心臓
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特集号: 心臓
47 巻, SUPPL.1 号
選択された号の論文の38件中1~38を表示しています
第27回 心臓性急死研究会
  • 大野 雅文, 西岡 健司, 山路 貴之, 森田 裕一, 橋本 東樹, 播磨 綾子, 大井 邦臣, 臺 和興, 岡 俊治, 中間 泰晴, 西楽 ...
    2015 年 47 巻 SUPPL.1 号 p. S1_104
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/12/14
    ジャーナル フリー

     致死的不整脈, 重症虚血心が原因で循環虚脱をきたした場合bridgeとしてPCPSは非常に有用なデバイスであり, その予後改善に大きく寄与している. 救命救急センターを有する当院において, 年間十数例がPCPS導入となる. 急性前壁心筋梗塞による循環虚脱後, PCPS導入下で虚血心を再灌流し, その後低体温療法併用することで社会復帰を果たした1例を経験した.

     これを踏まえて, 当院における2012/4/1~2014/4/1までの2年間のPCPS導入例とその転機について検討した. 2年間で当院にてPCPS導入された症例は23例であった. 病名の内訳は心筋梗塞が14例 (61%) で, 8例 (35%) が左主幹部病変であった. PCPS離脱例は11例 (47%) で, 生存退院8例 (35%) であった.

     転機詳細と合併症について文献的考察を加えて報告する.

  • 武 寛, 伴場 主一, 大原 美奈子, 林田 晃寛, 廣瀬 英軌, 廣畑 敦, 山本 桂三, 吉田 清, 大江 透
    2015 年 47 巻 SUPPL.1 号 p. S1_105
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/12/14
    ジャーナル フリー

     軽度の漏斗胸を認める16歳男性. 高校入学時よりボクシング部に入部. 練習で初めて胸部にパンチを受けた際に失神. AEDで心室細動を認め, 電気的除細動を施行. 神経学的後遺症なく回復し, 精査のため当院紹介. 12誘導心電図では, 高位助間で不完全右脚ブロックを認めるも, サンリズム負荷は陰性, 加算平均心電図も陰性であった. 心エコーでは, 左室収縮能は良好で, 冠動脈CTでも異常は認めなかった. 心臓MRIでは器質的心疾患はなく, 遅延造影も陰性であった. 電気生理学的検査で, 右室心尖部, 右室流出路からの3連期外刺激を行うも心室細動は誘発されず. 漏斗胸のためCT上, 胸骨後面は右室前面に接しており, 胸部へのパンチが心臓振盪を引き起こしたと考えられた. 心臓振盪を再現するために, 心室単回期外刺激をR on Tとなるタイミングで行ったが, 最大3連発の心室期外収縮を認めるのみであった.

     ボクシングの練習中に心臓振盪を起こした漏斗胸の1例を経験したので報告する.

  • 須藤 洸司, 梅谷 健, 徳増 芳則, 出山 順太郎, 牧野 有高, 佐野 圭太, 中村 政彦, 小林 辰輔, 岩瀬 史明
    2015 年 47 巻 SUPPL.1 号 p. S1_106-S1_111
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/12/14
    ジャーナル フリー

     背景 : 10代の心原性院外心肺停止の症例数は少なく報告は限られている. 過去6年間の当院の症例を検討する.

     対象 : 2009年1月から2014年8月までに当院救命センターに搬送された10代の心原性院外心肺停止症例の全6例.

     結果 : 発症は学校で5例, 自宅で1例. 学年別では高校生5例, 小学生1例であった. 転帰は2例で救命に成功し独歩で退院となった. 救命し得た1例は急性期に多形性心室頻拍を認め, ICD植え込みを行った. もう1例は冠攣縮性狭心症の診断で内服加療中である.

     結論 : 1) 6例のうち, 学校で発症した5例中2例では現場で迅速にAEDが使用され, 病院到着前に除細動された. 救命には早期の除細動と現場での蘇生処置が予後の改善に重要である. 2) 6例はいずれも事前の検診でQT延長症候群, Brugada症候群などの心電図異常や突然死の家族歴は指摘されていないか, 精査中の症例であった. 事前に突然死症例を認識することは現時点では困難であった.

  • 長谷川 祐, 遠藤 彩佳, 不破 貴史, 山崎 祐, 平田 直己, 高橋 寿由樹, 中川 晋
    2015 年 47 巻 SUPPL.1 号 p. S1_112
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/12/14
    ジャーナル フリー

     31歳, 男性. 通勤電車内で意識消失した. Bystander CPRが行われ, AEDで心拍再開, 当院に搬送された. 低体温療法で後遺症なく回復, 心臓の精査を行った.

     AEDの心停止時波形はVfであった. 安静時心電図, 心エコー, 心臓MRIに明らかな異常なし. ピルジカイニド負荷試験は陰性. EPSでVT/Vfの誘発なし. 冠動脈造影で狭窄はなかったが, アセチルコリン負荷で胸痛を伴わない冠攣縮が出現した. またエピネフリン負荷試験でQT延長を認め, LQTが疑われた. 本人, 家族と相談し, 内服治療は行わずICD植え込みのみで退院した. 患者には一卵性双生児の弟がいたが, 弟の心電図, 心臓MRIに異常を認めなかった.

     本例のように負荷試験で冠攣縮を認めても, それが心肺停止の原因と断定できない場合, 治療方針の判断は難しい. また一卵性双生児の兄弟がいる場合, 兄弟にどこまで検査を行うべきか指針はない. 興味深い症例と考え報告する.

  • 會田 悦久, 山内 洋一, 山口 智也, 佐藤 裕太, 齋藤 兄治, 石澤 議也, 大西 基喜
    2015 年 47 巻 SUPPL.1 号 p. S1_113-S1_117
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/12/14
    ジャーナル フリー

     はじめに : 平成26年11月末日現在, ドクターヘリは1道1府34県43施設が基地病院となり運用されている. 今回, 我々の施設のドクターヘリで対応した院外心肺停止症例に対して検討した.

     方法 : 当院を基地病院として出動した平成26年11月30日までの34カ月間における院外心肺停止症例を検討した. 心肺停止症例に関しては現場診療中に心肺停止に至った症例も含めた.

     結果 : 対象症例は82症例であった. 救急現場症例が77症例, 転院搬送症例が5症例であった. 緊急現場症例77症例について詳細に検討した. 男性が58症例, 全体の平均年齢が64.6歳であった. 内因性疾患が38症例, 外因性疾患が39症例 (外傷症例が23症例, 溺水が10症例, 窒息が3症例, 縊死症例が3症例) であった. 入院症例は13症例で内因性疾患が11症例であり, 生存退院は6症例で内因性疾患5例であった.

