日本地球化学会年会要旨集
2010年度日本地球化学会第57回年会講演要旨集
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土壌・陸域生態系の物質循環
  • 高橋 善幸, 梁 乃申
    原稿種別: ポスター講演
    専門分野: 土壌・陸域生態系の物質循環
    セッションID: 2P21 17-P01
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/30
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    陸域生態系の土壌は大気中の各種微量ガス成分の吸収/放出源として重要な機能を持っている。温暖化ガスとして重要なCH4やN2O、温暖化に間接的に関連するCOやH2も陸域生態系の土壌において吸収/放出されているが、その交換特性は気候帯や植生、土壌タイプの違いにより大きく異なると考えられる。こうしたCO2以外の微量ガス成分の観測については、生態系の構造が比較的単純かつ空間的に均一な農耕地や草地においては、地表面を被覆するチャンバーを用いた観測による研究例が多く報告されている。しかし、陸域生態系の中で大きな面積を占める森林についての観測データの集積は十分とはいえない。今回の発表においては、北海道・苫小牧市郊外の落葉性針葉樹(カラマツ)の群落内の土壌において観測された、CH4、H2などの微量ガスの交換量の時間的空間的変動についての報告を行う。
  • 下田 星児
    原稿種別: ポスター講演
    専門分野: 土壌・陸域生態系の物質循環
    セッションID: 2P22 17-P02
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/30
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    本研究では、瀬戸内地域の数年間の圃場実験を行い、非耕作地の人為的管理が植物種構成と炭素分配に与える影響をあきらかにする。草本刈取管理実験の結果、草刈りにより植物種構成は大きく変化し、年間乾物生産量には有意な増加がみられた。特に、夏季に湿潤だった2009年は草刈り後のイネ科雑草の繁茂により生産量が大きく増大した。湛水管理実験の結果、耕起のみ・放棄区で地下部乾物量が大きく、生産量は大きかった。土壌の炭素安定同位体比(δ13C)は、雑草のC3/C4構成比を反映しており、雑草由来の有機物が土壌へ寄与していると推定されるが、湛水処理区の土壌炭素量が有意に大きかった。
  • 伊藤 絵理佳, 村松 康行, 松崎 浩之, 高橋 嘉夫, 嶋本 洋子
    原稿種別: ポスター講演
    専門分野: 土壌・陸域生態系の物質循環
    セッションID: 2P23 17-P03
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/30
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    黒ボク土は日本の代表的な土壌の一つであり、IやBr濃度が高いことで知られている。しかし、黒ボク土の主な母材である火山灰(火山岩)中にはその1/100倍から1/1000倍しか含まれていない。土壌へのこれらの元素の主な供給源となっている雨水には、ごく微量しか含まれていないことから、土壌はIとBrを長年にわたって吸着・蓄積しているといえる。しかし、その蓄積メカニズムについては不明な点が多い。また放射性核種であるI-129は、半減期が1600万年と長く、核燃料再処理や核実験に伴い微量ながらも大気へ放出されていることから、環境への蓄積や人への影響が懸念されている。そこで本研究では、比較としてClを含め、ハロゲン元素およびI-129の土壌中での深度分布を明らかにすることと、バッチ実験より土壌へのこれらの元素の吸着メカニズムを調べることを目的とする。
  • 山本 真里子, 上野 振一郎, 杉谷 健一郎
    原稿種別: ポスター講演
    専門分野: 土壌・陸域生態系の物質循環
    セッションID: 2P24 17-P04
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/30
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    干潟に生息する底生微細藻類は、一次生産者として他の生物生産を支える一方、堆積物中の物質循環においても生物濃縮を通し重要な役割を担っているといわれている。本研究では、名古屋市藤前干潟で堆積物表層および鉛直コア試料を採取し、クロロフィル濃度とオパールシリカ濃度測定から得られた生物量、蛍光X線分析・有機元素分析から得られた堆積物化学組成および粒度組成を元に、底生微細藻類の生息環境と物質循環の中での役割を考察した。2009年夏採集した試料を分析した結果、底生微細藻類が堆積物中においてリンを制限栄養素として物質循環に関与していたこと、細粒画分の多い場所に多く生息していたことが確認できた。またクロロフィルaはCr/TiO2に対して中程度以上の正の相関がみられたことより、底生微細藻類によるCr濃縮の可能性やCr耐性なども考えられ今後の研究課題としたい。
  • 上野 振一郎, 杉谷 健一郎, 小野 森弘
    原稿種別: ポスター講演
    専門分野: 土壌・陸域生態系の物質循環
    セッションID: 2P25 17-P05
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/30
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    本研究では蛍光X線分析装置を用いて植物の化学組成を分析する手法を試みた。蛍光X線分析はICP発光分光分析に比べて精度は劣るが、他元素同時分析や迅速な分析が可能である点で共通し、分析の前処理が容易であるという利点もある。本研究の目的は、波長分散型XRFの定量分析が、植物体の分析法として有効であると示すことである。今回の分析には検量線法を用いるため複数の標準試料を準備する必要がある。灰化植物の構成元素は岩石の構成元素と共通していることが知られているので、灰化植物試料の分析に用いる検量線は、植物標準試料ではなく既存の岩石標準試料でも作成できるはずである。そこで、主に岩石標準試料から作成した検量線を用いて、灰化しガラスビードを作成した植物標準試料を分析し、認証値と定量値を比較した。その結果、Naを除いた主要元素について、本研究で提案した方法は植物体の分析法として有効であることが示された。
大気微量成分の地球化学
  • 菊池 麻希子, 山田 桂太, 服部 良太, 吉田 尚弘
    原稿種別: ポスター講演
    専門分野: 大気微量成分の地球化学
    セッションID: 2P26 10-P01
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/30
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    大気中の酢酸分子内炭素安定同位体比の測定を目的とし、その手法の確立を試みた。酢酸の分子内同位体比は酢酸を熱分解し生成されるメタンがメチル基由来と考えられるがその測定条件が研究者によって異なるため、はじめに酢酸試薬を用いて水酸化ナトリウムとの封緘熱分解の測定条件の検討を行った。また近年では固相ヘッドスペースマイクロ抽出-ガスクロマトグラフィー同位体比質量分析法を用いた低分子有機化合物の安定同位体比測定が従来に比べ簡便な手法として注目されている。そこで酢酸の分子内安定同位体比測定にこの手法を適応させる方法の検討を行った。さらに大気または降水中の酢酸サンプルへの適用を試みた。
  • 亀山 宗彦, 吉田 怜, 谷本 浩志, 猪俣 敏, 岩田 徹
    原稿種別: ポスター講演
    専門分野: 大気微量成分の地球化学
    セッションID: 2P27 10-P02
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/30
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    海洋における揮発性有機化合物(VOC)の大気-海洋間収支に関する理解はまだ十分ではない。本研究では西部北太平洋で行われた白鳳丸KH-10-1次航海の3観測点において、大気-海洋間収支を求める微気象学的手法の一つであるプロファイル法を適用し、海洋直上大気を高度別に採取することができるフラックスブイと陽子移動反応-質量分析計(PTR-MS)を連結させ海洋直上大気中のVOC濃度プロファイル測定を行った。本発表では特に顕著な濃度プロファイルが得られたDMSとアセトンの大気-海洋間収支について、各観測点における違いや長時間連続観測によって得られた昼夜の差の有無に関して議論を行う。
