日本地球化学会年会要旨集
2010年度日本地球化学会第57回年会講演要旨集
選択された号の論文の300件中151~200を表示しています
南太平洋-パタゴニア地域の地球科学総合研究
  • 原田 尚美, 阿部 なつ江, Lange Carina, 安間 了, 折橋 裕二, 岩森 光
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: 南太平洋-パタゴニア地域の地球科学総合研究
    セッションID: 2C01 04-01
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/30
    会議録・要旨集 フリー
    海洋地球研究船「みらい」を利用して、海洋プレート形成現場である東太平洋中央海嶺(主にチリ沖三重会合点)およびその周辺の南太平洋海域において、1)海洋地殻構造と海洋底ダイナミクス(マントル上昇流から海洋地殻形成およびプレート進化過程)の解明、2)若い海嶺の大陸下への沈み込みプロセスの観察によって、大陸地殻形成・進化メカニズム(海嶺衝突帯付近のマグマティズムと沈み込み堆積物フラックス)の解明を目的として、地観測が実施された。また、さらに高緯度域(フィヨルド内およびマゼラン海峡内を含む)にかけて海底堆積物を採取し、3)北半球で確認されている1000年スケールで変動するダンスガードオシュガーサイクルと呼ばれる急激な気候変動が南半球ではどのように生じていたのか、4)古環境復元の代替指標の高精度化ならびに現代の水柱における物質循環の解明、5)南半球における過去200万年にわたる地球磁場強度の変動の解明を目的とした観測が実施された。本発表では、その航海概要および成果の一部について紹介する。
  • 福田 美保, 原田 尚美, 佐藤 都, Carina B. Lange, 阿波根 直一, Silvio Pantoja, 川上 創, 青野 ...
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: 南太平洋-パタゴニア地域の地球科学総合研究
    セッションID: 2C02 04-02
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/30
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】 最終氷期の大気中二酸化炭素濃度が間氷期に比べて約80-100 ppm低かったことが南極氷床コア中の大気分析によって明らかにされている。氷期の二酸化炭素低下とその後の融氷期における増大の原因については諸説提案されており、その要因の1つとして“生物生産量の変化”が挙げられる。現在のチリ沖は南極周極流を起源とし南緯40度付近を境に赤道方面へ流れるペルーチリ海流と極域へ流れるケープホーン海流が存在する。南極周極流は多くの栄養塩を輸送することから、 この水塊の影響が及ぶ海域では高い生産量がもたらされる。しかしこれまでのチリ沖における海底堆積物を用いた過去の生物生産を明らかにする研究は低緯度のペルーチリ海流域に偏っておりケープホーン海流域ではほとんど行われておらず、チリ沖の生物生産量を詳細に議論するためにもより高緯度の影響も調べる必要がある。南米パタゴニア氷河のフィヨルドの一種であるマゼラン海峡西部域は堆積速度が速いことから1000年スケールでの古環境変動をみるのに適している。そこで、過去13,000年間にわたるマゼラン海峡西部域における全有機炭素含有量・全窒素含有量測定から生物起源粒子フラックス変動を高時間解像度で復元することを目的として本研究を実施した。
    【試料と方法】 海底堆積物試料は2003年「みらい」 MR03-K04航海によってマゼラン海峡西部域太平洋側で採取されたPC3 (52°52’S, 74°05’W; 水深 560 m) を用いた。堆積物中に含まれる全有機炭素含有量(TOC%), 全窒素含有量(TN%)を測定し,沈積流量(Mass Accumulation Rate ; MAR) 法と230Th-normalization 法を用いてTOC, TNのフラックスを算出した。MAR法は従来用いられてきた手法で、堆積物の年代を決定した層準間で堆積速度をもとにフラックスを見積もる方法である。一方、230 Th-normalization法は各層準における生物源粒子含有量を吸着性の高い放射性核種トリウム230で規格化することでフラックスを推定する方法である。よって従来よりも高い時間分解能での分析が可能となること、沿岸域など陸起源の古い堆積物が突発的に移流してくるような海域では、MAR法よりも定量的な見積もりに有効であると考えられている(Francois et al., 2007)。
    【結果】 MAR法と230Th法を用いてそれぞれ求めたTOC, TNフラックスは結果が大きく異なっていた。MAR法を用いたフラックスは融氷期に高く、完新世に入って減少する傾向を示した。一方で230Th-normalization 法では、融氷期に低く、その後の完新世で高い値を示した。MAR法でのフラックス推定は堆積速度の変化の影響を大きく受けることから、融氷期の高いフラックスの値は堆積速度がこの時代に大きかったことによる過大評価ではないかと考えられる。
  • 倉沢 篤史, 土屋 正史, 豊福 高志, 北里 洋, 西 弘嗣
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: 南太平洋-パタゴニア地域の地球科学総合研究
    セッションID: 2C03 04-03
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/30
    会議録・要旨集 フリー
    古海洋環境の重要な指標の一つである浮遊性有孔虫は非常に高い遺伝的多様性を示し,遺伝的に異なる集団が種内に複数存在することが明らかにされつつある.しかし,南太平洋における遺伝的多様性についてはこれまでにほとんど研究されていなかった.そこで,みらいMR08-06航海にてプランクトンネットおよび表層海水濾過にて浮遊性有孔虫Globigerina bulloidesを採取し, SSU rDNAの塩基配列を決定し遺伝型の判別を行った.その結果,南太平洋外洋域からはIIa, チリ沿岸域からはIIa, IIdの2種類の遺伝型を確認した.これらの北東太平洋で報告されている遺伝型と共通しており,東太平洋と遺伝的な交流があることが示唆される.また,緯度方向で生息する遺伝型が変化していることから海洋環境の違いが遺伝集団の分布に影響していると考えられる.