     結論 : 初期波形が除細動可能波形症例における生存退院率は45.5%と高く, ドクターヘリの介入の効果があった一方で, 外因性疾患における院外心肺停止症例は, 入院までも辿りつけない症例が多く, 心肺停止に至る前の早期の介入がより一層必要と思われた.

  • 住居 晃太郎, 清水 嘉人, 山本 佳征, 三保 成正, 蓼原 太, 五明 幸彦, 岡田 健志, 三井 法真
    2015 年 47 巻 SUPPL.1 号 p. S1_118-S1_122
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/12/14
    ジャーナル フリー

     急性広範型肺塞栓症で心停止後にPCPS装着し緊急手術で救命した2症例を報告する.

     症例1 : 64歳女性. 急性散在性脳脊髄炎のため当院脳外科に入院しステロイドパルス療法が施行された. 退院当日の朝, 車イス移乗後呼吸困難が出現した. 緊急造影CTで, 左右肺動脈中枢側に多量の血栓像を認めた. 人工呼吸管理しショック状態を安定化させた後に, 緊急手術のため他院へ救急搬送された. 救急車内でCPAとなり他院救急外来に引き継ぎCPRを1時間半継続しPCPS装着後, 肺動脈塞栓除去術が施行された. 術後経過良好で退院した.

     症例2 : 64歳女性. 両膝痛を我慢していた. ある朝, 胸部絞扼感, 呼吸困難出現した. 倒れているところを家族が発見し救急要請した. 救急隊到着時, ショック状態で, 救急車内でCPAとなりCPR開始し心拍再開した. 当院到着後再びCPAとなり, 気管挿管しPCPSを装着後, 意識回復した. 造影CTで, 左右肺動脈一次/二次分枝に血栓を認めた. 緊急手術のため他院へ搬送され, 肺動脈塞栓除去術が施行された. 経過良好で退院した.

  • 嘉澤 脩一郎, 矢崎 義直, 冨士田 康宏, 朴 有紀, 寳田 顕, 五関 善成, 冨山 博史, 近森 大志郎, 山科 章
    2015 年 47 巻 SUPPL.1 号 p. S1_12-S1_18
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/12/14
    ジャーナル フリー

     症例は50歳代の女性. 2007年健診にて心電図 (ECG) 異常を指摘された. 心臓超音波検査 (UCG) では, 中等度~重度の三尖弁閉鎖不全と右心系の拡大を認めた. 症状は労作と関係のない軽い息切れを時々認めるのみで, 年1回のUCGにて経過観察されていた. 2014年エアロビ中に突然心肺停止となった. ECG, UCGでは右室負荷所見を認めたが, 造影CTにて肺動脈血栓塞栓症は否定的であった. 上記所見に加え, 突然の心室細動を起こした症例であり, 不整脈源性右室心筋症 (ARVC) が疑われた. 心筋生検病理像にて心筋組織に混在した脂肪組織を認め, ARVCの診断に至った. ARVCは症状が乏しく早期診断が困難な場合もあり, 初発症状が心室細動の1例を経験したので報告する.

  • 安藤 薫, 宮本 卓也, 熊谷 遊, 橋本 直明, 石垣 大輔, 山浦 玄斎, 大瀧 陽一郎, 和根崎 真大, 舟山 哲, 佐々木 真太郎, ...
    2015 年 47 巻 SUPPL.1 号 p. S1_123-S1_126
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/12/14
    ジャーナル フリー

     症例は57歳, 男性. 胸背部痛を主訴に当院へ搬送された. 来院時, 血圧60mmHg台の心原性ショックで肺水腫を呈していた. 心電図は左脚ブロック. 心エコーでは全周性の壁運動低下を認めた. 胸部CTと冠動脈造影の結果, 左冠尖に限局した大動脈解離による心原性ショックと診断し, 緊急手術を行った. 術中所見では左主幹部から2mm頭側のValsalva洞に限局した大動脈解離を認めた. Bentall手術を施行したが, ポンプ失調による多臓器不全にて第15病日に死亡した. Valsalva洞に限局した大動脈解離は非常に稀ではあるが, 致死的となる. 救命の鍵は的確な診断および迅速な外科的治療により心筋虚血時間をなるべく短くすることである. 手術までのbridgeとしての冠血流維持も重要であり, 文献的考察を含め報告する.

  • 大場 豊治, 馬渡 一寿, 福本 義弘
    2015 年 47 巻 SUPPL.1 号 p. S1_127
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/12/14
    ジャーナル フリー

     大動脈瘤は日常診療において, 頻繁に遭遇する疾患である. 5cm以上の大動脈瘤は, 破裂率が高いため, 未然に治療することが多い. 高齢化社会の進行に伴い, 同疾患は増加傾向にあり, もっとも悪い経過である破裂を未然に防ぐため, 早期発見と治療介入が重要である. 胸部大動脈瘤の破裂時期や瘤径の拡大速度を予測することは困難であるが, 胸部大動脈瘤の瘤径が50~60mmでの心血管事故率は年間6.5%, 60mm以上で年間15.6%とされる. 瘤径や拡大傾向の有無に応じて, 定期的にCTまたはMRIにより, 径や形態の変化を評価する必要がある.

     今回我々は急激に増悪し, PCPSなどの処置を用いても救命できなかった胸部大動脈瘤症例を経験したので報告する.

  • 芳沢 礼佑, 小松 隆, 佐藤 嘉洋, 椚田 房紀, 小澤 真人, 上田 寛修, 森野 禎浩, 中村 元行
    2015 年 47 巻 SUPPL.1 号 p. S1_128-S1_136
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/12/14
    ジャーナル フリー

     症例は73歳, 女性. 2012年5月頃から労作時息切れを自覚した. 自覚症状は徐々に増悪傾向であったが, 近医で施行した心エコー図検査やホルター心電図では異常所見を認めなかった. その後も自覚症状が改善しないため当科外来へ紹介となった. トレッドミル運動負荷試験, ホルター心電図では運動誘発性に2 : 1~3 : 1の房室ブロックが出現したため, 精査加療目的に当科へ入院した. 心臓造影MRIでは心筋に信号異常や異常濃染を認めなかった. 冠動脈造影検査では冠動脈に有意狭窄や起始異常を認めなかった. 心臓電気生理学検査 (EPS) を施行し, 無投薬下 (コントロール) 心腔内心電図ではAHブロックを認め, 高位右房連続刺激法では心拍数80ppmでWenckebach型房室ブロックを認めた. イソプロテレノール (ISP) 負荷下での高位右房頻回刺激法ではHis束電位の分裂を認め, His束内ブロックが示唆された. 以後, 恒久的ペースメーカ植込み術 (Medtronic社製DDDペースメーカ) を施行し, 自覚症状なく良好に経過している. 今回我々は, 運動誘発性房室伝導障害を呈した高度房室ブロックの1例を経験し, 若干の文献的考察も含め報告する.