  • 金子 誠, 仲松 有紀, 古川 雅志, Zhouqing Xie, 宇都宮 聡
    原稿種別: ポスター講演
    専門分野: 大気微量成分の地球化学
    セッションID: 2P28 10-P03
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/30
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    鉄は大気中に含まれる主要な遷移金属の一つで、大気化学や生物学的過程において重要な役割を果たすと考えられている。本研究では、2010年3月末に東アジアで起こった大規模な黄砂を合肥と福岡で同時に採取したサンプルについて電子顕微鏡による直接分析と、XAFS、XRDを用いたバルク分析を組み合わせたマルチスケール解析を行い、黄砂中の鉄含有鉱物についてその特性を明らかにした。その結果、本研究対象の黄砂中における鉄含有鉱物相は複数種存在し、かつ粒径に依存するが、優勢な相に関しては付着している三価の微粒子である可能性が示唆された。さらに今回の中国~日本間の黄砂輸送時における鉄成分化学種の変化は無視できる程度であることがわかった。
  • 仲松 有紀, 金子 誠, 古川 雅志, 西田 千春, 宇都宮 聡
    原稿種別: ポスター講演
    専門分野: 大気微量成分の地球化学
    セッションID: 2P29 10-P04
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/30
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    大気中微粒子の負の健康影響が注目されている中で、主要な元素である鉄に注目し化学状態解析を行った。大気試料は福岡県福岡市で、カスケードインパクターとハイボリュームエアサンプラーを用いて採集した。XANES解析の結果、Feは主に3価で存在していた。SEM-EDXの点分析(469点)を行った結果、粒径1 μm以上のFe含有粒子にはSiとAlが多く含まれており、粒径1 μm以下ではSiの割合が減少しSの割合が高くなっていた。TEMを用いた個別微粒子分析から、粒径1 μm以下のFeを含む粒子では球状のマグヘマイト(γ-Fe2O3)の割合が高く、また球状であることより粒子表面の活性部位が多いと考えられる。さらにTEM-EDXの結果、粒径100 nm以下のマグヘマイトにはMnが多く含まれており、共存しているクロムなどの重金属の酸化が促進され、粒子の生体への毒性が強まると考えられる。
  • 何 楠楠, 河村 公隆
    原稿種別: ポスター講演
    専門分野: 大気微量成分の地球化学
    セッションID: 2P30 10-P05
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/30
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    本研究では、中国北京市北部マンシャンで採取した大気エアロゾル試料中の、低分子ジカルボン酸の濃度と分子組成を明らかにした。その結果、シュウ酸(C2)が主成分であり,全ジカルボン酸の38-77%を占めることがわかった。自動車の排気ガスに多く含まれるフタル酸が高濃度で検出されたことから、北京郊外の大気エアロゾルは人間活動の強い影響を受けていることが示唆された。また、シュウ酸濃度は夜間に高い濃度を示すことから、北部に位置する森林での生物活動(VOCのエミッション)とマンシャンへの夜間における大気輸送が大気エアロゾル中のジカルボン酸組成に影響を与えていることが示唆された。また、水溶性有機酸とジカルボニルの濃度は,降水イベント後に著しく低下しており,極性化合物が雨滴によって効率よく除去されること,北京北部の大気組成が局地的な気象(昼間の南風、夜間の北風)によって主に制御されていることを示している.
  • 今藤 泰輔, 山田 桂太, 野中 最子, 永西 修, 樋口 浩二, 真貝 拓三, 小林 洋介, 吉田 尚弘
    原稿種別: ポスター講演
    専門分野: 大気微量成分の地球化学
    セッションID: 2P31 10-P06
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/30
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    反芻動物によるあい気には、大量のメタンが含まれることから[Schulze et al., 1998]、反芻家畜は、温室効果ガス排出の主要原因のひとつと考えられている[例えば、Steinfeld et al., 2006]。メタンの安定同位体情報は収支解析に有用であると認識されているが、反芻動物起源のメタンの炭素同位体比に関する研究は限られており[Rust 1981; Levin et al., 1993; Schulze et al., 1998; Bilek et al., 2001; Klevenhusen et al., 2010]、水素同位体比に関する研究の報告例は更に少ない[Wahlen et al., 1989; Levin et al., 1993; Bilek et al., 2001]。そのため、反芻動物から排出されるメタンの炭素・水素同位体比に関する詳細な特徴づけが、地球温暖化研究における重要な課題である。そこで、本研究では、反芻動物の代表である牛を対象とし、畜産草地研究所に設置されている呼吸試験チャンバーを用い、牛(Holstein種)から排出されるメタンの同位体を24時間モニターし、その同位体変動要因の解明を行うことで反芻動物起源メタンの全球収支に及ぼす知見を得ることを目的とした。
  • 吉川 知里, ダニエラチェ セバスチアン, 上野 雄一郎, 須藤 健悟, 石島 健太郎, 滝川 雅之, 吉田 尚弘
    原稿種別: ポスター講演
    専門分野: 大気微量成分の地球化学
    セッションID: 2P32 10-P07
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/30
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    硫酸エアロゾルは、太陽光を散乱・吸収することで直接的に雲凝結核として間接的に放射収支に影響を与える一方で、エアロゾル表面上の不均一反応の結果としてオゾン破壊にも関わっていると考えられている。このように、硫酸エアロゾルとその前駆体を含む大気硫黄循環の定量的な把握は、気候システムを理解する上で非常に重要であり、近年、数値モデルを用いた推定計算が活発に行われている。しかし、本研究で着目する成層圏硫酸エアロゾルの各起源の見積もりは、上部対流圏におけるOH濃度やモデル内での循環の強さに強く影響を受けるため、モデルによってさまざまである。本研究では、大気大循環モデルへ新たに同位体を組み込み、濃度とともに同位体比の観測値も用いてモデルを検証することで、成層圏硫酸エアロゾルの各起源の見積もりの精緻化を試みる。
同位体効果研究の地球化学への応用
  • 森脇 絵美, 奈良岡 浩
    原稿種別: ポスター講演
    専門分野: 同位体効果研究の地球化学への応用
    セッションID: 2P33 01-P01
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/30
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    大気にO2が蓄積し、地球表層が酸化的になった時期を推定する一つの手段として、堆積岩中のイオウの質量非依存同位体分別(MIF-S, Mass-Independent Fractionation of Sulfur isotope)が用いられている。イオウの3つの安定同位体(32S, 33S, 34S)において、一般的な化学反応では、δ33S = 0.515×δ34Sを満たす質量に依存した同位体分別を示すのに対して、24億年以前の堆積物にはしばしばΔ33S =δ33S - 0.515×δ34Sが0とならないMIFが見出され、O2の存在しない条件下でのSO2の光分解のためと考えられている。しかし、太古代においてMIFを生じさせるメカニズムには未だ不明な点が多く、本研究では後期太古代堆積岩中のイオウ同位体比を新たに分析した。
