近赤外の強レーザー光を分子に照射すると、束縛電子がトンネルイオン化によって連続状態に放出される。この電子は、レーザーの1サイクル以内に再びもとの分子に戻ってきて再衝突する。本研究では、この再衝突する電子(再衝突電子)が、アト秒・オングストローム精度での原子分子動力学過程の測定に使用できることを示した。まず、水素分子のトンネルイオン化によって生成する振動波束の運動を利用し、再衝突電子波束の同定を行った。次に、この再衝突電子波束を用いて、重水素分子イオンの振動波束の運動を200アト秒, 0.05オングストロームの精度で測定した。さらに、再衝突電子波束のコヒーレントな性質を利用することで、分子内の束縛電子波束の運動がアト秒の精度で測定できることを示した。