原子・分子の小集合体であるクラスターイオンの構造について,イオン移動度質量分析法を用いた研究例を紹介する.クラスターイオンの物理・化学的性質は構成粒子数(サイズ)が一個変わるだけで劇的に変化する.このサイズによる性質の変化は,一般にはクラスターイオンを質量分析法で分離して研究することができる.しかし,単一サイズのクラスターイオンには複数の構造異性体が含まれている可能性があり,サイズのみを選別しても異性体の混合物の情報しか得られないという問題が生じる.イオン移動度分析は気相イオンの異性体を分離する手法であり,これをクラスターイオンの構造研究に適用することで,サイズのみを選別した従来の研究に,構造異性体選別という新たな軸を加えることができる.