  • 平野 直人, 町田 嗣樹, 阿部 なつ江
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: 南太平洋-パタゴニア地域の地球科学総合研究
    セッションID: 2C04 04-04
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/30
    会議録・要旨集 フリー
    北西太平洋で発見された新種の火山・プチスポット火山形成モデルに従えば、プレート屈曲場はどこでもプチスポット火山が存在している可能性がある。本講演ではチリ海溝、トンガ海溝の例を報告する。
  • 角野 浩史, 折橋 裕二, 元木 昭寿, 平田 大二, ハラー ミジェール, コンセション ロムロ, 安間 了, 長尾 敬介
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: 南太平洋-パタゴニア地域の地球科学総合研究
    セッションID: 2C05 04-05
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/30
    会議録・要旨集 フリー
    南米大陸の南部アンデス弧の背弧域にあたるパタゴニア南部で、鮮新世から第四紀にかけてアルカリ玄武岩の溶岩台地を形成した火成活動の起源を明らかにするため、南部パタゴニア溶岩台地で採取したアルカリ玄武岩から鉱物分離したカンラン石斑晶とマントル捕獲岩について、破砕法によるガス抽出を用いた希ガス全元素の同位体分析を行った。アルカリ玄武岩マグマの3He/4He比は6~7RA程度で、MORB(8±1 RA)よりも高い3He/4He比で特徴づけられるマントルプルームは関与していないことが明らかになった。このことは、パタゴニア南部のアルカリ玄武岩が持つOIB 的な特徴の起源が、スラブウィンドウを通過してきたマントルプルームである可能性は低いことを示している。一方マントル捕獲岩の希ガス同位体比からは、この地域の大陸下リソスフェアが、交代作用に伴いHeがマグマに選択的に持ち去られた結果として、MORBより低い3He/4He比と4He/40Ar*比をもっていることが分かった。また40Ar/36Ar比の最高値はアルカリ玄武岩で6000、マントル捕獲岩で3000程度と、マントルの値(~40000)より低く、沈み込みによってもたらされた大気起源Ar(40Ar/36Ar比 = 296)の寄与を示唆している。
  • 小林 千明, 折橋 裕二, 平田 大二, ナランホ ホセ, 小林 淳, 安間 了
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: 南太平洋-パタゴニア地域の地球科学総合研究
    セッションID: 2C06 04-06
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/30
    会議録・要旨集 フリー
    人工衛星に搭載されたASTERセンサを用いて、Viedma 火山周辺のSiO2wt%を推定した。従来の研究では、Stern and Killian(1996)により SiO2wt%は64-66wt%と計測されているが、本研究の結果からはSiO2wt%は51-63 wt%と推定されている。この値は従来の研究よりも広い幅を持ち、高いSiO2 値は一致しているが、よりバサルティックな組成を示す箇所が存在することも示している。この推定値は、Hudson 火山(直径10km のカルデラを有する成層火山)で系統サンプリング及び分析を行ったOrihashi et al.(2004, 2008)の組成幅(SiO2:50.5-66.6wt%)と一致し,Viedma 火山がこれまで推定されていたような単成の溶岩ドームではないことを示唆する。
  • 折橋 裕二, 新正 裕尚, ナランホ ホセ, 元木 昭寿, 安間 了
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: 南太平洋-パタゴニア地域の地球科学総合研究
    セッションID: 2C07 04-07
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/30
    会議録・要旨集 フリー
    南米大陸西縁に発達するチリ・トレンチには約15Ma以降,断続的にチリ中央海嶺が沈み込んでおり,現在,タイタオ半島沖の南緯46°付近にはT-T-R三重点を形成している.したがって, SVZの最南端のハドソン火山からアンデス弧沿いの南緯34°まで発達するSVZ火山列の化学組成の側方変化を把握することで,定常的な沈み込み帯から中央海嶺沈み込みの開始に至るマントルウェッジ内の温度構造,スラブから脱水作用とマントルウェッジ内に循環するH2Oの変化を把握することができる.本講演ではSVZ全域の第四紀火山から採取した玄武岩質岩について,主・微量成分(ホウ素濃度を含む)を測定し,この結果から最南端のハドソン火山から最北端のサンホセ火山(南緯34°)に至るSVZ火山の化学組成の側方変化を 議論する.
  • 昆 慶明, 小宮 剛, 安間 了, 平田 岳史, 丸山 茂徳
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: 南太平洋-パタゴニア地域の地球科学総合研究
    セッションID: 2C08 04-08
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/30
    会議録・要旨集 フリー
    中央海嶺沈み込みに伴う火成活動を理解するうえで、現在中央海嶺の沈み込みが唯一観測できるチリ三重点近傍の、タイタオ半島花崗岩を研究することは極めて重要となる。分析の結果、タイタオ半島花崗岩の主成分元素組成はTTG質であるが、微量元素組成は従来スラブ溶融とは無関係であるとされていたHREEに枯渇しない顕生代花崗岩の多くと類似することが明らかとなった。この事は、スラブ溶融起源マグマは必ずしもHREEに枯渇している必要がないことを意味する。
  • 安間 了, 申 ギチョル, 折橋 裕二, 中野 孝教
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: 南太平洋-パタゴニア地域の地球科学総合研究
    セッションID: 2C09 04-09
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/30
    会議録・要旨集 フリー
    チリ海嶺沈み込み帯近傍に5.7 Ma ~ 5.2 Maのタイタオ・オフィオライトと、ほぼ同時代の花崗岩類が見られる。5.6 Myにチリ海嶺の一セグメントが沈み込んだときに、海嶺の東側部分がオフィオライトとして定置した。5つの花崗岩体はオフィオライトを取りまくように分布し、5.7 Maから3.9 Maの年代を示す。海嶺沈み込み初期に形成された花崗岩は、リサイクルされたジルコンを含み、Sr初生値も高い。オフィオライト形成にやや遅れて貫入した花崗岩体は本質ジルコンのみを含み、海洋地殻よりもわずかに高いSr同位体比をもつ。初期の海嶺沈み込みは、セグメント境界のトランスフォーム断層付近で始まり、多量の堆積物も溶かして花崗岩マグマが生じた。その後は、引き続く沈み込みにより地温勾配が上がり海洋地殻の部分溶融と周囲の堆積岩の同化作用(10%程度)によってさまざまな組成を持つ花崗岩マグマが生じた。
  • 篠原 雅尚, 山田 知朗, 杉岡 裕子, 伊藤 亜妃, ミラー マシュー, 一瀬 建日, バタイユ クラウス, 岩森 光
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: 南太平洋-パタゴニア地域の地球科学総合研究
    セッションID: 2C10 04-10
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/30
    会議録・要旨集 フリー
    チリ三重会合点付近は現在の地球上で唯一海嶺沈み込みが起こっている海溝である。また、1960年のチリ地震の震源域南限は、ほぼチリ三重会合点に一致しており、プレートの固着度と破壊域の関係が着目される。このような観点から、我々はチリ三重会合点付近、タイタオ半島沖で、長期観測型海底地震計を用いた海底地震観測を行った。この海底地震観測の目的は、制御構造探査実験により、対象域の地殻構造を求めると共に、長期の海底地震観測から詳細な地震活動を明らかにすることである。さらには、トモグラフィー解析、レシーバ関数解析などにより、より深部の構造を求めることも目的である。この観測は、長期観測型海底地震計を用いることにより、長期にわたって多数の地震を観測し、結果の信頼性を向上させることが特徴である。本講演では、2009年から2010年にかけて行われた海底地震観測の概要と、予察的な結果について発表する。
  • 松本 拓也, 折橋 裕二, 宮川 千絵, 根尾 夏紀, 町田 嗣樹, 玉木 賢策
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: 南太平洋-パタゴニア地域の地球科学総合研究
    セッションID: 2C11 04-11
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/30
    会議録・要旨集 フリー
    インド洋中央海嶺の海嶺軸上に産出する玄武岩試料について希ガス同位体分析を行った。その結果、セグメント15、17、18では同種の海嶺玄武岩試料にて一般的にみられるヘリウム同位体組成を示したが、その間に挟まれた「DoDO溶岩地帯」といわれる非常にマグマの活動が活発な地域においてのみヘリウムの同位体が顕著に低いという結果を得た。このような特徴はその影響が予想されるレユニオンホットスポット火山に見られる物とは明らかにことなるため、ホットスポット源とも一般的なMORB源とも異なる進化を遂げたマントル源が海嶺軸下にもローカルに存在することを示唆するのかもしれない。