  • 永石 一弥, 松岡 淳, 石川 剛志
    原稿種別: ポスター講演
    専門分野: 同位体効果研究の地球化学への応用
    セッションID: 2P34 01-P02
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/30
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    海成炭酸塩骨格のホウ素同位体比を海水のpHのプロキシとして、海洋の古pHの変動と大気のCO2濃度変動を推定する試みが行われているが、精度・確度の高いホウ素同位体比測定法の開発が課題であった。筆者らはグラファイトアクチベーターを用いたCs2BO2+ P-TIMS法を用い、100 ngのホウ素に対して±0.1‰(2RSD)の測定再現性を得ることに成功した。その後、試料のフィラメントへの塗布条件を最適化することで、ホウ素同位体の標準物質であるNIST SRM 951ホウ酸について10 ngのホウ素に対して±0.2‰(2RSD)の測定再現性を得るに至った。微少量ホウ素の同位体比を高精度・高確度で測定可能となったことで、P-TIMSを用いた本手法は、様々な天然物質の分析に適用可能であると考えられる。
  • 永石 一弥, 谷水 雅治
    原稿種別: ポスター講演
    専門分野: 同位体効果研究の地球化学への応用
    セッションID: 2P35 01-P03
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/30
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    ホウ素(B)の安定同位体は10Bと11Bがあり,その質量数の差が約10%と大きいため,天然では同位体存在度が大きく変動する。ゆえに,11B/10B同位体比は,地質学的試料の起源推定,あるいは地球化学的トレーサーとして注目され,これまでに多数の研究例がある。本研究では,多重検出器を装備したICP質量分析計(MC-ICP-MS)を用いてB同位体比測定法の検討を行ったところ,±0.2‰(2SD)の測定再現性が得られた。また,その11B/10B同位体比もP-TIMS法での値と誤差の範囲内で一致し,確度の確からしさも実証できた。ただし,試料導入系のメモリー効果が大きいため測定に時間を要しICP-MSの迅速分析性能を発揮できていない。今後,導入系や洗浄法をさらに検討し,MC-ICP-MSを用いた迅速かつ高確度なB同位体分析法を確立していく予定であり,学会ではその結果を交えて報告したい。
  • 遠藤 多慶人, 南部 伸孝
    原稿種別: ポスター講演
    専門分野: 同位体効果研究の地球化学への応用
    セッションID: 2P36 01-P04
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/30
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    亜酸化窒素(N2O)は温室効果ガスの一つであり,成層圏における酸化反応の触媒となり,オゾン層破壊の要因の一つとなっている。一方,大気中(成層圏)の亜酸化窒素は,その90%が紫外線窓領域で起きる光解離反応により分解される。
    本研究では,7つの亜酸化窒素同位体である14N14N16O(略して”446”)、456、546、448、447、556、458の光吸収断面積を理論的に決定した。特に,これまで考慮されていない4つの電子励起状態(21A’,31A’,11A”,21A”)を考慮に入れ,第一原理計算により求めた。その結果によると,紫外線の窓が無くとも同位体濃縮が起きる可能性が見出された。
  • ダニエラチェ セバスチアン, 服部 祥平, 吉川 知里, 上野 雄一郎, ジョンソン マット, 吉田 尚弘
    原稿種別: ポスター講演
    専門分野: 同位体効果研究の地球化学への応用
    セッションID: 2P37 01-P05
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/30
    会議録・要旨集 フリー
    硫黄の大気循環は雲凝結核となる硫酸エアロゾル形成に関わるため、負の温室効果要因として重要である。他の温室効果関連気体と比較すると大気への供給源や反応過程について不明な点が多く、寒冷化要因への寄与率は素過程の解明によって大幅に修正される。大規模な火山噴火は成層圏へ大量の硫黄を供給し、成層圏硫酸エアロゾル(SSA)の量が増すことで、地球の平均気温が下がることがこれまでの観測により明らかになっている。ところが、大規模噴火のない時期においてもSSAは安定に存在しており、従来見積もられている成層圏への硫黄流入量では、安定期のSSA量を保つには足りず、その形成過程に大きな不確実性が伴っている。本発表では、室内実験や理論計算を用いて決定したCOSとSO2に関わる化学反応の分別係数について報告する。また、安定同位体質量分析計(IRMS)によるCOS四種硫黄同位体測定法の開発の進捗についても、報告する
宇宙惑星化学(全般)
  • 山田 明憲, 杉浦 直治, 比屋根 肇
    原稿種別: ポスター講演
    専門分野: 宇宙惑星化学(全般)
    セッションID: 2P38 18-P01
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/30
    会議録・要旨集 フリー
    隕石物質の年代測定は、長寿命核種による絶対年代と短寿命核種による 相対年代の二種類の方法で行われてきた。とりわけ、Pb-Pb 法は単一元素の同位体比のみを測定するため高精度な絶対年代を得ることができるとされている。通常は、鉛の同位体比を高精度に測定し、ウランの同位体比は既知であるとして 235U/238U = 1/137.88 を誤差なしで用いている。しかし、隕石中に 235U/238U 比のばらつきが見られる、CAI形成時の247Cmの痕跡であると報告された (Brennecka et al., Science, 2010)。そこで本研究では 247Cm の半減期も考慮したより精確な計算を行った。
初期太陽系円盤の宇宙化学
  • 池田 直子, 日高 洋, 米田 成一
    原稿種別: ポスター講演
    専門分野: 初期太陽系円盤の宇宙化学
    セッションID: 2P39 13-P01
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/30
    会議録・要旨集 フリー
    これまで、中性子補獲反応149Sm(n,γ)150Sm,157Gd(n,γ)158Gdによる同位体変動を利用し、惑星物質表面近傍での宇宙線照射によって生じる中性子と惑星物質の相互作用を定量的にとらえ、惑星物質のキャラクタリゼーションに結びつけることを試みられてきた。今までの研究において、宇宙線照射年代が115Maと長いNorton County隕石について同位体分析をおこなった結果、全岩分析の値に比べて大きなSm, Gd同位体シフトをもつ溶出フラクションが見出された(近藤ほか2009)。この結果は、同隕石の組織中に宇宙線履歴の異なる物質の混入を示唆するものである。また、この溶出フラクションの化学的特徴として、希土類元素存在度パターンにCe, Eu, Ybの負の異常を持つことから、この混入物質は太陽系高温凝縮物に類似しているものと考えられる。本研究ではこの混入物質を特定するための予備実験として、炭素質コンドライト隕石の高温凝縮物に着目し、その原始太陽系における宇宙線の初期照射の可能性を議論することを目的として、 Allende隕石中のCAIに含まれるヒボナイト、ペロブスカイトの局所Sm同位体測定を行った。
    高感度高分解能イオンマイクロプローブ(SHRIMP)におけるSm同位体測定の結果、CAI中のヒボナイトとペロブスカイトの分析値はいずれも標準試料の値と誤差範囲内で一致しており、局所同位体測定法においてはSm同位体組成に顕著な中性子捕獲効果は見いだせなかった。
惑星・衛星・小惑星の宇宙化学
  • 村井 彰宏, 奈良岡 浩
    原稿種別: ポスター講演
    専門分野: 惑星・衛星・小惑星の宇宙化学
    セッションID: 2P40 14-P01
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/30
    会議録・要旨集 フリー