  • 岡部 浩祐, 百名 洋平, 菊池 幹, 鬼塚 健, 香月 俊輔, 川村 奈津美, 宮田 健二, 折口 秀樹, 毛利 正博, 山本 英雄, 吉 ...
    2015 年 47 巻 SUPPL.1 号 p. S1_137-S1_142
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/12/14
    ジャーナル フリー

     慢性心不全治療, 高血圧治療において, レニン・アンジオテンシン系阻害薬 (RA系阻害薬) は, その心・血管イベント抑制効果から, 広く使用されている. 特に蛋白尿を認める慢性腎不全における降圧療法としては第一選択となっている. しかし, RA系阻害薬の有害事象として血清Cr, K上昇, があり, 特に腎機能低下例では厳密なモニタリングが必要である. 当院で2012年7月から2014年7月にかけて, 高K血症による症候性徐脈を発症した症例を退院サマリーより抽出した. 症候性徐脈に対し治療介入が必要であった症例は21人であり, そのうち13人がRA系阻害薬を内服中であった. 21人のうち11人が一時ペーシングを必要とし, そのうち5人がRA系阻害薬を内服していた. RA系阻害薬を内服していた13人の, 人工透析患者を除いた入院時の平均Crは2.94mg/dLであり, 治療介入後の平均Crは1.99mg/dLまで改善を認めている. この結果から腎不全患者におけるRA系阻害薬の導入は慎重に適応を検討すべきである.

  • 森田 裕一, 臺 和興, 大野 雅文, 山路 貴之, 橋本 東樹, 播磨 綾子, 大井 邦臣, 岡 俊治, 中間 泰晴, 西楽 顕典, 西岡 ...
    2015 年 47 巻 SUPPL.1 号 p. S1_143
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/12/14
    ジャーナル フリー

     症例は30代女性. 生来健康であり特記すべき家族歴は認めなかったが, 仕事中突然意識を消失し救急要請された. 初期波形でPEAと判断され心肺蘇生されつつ当院搬送となった. 到着時は心拍再開していたが高度徐脈であり一時ペーシングを施行し, その後心筋症・心筋炎などを鑑別に挙げ各種精査を行った. 各種検査で特記すべき異常は認めなかったが, 電気生理学的検査でピルジカイニド負荷によって完全房室ブロックが誘発されたため, 潜在性の完全房室ブロック (HV block) と診断のうえペースメーカー植え込みを行った.

     以降は退院後も症状なく経過した.

     発作性房室ブロックは若年者にも認められる病態でありペースメーカー植え込みにて失神を完全に予防可能とされる. しかし房室ブロックはサルコイドーシスなど心筋症の初期症状として生じている場合もあり, 今後も定期的なフォローアップを行い, 治療可能な病態を見逃すことがないよう注意する必要がある.

  • 荒川 純子, 永井 知雄, 高瀬 嘉之, 西田 尚史, 中家 佑子, 中家 和宏, 濱部 晃, 潟手 庸道, 石神 徳郎, 久留 秀樹, 田 ...
    2015 年 47 巻 SUPPL.1 号 p. S1_144
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/12/14
    ジャーナル フリー

     症例は25歳男性. 動悸, 気分不快出現後の既視感, 意識消失, 強直間代痙攣にて近医を受診した. てんかんによる意識消失が疑われたことからカルバマゼピン (CBZ) を処方され, 精査のため当院紹介受診となった. CBZ内服後は動悸, 意識消失, 痙攣症状は消失していた. 脳波では安静時に陽性棘波を認め, 側頭葉てんかんが疑われた. それ以外の検査では明らかな異常を認めず, 意識消失の原因は側頭葉てんかんによるものと考えられた. CBZ中止後, 再び動悸と既視感を自覚するようになり, モニター上, 約9.0秒の心停止と痙攣, 意識消失を認めた. ゾニサミド (ZNS) 内服開始によりいずれの症状も消失した. このことから, 意識消失は側頭葉てんかんに伴う洞停止が原因の可能性が高いと考えられた.

     てんかんが一過性意識消失の原因となることは比較的よく知られているものの, 心停止の原因となることに関しては認知が低い.

     今回我々はてんかんが心停止および意識消失の原因と考えられた稀な症例を経験したので報告した.

  • 中島 孝, 久保田 知希, 高杉 信寛, 豊吉 紘之, 小牧 久晃, 金森 寛充, 牛越 博昭, 川崎 雅規, 西垣 和彦, 湊口 信也, ...
    2015 年 47 巻 SUPPL.1 号 p. S1_145
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/12/14
    ジャーナル フリー

     症例は31歳, フィリピン国籍の男性. 突然死の家族歴, 失神歴なし. 2012年4月仕事中に心室細動 (VF) となり, 自動体外除細動器で除細動不能であったため, 心肺蘇生下に救急搬送となった. 病院到着後体外除細動 (300J) 9回目で洞調律に復した. 心臓カテーテル検査, 心エコーで器質的心疾患を認めず, 心電図上V1, V2でcoved型のST上昇を認めたため, Brugada症候群 (BrS) と診断した. 第20病日に植込み型除細動器 (ICD) 移植術を受け退院となった. その後2013年5月一晩でVFに対して7回のICD作動を認めた. Bepridilの投与を開始したが, V1でcoved型ST上昇が顕在化したため中止した. その後2014年3月に4回/日のICD作動を認め, 入院の上amiodaroneの投与を開始したが, V1, V2でcoved型ST上昇が顕在化したため中止した. さらに入院10日目, 4回/日のICD適切作動を認めた. ICDの作動する前日とICD作動直後でvisible T-wave alternans (TWA) が確認された. また通常肋間での記録ではV2でのみで観察されていたTWAが, 第3肋間での記録ではV1~V3で認識可能となった. 本症例はBrSにおけるVisible TWAの出現とVFイベントとの関連を示唆する事に加え, 第3肋間での心電図記録が通常肋間よりも多くの誘導でTWAを検出できる可能性, すなわちBrSにおけるTWAの誘導特異性及びTWA検出効率を改善できる可能性を示唆し興味深い症例であると考えたため, 報告する.