  • 川口 慎介, 中村 謙太郎, 高井 研, 野口 拓郎, 折橋 裕二, 佐野 有司, 玉木 賢策
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: 南太平洋-パタゴニア地域の地球科学総合研究
    セッションID: 2C12 04-12
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/30
    会議録・要旨集 フリー
    中央インド洋海嶺南緯18-20度域において、二つの熱水活動域を新規に発見したので報告する。南緯19度のSolitaire熱水域は,海嶺拡大軸谷西側に位置し,10種を超える豊富な生物種によって特徴付けられる。南緯18度のDodo熱水域は,大規模なトランスフォーム断層の南側に隣接するセグメントに存在し,海嶺拡大軸中央部の大規模玄武岩溶岩流跡上に位置する。講演では,KaireiおよびEdmondの両熱水域を加えたインド洋の4つの熱水域の化学・生物組成を比較し,熱水活動域で起こる地質-岩石-水-化学-生物のリンクについて議論したい。
大気水圏地球化学(全般)
  • 赤木 右, 本郷 やよい, 高橋 孝三
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: 大気水圏地球化学(全般)
    セッションID: 2D01 20-01
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/30
    会議録・要旨集 フリー
    アリューシャン列島を挟む北太平洋およびベーリング海の二つの観測点でセディメントトラップを係留し、沈降粒子試料を一年間にわたり月毎に自動採取した。脱炭酸塩処理を施した試料(以下、ケイ酸試料)とバルク試料中の希土類元素を定量した。ケイ酸試料においては、沈降粒子の重量が減少すると、多くの希土類元素の特徴が急激に変化した。ケイ酸と各希土類元素の溶解速度の差が希土類元素の濃度の変化をもたらしたと考え、シミュレーションを行った所、海洋のケイ酸と希土類元素の鉛直分布と濃度と整合的であることが分かった。
  • 萩原 直樹, 千賀 康弘, 仁木 将人, 杉本 隆成
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: 大気水圏地球化学(全般)
    セッションID: 2D02 20-02
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/30
    会議録・要旨集 フリー
    円石藻類は炭素循環や硫黄循環を考える上で重要な微生物である。2007年10月3日に駿河湾で円石藻類のブルームが発見された。2008年からの研究で円石藻類の季節変動と栄養塩の対応性について3つのことが分かった。
    1. 円石藻類は春に増殖し5月に極大を迎えた。春は沿岸よりも沖合に多く分布した。夏は激減し秋に増殖し10月に極大となった。秋は沖合よりも沿岸に多く分布した。冬は夏と同じように少なかった。 2. 種組成は、細胞密度においてEmiliania huxleyiが優占し、Gephyrocapsa oceanicaはE. huxleyi の1/2以下の期間が多かった。
    3. 円石藻類ブルームに有利に働くとされる栄養塩枯渇状態もあったが,期間中にはブルームは見られなかった.
  • 坂田 昌弘, 朝倉 一雄
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: 大気水圏地球化学(全般)
    セッションID: 2D03 20-03
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/30
    会議録・要旨集 フリー
    日本海側に位置する長崎県松浦市において、2004年4月~2006年3月にwater surface sampler(降水サンプラーと連結)を用いて観測された微量元素(As、Cd、Cr、Cu、Mn、Ni、Pb、Sb、Zn)の乾性沈着フラックスとその変動要因を調べた。その結果、微量元素の乾性沈着フラックスは大気中濃度ではなく、乾性沈着速度に依存していることがわかった。大気中の微量元素の粒径分布が、それらのフラックスと乾性/湿性沈着フラックスの相対的な寄与を決定する最も重要な因子であると考えられる。
  • 一色 健司
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: 大気水圏地球化学(全般)
    セッションID: 2D04 20-04
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/30
    会議録・要旨集 フリー
    高知市中心部において1994 年9月~2001年12月に採取した降水のpHは平均4.7でほぼ一定であったが,電気伝導度は減少傾向を示した。降水のバックグラウンドpH値は5.1で,ほぼ一定であった。降水の酸性度ポテンシャルと中和ポテンシャル(NP)は 連動して変化しており,このことが降水のpH値が変化しなかった主な原因であると考えられる。黄砂は降水中のnss-SO42-とnss-Ca2+の増加に寄与し,台風は海塩由来成分の増加に寄与していた。
    降雨開始から雨量3mmまでは,降雨の進行に伴って各成分の濃度が顕著に減少する傾向が見られたが,雨量4mm以後は減少傾向は顕著でなくなった。降雨成分濃度の減少が顕著な雨量3mmまでは[NO3-]/APが減少する傾向が見られたが,他の成分の組成比はほとんど変化していなかった。
  • 中村 俊夫, 太田 友子, 南 雅代
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: 大気水圏地球化学(全般)
    セッションID: 2D05 20-05
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/30
    会議録・要旨集 フリー
    大気中の二酸化炭素は,近年急速に増加していることが観測の結果明らかとなっており,地球温暖化を促進する気体の一つとして,増加の抑制が世界規模で討議されているところである.大気中の二酸化炭素の増加は,二酸化炭素濃度の直接的測定で明らかにできるが,また,植物に固定された炭素の14C濃度を測定することで,Suess効果(化石燃料の消費により大気中に放出される,14Cを含まない二酸化炭素による大気中二酸化炭素濃度の希釈効果)として検出される.ここでは,2005, 2008, 2009年に名古屋大学東山キャンパス内で形成された松葉試料を中心に,環境14C濃度の経年変動や場所依存性を議論する.
宇宙地球有機物とアストロバイオロジー
  • 奈良岡 浩
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: 宇宙地球有機物とアストロバイオロジー
    セッションID: 2E01 03-01
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/30
    会議録・要旨集 フリー
    太陽系の元素存在度において、C はH, He, Oに続いて4番目であり、最もありふれた元素の1つであるが、地球表層の気水圏・地圏・生物圏において、有機物または炭酸塩としての炭素量の見積りは約1×1023gであり、全地球質量のわずか0.0017 wt%でしかない。また、存在度の最も高いH, Oからなる水(地球表層水: ~1.4 x 1024g)も地球上では大きく枯渇している(マントルにおける炭素・水の存在を考慮しても)。地球外物質の炭素・水は地球にどのように供給され、化学進化に役割を果たした(あるいは果たさなかった)のだろうか。
  • 薮田 ひかる, アレクサンダー コーネル, フォーグル マリリン, キルコイン デイビッド, コーディ ジョージ
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: 宇宙地球有機物とアストロバイオロジー
    セッションID: 2E02 03-02
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/30
    会議録・要旨集 フリー
    未分類C2コンドライトのWIS91600隕石は、その反射スペクトルがD- 又はT-タイプ小惑星のものに似ていることや、鉱物学的特徴がTagish LakeおよびCIコンドライトに似ていること 、その一方で熱変成を受けた証拠を有すること が報告されており、その起源や進化について共通の見解が得られていない。そこで本研究では、WIS91600 隕石が経験したプロセスに関する情報を引き出すために、WIS91600隕石中の有機物の同位体・構造分析を行い、それらの結果を他の隕石有機物の特徴と比較した。その結果、WIS91600 隕石の有機物は、種々の分類に属するコンドライトの有機物とは異なる独自の化学特徴を持っていることが明らかとなった。各分析から得られた知見を総合すると、WIS91600 隕石は、Tagish Lake 隕石が経験したものに似た水質変成を受けた後、500℃より低い”穏やかな”衝撃熱変成を受けた可能性が示された。
  • 中川 和道
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: 宇宙地球有機物とアストロバイオロジー
    セッションID: 2E03 03-03
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/30
    会議録・要旨集 フリー
    【序論】隕石から検出されたアミノ酸にL体過剰が報告されて以来,化学進化研究にはこの事実をどう説明するかという課題がつきつけられている.宇宙環境下でアミノ酸はペプチドあるいはタンパクにどこまで近づき得るのか,その過程でカイラリティーの偏りはどこまで獲得し得るのかを手がかりに,宇宙環境はどこまで準備すればよいのか,どこまで準備できるのかを考える.