    多環芳香族炭化水素(PAH)は炭素質隕石から検出される代表的な有機化合物の1つであり、星間空間にも存在が示唆されていることから、隕石中のPAHの研究は宇宙における有機化合物生成過程の解明につながると期待される。本研究ではOba and Naraoka (2003)に引き続き、変質によるPAHの変化を見るために、隕石から最も多く検出されるPAHで構造異性体であるFluoranthene とPyreneを水中で加熱し同位体比の変化を調べた。また、今までPAHの分析の行われていない炭素質隕石中のPAHの分析としてSayama隕石(CM2)中のPAHの同定と定量を行った。隕石中PAHの同位体比分析とシミュレーション実験の結果を合わせることで、隕石有機物の形成・変質過程について新しい情報がもたらされることを期待している。
  • 太田 祥宏, 高畑 直人, 杉浦 直治, 佐野 有司
    原稿種別: ポスター講演
    専門分野: 惑星・衛星・小惑星の宇宙化学
    セッションID: 2P41 14-P02
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/30
    会議録・要旨集 フリー
    火星における水の存在については探査機による観測の他、火星隕石の元素や、同位体分析によって明らかにされてきた。しかし火星の長い地質時代の水の動態と表層環境の変動はよくわかっていない。火星隕石中にまれに見られるリン酸塩鉱物はOH基を持つことがあり、水について研究を行うには非常に適していた鉱物である。本研究では今後の水に関する火星隕石の研究の前段階として高精度な空間分解能を持つ二次イオン質量分析計NanoSIMSを用いてリン酸塩鉱物中のU-Pb年代、Pb-Pb年代の測定を行い、約40億年前に形成されたという結果が得られた。本研究では先行研究と比較してより1つのグレインをより小さいスポットで測定しているため、グレインごとの年代の違いを考慮する必要がなくなったのは重要な成果である。
  • 荒井 朋子, 吉武 美和, 富山 隆将, 新原 隆史, 横山 立憲, 海田 博司, 三澤 啓司, アービング トニー
    原稿種別: ポスター講演
    専門分野: 惑星・衛星・小惑星の宇宙化学
    セッションID: 2P42 14-P03
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/30
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    アポロ14号試料と同様に微量元素濃度が高く、雨の海地域由来と考えられる月隕石NWA4485中に点在するジルコン及びバデリアイト破片のU-Pb年代を二次イオン質量分析装置で分析し、海の火山活動以前のマグマ活動次期の特定を試みた。
マントル物質の化学とダイナミクス
  • 田子 修也, 角野 浩史, 松藤 京介, ゼドゲニゾフ ドミトリー, 鍵 裕之, 長尾 敬介
    原稿種別: ポスター講演
    専門分野: マントル物質の化学とダイナミクス
    セッションID: 2P43 08-P01
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/30
    会議録・要旨集 フリー
    希ガス同位体比は地球内部の物質移動の有効なトレーサーであり、今まで数々の研究報告がなされている。本実験では、未だ希ガス同位体比に関する研究報告例がないロシアのウダチナヤキンバーライト産のダイヤモンド(キューボイド)に対して、中心部(コア)及び外周部(コート)がそれぞれ地球内部のどのような場所で成長したかを明らかにすることを目的とし、赤外分光及び希ガス質量分析を用いた実験を行った。コアとコートのHe同位体比(7×10-6-9×10-6)はともに大陸下マントルの値(8×10-6)に近く差はみられなかった。このことと包有物の炭酸塩メルトの化学組成が均一であることや 炭素同位体比δ13Cの変動幅が小さいこと(-2~-6‰)をあわせて考えれば、ウダチナヤ産のダイヤモンドは大陸下マントルにおける化学的、同位体比的に均質な環境で成長したと考えられる。
水-鉱物界面の地球化学
  • 杉山 敏基, 坂口 綾, 高橋 嘉夫, 柏原 輝彦, 大石 泰子, 臼井 朗
    原稿種別: ポスター講演
    専門分野: 水-鉱物界面の地球化学
    セッションID: 2P44 11-P01
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/30
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    マンガンクラストは海洋で沈殿する鉄とマンガンの酸化物の集合体であり、コバルト・銅・ニッケルといった遷移元素のほか多くの有用元素が濃集していることから、鉱物資源として注目されている。またマンガンクラストの成長速度は百万年に数mmとされており、数千万年にわたる古海洋環境を保持している記録者としても注目される。本研究では、超高感度のハイビジョンカメラやロボットアームを備え付けたハイパードルフィン(海洋研究開発機構所有の遠隔探査機)によって、堆積環境や産状を把握しながら採取されたマンガンクラストを用いることで、現海洋における元素の濃集機構解明、及び元素濃度と海洋環境との関係について考察する。
口頭発表(第三日)
土壌・陸域生態系の物質循環
  • 植山 雅仁, 鱧谷 憲, 西村 渉, 高橋 善幸
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: 土壌・陸域生態系の物質循環
    セッションID: 3A01 17-01
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/30
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    メタンは二酸化炭素(CO2)に次いで温暖化に寄与する気体であり、その地球温暖化係数は CO2の21倍と非常に強力な温室効果気体である。現在の大気中のメタン濃度は1774ppbであり、工業化以前の値の倍以上にまで上昇している(IPCC, 2007)。メタン濃度の増加率は、1980年代初期までは年率1%強であったが、近年はその増加率が低下傾向にあるとされている。このようなメタン濃度変動の要因を評価するためには、その生成・分解のメカニズムを定量評価する必要がある。森林は土壌の酸化作用によりメタンの吸収源であると考えられているが、その交換量の季節や年次の変動、また環境要因との関連については明らかとなっていない。これまでの森林におけるチャンバーを用いた観測から、森林土壌におけるメタンフラックスは嫌気性土壌の放出と好気性土壌の吸収が空間的に不均一に分布していることが明らかとなっており、チャンバーを用いた観測では、群落スケールのメタンフラックスを計測することが難しいことが指摘されている。そこで、本研究では群落スケールでの森林のメタンフラックスを定量評価するために、簡易渦集積 (Relaxed Eddy Accumulation; REA)法を用いて連続観測を実施した。
    簡易渦集積法は上昇気流と下降気流の際の空気を個別にサンプリングし、サンプリングされたメタンの濃度差と鉛直風速の標準偏差から群落スケールのフラックスを計測する手法である。観測は、山梨県富士吉田市に位置する富士北麓フラックスリサーチサイトにおいて実施した。観測サイトはカラマツ人工林で、その土壌は空隙を多く含む火山性土壌である。地上35 mに超音波風速温度計と空気の取り込み口を設置した。超音波風速計からの鉛直風速の信号に連動してポンプを動作させ、上昇気流、下降気流の空気を個別のバッグにサンプルした。サンプルされたバッグの空気は、水素炎イオン化型 ( Flame Ionization Detector; FID)メタン分析計を用いてメタン濃度を計測した。簡易渦集積法によるメタンフラックスに加えて、群落上2高度、群落内2高度のメタン濃度の鉛直プロファイルを計測した。REA法によるシステムの精度検証の為に、メタンフラックスの計測に加えて CO2フラックスの測定を実施し、渦相関法により計測された CO2フラックスと比較を行なった。
    発表では、連続測定の結果と明らかとなった課題について報告を行なう。
  • 上田 哲大, 杉本 敦子
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: 土壌・陸域生態系の物質循環
    セッションID: 3A02 17-02