  • 大野 誠, 上山 剛, 古賀 康裕, 加藤 孝佳, 文本 明子, 石口 博智, 矢野 雅文, 清水 昭彦
    2015 年 47 巻 SUPPL.1 号 p. S1_146
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/12/14
    ジャーナル フリー

     症例は59歳男性. これまで失神歴はなかった. 平成26年3月21日の夕食後に家族と会話中に当然数分間意識がなくなった. その後市中病院の救急外来を受診したところ再度意識消失し, モニター心電図で心室細動が確認され, 電気的除細動にて洞調律に復帰した. 洞調律復帰直後の心電図でV1・V2誘導にてcoved typeのST上昇所見を認めた. その際に施行された心エコー検査や冠動脈造影検査で器質的な異常を認めなかった.

     以上から本例をBrugada症候群と診断した. また本例の失神が食後に出現していることから, Full stomach testを実施したところ, 食直後にJ点に続く著明なfractionated potentialが一過性に出現し, 15分程度で消失するという所見を得た. この電位は加算平均心電図による観察ではQRS波とは孤立した著明な遅延電位であった.

     ハイリスク群のBurgada症候群患者において観察される遅延電位の重要性は知られるところであるが, Full stomach testにて遅延電位が一過性に誘発されたという報告はなく, ここに報告する.

  • 佐竹 洋之, 福田 浩二, 近藤 正輝, 中野 誠, 瀬川 将人, 伊藤 健太, 下川 宏明
    2015 年 47 巻 SUPPL.1 号 p. S1_147-S1_152
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/12/14
    ジャーナル フリー

     症例は30歳代男性, 市民ハーフマラソン大会に出場し, スタートから15km付近を走行中に心肺停止状態となった. 同マラソン大会に救命救急のプロジェクトとして参加していた医師・看護師により, 速やかにCPRが施行され, AED (VFドキュメント) にて心拍再開を得た. その後, 当院へ救急搬送・低体温療法にて神経学的後遺症を残さず回復した. 心エコーおよび画像検査からは器質的心疾患の存在は否定的であり, 後日施行した冠動脈造影では器質的狭窄は認めず, 冠攣縮誘発試験でSpasm陽性, 電気生理検査ではVFは誘発されず, サンリズム負荷試験も陰性であった. VFの発生に冠攣縮の関与も疑われたが, 過去, またCPA時に胸痛がないため, 特発性心室細動と診断し, ICD植込みを施行, Ca拮抗薬の内服も開始し退院となった. 若年者のスポーツ中の突然死は, 肥大型心筋症などの器質的心疾患に多いとされているが, 今回, 器質的心疾患を認めない若年者に発生した特発性心室細動を経験したので報告する.

  • 石川 真司, 因田 恭也, 伊藤 唯宏, 水谷 吉晶, 長尾 知行, 奥村 諭, 加藤 寛之, 柳澤 哲, 山本 寿彦, 吉田 直樹, 平井 ...
    2015 年 47 巻 SUPPL.1 号 p. S1_153-S1_157
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/12/14
    ジャーナル フリー

     症例は26歳, 女性. 小学校検診にて多型性心室頻拍を指摘. 2004年に意識消失, 周期性四肢麻痺も出現した. 2005年に遺伝子解析を行いAndersen症候群と診断される. 2008年より当院に転院, 同年に植込み型除細動器 (ICD) 植え込み術を施行された. 以降内服により経過安定していたが, 2014年7月に自宅でICD作動し家人に連絡後意識消失, その後心室細動 (VF) に対してICDが4回作動し心拍再開となり近医へ救急搬送された. 自己心拍は再開していたものの意識障害が遷延していたため集中治療室へ緊急入院, 人工呼吸器管理となった. 入院翌日には抜管, 第3病日に当院へ転院搬送となった. 明らかな神経学的後遺症は認められなかった. 本人への問診から内服がほぼ遵守されていなかったことが判明し, また仕事も繁忙期で深夜までの残業を繰り返していた. 内服再開後はVFの再発なく軽快退院となった. Andersen症候群は不整脈, 周期性四肢麻痺, 形態異常を特徴とし遺伝子KCNJ2に変異を認める遺伝性疾患であり, 先天性QT延長症候群7型に位置づけられる. 本症候群では心停止や急死例は少ないとされ, 治療法も未だ確立されていない. ICDの治療効果を考える上で貴重な症例のためここに報告する.

  • 秋津 克哉, 木下 利雄, 岩崎 義弘, 若倉 慎吾, 野口 晃司, 木内 俊介, 坪田 貴也, 池田 隆徳
    2015 年 47 巻 SUPPL.1 号 p. S1_158
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/12/14
    ジャーナル フリー

     症例は47歳女性. 糖尿病性腎症で近医にて維持透析されている. 以前よりQT延長を指摘されたことがあるが経過観察とされていた. 母と妹が遺伝性QT延長症候群の診断にて植込み型除細動器を挿入されている. 2014年9月上旬, 透析中に心室細動を認め, 電気的除細動 (DC) にて洞調律へ復帰した. 当院救急搬送後, 胸痛の訴えあり, 心電図でST変化, 陰性T波認めたため虚血性心疾患を疑い, 冠動脈造影検査を行うも有意狭窄は認めなかった. QTc 500msecと著明な延長を認め, 入院経過中Torsade de Pointes (TdP) を起こしDCを施行した. また経過中一過性にwide QRSへの心電図変化を認め, 単形性心室頻拍が発生し, 遺伝性QT延長症候群以外による心室頻拍発作の可能性が否定できなかった.

     壮年女性で初発の心室細動発作および多形性・単形性心室頻拍といった多彩な心室性不整脈を呈し診断に苦慮した遺伝性QT延長症候群を経験したので報告する.

  • 佐原 尚彦, 榎本 善成, 浅見 雅子, 高木 高人, 豊田 康豪, 石井 莉奈, 楢林 ゆり子, 橋本 晃, 伊藤 尚志, 野呂 眞人, ...
    2015 年 47 巻 SUPPL.1 号 p. S1_159-S1_163
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/12/14
    ジャーナル フリー

     症例は60歳代男性, 今まで失神等の既往なく突然死の家族歴も認めない. 20××年10月に睡眠中の物音に家族が気付き, 失神しているところを発見され前医に救急搬送された. 当院に紹介入院となり精査の結果, 失神の原因はQT延長から生じるTorsade de pointes (Tdp) 発作と判明した. 薬物, 電解質異常, 器質的心疾患は伴わず, 先天性QT延長症候群の可能性を考慮し, 遺伝子スクリーニング検査を施行したところKCNH2mutationによるLQT2であると判明した. 頻回にTdp発作を繰り返していたため, 内服加療とともにICD植え込みを行い現時点まで再発なく経過している. 若年期には症状を呈さず, 比較的高齢になってから判明した稀有なLQT2の症例を経験したため報告する.