  • 高橋 淳一
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: 宇宙地球有機物とアストロバイオロジー
    セッションID: 2E04 03-04
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/30
    会議録・要旨集 フリー
    炭素質隕石や彗星中に多様な有機物が検出されており,これらの有機物と地球上生命体におけるホモキラリティ(L-アミノ酸,D-糖優位)起源との関連が議論されている。そのシナリオとして,分子雲中の星間塵上で無生物的に生成された有機物に,宇宙空間に存在する円偏光光子,スピン偏極電子などの不斉エネルギーが作用し不斉反応が誘起されたとする仮説が提唱されている。この仮説を検証する目的で,星間物質表面で無生物生成された有機物を模した系として,ラセミックなアミノ酸薄膜を固体基板上に堆積し,この表面に宇宙環境の不斉エネルギー源を模した純粋円偏光光子線,あるいはベータ線に代表されるスピン偏極電子線を照射することにより,薄膜に光学活性を発現させる実験を行っている。講演では、実際の宇宙環境での不斉エネルギー源の観測結果をふまえて,これらが誘起する不斉反応機構の概要を解説するとともに,現在進行中の不斉発現実験の現状を報告する。
  • 山岸 明彦
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: 宇宙地球有機物とアストロバイオロジー
    セッションID: 2E05 03-05
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/30
    会議録・要旨集 フリー
    一般に生命の起原は地球と考えられているが、古くから生命は宇宙を移動するという仮説が提案されている。この仮説は「パンスペルミア仮説」とよばれている。この仮説は、それでは地球外でどのように生命が誕生したのかという点には答えないため、その意義については疑問も多かった。また、長らくその検証手段が無かった。しかし最近、この仮説の検証するための実験が欧米を中心に進んでいる。すなわち、生物が惑星間を移動する過程で生存可能かどうかを試す実験が行われている。
    日本のアストロバイオロジーの研究者グループでは「たんぽぽ計画」という計画を計画している。この計画では、国際宇宙ステーションで微粒子を採集し、その中に微生物がいるかどうかを調査する。また、微生物を宇宙環境に曝露して生存の可能性を探査する。
    さらに、火星の研究が進み、火星には今も水(氷)が大量に残されていることが明らかになっている。さらに、メタンの発生が検出されている。現在計画中の火星探査計画MELOSの一部として生命探査を検討している。これらの現状を紹介する。
  • 小林 憲正, 伏見 英彦, Sarker Palash Kumar, 小野 恵介, 大林 由美子, 金子 竹男, 三田 肇, 山岸 明彦, ...
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: 宇宙地球有機物とアストロバイオロジー
    セッションID: 2E06 03-06
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/30
    会議録・要旨集 フリー
    地球外物質(炭素質コンドライト・彗星など)中にアミノ酸をはじめとする多様な有機物が検出され、生命の起源との関連が議論されている。隕石・彗星有機物は,太陽系生成前に,分子雲中の星間塵アイスマントルに宇宙線・紫外線が作用することにより有機物が生成した有機物をもととした可能性が考えられる。模擬星間物質(一酸化炭素・メタノール・アンモニア・水など)に高エネルギー粒子線を照射すると,アミノ酸前駆体を含む高分子態複雑有機物が生成することが確認されている。このような有機物が,太陽系生成時に,太陽系小天体にとりこまれ,その中でさらに種々の変成を受けたと考えられる。本講演では,太陽系での地球外有機物の変成とその地球への伝搬に関して,特に宇宙塵の役割に関して考察した。また,その検証のための宇宙実験「たんぽぽ計画」についても紹介する。
  • 三田 肇, 百瀬 恭子, 浜瀬 健司, 三次 百合香, 小野 恵介, Sarker Palash Kumar, 小林 憲正, 薮田 ひかる, ...
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: 宇宙地球有機物とアストロバイオロジー
    セッションID: 2E07 03-07
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/30
    会議録・要旨集 フリー
    国際宇宙ステーション(ISS)・日本実験棟「きぼう」の暴露部を利用し、有機物・微生物の宇宙曝露と宇宙塵・微生物の捕集を目指した「たんぽぽ」計画が進められている。この計画では、地球外からの飛来する宇宙塵を、大気圏突入前にシリカエアロゲルによってできるだけ非破壊で採取することが計画されている。そして、採取された宇宙塵中に含まれるアミノ酸などを分析することにより、原始地球環境で生命が誕生する時の原料物質がどのようなものであったのかを解明することを目指している。しかし、捕獲される粒子に含まれるアミノ酸含量は非常に少ないので、超高感度の分析技術を確立する必要がある。
  • 古川 善博, 関根 利守, 大庭 雅寛, 掛川 武, 中沢 弘基
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: 宇宙地球有機物とアストロバイオロジー
    セッションID: 2E08 03-08
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/30
    会議録・要旨集 フリー
    生命誕生前に無機物から多量の有機物を合成するには,還元的な物質と適度な反応場が必要である.しかし,冥王代(38億年以前)の地球大気の大部分を構成するマグマオーシャンからの脱ガス大気は,二酸化炭素,窒素からなる弱酸化的なものであったと考えられている.この弱酸化的地球大気からでは,陽子線照射をしない限りはアミノ酸などの有機物は生成しないことが知られている.一方,冥王代後期には,既に海洋が存在し,多量の隕石衝突期があったということが,43億年前の年代を持つジルコンの酸素同位体比と月面クレーターの分析から明らかになった.現在の地球上で回収された隕石の85%以上は普通コンドライトであり,この隕石は金属鉄を含んでいる.金属鉄が存在できる酸素フィガシティーは,初期地球のそれより低いことから,隕石衝突期には初期地球に還元的な物質が多量にもたらされたと考えることができる.したがって,この隕石の海洋衝突現象は初期地球に多量の有機物を生成した可能性がある[1].本発表では,隕石の海洋衝突を模擬した実験により,どのような有機物ができるのかを議論する.
    我々は隕石の海洋衝突による,鉱物-水-大気間反応を模擬するため,炭素,鉄,水/アンモニア水,窒素の混合物を金属容器に封入し衝突回収実験を行った.実験に使用した炭素は生成物と汚染物を判別するために13Cを使用した.衝突実験では試料に約1 GPa,600 Kの衝撃圧縮が約0.7μsec継続し,開放過程で一時的に1600-1900 Kに加熱され急冷された.生成物は高速液体クロマトグラフィー/質量分析計(LC/MS)およびガスクロマトグラフィー/質量分析計(GC/MS)を使用し,揮発性有機物(VOC),アミノ酸,カルボン酸,アミンを分析した.
