気相のキラル分光が最近注目を集めている.気相は低密度なので,光吸収の円二色性(CD)の測定は困難である.光吸収の CD が小さいのは磁気的相互作用が必要だからである.そこで,磁気的相互作用が不要な方法として,光電子分光が注目されている.光電子分光の特徴の一つが,対称性を選ばず,すべてのキラル点群が対象になるところである.これは,光吸収の CD と同じ性質である.さらに,光電子の反跳作用によるエナンチオマーの分離,時間分解分光,さらに光解離への展開にも期待が持たれている.ここでは,円偏光を利用したキラル光電子分光の原理を解説する.