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/30
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    2009年では、タイガ林の大気水蒸気が、植物の蒸散由来の水蒸気と降水からの蒸発等の影響を受けた水蒸気の2種類の水蒸気から形成されると考えられることを述べた。今回は、それぞれのソースの水蒸気同位体比を、植物の枝の水の同位体比やCraig-Gordon式を用いて算出した蒸発由来の水蒸気同位体比等から仮定し、植物の蒸散由来の水蒸気の大気水蒸気への寄与の推定を行った。さらに結果の妥当性を調べる為、NCEP/NCAR再解析データを用いて、領域内の水蒸気量(可降水量)と水蒸気同位体比の観測値を比較した。
  • 有山 薫, 篠崎 美由起
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: 土壌・陸域生態系の物質循環
    セッションID: 3A03 17-03
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/30
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    鉛は人間にとって利用範囲の広い金属として古代から利用されており,顔料,水道配管,アンチノック剤としてのガソリンへの添加など広範な用途で利用されてきた。これまでに人間活動により環境中に放出された量は天然由来のそれを大きく上回ると推計されている。近年,先進国では規制強化により脱鉛化が進んでいるが,発展途上国等では未だに環境中に排出され続けており,国を超えた汚染が懸念されている。我々が開発した簡便・迅速な穀物の鉛同位体比分析法により,日本の様々な地域で生産された穀物(オオムギ,コムギ,コメ)の鉛同位体比を決定した。同位体組成はいずれも日本の非汚染土壌や地質のそれとは異なり,狭い範囲に分布した。日本及び中国の大気粉塵の文献値と重なりが大きく,穀物中の鉛の主要な起源は中国産石炭と推定された。このことは日本産農産物全般に拡張でき,中国産石炭に含まれる鉛を農産物を通して日本人が摂取していることなる。
  • 高橋 善幸, 三枝 信子, 宮田 明
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: 土壌・陸域生態系の物質循環
    セッションID: 3A04 17-04
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/30
    会議録・要旨集 フリー
    近年、異分野の観測ネットワークがカバーする観測項目の重複が増えてきたことから、観測ネットワーク間でデータを相互利用したり、観測サイト維持の面で協力することによって得られる相互支援効果が急速に高まってきた。異分野のネットワークを意識的に重ねることにより、分野横断的な観測を実施できる観測サイトを増やし、それらを空間的に適切に配置することによって、既存の観測機能を最も省力的な手段によって最大限に生かすことが可能になる。
    熱・水・CO2フラックス長期観測サイトにおいて国内外の研究機関と協力して行っている温室効果気体及び反応性気体の交換量やそれに関係する物質循環の観測と、その結果を解釈するための各種生態系機能に関する観測の結果を紹介する。また、国内及びアジアにおける分野間連携の取組、総合的な観測を実施することのできるサイトを共同利用するための取組について議論する。
大気微量成分の地球化学
  • 入江 仁士
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: 大気微量成分の地球化学
    セッションID: 3A05 10-01
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/30
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    対流圏中のオゾン等の微量気体やエアロゾルは大気汚染や気候変動という形で私たちの生活に大きな影響を与えている。こういった影響をきちんと理解する上で、対流圏中の化学組成がいつ・どこで・どのぐらいの大きさで変化しているのかを地球規模で知ることが不可欠である。近年、人工衛星観測からは、領域から都市スケールでの大気汚染の現状を監視できるようになってきている。加えて、人工衛星からの観測は同一の手法で連続して行われていることから、長期変化の解析に適している。2009年12月までに得られた衛星データを解析したところ、中国東部でのNO2の大気中濃度が1996年以降、増加の一途をたどり、2007年から2008年にかけて、これまでの最高レベルに達したことが分かった。また、AODの変動は年々のSO2排出量の見積もりと定性的に一致していた。特に2006年以降は減少傾向を示したが、これは中国国内における湿式排煙脱硫装置の普及に起因すると示唆された。
  • 谷本 浩志
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: 大気微量成分の地球化学
    セッションID: 3A06 10-02
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/30
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    本講演では、著者が最近行ってきた研究のうち、対流圏の反応性微量気体成分に関する衛星観測を用いた大気化学研究について、その概要を報告する。(1)MOPITT衛星観測を用いた東アジアにおける一酸化炭素(CO)排出量の変化MOPITT衛星観測によるCO濃度の推移や地上観測データを用いて排出インベントリーによる推計値を検証したところ、2001年~2005年の間、中国のCO排出量の伸びは16%であるという結果が得られた。中国では、家庭での生物燃料燃焼から発電所での化石燃料燃焼へとエネルギー転換が進んだ結果、このセクターでのCO排出量は大きく減少したが、産業の急速な発展により工場からの排出が大きく増加した結果、全体としては微増傾向にあることが示唆された。(2)AIRS衛星観測を用いた西シベリアの森林火災からのCOの放出と輸送AIRS衛星観測と全球化学輸送モデルを用いて、2003年夏季のシベリアにおける森林火災がCO濃度に及ぼした影響を調べた。AIRSにより得られたCOの分布は、西シベリアから放出されて北半球に広く長距離輸送されるCOの様子を捉えており、モデルと観測の不一致から、現在広く用いられている森林火災の排出インベントリーでさえも西シベリアからの排出、特に泥炭の火災からの排出を過小評価していることが示された。(3)過去10年間のアジアにおける人為起源排出と春季対流圏オゾンのトレンド日本の清浄地域における春季対流圏オゾンのトレンドを過去10年間にわたって調べたところ、離島などの地上では統計的に有意ではない一方、標高の高い山岳地域では顕著な増加傾向が見られた。領域化学輸送モデルによるシミュレーションは概して観測された傾向をよく再現したが、山岳地域における増加傾向は約半分しか再現されなかった。観測とモデルの不一致は、モデルがアジア大陸からの人為起源排出量か、生成したオゾンの輸送量を過小評価している可能性がある。
  • 牧内 秋恵, 本多 照幸
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: 大気微量成分の地球化学
    セッションID: 3A07 10-03
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/30
    会議録・要旨集 フリー
    本研究では、東京都市大原子力研究所(川崎市)に設置したハイボリューム・エアサンプラーにより、週間で採取した大気粒子状物質(APM)試料に含まれる210Pb、7Be及び微量元素を機器中性子放射化分析(INAA)等にて定量し、トラジェクトリ分析も加えて発生起源や挙動について考察した。その結果、(1)春季試料でAPM質量の大きい試料が2つ存在したが、それらは異なる地域、高度を通過し日本に飛来していることが分かった。また、それらは黄砂の寄与が極めて大きい試料と火山噴火(浅間山)の影響の可能性がある試料に分けられた。(2)人為起源元素については、燃焼系粒子や自動車の排ガス等の発生起源を、また(3)自然起源元素については、土壌や海塩等の発生起源をおおよそ推定できた。
  • 廣瀬 勝己, 木川田 喜一, 五十嵐 康人