    生成が確認された有機物は,炭化水素(C2, C3, C6),アルコール(C1, C2, C3),アセトアルデヒド,アセトニトリル,カルボン酸(C1-C6),アミン(C1-C4)およびアミノ酸(グリシン)であった(一部は[2]).これらの生成物のうち非水溶性である炭化水素は,大気に放出され,生命誕生前に地球の大気組成をマグマオーシャン脱ガス組成から変化させたと考えられる.また,海洋に蓄積される水溶性有機物はその後の化学進化に寄与した可能性がある.
    [1] Nakazawa, Origin of Life Scenario Written by the Earth, 113-160 (Shin-Nihon Shuppan Ltd, 2006).[2] Furukawa et al., Biomolecule formation by oceanic impacts on the earlt Earth, Nature Geoscience 2, 62-66 (2009).
  • 高橋 拓人, 大竹 翼, 古川 喜博, 掛川 武
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: 宇宙地球有機物とアストロバイオロジー
    セッションID: 2E09 03-09
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/30
    会議録・要旨集 フリー
    アミノ酸とその重合物であるペプチドの生成は,生命の誕生には必要不可欠である. アミノ酸の重合反応は吸熱反応であることから,高温条件下で反応がより促進される.そのため,海底熱水系がアミノ酸の重合及び生命誕生に適当な環境であるとして注目されてきた.しかしながら,その問題点として,高温条件下ではアミノ酸の分解も速やかに起こることが挙げられる.従って,我々は,堆積物による圧力によってアミノ酸がより安定に存在しうる海洋堆積物の続成環境を模擬した,高温高圧条件下(T = 100-200℃, P = 0.5-150 MPa)でのアミノ酸重合実験を行った.先行研究では,1種類のみのアミノ酸の重合実験が行われてきたが,本研究では,2種類のアミノ酸を混合することによって,混合によるアミノ酸の重合反応及び分解反応の影響をみることを主な目的とした.
    実験は,オークレーブを用い,アミノ酸の粉末試料100mgを金カプセルに封入することで行った.出発物質であるアミノ酸は,グリシンとアラニンを等モルずつ混合したもの,グリシンとメチオニンを等モルずつ混合したもの,それぞれのアミノ酸の単一系を用意した.水圧による加圧後,マントルヒーターによって加温し,反応時間は1日-16日間とした.実験生成物は,アミノ酸分析を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で,ペプチド分析を高速液体クロマトグラフィー/質量分析計(LC-MS)で各々行った.
    実験の結果から,グリシン-アラニン及びグリシン-メチオニンの両者の混合系において,それらの単一系よりも重合反応が促進されることが明らかになった.例えば,メチオニンは,単一系では150℃, 100 MPaにおいて実験開始16日後においても重合体の生成が確認されなかったが,グリシンを加えることでメチオニルグリシン及びメチオニルメチオニンなどのペプチドの生成が確認された.その一方で,グリシンにおいては,単一系に比べて分解反応が促進されていた.これらのことから,グリシンまたはグリシンの分解生成物がアラニンとメチオニンの重合反応を促進していると考えられる.また,圧力の影響に関しては,0.1 MPa(常圧)よりも25 MPa以上でペプチドの生成量が増加した.
    これらの実験結果は,熱不安定なアミノ酸がペプチドに重合することによって,より安定化すること示唆するものであり,今後,さらに多くのアミノ酸を混合した系で重合反応を行うことでより大きく複雑なペプチドが生成されることが期待される.
  • 栗原 広成, 平子 智章, 高野 淑識, 大林 由美子, 金子 竹男, 小林 憲正
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: 宇宙地球有機物とアストロバイオロジー
    セッションID: 2E10 03-10
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/30
    会議録・要旨集 フリー
    海底熱水環境下での有機物構造体の無生物的生成の可能性を探るため,模擬原始大気の陽子線照射によって生成したアミノ酸前駆体を含む,複雑有機物をフローリアクター中で加熱(200℃-400℃)した。生成物をフィルターろ過すると,フィルター上に多数の有機凝集体が観察された。この有機凝集体は加水分解によって種々のアミノ酸を生成した。この複雑有機物中のアミノ酸は,遊離アミノ酸よりも熱に対して安定であった。原始地球環境でもアミノ酸前駆体を含む有機物が熱水環境で溶液から分離して凝集体をつくる可能性が示唆された。
受賞講演
2010年度 日本地球化学会 奨励賞
2010年度 日本地球化学会 学会賞
  • 鈴木 和博
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: 受賞講演
    セッションID: 2J02
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/30
    会議録・要旨集 フリー
    副成分鉱物として多様な岩石に普遍的に存在するモナザイト(軽希土類元素Ree の燐酸塩鉱物ReePO4)やジルコンは,50-300 μm という微細な粒子として産出するにもかかわらず,熱に対して頑強で閉止温度が高いためにコア-マントル組織などの多重成長の証拠を残していることが少なくない。この鉱物粒子の各部分の形成年代(サブグレイン年代)が決定できれば,その地球科学的な価値はきわめて高いものとなる。Th-U-全Pb アイソクロン法(Chemical Th-U-total Pb isochronmethod; CHIME)は鉱物粒子各部分のTh・U・Pb 含有量をEPMA で分析して,初生鉛量を補正したサブグレイン年代を決定する地質年代測定法である。CHIME 法はin situ にミクロンオーダーの領域の年代測定が可能なこと,鉱物粒子の年代マッピングが容易なこと,通常のEPMA 分析と同様に簡便で迅速(1測定点17~30 分)なこと,を利点とする。
2010年度 日本地球化学会 柴田賞
  • 角皆 静男
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: 受賞講演
    セッションID: 2J03
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/30
    会議録・要旨集 フリー
    私が大学に入った1957 年に,Keeling はIGY 国際地球観測年の一環としてハワイのマウナロアで大気中CO2 濃度の連続観測を開始した.この年の暮に315 ppm(季節変動を補正)だったその濃度は,2010 年には390 ppm に達した.その増加の主因は人間活動であるが,人間が大気に放出したCO2 量はその2 倍以上だった.今後どうなり,何を引き起こすかについては,大気のCO2 の測定だけではわからない.流体である海洋を中心とする物質循環は,ホリスティックであり,動く海水の中での化学物質の特性と太陽光を受けて始まる生物の食物網がこれに深く関与し,大気圏との交換,河川からの陸源物質,死の世界ではない海底との間のやりとりなどに支配されている.従って,その部分部分のどこか1 カ所を深く追究しても,真の姿を描き出すことは難しい.私は,複数の研究を同時に進めながら,それに迫ることを試みてきた.得られた結果のいくつかを物語風に解説する.
