「結晶場によるコヒーレント共鳴励起は,疑似的なX線レーザーとして使える」,そう言い始めて10数年,多価イオンを研究するツールとして,それなりに実用的な手法と言えるようになってきた.ポンプ・プローブによる状態操作や2重励起状態の選択的な生成をはじめ,準安定状態の寿命測定や精密分光による高次QED検証など,原子物理学的に実用レベルの研究へと展開されている.新しいツールによって繰りひろげられる多価イオン研究の中から,GSI Helmholtzzentrum für Schwerionenforschung(ドイツ重イオン研究所)で信仰している高Zイオンの精密分光に焦点を当てて現状と今後の展望について紹介する.