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: 大気微量成分の地球化学
    セッションID: 3A08 10-04
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/30
    会議録・要旨集 フリー
    1990年から2007年まで、つくばの気象研究所で月間降下物を採取し、降下物に含まれるトリウム同位体を測定した。そのデータを利用してトリウム降下量の季節変動および長期変動を解析した結果を報告する。トリウム降下量は春期に極大を示す季節変化を示すが、年によって変動が大きい。つくばの降下物中のトリウムの起源として、黄砂の可能性がある。しかし、局地的な土壌粒子の舞い上がりの可能性もあり、トリウム同位体を利用して弁別の可能性を検討した。
  • 山内 理恵子, 木川田 喜一, 野村 雅夫, 広瀬 勝巳, 大井 隆夫
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: 大気微量成分の地球化学
    セッションID: 3A09 10-05
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/30
    会議録・要旨集 フリー
    ウラン同位体比(235U / 238U)は、天然ではほとんど変動しないため、環境試料中に見出されるウラン同位体比の変動は人為的な核活動の影響である。本研究では、日本においてグローバルフォールアウトの影響が大きい事が知られている秋田に注目し、1977年各月の降下物試料のウラン同位体比を求めた。その結果、夏季の大気降下物の酸可溶性部分の235U / 238U比が数‰ほど劣化ウラン側に偏る値を示し、ウラン同位体比に季節変動が認められた。この値に対し、酸不溶性部分はほぼ天然比を示したことから、劣化ウランの混入は二次粒子に起因することが示唆され、劣化ウランがグローバルフォールアウトにより国内大気降下物に付加されたことが考えられた。劣化ウランの起源は未だ不明であるが、これを特定することが今後の研究の課題である。
  • 和田 晃, 松枝 秀和, 坪井 一寛, 澤 庸介, 村山 昌平, 近藤 裕昭, 田口 彰一
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: 大気微量成分の地球化学
    セッションID: 3A10 10-06
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/30
    会議録・要旨集 フリー
    ラドン-222(以下ラドン)はウラン系列の天然放射性同位体であり、半減期3.824日でアルファ壊変する希ガスである。ラドンは主に土壌からほぼ一定の速度で発生して大気中へ拡散するため、大陸起源の微量気体の輸送過程を調べる化学トレーサーとして有用である。我々の研究グループでは、測定の時間分解能が高く検出限界値が低い高精度ラドン観測装置を開発し(Wada et al., 2010, J. Meteor. Soc. Japan, 80, 123-134)、北西太平洋上の離島観測所に設置して極低濃度環境下における大気中ラドンの濃度変動の観測を実施してきた。本研究では、観測された大気中ラドン濃度の変動に対応する気象条件やモデル実験結果の解析を行い、アジア大陸からのラドンの長距離輸送過程の解明を試みた。
  • 廣内 淳, 大屋 紀之, 森泉 純, 山澤 弘実, 田阪 茂樹
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: 大気微量成分の地球化学
    セッションID: 3A11 10-07
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/30
    会議録・要旨集 フリー
    海洋は人為起源の温室効果ガスの一つである二酸化炭素を吸収している。従来よりガス交換速度と風速との間に異なる経験式が提案されているが、いずれが妥当であるかは未だ明らかではない。本研究は天然に存在するラドンを大気海洋間ガス交換のトレーサーとして用い、北極海上で航海中のラドン連続測定値を用いたガス交換速度推定の可能性を検討した。
    大気海洋間のラドンフラックスを海洋混合層深さと海水中ラジウム濃度及びラドン濃度との差から求めた。ガス交換速度はラドンフラックスと大気海洋間ラドン濃度差の測定から推定した。ガス交換速度と風速との関係が不連続であったため、海水中ラドン濃度分布に影響する風速の履歴を考慮した。その結果、ガス交換速度と風速との不連続が解消され、従来と同様にガス交換速度と風速との間に正の相関があることが示された。
  • 宮本 知治, 浜本 礼子, 柳 哮
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: 大気微量成分の地球化学
    セッションID: 3A12 10-08
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/30
    会議録・要旨集 フリー
    日本へ飛来する風送塵の起源と季節変化を調べるために、北部九州の脊振山頂にて雨水と風送塵を継続採取し、そのSr・Nd同位体比の分析を行った。風送塵は微粒子を主とし、少量の数ミクロンの珪酸塩鉱物からなる。炭酸塩鉱物は認められなかった。粗粒粒子は冬季から春季に多い。風送塵量は晩冬から増加し、初春にピークを迎え、それから減少した。風送塵中のSr同位体比は0.7096-0.7180、CHUR規格化したNd同位体組成は-19.9--3.5の幅を示した。Sr同位体比はRb/Sr比と相関があり、Nd同位体比とも弱い相関を示した。降塵量の多い風送塵の組成上の特徴は北京西部・中国北東部・タクラマカン砂漠の荒地の砂の組成と一致する。夏から秋にかけての風送塵の同位体組成は変化幅が大きいが、最も降塵量の少ない時期は低いSr同位体比を示した。偏西風が弱くなり大陸起源の風送塵の供給が減少するにともない、採取地域周辺の土壌および火山灰の相対的寄与が増加したことも原因と考えられる。
  • 松本 祐介, 木川田 喜一, 大井 隆夫, 赤峰 生朗, 廣瀬 勝己, 五十嵐 康人, 藤原 英司, 野村 雅夫, Jugder Dulam
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: 大気微量成分の地球化学
    セッションID: 3A13 10-09
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/30
    会議録・要旨集 フリー
    我々のこれまでの研究により、1964年~2000年の福岡大気降下物に天然とは異なる同位体比を有するウランが見出された。これは核実験により汚染された中国大陸の土壌粒子を含む風送塵により付加された可能性が高い。近年日本に飛来する黄砂は中国北部からモンゴルを起源とすることが多いと考えられることから、モンゴルの表層土壌の化学組成を日本の大気降下物、ならびに広く黄砂粒子の起源と認識されている中国黄土高原の表層土及びタクラマカン砂漠の砂と化学組成を比較した。その結果2000年3月の福岡大気降下物において特にモンゴル表層土壌の寄与がうかがわれた。このことから国内で見出される大気降下物の異常ウラン同位体比がモンゴルの表層土壌に由来していることは十分に考えられる。しかしこれまでのところ、モンゴルの表層土壌のHNO3抽出液、抽出残渣の235U / 238U比は共に測定誤差範囲内で天然比に等しいという結果が得られている。
  • 佐野 有司, 古川 由紀子, 高畑 直人
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: 大気微量成分の地球化学
    セッションID: 3A14 10-10
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/30
    会議録・要旨集 フリー
    大気中のヘリウム同位体比は、ヘリウムの滞留時間が大気の混合時間より遙かに長いために、世界中どこでも一定と考えられてきた。近年、天然ガスや石油の採掘に伴い人工的に固体地球から放出される同位体比の低い地殻起源のヘリウムが付加することにより、大気中の同位体比の低下が示唆されている。しかし、観測データは変化を示すものと示さないものがあり、今も論争が続いている。本研究ではこの問題に挑戦するために、日本の遺跡から採取された金属精錬の際にできるスラグにトラップされた過去の空気と世界中の様々な場所で採取された表層大気のヘリウム同位体比を、新たに開発した高精度分析システムにより測定した。講演ではその結果について述べる。
