープンイノベーションを取り入れるなど,新たな試みが必要となる.厚生労働省は,患者さんの医薬品へのアクセスをさらに改善するために,「人道的見地からの治験への参加」や「患者申出療養」の制度を導入しようとしている.これらの制度を設計する際に留意すべき点や今後の適応外薬についての対応について述べる.
  • 藤原 康弘
    2015 年5 巻2 号 p. 141-149
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/06/11
    ジャーナル フリー
    本稿では,アンメットニーズの高い医薬品への早期アクセスを実現するために,世界中で様々な社会制度,薬事制度が導入されていることを紹介した.余命の限られた重篤な疾患を持つ患者や難病の稀少疾患に長年にわたって苦しむ患者にとって,有効性や安全性に関するエビデンスは少なくとも未承認薬に期待してしまう思いは世界共通の問題である.その気持ちを踏まえつつ,また2025年には団塊の世代が後期高齢者となり国民皆保険制度が危機に瀕することが必至な我が国に適した早期アクセスプログラムを産官学そして患者が一体となって考案していかなければならない.
  • 尾崎 雅弘
    2015 年5 巻2 号 p. 151-158
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/06/11
    ジャーナル フリー
    小児への薬物投与の8割は,効能や用法用量が未承認のまま使用される,いわゆる「適応外使用」の状況にある.欧米においては,ICH E11ガイドラインの趣旨に基づき,小児用医薬品の開発への奨励策が実施され,状況が大きく変化した.本稿では,国内外の小児医薬品開発の現状及び製薬企業で組織する日本製薬工業協会が,アカデミアと協力して,厚生科学研究を通じて,過去15年間に渡って行ってきた小児医薬品開発の推進を目指した取り組み事例を紹介する.
  • 関水 匡大
    2015 年5 巻2 号 p. 159-166
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/06/11
    ジャーナル フリー
    小児患者には適切に評価された医薬品が投与されるべきであるが,現在,小児患者のために適切に評価され小児患者に適応を持つ医薬品は限られている.EUと米国では,小児用医薬品開発のための規制が制定され,一定の成果をあげている.一方,本邦では,小児医薬品開発のための規制は存在せず,その開発は基本的には製薬企業の自主性に依存している.厚生労働省は,このような問題を解決するために小児での開発を計画した場合の再審査期間の延長や,公知申請制度,医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議の設置等の方策を取ってきた.独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)もまた,小児医薬品開発を推進するためにいくつかの取り組みを実施してきた.2011年11月には小児ワーキンググループを設立し,過去の審査・相談事例の調査と整理,海外規制当局との連携,国内のステークホルダーとの意見交換及びPMDA内部での小児医薬品開発に関する意見聴取・問題意識の共有等を行っている.また,大学,研究機関,ベンチャー製薬開発企業のための新たな治験相談である,薬事戦略相談も小児医薬品開発案件の進捗に役立っている.今後は,新薬の承認申請の時点で臨床試験データの電子的な提出を要求することを計画しており,将来において小児分野における有効性,安全性,及び用法・用量の予測への応用が期待される.
シリーズ(医薬品・医療機器評価をめぐる最近の話題)
  • 浅野 邦仁, 小室 美子, 新田 晃子, 宇山 佳明
    2015 年5 巻2 号 p. 167-172
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/06/11
    ジャーナル フリー
    本邦における国際共同治験の経験は着実に増加しており,我が国と海外との連携方法も多様化しつつある.その中で,医薬品開発の現状としては,海外が先行して行われている場合もあり,国際共同治験へ日本が参加するか否かを検討するに当たり,ヒトにおける一定のデータが外国人で得られている場合も多い.そのような外国人でのデータ等を活用することで,国際共同治験に組み入れられる日本人の安全性が確保される場合には,国際共同治験に日本が参加する前に,必ずしも日本人での第Ⅰ相試験を実施しないことが許容される場合もあると考えられる.今般,これまでに集積されたこれらの知見を踏まえ,「国際共同治験開始前の日本人での第Ⅰ相試験の実施に関する基本的考え方について」(事務連絡)が発出された.本稿では,本事務連絡が発出された背景や留意点を含めて,国際共同治験開始前の日本人での第Ⅰ相試験の必要性について説明する.
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