散乱法は粒子間ポテンシャルを探索する一般的手法であり,これにレーザー分光学を組み合わせた 量子状態選別散乱測定は,多原子分子系の化学反応機構を解明する有効手段として広く適用されている.特に紫外光領域の有機分子の光解離ダイナミクス研究では,多自由度・多状態が関与する化学過程を対象とした実験結果にもとづいて,少数原子系では見られなかった新しい反応機構が明らかにされてきている.本稿では,アミンの光化学研究の例を参照しながら,原子物理学を背景とする状態選別散乱法の研究発展の経緯とともに,多原子分子系の新しい反応様式を導き出す反応ダイナミクス研究のアプローチを解説する.