  • 猪口 孝一郎, 渡辺 則和, 越智 明徳, 千葉 雄太, 大西 克実, 川崎 志郎, 宗次 浩美, 松井 泰樹, 武藤 光範, 伊藤 啓之, ...
    2015 年 47 巻 SUPPL.1 号 p. S1_19
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/12/14
    ジャーナル フリー

     症例は68歳女性, 2004年に心室頻拍 (VT) のため他院に入院した. 心サルコイドーシスの診断でプレドニゾロンを開始し, カテーテルアブレーション, 植込み型除細動器 (ICD) 植込み術を行った. 2014年3月にVTのElectrical Storm (ES) となり同病院へ入院した. 薬剤抵抗性であり, アブレーション目的で当院へ転院した.

     鎮静し人工呼吸器管理したが, コントロールは困難で, 緊急アブレーションを施行した. 大動脈内バルーンパンピングを使用し, EnSite NavXで右室, 左室をマッピングした. VTはカテーテル操作で容易に誘発されVT1 (右脚ブロック, 上方軸), VT2 (左脚ブロック, 下方軸) を認めた. VT1, VT2が容易に入れ替わったが, 多点同時マッピングを行うことにより迅速にVT1, VT2のactivation mapを作成した. 左室の下壁中隔に広範なscar areaを認め, 心尖部側への通電でVT1は停止した. その後, 右室中隔基部をマッピングし, 最早期興奮部位への通電でVT2も停止した. 多点同時マッピングにより, 迅速にカテーテルアブレーションでき, ESからの離脱に成功した1例を経験したので報告する.

  • 西村 卓郎, 白井 康大, 田尾 進, 佐々木 毅, 川端 美穂子, 笹野 哲郎, 合屋 雅彦, 平尾 見三
    2015 年 47 巻 SUPPL.1 号 p. S1_20-S1_25
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/12/14
    ジャーナル フリー

     閉塞性肥大型心筋症 (HOCM) では心室頻脈による失神/突然死のリスクが存在する. 症例は68歳男性. 4年前, 労作時失神をきたし他院に入院. 心臓超音波で左室壁肥厚を認め, ドブタミン負荷にて高度の左室内圧較差が誘発された. HOCM関連性失神と診断されβ遮断薬内服, VVIペースメーカー植込みにて経過観察されていた. しかし, 頭部外傷を伴う失神が数度にわたり立位動作時などに出現し精査のため当院へ入院となった. 失神時のペースメーカーには不整脈は記録されていなかった. ビソプロロール, シベンゾリン内服下に実施した左室カテーテル検査ではValsalva手技にて160mmHgと高度の左室内圧較差が誘発され, 同時に動脈収縮期血圧は60mmHgまで低下した. 本例は薬物治療にもかかわらず, 胸腹腔内圧上昇を契機とする左室内圧の高度上昇が原因となって非頻脈性失神を繰り返したと考えられ, 考察を含めて報告する.

  • 大森 寛行, 溝口 達也, 野田 翼, 中須賀 公亮, 蓮尾 隆博, 関本 暁, 猪又 雅彦, 吉田 孝幸, 玉井 希, 佐伯 知昭, 伊藤 ...
    2015 年 47 巻 SUPPL.1 号 p. S1_26-S1_31
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/12/14
    ジャーナル フリー

     症例は55歳, 男性. アルコール依存症. 平成26年6月上旬にうっ血性心不全となり入院したが, torsades de pointes (以下TdP) stormとなった. 心電図ではQT延長, R on T型の心室期外収縮を認め, 心エコーでは左室駆出率25%と心機能が低下していた. 冠動脈は有意狭窄を認めなかった. アルコール離脱症状にて不穏が強く, 人工呼吸器管理下の鎮静, 薬剤, 一時的ペーシングなどで徐々に安定した. その後, 心電図や心機能も改善し, 退院となった.

     本症例は, 純アルコール換算で, 1日に110g~160gの飲酒を15年間続けており, アルコール依存によるQT延長がTdP stormの原因と考えられた. 心筋病理では, 特発性拡張型心筋症に類似した所見が見られ, 断酒後に心機能が改善していることからアルコール性心筋症と診断した. TdPを繰り返した, アルコール性心筋症によるQT延長症候群の1例を経験したため報告する.

  • 蘆田 健毅, 貴島 秀行, 小谷 健, 峰 隆直, 増山 理
    2015 年 47 巻 SUPPL.1 号 p. S1_32
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/12/14
    ジャーナル フリー

     症例は62歳男性で僧帽弁逸脱症に対して弁形成術後, 維持透析中である. 術後経過フォロー中に以前から指摘された肥大型心筋症が顕在化し左室流出路障害を認めた. β遮断薬単剤では症状コントロールが難しくプロカインアミド750mg/日を投与開始した. 症状は改善したが, 3週間後の外来でQT時間の延長 (531ms) を呈したために500mgに減量した. しかしその翌日に心肺停止状態に陥り, 当院に高次医療搬送された. AEDの初期波形は心室細動であった. 入院時のQT時間も531msと延長し, プロカインアミド血中濃度は2.6 μg/mLと正常だが, 代謝産物であるNアセチルプロカインアミドは27.7 μg/mLと高値を示した. 入院後は同剤の中止でQT時間は正常化し, 神経学的後遺症を残さず37日目に独歩退院した. プロカインアミドは代謝産物も抗不整脈作用が知られており, 文献的な考察も交えて報告する.

  • 小野 環, 森田 宏, 木村 朋生, 時岡 浩二, 中川 晃志, 西井 伸洋, 永瀬 聡, 中村 一文, 伊藤 浩, 田中 健大, 柳井 広 ...
    2015 年 47 巻 SUPPL.1 号 p. S1_33-S1_37
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/12/14
    ジャーナル フリー

     症例は79歳男性. 間質性肺炎加療中にステロイド精神病を発症し, 加療中に心室細動 (VF) となり自動体外式除細動器で蘇生された. 近医で冠動脈疾患は否定され, 完全右脚ブロックおよび軽度の左室肥大以外, 明らかな基礎疾患を認めず, 特発性VFなどが考えられた. 本人の精査希望なく, その後経過観察となっていたが, 経過中に心室頻拍を認めたため, 不整脈の原因精査目的に当科入院となった. 入院時の心電図で完全右脚ブロックを認めた. 電気生理学的検査で心室内に広範な低電位帯を認めたが, VFは誘発されなかった. 心筋生検でアミロイド沈着が認められ, 免疫染色からAAアミロイドーシスと診断された. 心アミロイドーシスによる心室細動と診断し, 植込み型除細動器植え込みを行った. 通常, 心アミロイドーシスは著明な心肥大や心不全により診断されるが, 今回, 心室細動を契機として診断された心アミロイドーシスの1例を経験したので, 若干の考察を加え報告する.

