我が国農業は, 30年代後半以降の経済の高度成長の過程で農業労働力の流出,賃労働者化,農地の他産業用地としての転用等大きな構造的変化を余儀なくされたが,40年代後半の過剰流動性を背景とした資本の土地取得,石油危機を契機とした物価高騰による農業の交易条件の悪化,加えて米過剰化への対応としての稲作の生産抑制等により農業の構造的変ぼうを更に著しいものとしたといえる.総農家数の500万戸をわる激減,基幹農業労働力を保有した専業農家の比重が10%以下に低下する一方,兼業主体の第2種兼業農家の比重が総農家の3分の2に及び,それら労働力保有のない農家を中心とした休耕,耕作放棄の土地が総経営耕地の7 %に当たる面積にまで拡大しているなど後退的様相を強めたといえる.しかし,そうした中にあって経営耕地規模の上層階層の農家の借地による規模拡大と借地経営の増加の動きがみられ,農家の経営規模階層は,中間階層の激減,下層移行,下層階層の離農の増加,上層階層の借地による規模拡大と激しく分化してきた.以下, 1975年農業センサス結果からそうした経営規模階層の分化の動向と態様をみることとする.
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