ポスター発表(第二日)
その他の地球化学
  • 蘇布達 -, 上野 振一郎, 杉谷 健一郎
    原稿種別: ポスター講演
    専門分野: その他の地球化学
    セッションID: 2P01 21-P01
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/30
    会議録・要旨集 フリー
    長良川河口堰における重金属汚染の実態を把握することを目的とし、2009年から2010年にかけて63μm以下の堆積物23試料と水及びけん濁物をそれぞれ6試料採取し、蛍光X線分析装置、グラファイトファーネス原子吸光分析装置を用いて分析した。その結果、場所によっては日本列島地殻平均値に比べて、銅で4倍、ニッケルで2.6倍、鉛で15倍、亜鉛で5倍の濃度に達する堆積物が存在する事が分かった。十分処理されていない下水の流入がその一因と考えられるが、追加堆積物試料の分析や水、けん濁物の分析データを増やす事で、重金属汚染の実態を今後より正確に把握していきたいと考えている。
  • 瀧上 豊
    原稿種別: ポスター講演
    専門分野: その他の地球化学
    セッションID: 2P02 21-P02
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/30
    会議録・要旨集 フリー
    国際地学オリンピックの紹介および現状報告と、2012年に筑波研究学園都市で開催される国際地学オリンピック日本大会の概要を説明する。また、同日本大会においては、従来の試験3分野(地質・固体、気象・海洋、天文・惑星)のほかに、各分野が絡み合った地球システム、物質循環などの地球化学分野の問題の出題を提案したい。
  • 丸山 誠史, 中野 孝教
    原稿種別: ポスター講演
    専門分野: その他の地球化学
    セッションID: 2P03 21-P03
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/30
    会議録・要旨集 フリー
    地球環境研究において、水循環の過程を知る事は極めて重要である。水分子を構成する水素と酸素の同位体比(水同位体比)は、水循環過程に関する有用なトレーサーである。現在主流の水同位体比分析手法は、質量分析法と吸収法がある。前者は高精度な反面、試料前処理が必要である事が欠点である。後者は試料前処理が不要な反面、その原理上高精度・高感度を得るのが困難という問題がある。キャビティリングダウン分光法は吸収法の流れを汲む手法であるが、高反射率ミラーが両端に設置されたキャビティの間をレーザーが数千回往復する事によって、光路長を数千メートルまで伸ばし、従来の吸収法に比べて桁違いの高感度を得る事を実現している。本手法の欠点は長期的安定性が良くない事、周囲の温度変化に影響されやすい事などがある。現在、本手法の分析精度を高める目的で、海洋深層水と南極の氷をさまざまな割合で混合した標準試料を準備中である。
固体地球化学(全般)
  • 柚原 雅樹, 伊藤 吉宏, 吉本 紋, 眞崎 求一
    原稿種別: ポスター講演
    専門分野: 固体地球化学(全般)
    セッションID: 2P04 19-P01
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/30
    会議録・要旨集 フリー
    福岡県東部にあたる彦山川、今川、祓川、城井川流域において、河川堆積物を用いた26元素の地球化学図の作成と地圏環境評価を行った。その結果、元素の濃度分布は地域地質とそこから供給される造岩鉱物の濃集に依存していることがわかった。
  • 齋藤 健彦, 角野 浩史, 馬上 謙一, 遠山 知亜紀, 村松 康行, 長尾 敬介
    原稿種別: ポスター講演
    専門分野: 固体地球化学(全般)
    セッションID: 2P05 19-P02
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/30
    会議録・要旨集 フリー
    ハロゲン元素は揮発性を持ち液相濃集元素であるため、マントル/地殻存在比が小さく、地球のマントルにわずかな濃度(ppb)しか存在しないので定量は難しい。よって、マントル中の分布は明らかになっていないが、これを定量出来ればマントルに沈み込む地殻物質に対する有用なトレーサーとなることが期待される。
    本研究では希ガス質量分析法を用いて、従来の測定方法の検出下限に比べ数桁低い極微量ハロゲンの定量方法を確立することを目的とした。
    手順としては、ハロゲン濃度が報告されている岩石試料をJAEAの研究炉JRR-3を用いて中性子照射した。これにより、ハロゲン元素を希ガス同位体に変換し、その希ガス生成率を決定して試料中のハロゲン元素の絶対量を算出し、文献値との比較を行った。今回の分析における検出下限として、従来の検出下限より1、2桁低い結果が得られた。これは十分マントル中の極微量ハロゲン定量を可能とするものである。
  • 宇野 正起, 鳥海 光弘
    原稿種別: ポスター講演
    専門分野: 固体地球化学(全般)
    セッションID: 2P06 19-P03
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/30
    会議録・要旨集 フリー
    プレート境界における流体の挙動は,地殻の変形,地震の発生,メルトの生成など沈み込み帯のダ イナミクスにおいて重要である.地震学の発達によりプレート境界における流体の分布が明らかに なってきたものの,海洋地殻や大陸地殻中の流体の振る舞い,その存在形態,物質移動の量と時間 スケールは未だに明らかになっていない.プレート境界における流体に関連した現象を理解するた めには,プレート境界を経験した天然サンプルの解析が不可欠である.
    本研究の目的は,温度・圧力の情報を伴う形で流体の挙動を評価する手法を開発することである. 天然サンプルにおいて,流体の挙動は物質移動として記録される.
    本研究の調査対象は三波川変成帯中のGarnet amphibolite岩体である.当地域は(1)数多くの 研究がなされており,テクトニックセッティングや年代,温度・圧力データが豊富であること, (2)garnetとamphiboleという2つの累帯構造を持つ鉱物が系の化学状態をよく保存しているこ とから,物質移動の解析に適している.
    岩体の温度圧力史は,Gibbs法のgarnet-amphibole系への適用により,詳細に明らかになってい る(宇野,鳥海, 2009 地球惑星連合大会).GarnetのリムのP-T条件は,garnetの包有物に対して hornblende-garnet-plagioclase温度圧力計を適用した結果600°C, 11kbarが得られている. Amphibole, garnetそれぞれの累帯構造から求められた温度圧力経路は,ともにdP/dTの急な昇温減 圧経路となっており,ピーク変成条件は少なくとも550°C, 15kbar以上と見積もられている.
    Gibbs法の結果から,減圧に伴うgarnetの成長量を定量的に見積もった.Garnetの外殻(体積に して約半分)は減圧に伴って成長したことが確かめられた.一般的に閉鎖系ではgarnetは減圧とと もに成長しない.従って,観測された減圧に伴うgarnetの成長は,物質移動が起こったことを示唆する.
    求められた温度圧力経路に伴い生じた物質移動の量を見積もるために,鉱物の不均質分布から物 質移動量を見積もる新しい手法を開発した.今まで解析されてこなかった,鉱物の縞状の分布を空 間情報として活用する定式化である.garnet epidote amphiboliteの縞状構造に適用したところ, Na, Mg, Fe, Ca, Al成分が各レイヤー間,もしくはレイヤーに平行な方向に輸送されていたことが 示唆された.物質移動の挙動は,鉱物分布の不均質を弱める方向ではなく,強める方向に動くこと が定量的に確かめられた.Na成分の流速は1×10-13[mole/m2s]オーダーであると見積もられた.