  • 長谷川 祐紀, 和泉 大輔, 大槻 総, 八木原 伸江, 佐藤 光希, 小澤 拓也, 渡部 裕, 池主 雅臣, 南野 徹
    2015 年 47 巻 SUPPL.1 号 p. S1_38-S1_43
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/12/14
    ジャーナル フリー

     症例は49歳男性. 高血圧, 糖尿病のためカルシウム拮抗薬, インスリン治療を受けていた. 心電図では肥大性ST変化を認め, 心エコーでは壁厚15mmの対称性左室肥大を認められていたが, 左室収縮能は保持されていた. トラック運転中に意識消失し追突事故を起こした. 救急隊が250bpmの脈をふれない単形性心室頻拍 (VT) を確認し, 心肺蘇生中にVTは停止し回復した. 緊急搬送後の心臓精査にて冠動脈病変はなく, 心臓MRIで心室中隔中層の遅延造影所見を認めた.

     電気生理学的検査では血行動態が破綻するRBBB型とLBBB型の複数波形の単形性VTが誘発された. 一部のVTでは, エントレインメント所見を認めリエントリー機序が想定され, 心室中隔に拡張期電位を認めたことから同領域が不整脈基盤となっている可能性が示唆された.

     左室肥大例において心臓MRIで遅延造影所見を認める場合, 不整脈リスクを考慮すべきと考えられ, 文献的考察を交えて報告する.

  • 河合 俊輔, 向井 靖, 高瀬 進, 坂本 和生, 井上 修二朗, 樗木 晶子, 大井 啓司, 砂川 賢二
    2015 年 47 巻 SUPPL.1 号 p. S1_44-S1_49
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/12/14
    ジャーナル フリー

     症例は35歳男性. 自宅で夕食後の飲酒中に心室細動を発症し, 家人の心肺蘇生および救急隊の電気的除細動により自己心拍再開に成功した. 心臓カテーテル検査で冠攣縮性狭心症, 瘢痕関連心室頻拍を否定した. ピルジカイニド負荷試験ではBrugada型心電図を認めなかったが, 15%程度の心拍数低下の後に負荷前には認めなかった下壁誘導の深いs波, aVR誘導のr'波が出現し, 連結期280msecの心室性期外収縮を契機とした多形性心室頻拍が誘発された. イソプロテレノール投与で心室頻拍は抑制された. 契機となる心室性期外収縮は単源性で, 左室後中隔乳頭筋付近起源と予想されカテーテルアブレーションを施行した. 洞調律時, 心室頻拍時共に先行するプルキンエ電位を認め, プルキンエ線維起源の心室頻拍と診断した. 植込み型除細動器移植術を施行し, シロスタゾール200mg/日・塩化カリウム1200mg/日内服を導入して退院とした. ピルジカイニドで心室頻拍が誘発されイソプロテレノールで抑制される臨床経過からはNaチャネルの異常が予想され, 貴重な症例と考えここに報告する.

  • 古川 力丈, 奥村 恭男, 渡辺 一郎, 園田 和正, 佐々木 直子, 磯 一貴, 高橋 啓子, 大久保 公恵, 中井 俊子, 國本 聡, ...
    2015 年 47 巻 SUPPL.1 号 p. S1_5-S1_11
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/12/14
    ジャーナル フリー

     症例は14歳男児. 小児期より心室中隔の壁運動異常を指摘されていた. 運動中に意識消失し, 心室細動に対して電気的除細動を施行後, 当院に搬送された. 心臓超音波検査では心室中隔の非対称性肥厚と無収縮, 右室は心尖部を中心に緻密化障害を認め, 右室基部側壁側は瘤様構造を呈した. 心臓電気生理学的検査では, 再現性をもって心室頻拍 (左脚ブロック型, 下方軸) が誘発され, 右室基部前側壁に低電位領域を認めた. 心臓遅延造影MRI検査で, 心室中隔の非対称性肥大と心筋中層の遅延造影を認めた. 遺伝子検査では心筋サルコメアをコードする心筋ミオシン重鎖のミスセンス変異 (539番目のメチオニンがイソロイシンに変異) のヘテロ接合体を認めており, これは, これまでに報告されていない新たな変異であった. 肥大型心筋症に右室に緻密化障害を合併し, 心室頻拍により心肺停止に至ったと考え, 植込み型除細動器移植術を施行した.

  • 貝原 俊樹, 深水 誠二, 吉田 精孝, 河村 岩成, 中田 晃裕, 荒井 研, 森山 優一, 宮澤 聡, 麻喜 幹博, 北村 健, 北條 ...
    2015 年 47 巻 SUPPL.1 号 p. S1_50-S1_54
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/12/14
    ジャーナル フリー

     高血圧症, 骨粗鬆症の既往がある83歳女性. 入院10日程前から食思不振があった. 入院4日前から食思不振が増悪し, ふらつきや1分程続く胸部圧迫感が出現した. 入院当日から動悸が出現したため, 当院を受診した. 心電図は洞調律で多形性心室性期外収縮が頻発し, 580msと著明なQT延長を認めた. 胸部レントゲンでは軽度心拡大を認めた. 採血では低カリウム血症 (2.3mEq/L), 低マグネシウム血症 (1.6mg/dL) を認めた. 検査終了後に突然強直性痙攣が出現し, 心肺停止となった. 無脈性多形性心室頻拍が確認され, 除細動150J 1回で洞調律に復帰した. 入院後は電解質を補正し, QT延長はやや遷延したものの, 心室性不整脈は著減した. また, 経過中たこつぼ様の壁運動を伴ったが, 第4病日で意識はほぼ清明にまで改善した. しかし第13病日に頭蓋内出血を発症し, 急変, 死亡退院となった. QT延長, 多形性心室頻拍に低カリウム血症, 低マグネシウム血症を伴った症例の報告は少ない. 本症例に関して, 低マグネシウム血症と心室性不整脈の観点から文献的考察を混じえ, 考察する.