  • 遠嶋 康徳, 峰島 知芳, 向井 人史, 町田 敏暢, 山岸 洋明, 野尻 幸宏
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: 大気微量成分の地球化学
    セッションID: 3A15 10-11
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/30
    会議録・要旨集 フリー
    大気ポテンシャル酸素 (APO) は大気中の酸素(O2)と1.1倍した二酸化炭素(CO2)の濃度の和として定義されるトレーサーで、主に大気-海洋間のCO2およびO2のフラックスと海洋境界層高度それぞれの時空間変動を反映するというユニークな性質を持つ。本発表では、国立環境研究所が波照間・落石ステーション、および、日本-北米間および日本-ニュージーランド・オーストラリア間を定期運航する貨物船を用いて観測されたAPOについて、全球大気輸送モデル(NIES TM)を用いて計算されるAPOとの比較を行った。その結果、モデル計算結果はAPOの季節変動をおおむねよく再現しているが、北半球の極大値を除きモデル計算結果の極大・極小値の位相が観測結果より約1カ月進んでいること等が分かった。また、年平均値の緯度分布を見ると、海洋からのCO2フラックスとしてTakahashi et al. (2009)を用いる場合の方がTakahashi et al. (2002)を用いる場合よりもAPOの年平均値の緯度分布をよく再現することが分かった。
  • 奈良 英樹, 谷本 浩志, 野尻 幸宏, 向井 人史, 町田 敏暢, 遠嶋 康徳
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: 大気微量成分の地球化学
    セッションID: 3A16 10-12
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/30
    会議録・要旨集 フリー
    国立環境研究所では2007年9月より、西部太平洋上の日本-東南アジア諸国間を航行する定期貨物商船FUJITRANS WORLD号((株)鹿児島船舶所属)を利用した大気観測を実施している。当該船舶では今までにCO2(二酸化炭素), CO(一酸化炭素), O3(オゾン), BC(黒色炭素)の連続観測を行ってきたが、2009年9月よりキャビティーリングダウン式分光計(CRDS)を導入して大気中CO2とCH4の連続観測を新たに開始した。本発表では船舶に搭載したCRDSの船上測定における性能評価と、これまでに得られた観測結果について報告する。
  • 河村 公隆, 立花 英里
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: 大気微量成分の地球化学
    セッションID: 3A17 10-13
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/30
    会議録・要旨集 フリー
    小笠原諸島・父島にて、海洋エアロゾル試料を2001年から2009年まで採取した。試料から低分子ジカルボン酸を分離し、誘導体化の後、ガスクロマトグラフィーにて定量した。シュウ酸が主成分であることを全ての試料で確認した。ジカルボン酸の濃度、組成の季節変更、経年変化については票する。
  • 山本 真也, 河村 公隆, Lee Meehye
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: 大気微量成分の地球化学
    セッションID: 3A18 10-14
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/30
    会議録・要旨集 フリー
    本研究では,東シナ海の韓国・済州島で採取された大気エアロゾル中の陸源バイオマーカーの分子組成・安定炭素/水素同位体組成の季節変動を調べ、アジア大陸近傍での陸源有機物の大気輸送過程の季節性の検討を行った。その結果、春・秋・冬季にはアジア大陸からの、夏季には東南アジアからの陸源有機物の輸送が卓越することが明らかとなった。また、済州島及び父島での陸起源有機物の輸送パターンの比較から、夏季モンスーンによる物質輸送が外洋域でより卓越していることが明らかとなった。
  • 古川 丈真, 高橋 嘉夫
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: 大気微量成分の地球化学
    セッションID: 3A19 10-15
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/30
    会議録・要旨集 フリー
    主要有機エアロゾルの一つであるシュウ酸は、水溶性であるため雲凝結核として作用し、雲の形成を助長するとともに雲の寿命を伸ばし、間接的に地球を冷却すると考えられている。しかし、エアロゾル中のシュウ酸が単体のシュウ酸なのかシュウ酸錯体なのかは解明されていなかった。シュウ酸錯体の多くは不溶性であるため、雲凝結核としての働きには期待できない。XAFSを用いた本研究から、大気中のシュウ酸の多くはシュウ酸錯体として存在することが分かった。また、シュウ酸とシュウ酸錯体の水分吸着脱離重量測定の結果より、シュウ酸錯体は雲凝結核として働かないことが分かった。そのため、エアロゾル中のシュウ酸の雲凝結核としての働きはこれまでの見積もりよりも小さいことが予想される。
  • 藤原 真太郎, 河村 公隆, 宮崎 雄三
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: 大気微量成分の地球化学
    セッションID: 3A20 10-16
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/30
    会議録・要旨集 フリー
    東アジア・北太平洋域自由対流圏におけるエアロゾル中の低分子ジカルボン酸類の組成分布と起源を明らかにすることを目的として、2009年夏期に富士山頂にてサンプリングを実施した。捕集した試料を水抽出、誘導体化した後、GC/FID、GC/MSによって分析した結果、夜間と昼夜の試料中に、シュウ酸を主成分として多くのジカルボン酸、ケトカルボン酸などを検出した。夜間試料の濃度はこれまで報告されていた自由対流圏や、海洋エアロゾル中の濃度に近いのに対し、昼夜試料の濃度は地上付近で観測された結果に近いものであることがわかった。また、粒径別試料の分析からは、低分子ジカルボン酸類は2.5μm以下の粒径に濃集されていることが明らかとなり、更に夜間試料は昼夜試料と比較してより微細な粒子の割合が高いという特徴を示した。これらの結果より、富士山頂で観測された低分子ジカルボン酸は夜間と昼間では起源が異なることが示唆された。
  • 松永 壮, 中塚 誠次, 望月 智貴, 遠藤 由希子, 大野 卓夫, 谷 晃
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: 大気微量成分の地球化学
    セッションID: 3A21 10-17
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/30
    会議録・要旨集 フリー
    モノテルペン(C10H16)やセスキテルペン(C15H24)は、温度依存で放出量が決まると考えられているが、四季を通じた観測を行った結果、モノテルペンでは8月、セスキテルペンでは4月のみ基礎放出量が大きく減少することが分かった。これは、異なる個体でも同様に見られた傾向であった。モノテルペンやセスキテルペンは、葉の組織中に貯留されたものが揮発することで放出されていると考えられている。基礎放出量の大きな減少は、この貯留量とBVOCの生産量とのバランスが崩れることによって起こるのではないかと推測しているが、現在のところ確証はない。今後、検証を進めて、原因を明らかにしたい。
  • 斉藤 拓也, 横内 陽子, 向井 人史
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: 大気微量成分の地球化学
    セッションID: 3A22 10-18
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/30
    会議録・要旨集 フリー