    マスバランス計算に鉱物の空間分布情報を加えることで,本研究で提唱された手法は従来の研究では不可能だった以下のような特徴をもつ物質移動解析が可能である.(1)初期組成を仮定しなく てよい,(2)温度圧力変化に伴う逐次物質移動量変化が算出できる,(3)多元素系に適用可能,(4) 詳細な空間分布が得られる.本手法は,変成岩から得られる情報の次元を増やすことになり,様々 な温度圧力経路を経験した岩石に適用することで,プレート境界における物質移動の様式とそのメ カニズムに関する理解が進むであろう.
  • 今井 崇暢, 高橋 栄一, 鈴木 敏弘, 平田 岳史
    原稿種別: ポスター講演
    専門分野: 固体地球化学(全般)
    セッションID: 2P07 19-P04
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/30
    会議録・要旨集 フリー
    高温高圧下におけるカンラン石/メルト、メージャライト/メルト間における元素の分配係数を決定した。この結果を用いてカンラン石/メルトのPC-IR図の圧力変化を考えると3価のイオンのPC-IR曲線は圧力上昇とともに最適イオン半径が小さくなり、幅が広がることが分かった。最適イオン半径の変化はサイトの大きさの変化(Hazen, 1976)と調和的であり、幅の広がりはメルト構造の変化で説明することができる。メージャライトについても幅の広がりは同様の変化が見られた。
南太平洋ーパタゴニア地域の地球科学総合研究
  • 折橋 裕二, 元木 昭寿, ハラー ミゲール, 角野 浩史, 長尾 敬介, 安間 了
    原稿種別: ポスター講演
    専門分野: 南太平洋-パタゴニア地域の地球科学総合研究
    セッションID: 2P08 04-P01
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/30
    会議録・要旨集 フリー
    島弧・大陸弧―海溝系において,その2分の1の火山列の背弧側(超背弧)に,ハワイを代表するマントルプルーム成因とは明らかに産状が異なる活発な玄武岩質マグマ活動が存在する(図1).これまで同火成活動は偶発的に派生したマントル熱異常(もしくは小規模マントルプルーム)に起因すると考えられていた.しかし,我々は,同火成活動が沈み込み帯に伴う定常的なテクトニズムがトリガーとなり,410km以深のマントル遷移層・含水ウォズリアイト(カンラン石β相)の脱水・溶融を引き起こすことで生じる,とする新しいマグマ成因論を作業仮説として提案する.
  • 阿部 なつ江, 金松 敏也, 末次 大輔, 山崎 俊嗣, 岩森 光, 安間 了, 平野 直人, 折橋 裕二, 原田 尚美, 富士原 敏也
    原稿種別: ポスター講演
    専門分野: 南太平洋-パタゴニア地域の地球科学総合研究
    セッションID: 2P09 04-P02
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/30
    会議録・要旨集 フリー
    海洋研究開発機構・海洋研究船「みらい」によるMR08-06航海(通称:SORA 2009: South Pacific Ocean Research Activity 2009)は、南太平洋および沈み込み帯における地質学・地球物理学的研究ならびにチリ沖における古海洋環境変動復元研究を行う事を目的とし、平成21年1月15日(木)関根浜出港 ~ 平成21年4月8日(水)バルパライソ入港までの計84日間、3レグに渡り実施され,レグ1は、1月15日関根浜出港~3月14日バルパライソ入港までの59日間実施された。そのレグ1における航海実施概要と,太平洋横断中の海底地形・重力の測定結果を発表する。
宇宙地球有機物とアストロバイオロジー
  • 河口 優子, 杉野 朋弘, 楊 印杰, 吉村 義隆, 辻 尭, 小林 憲正, 田端 誠, 橋本 博文, 今井 栄一, 河合 秀幸, 奥平 恭 ...
    原稿種別: ポスター講演
    専門分野: 宇宙地球有機物とアストロバイオロジー
    セッションID: 2P10 03-P01
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/30
    会議録・要旨集 フリー
    私たちのグループは、地球低軌道 (400 km) を周回する国際宇宙ステーション(ISS)のきぼうの曝露部を利用して微生物の捕集実験を行う宇宙実験(たんぽぽ計画)を提案している。低密度エアロゲルを宇宙空間に一定期間曝露し、衝突する微粒子を捕集する。地上でエアロゲル表面と衝突トラックの顕微鏡観察を行った後、微粒子をエアロゲルから単離する。微粒子内もしくは微粒子に付着していると考えられる微生物のDNAを鋳型としてPolymerase chain reaction (PCR)で特定の遺伝子の増幅を試みる。増幅が認められたのであれば塩基配列を決定し、地上の生物と比較する事で種の同定を行う予定である。本研究では、捕集される微生物を検出するためのPCR法の確立する事を目的とする。模擬サンプルを用いて、捕集したサンプルを解析するための条件検討を行った結果を報告する。
  • 桑原 裕典, 金丸 博, 三田 肇, 野本 信也
    原稿種別: ポスター講演
    専門分野: 宇宙地球有機物とアストロバイオロジー
    セッションID: 2P11 03-P02
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/30
    会議録・要旨集 フリー
    化学進化を想定した反応を利用して、リンゴ酸モノアンモウム塩の加熱重縮合反応やアラニン、ノルロイシン、2-アミノ酪酸、ノルバリンなどを熔融尿素中で反応させ、ポリアミノ酸を合成した。得られたポリアミノ酸からミクロスフィアを形成させたところ、熔融尿素中で反応させたアラニンからはミクロスフィアは形成されなかったが、ロイシンからはミクロスフィアの形成が観察された。このことからミクロスフィアの形成には疎水性相互作用が関係していると示唆される結果が得られた。
  • 鶴山 真美, 宮元 展義, 三田 肇
    原稿種別: ポスター講演
    専門分野: 宇宙地球有機物とアストロバイオロジー
    セッションID: 2P12 03-P03
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/30
    会議録・要旨集 フリー
    ポリリジンを生産する菌(ストレプトマイセスアルブルス)を粘土鉱物(フルオロヘクトライト;FHT)を含む培地で培養することによりポリリジン/FHTの合成を試み、通常では得られない複合物理ゲルを得た。その生産物を、回転粘度計で分析し、クロスニコル、光学顕微鏡などを用いて観察を行った。回転粘度計で菌を培養する前後のサンプルの粘度を測定した結果、培養前1000cPだったみかけ粘度は、培養後数十倍に増した。粘土鉱物と菌の相互作用を観察することができた。
  • 坂田 霞, 薮田 ひかる
    原稿種別: ポスター講演
    専門分野: 宇宙地球有機物とアストロバイオロジー
    セッションID: 2P13 03-P04
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/30
    会議録・要旨集 フリー
    我々の最近の研究で,アルカリ水溶液(pH 9.8)中でグリシン(Gly)の重合速度が極大になることを明らかにした(Sakata et al. submitted).近年,大西洋中央海嶺のLost City熱水地域でアルカリ性の熱水系が発見され(Kelley et al. 2001; 2005),初期地球での生命の誕生及び進化の場の1つとして注目されている(Russell 2003).本研究では,アルカリ性の熱水噴出孔が生命前駆物質の生成に適した環境であるかを検証するため,Lost Cityの熱水に含まれるイオン組成を模擬した条件でGly水溶液の加熱実験を行い,Gly二量体(GlyGly)の生成・分解の反応速度定数を決定した.その結果,金属イオンが存在するとGlyGlyの生成速度はあまり変化しないが,分解速度が約2倍増加し,生成量が25%低下した.本結果は,酸性,金属イオン存在下で重合が促進される過去の報告(Remko and Rode 2000)とは対照的であった.アルカリ性では,解離したGly±とGly-の双極子相互作用とアミノ基の求核性による二量化を金属イオンが阻害する可能性が考えられる.