  • 後藤 健太朗, 倉林 学, 加藤 信孝, 川口 直彦, 長谷川 智明, 山下 光美, 浅野 充寿, 中村 知史, 志村 吏左, 鈴木 秀俊, ...
    2015 年 47 巻 SUPPL.1 号 p. S1_55
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/12/14
    ジャーナル フリー

     症例は85歳女性. 2014年2月安静時胸痛を自覚し当院へ緊急搬送. 心電図にて前胸部誘導のST上昇, 心筋障害マーカーの軽度上昇を認めたが, 冠動脈造影で有意狭窄病変がなく, 左室造影所見からたこつぼ心筋症と診断した. βブロッカー内服による保存的加療を行ったが, 第3病日に胸痛が再発し, 前胸部誘導のSTが急激に上昇し, 直後に心肺停止となった. 速やかにCPRを行いPCPS導入後の左室造影にて造影剤の左室外への漏洩像から, 左室自由壁破裂と診断した. 心嚢ドレナージ, PCPS, 人工呼吸器により呼吸循環器管理を行ったが死亡. たこつぼ心筋症は一般的に予後良好な疾患とされるが, 心破裂や心室内血栓症など致死的合併症を稀に生じることが知られている. また左室自由壁破裂を左室造影で確認した症例報告は未だない. 破裂部位を含む急性期の心筋病理像の検討, また心破裂の合併について文献的考察を加え報告する.

  • 野田 崇, 和田 有希, 鎌倉 令, 和田 暢, 中島 育太郎, 石橋 耕平, 宮本 康二, 岡村 英夫, 相庭 武司, 鎌倉 史郎, 安田 ...
    2015 年 47 巻 SUPPL.1 号 p. S1_56-S1_61
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/12/14
    ジャーナル フリー

     症例は70歳女性. 2007年から動悸および間歇性WPW症候群に対し, ベラパミルの内服加療を受けていた. 2014年3月19日労作時の呼吸困難感を自覚し, 当院を受診した. 心拍数140bpmのnarrow QRS tachycardiaおよび心不全を認めたため, 緊急入院した. ジギタリス0.25mgおよびベラパミル2.5mgの静脈内投与にて洞調律へ復帰した. 洞調律時の心電図においてΔ波はなかったが, T波の陰転化をⅡ, Ⅲ, aVF, V2~6誘導に認め, QTc時間は527msと延長していた. 左室壁運動は心尖部を中心にびまん性に低下し, LVEF 31%であった. 冠動脈造影検査では有意狭窄を認めず, 薬剤による冠攣縮も誘発されなかった. 入院経過中にモニター上, Torsades de Pointes (TdP) が複数回出現した. TdP発症パターンのほとんどは, QT延長にPVCを伴う典型的なshort-long-shortパターンであったが, blocked PAC連発に引き続くTdPも認められた. 硫酸マグネシウムの点滴とカリウム補正を行った後には, TdPは消失した. その後, 心機能は改善し, LVEF 60%となった. 経過および諸検査からたこつぼ型心筋症と診断した. TdPの特殊な発症パターンを呈した1例を経験した.

  • 笠原 信太郎, 藤田 央, 山口 展寛, 尾上 紀子, 石塚 豪, 篠崎 毅
    2015 年 47 巻 SUPPL.1 号 p. S1_62-S1_68
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/12/14
    ジャーナル フリー

     海外において副腎不全患者の全死亡の24%が突然死か原因不明であったと報告されている1) が, その機序は未だ明確ではない. 一方, 副腎不全に伴う少数例の致死性心室性不整脈の報告がある2~10) . 今回我々は, 下垂体腫瘍に伴う慢性副腎不全患者が, 全身麻酔導入直後に多形性心室頻拍とたこつぼ心筋症を発症したので報告する.

  • 池田 宗一郎, 林谷 俊児, 宮本 和幸, 森重 翔二, 西山 憲一, 中島 豊, 本田 修浩, 栗林 祥子, 池田 次郎, 堺 浩二, 古 ...
    2015 年 47 巻 SUPPL.1 号 p. S1_69-S1_73
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/12/14
    ジャーナル フリー

     たこつぼ心筋症は1990年に本邦よりDoteとSatoらが初めて報告し, ballooningとも称される心尖部の逆収縮と基部の過収縮による冠動脈支配領域に一致しない局所壁運動異常が特徴的で, 保存的治療で回復する比較的良性の疾患とされてきた1) . しかし心不全や重症不整脈, 心内血栓による塞栓症などにより死亡する例も報告され, 必ずしも予後良好ではないことも明らかにされつつある2) . 左室自由壁破裂や心室中隔穿孔 (Ventricular septal rupture : 以下VSR) は急性心筋梗塞後の重篤な合併症として知られるが, たこつぼ心筋症後の発症も報告されている3~5) . 今回たこつぼ心筋症後のVSRの症例を経験し準緊急手術を行ったものの救命できなかった症例を経験したので報告する.

  • 池田 裕之, 青山 大雪, 汐見 雄一郎, 福岡 良友, 森下 哲司, 佐藤 岳彦, 石田 健太郎, 天谷 直貴, 荒川 健一郎, 宇隨 弘 ...
    2015 年 47 巻 SUPPL.1 号 p. S1_74-S1_78
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/12/14
    ジャーナル フリー

     70歳代女性. 糖尿病腎症による維持透析を行っており, 脳梗塞後遺症による右不全麻痺がある. 1カ月前から労作時胸痛が出現しはじめ, 徐々に増悪したため前医外来を受診, 増悪型労作性狭心症を疑われ前医に入院, 当院に精査加療目的に転院になった. 冠動脈造影では左前下行枝の近位部#6に90%の狭窄を認めた. 石灰化の強い病変であったためバイパス治療も考慮したが, ハイリスクであったため血管内治療を行う方針とした. 左鼠径部を穿刺し手技を開始し, 高度石灰化病変でロータブレータ®を使用した後に薬剤溶出性ステントを留置し手技を終了した. 帰室後からショック状態になり, 左下腹部の圧痛と軽度腫脹を認めた. 血管外出血を疑い造影CTを施行したところ, 血管外出血部分は認めるものの出血部位は同定できず, カテーテルでの血管造影を施行した. 左下腹壁動脈根部から出血を認め同部位にコイル塞栓術を施行し止血に成功した. 止血直後から血圧上昇し, その後良好な経過を辿った. 下腹壁動脈出血を合併しショックになった透析患者の1例を経験したので報告する.

  • 増田 怜, 山分 規義, 飯谷 宗弘, 李 基鎬, 中村 玲奈, 羽田 泰晃, 中野 国晃, 稲村 幸洋, 島田 博史, 高宮 智正, 清水 ...
    2015 年 47 巻 SUPPL.1 号 p. S1_79-S1_86
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/12/14
    ジャーナル フリー

     症例は53歳男性. 平成26年2月に早朝の胸痛を自覚し, 急性冠症候群疑いで冠動脈造影 (CAG) を施行. 有意狭窄を認めず, 病歴上, 冠攣縮性狭心症 (VSA) が疑われた. 心電図では側壁誘導でJ波を認め, T Wave Alternans (TWA) も陽性であった. 同年4月にアセチルコリン負荷試験目的で入院, 負荷前の造影ですでに3枝spasmを認め, 非持続性多形性心室頻拍が出現した. 同時に胸痛, ST上昇も認めVSAと診断した. 退院後1カ月にて, 服薬を忘れた翌朝に胸痛を伴い心室細動 (VF) が出現. 救急車内のAEDではVFは停止せず直近の病院に搬送後, 除細動にて洞調律に復した. 同施設でのCAGにてもspasmを認めた. 当院転院後, 内服投与下でアセチルコリン負荷試験を施行したところ, 右冠動脈の99% spasmが誘発された. spasm解除後, 硝酸薬静注下の電気生理学的検査にて再現性を持ってVFが誘発された.