    大気中で最も多量に存在する含硫黄ガスである硫化カルボニル(COS)は、成層圏の硫酸エアロゾルの前駆体として働くことで、地球の放射収支や成層圏オゾンの化学に大きな影響を与えている。本研究では、大気中COSの現場連続観測を初めて実施し、これを用いてCOSの大気動態の解明を試みた。観測されたCOSの時系列データは、春に極大値、夏から秋にかけて極小値を持つ明瞭な季節変動を示していたことから、大気中COSの季節変動は、夏季に最大となる陸上植物によるCOS取り込み量の変化を主に反映していると考えられた。
  • 齋藤 尚子, 今須 良一
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: 大気微量成分の地球化学
    セッションID: 3A23 10-19
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/30
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    人工衛星は広域かつ長期間観測が可能であり、二酸化炭素など大気中の温室効果ガスの変動を全球規模で継続的にモニターするための有効な手段のひとつである。2000年代以降、衛星データから二酸化炭素濃度を導出する研究が本格的に進められている。日本では、国立環境研究所、環境省、宇宙航空研究開発機構が共同で開発した温室効果ガス観測技術衛星GOSAT (Greenhouse Gases Observing Satellite)が昨年(2009年)1月23日に打ち上げに成功し、現在まで約1年半の間、順調に観測を続けている。GOSATデータのリトリーバル処理の結果、二酸化炭素の北半球春季の濃度緯度勾配や北半球夏季の陸上での低濃度などが見られた。本講演では、GOSATによる二酸化炭素の観測結果の紹介を中心に、諸外国の衛星による二酸化炭素観測について概括する。
  • 野口 克行, 入江 仁士, 笠井 康子, 北 和之, 秋元 肇
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: 大気微量成分の地球化学
    セッションID: 3A24 10-20
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/30
    会議録・要旨集 フリー
    1970年代に頻発しその後は減少傾向であった光化学スモッグの発生が近年になって再び頻発するようになり、改めて社会問題となっている。日本各地に設置された地上観測網や数値シミュレーションの結果などから、最近の光化学スモッグの増加傾向は日本の都市域からのローカルな排出だけではなく、中国をはじめとする経済発展の著しいアジア諸国からの長距離輸送の影響があることが示唆されてきた。このように、日本だけでなくより広範囲な領域における大気汚染の実態を明らかにする為には、従来からの観測手法に加えて、気象衛星「ひまわり」のような静止衛星を用いた時間分解能の高い(1時間程度)観測が有力な手段の一つと考えられる。このような背景のもと、日本、欧州並びに米国の3地域では、静止衛星による大気汚染観測がそれぞれ計画されつつある。既に、周回衛星による大気汚染物質の時間平均的な全球分布の取得については欧米の観測をはじめとして実績が積まれており、それらの経験を踏まえた計画が進行中である。日本では、平成18年度に大気環境観測衛星検討会が有志によって立ち上げられ、シミュレーションを中心とした検討が始まっている。従来の周回衛星による観測と大きく異なる点として、周回衛星と比較して地球大気からの距離が著しく遠いこと、観測対象となる大気汚染物質の分布や太陽・地球・衛星の位置関係(太陽天頂角など)が大きく日内変化すること、などが挙げられる。本講演では、日本や欧州で進められている静止衛星計画について紹介すると共に、代表的な大気汚染物質である二酸化窒素を例に取り上げ、静止衛星観測に特化したシミュレーションの結果を示す。
同位体効果研究の地球化学への応用
  • 大竹 翼
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: 同位体効果研究の地球化学への応用
    セッションID: 3C01 01-01
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/30
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    近年, 33Sと36Sを含む全ての硫黄安定同位体比の測定が様々な年代の硫化鉱物・硫酸塩鉱物に適用されている. 例えば,Johnstonら(Science, 2005)では,全ての硫黄の安定同位体比を測定することで質量依存性分別からのわずかなずれを見出し,ある環境や地質時代における硫黄の循環に重要な生物の種類(例えば,硫酸還元細菌や硫黄不均化細菌)を特定できると主張している.しかしながら,依然として生物活動の関与しない無機反応における硫黄同位体効果とその質量依存性はよく分かっていない.したがって,本研究の目的は,平衡及び非平衡無機反応の硫黄化合物の同位体効果と質量依存性を第一原理計算によって求め,その質量依存性を検討することである.
    第一原理計算は,Gaussian 03プログラムを用いて,HF (Hartree-Fock)法及びDFT (Density Functional Theory)法によって行った.理論レベルによる質量依存性の違いは見られなかった.計算は,8種類の硫黄化合物 (HS-, H2S, S2, S8, CS2, SO2, SO3, SO42-)及びそれらの溶存種について行い,スケーリングファクターを用いることでHF/6-31G(d)程度の理論レベルでも振動周波数及び同位体分別係数(α値)について実験値と整合的な値(34α値で<±~0.5‰)が得られた.同様にして,-70 - 650℃の温度範囲において,33α, 36α値を求め,それらの質量依存性(例えば,(33α-1)/(34α-1)比)について検討した.
    その結果,(33α-1)/(34α-1)及び(36α-1)/(34α-1)比は,500℃以上の温度条件でのみ,Bigeleisen and Mayer (J. Chem. Phys., 1947)による質量依存の近似則によって求められる0.515と0.19という値に近い値が得られた (Otake et al., Chem. Geol., 2008).それ以下の温度では,例えば,0℃では,(33α-1)/(34α-1)比で0.505-0.517,(36α-1)/(34α-1)比で1.88-1.96の範囲で硫黄種によって様々な値をとるということが分かった.
    S8とH2S間の同位体分別などでは, 温度が低下するとともにα値が正から負に変化するクロスオーバーという現象がみられる.クロスオーバー時には,異常な(33α-1)/(34α-1)比がみられるが, α値自身が小さいため,得られるΔ値は0に近い.溶媒和モデルや非調和振動による質量依存性への大きな影響はみられなかった.計算の結果,温度・振動数・原子の質量数が同位体交換平衡時の質量依存性に影響を与えるパラメーターであることが明らかになった.今後,VTST (Variational Transition State Theory)などを用いて,非平衡反応時の同位体効果及びその質量依存性について計算する必要がある.そのことによって,平衡時の質量依存性と区別が可能であるか検討することが可能となる.
  • 市川 寛之, 武蔵 正明, 松尾 基之, 大井 隆夫
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: 同位体効果研究の地球化学への応用
    セッションID: 3C02 01-02
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/30
    会議録・要旨集 フリー
    同位体交換平衡における圧力の効果は小さいと考えられており同位体地球化学の分野でも一般的に圧力効果は考慮されていない。しかし、実験的に水素同位体分別係数が圧力に依存するとの報告や、ホウ素同位体でも実験的に25 MPaまでの範囲で圧力効果が報告されている。本研究ではより詳細にホウ素同位体効果への圧力の寄与を調べた。強塩基性陰イオン交換樹脂を用いたイオン交換法によるブレイクスルー実験を行い樹脂相と溶液相間の同位体分別係数を算出した。結果として樹脂へのホウ素吸着量は圧力上昇に伴い単調に上昇したが、同位体分離係数は圧力により特異的に変動した。
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