大気水圏地球化学(全般)
  • 金井 豊, 斎藤 文紀, 楊 作升, 范 徳江
    原稿種別: ポスター講演
    専門分野: 大気水圏地球化学(全般)
    セッションID: 2P14 20-P01
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/30
    会議録・要旨集 フリー
    中国の黄河沖で得られた2本のコアに記録された堆積環境の変遷を解明するため、鉛-210を用いる堆積速度の測定を行ったので、河道の移動に伴う堆積物の供給量の変化を示唆する結果が得られたかどうかについて報告する。
  • 山田 将喜, 坂田 昌弘, 光延 聖, 千賀 康弘
    原稿種別: ポスター講演
    専門分野: 大気水圏地球化学(全般)
    セッションID: 2P15 20-P02
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/30
    会議録・要旨集 フリー
    植物プランクトンは海洋中で生態ピラミッドの底辺に位置し、存在量が非常に多い。このため、植物プランクトン中の微量金属の濃度や植物プランクトンへのそれらの取り込みについて明らかにすることは、微量金属の生物濃縮や海洋におけるそれらの循環を理解する上で重要である。しかし、特に沿岸海域に生息する植物プランクトンは、粘土粒子等の微小な懸濁物(suspended solids: SS)によるコンタミネーションを受けやすく、分離が困難であるため、上記に関する知見は非常に少ない。そこで、本研究では、植物プランクトン自体に取り込まれたAlの量はSS中の量に比べて無視できることを仮定して、植物プランクトン自体に含まれる微量金属の濃度を推定する方法を検討した。
  • 坂本 敦史, 藤原 司, 中口 譲, 佐野 到, 向井 苑生
    原稿種別: ポスター講演
    専門分野: 大気水圏地球化学(全般)
    セッションID: 2P16 20-P03
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/30
    会議録・要旨集 フリー
    2010年に大阪府東大阪市に飛来した黄砂粒子を捕集して、SEM-EDXを用いた粒子の個別粒子分析を行った結果、PM2.5の粒子についてはSi-rich粒子が約90%、Na-rich粒子が約4%、PMcについてはSi-rich粒子が約90%、Na-rich粒子が約6%で、Si-rich粒子の中でもSi-Na粒子の占める割合が比較的多かった。
  • 坂口 綾, 山本 政儀, 廣瀬 勝己
    原稿種別: ポスター講演
    専門分野: 大気水圏地球化学(全般)
    セッションID: 2P17 20-P04
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/30
    会議録・要旨集 フリー
    本研究では、環日本海域における空気塊移行挙動解明の一助として、大陸起源の210Pbと上空大気起源の7Be降下量を日本海沿岸に位置する石川県辰口で1991年から2009年の18年間、韓国(テジョン)を含む環日本海の11都市で2000年から2001年にわたり観測した。その結果、太平洋側の都市における210Pbと7Be月間降下量は一年を通してほぼ一定であるが、日本海沿岸の都市(日本国内)では冬季に非常に多く夏季に少ないという明瞭な季節変動がみられた。テジョンでの降下量変動は太平洋側と同じ傾向を示した。さらに、冬季の210Pb・7Be降下量が多い日本海沿岸都市の中でも、特に石川県・能登半島周辺都市における異常大量降下が観察された。これは、冬季日本海で発生するメソスケール対流(Winter MCSs)が引き起こす気象イベントによりもたらされたと考えられる。発表ではENSOなどの地球規模の気象イベントも含めて、210Pbと7Be降下量の経年変化についても議論する。
  • 土井 崇史, 永淵 修, 横田 久里子, 吉村 和久, 阿久根 卓, 山中 寿朗, 宮部 俊輔
    原稿種別: ポスター講演
    専門分野: 大気水圏地球化学(全般)
    セッションID: 2P18 20-P05
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/30
    会議録・要旨集 フリー
    陸水の酸性化や生態系被害を引き起こす大気汚染物質である硫黄化合物の起源推定には、硫黄同位体比(δ34S)がよく用いられる。本研究では、陸水中の硫酸イオンのδ34S値の測定に適用できる簡易な硫酸イオンの現場捕集濃縮法を開発した。本法は、1 g程度の陰イオン交換樹脂を入れたメッシュバッグを水中に係留することで,δ34S値の測定に必要な硫酸イオンを1時間以内に捕集できる。小さいバッグのみで短時間にサンプリングできることから、多量の水試料や大きいサンプラーの運搬および長時間の滞在が難しい山岳地域や離島などの調査にも適している。本法を用いて調査した屋久島の渓流河川における非海塩性硫酸イオンの硫黄同位体比(nssδ34S)は,島の北東部(-3.9~+0.3 0/00)より西部および中央山岳部(+1.1~+7.5 0/00)で高い値を示した。大陸での石炭の燃焼により放出されたδ34S値の高い硫黄を含む空気塊が,島の西および北西から流入し,宮之浦岳(1935 m)をはじめとする急峻な山岳にぶつかることで、西部および中央山岳部にδ34Sの高い硫黄が沈着したと考えられる。
  • 本庄 浩司, 中村 俊夫, 池盛 文数, 山神 真紀子
    原稿種別: ポスター講演
    専門分野: 大気水圏地球化学(全般)
    セッションID: 2P19 20-P06
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/30
    会議録・要旨集 フリー
    近年、放射性炭素測定を用いて、大気粉塵中に含まれる炭素粒子の発生源推定に関する研究が盛んに行われている。炭素粒子は大きく分けて化石燃料と現生生物に起源を持ち、2つの起源は異なる14C濃度を示すことが知られている。自動車排気粒子など化石燃料を起源とする粒子は、燃料の生成過程において14Cが十分に減衰し含まれない。一方、野焼きや花粉など現生生物を起源とする粒子中の14C濃度は、現代の値となる。この特徴より、実際の試料について14C測定を行うことで2つの起源の割合(=寄与率)が推定できる。生成過程や化学組成が複雑な炭素粒子の発生源推定において、その割合が注目されている。本研究では、名古屋市環境科学研究所屋上で2003年4月から2004年3月までに採取されたPM2.5中の全炭素の14C測定を行ったので報告する。
  • 奥田 啓太, 和田 秀樹, 松崎 浩之, 藤井 昇
    原稿種別: ポスター講演
    専門分野: 大気水圏地球化学(全般)
    セッションID: 2P20 20-P07
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/30
    会議録・要旨集 フリー
    南米ペルーの4100mのアンデス山地で採取された年層の不明瞭な広葉樹ケヌアル(Quenual) の樹幹を使って、抽出したセルロースに残る放射性炭素と安定炭素同位体の測定を行い、核実験による大気14Cの急増変化を確認し、安定同位体の季節変動の周期性を求めた。これにより、南半球における大気中の14Cの変動量、安定同位体の周期性を用いて樹木の生長量の推定方法を検討した。
feedback
Top