     以上, 薬剤抵抗性のVSAにVFを合併し, Arrythmogenic substrate (不整脈原性基質) の存在を示唆する症例を経験したので報告する.

  • 村田 広茂, 井川 修, 小谷 英太郎, 合田 浩紀, 小杉 宗範, 岡崎 怜子, 中込 明裕, 草間 芳樹, 新 博次, 清水 渉
    2015 年 47 巻 SUPPL.1 号 p. S1_87
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/12/14
    ジャーナル フリー

     【背景】静注アミオダロン (AMD) 不応性心室頻拍 (VT) の特徴は, 明らかではない. 本研究の目的は, AMD不応性VTストームの頻度, 特徴, 治療方針を検討することである.

     【方法】対象は, 2007年から2012年までにVTストーム (24時間で3回以上のVT) に対しAMDが投与された30例 (68±12歳, 女性7例) (虚血性12例, 非虚血性18例) である. 有効群と不応群の特徴を比較した.

     【結果】不応群は9例 (30%), 急性心筋梗塞5例, 肥大型心筋症2例, 弁膜症2例で, 再灌流療法, 開心術, 心不全増悪後に発症した. 不応群のトリガー期外収縮およびVTのQRS幅は, 有意に有効群より狭かった. (121±14 vs. 179±22ms, P<0.01 ; 140±30 vs. 178±25ms, P<0.01) 不応群には, メキシレチン追加投与とPurkinje指標アブレーションが有効であった.

     【結語】AMD不応性VTストームは, Purkinje起源期外収縮をトリガーとする比較的幅の狭いQRS頻拍であることが示唆された.

  • 佐藤 高栄, 大西 哲, 豊田 真之, 梅井 正彦, 横山 正明, 岸 幹夫, 亀田 良, 松下 匡史郎, 山﨑 正雄
    2015 年 47 巻 SUPPL.1 号 p. S1_88-S1_92
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/12/14
    ジャーナル フリー

     71歳男性. 61歳で前壁中隔心筋梗塞の既往がある. 気管支喘息治療を受けている.

     めまいがあり, 自己血圧測定ができないために医療機関を受診したが低血圧や神経症状を認めず自宅療養を指示された. その後4日間症状が改善せず当科を受診した. 来院時, 意識清明で血圧122/72mmHg, 脈拍122毎分. 心電図で右脚ブロック, 不定軸, 毎分176の心室頻拍VTを認めた. ニフェカラント, アミオダロンの静脈内投与は停止に至らず, 直流除細動後もすぐに再発. ニフェカラント追加後に再度除細動しCCUに収容. しかし深夜に再びVTとなり持続し第2病日にアブレーションを行った. VTの興奮様式は左室自由壁からのcentrifugal patternを示し, Scarの境界領域で早期性のある分裂電位部分への通電で停止を繰り返しながら, 頻拍は徐々に波形が変化し誘発不能となった. ICD植え込みして現在に至っている. 考察を加えて報告する.

  • 樫村 晋, 西山 信大, 児島 秀典, 中嶋 一晶, 八島 史明, 國富 晃, 勝俣 良紀, 西山 崇比古, 木村 雄弘, 谷本 陽子, 相 ...
    2015 年 47 巻 SUPPL.1 号 p. S1_93-S1_97
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/12/14
    ジャーナル フリー

     生来健康な18歳男性. 突然死の家族歴なし. 運動中に突然心肺停止となりAEDで蘇生され搬送された. 蘇生後の心電図Ⅱ, Ⅲ, aVF誘導でT波が陰転化し心エコーで一過性に下壁の壁運動異常を認めた. 緊急冠動脈造影を施行, 右冠動脈優位であり大動脈左冠尖より起始し, 大動脈の前方, 肺動脈との間を走行し同部位の圧迫狭窄が疑われた. 後日アデノシン3リン酸投与下で冠血流予備量比 (FFR) を測定したところ右冠動脈中間部で0.71, 大動脈で0.96であった. 本例は運動極期に起きた心室細動であるが, イベント後のⅡ, Ⅲ, aVF誘導での心電図変化と一過性の下壁の壁運動異常, そして冠動脈の所見から右冠動脈領域の虚血から心室細動が惹起されたと診断した. 冠動脈起始異常に伴う心室細動の報告例はあるが一般に心筋虚血の再現は困難である. 本例では薬物負荷下FFRで有意な狭窄を証明できたため報告する.

  • 山田 桂嗣, 櫻木 悟, 市川 啓之, 谷本 匡史, 三木 崇史, 大塚 寛昭, 山本 和彦, 川本 健治, 田中屋 真智子, 片山 祐介
    2015 年 47 巻 SUPPL.1 号 p. S1_98-S1_103
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/12/14
    ジャーナル フリー

     症例は50歳代女性. 2013年10月下旬, 胸痛を主訴に当院へ救急搬送となった. 急性冠症候群の疑いにて緊急カテーテル検査を施行し, 左前下行枝seg6 100%, 左回旋枝seg11 90%, seg13 90%, 右冠動脈seg2 90%の高度狭窄を認めた. 左前下行枝と回旋枝の病変部に経皮的冠動脈形成術を施行し, 薬剤溶出性ステント (DES : drug-eluting stent) を留置した. 右冠動脈の残存狭窄は後日PCIの方針とした. その後, 第5病日未明にR on Tからの心室細動 (VF : ventricular fibrillation) あり, 計5回の除細動を施行した. アミオダロン急速投与後, 持続静注開始し, VFは停止した. 洞調律復帰後の心電図ではQT延長を認めた. その後, 第6, 第7病日にもR on TからのVFを繰り返したため, 深い鎮静が必要と考え, 挿管の上, 人工呼吸器管理とし, アミオダロン400mg/日の内服を開始した. その後はVFの再発もなく, 徐々にQT延長も改善を認めた. 第26病日抜管, VT studyにてVTが誘発されたため第79病日植込み型除細動器 (ICD : Implantable Cardioverter-Defibrillator) 留置, 第99病日自宅退院となった.

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