日本地球化学会年会要旨集
2010年度日本地球化学会第57回年会講演要旨集
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同位体効果研究の地球化学への応用
  • 武蔵 正明, 市川 寛之, 小豆川 勝見, 松尾 基之, 大井 隆夫
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: 同位体効果研究の地球化学への応用
    セッションID: 3C03 01-03
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/30
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    Sb(121Sb,123Sb)は、同位体が一種のAsと同族であることから、Asの環境挙動を知るツールとして注目されている。前報では、陰イオン交換法によるアンチモン(V)同位体分離実験の結果、Sbの重い同位体(123Sb)が選択的に溶液相に濃縮し、その軽い同位体((121Sb)が凝縮相に濃縮することを報告した。本報では、Sbの固相への吸着機構を解明するために、分子軌道法やXAFS分析によりアンチモン酸の水和構造を、凝縮相中とバルク水中で検討した。その結果、6配位構造がバルク水中で最も安定であることがわかり、(123Sbが液相中に濃縮したことと整合した。この成果は、底質に濃縮するであろう(121Sbが、Sb(V)-Sb(III)酸化還元反応に伴うSbの毒性化指標としても期待できることを示している。
  • 山崎 絵里香, 中井 俊一
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: 同位体効果研究の地球化学への応用
    セッションID: 3C04 01-04
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/30
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    青銅器は銅(Cu)・スズ(Sn)・鉛(Pb)の合金によって作られ、鉄器が普及する以前にもっとも広く使用されていた金属器である。青銅器の考古化学的研究においては、製作年代決定や産地推定が重要となる。また、青銅器はリサイクルが行われていたと考えられており、リサイクル経験の有無は産地判別に影響を与え得る。Sn同位体分別によってリサイクルを検証するためには、原料となる錫石(cassiterite, SnO2)のSn同位体組成が地域によらず均一であるという前提が必要になる。そこでまず、Sn同位体データ蓄積のため、日本の錫石を中心にSn同位体分析を試みた。これまでに日本産の錫石7種について、化学分離せずにSn同位体の分析を行ったところ、有意な同位体組成変動は検出されなかった。現在Snの化学分離を行った試料の分析を進めており、今後試料中に含まれるマトリックスの影響を評価する。さらに、外国産の錫石の分析も行い、日本産のSn同位体組成と比較する予定である。
  • 森島 唯, 西田 真輔, 中川 裕介, 宗林 由樹, 平田 岳史, 村山 雅史
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: 同位体効果研究の地球化学への応用
    セッションID: 3C05 01-05
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/30
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    古海洋の酸化還元状態を推定する手がかり(プロキシ)として,堆積物中モリブデン(Mo)同位体が注目されている.本研究では,固相抽出法と蒸発乾固法を用いた堆積物中Mo同位体分析法を確立し,北海道岩内沖(北緯43度22分36秒,東経140度4分10秒,水深900 m)で採取された日本海堆積物コアに適用した.その結果,4.6万年前,1.5~1.9万年前,および1万年前の地層において,重いMoの有意な濃縮が見られ,Mo同位体比の変動は酸化還元プロキシであるMo/W比およびS濃度の変動とよく同期していた.以上の結果は,これらの年代に日本海深層が還元的になったことを強く示唆している.
  • 奈良岡 浩, 森脇 絵美, ポールソン サイモン
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: 同位体効果研究の地球化学への応用
    セッションID: 3C06 01-06
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/30
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    地球の大気進化と関連して、イオウの質量非依存同位体分別 (Mass-independent isotope fractionation of sulfur, MIF-S) が研究されている。これまで報告された堆積岩中のMIF-Sの特徴をレビューし、新たに分析した後期始生代(約27億年前)の西オーストラリアJeerinah層黒色頁岩のδ33S, δ34S値と合わせて、後期始生代堆積岩中の MIF-Sの生じるメカニズムを議論する。
  • 上野 雄一郎, ダニエラチェ セバスチャン, 吉田 尚弘
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: 同位体効果研究の地球化学への応用
    セッションID: 3C07 01-07
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/30
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    太古代の堆積岩に記録された硫黄の非質量依存同位体分別は初期大気の化学情報を反映しており、当時の大気が還元的であったことを示唆すると考えられている。これは無酸素大気下で二酸化硫黄が光解離すると、その際引き起こされる非質量依存同位体効果がエアロゾルの同位体組成に記録されるためである。光解離に伴う特異な同位体効果の原因は未だ十分理解されていないが、我々はSO2光解離の際の多種硫黄同位体分別係数が紫外線波長の関数となることを利用して古大気化学を推定しようと試みている。
  • 南部 伸孝, 山田 明憲, 井澤 孝宏, 小澤 直斗, Kondorskiy Alexey D., 小嶋 稔, 徳江 郁雄
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: 同位体効果研究の地球化学への応用
    セッションID: 3C08 01-08
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/30
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    我々のグループでは,第一原理計算により反応速度定数および光解離断面積の決定を行い,理論による実験結果の検証および予測を行って来ている。本講演では,以下に示す5 つの分子(N2O,OCS,SO2,SO,H2S)における光解離反応を中心に,2 つの二分子反応OH + OCS,O + HCl とともに,光解離反応および反応速度における同位体効果を理論的に解析した結果を紹介する。
宇宙惑星化学(全般)
  • 伊佐 美紀, 海老原 充
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: 宇宙惑星化学(全般)
    セッションID: 3C09 18-01
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/30
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    炭素質コンドライトは太陽系形成初期に酸化的環境下で生成されたと考えられており、CI, CM をはじめとして8 つのサブグループに分類されている。その一つであるCK コンドライトは、炭素質コンドライトグループのうち、CK3 からCK6 にわたる複数の岩石学的タイプをもつ唯一のグループである。
    従来からCK コンドライトはCV コンドライトと同じグループを構成するとの指摘があったが、酸素同位体組成にも矛盾がなく、現在においてもCV-CK clan として分類され、成因的にもCV コンドライトと密接な関係にあることが示唆されている。CV コンドライトに関してはAllende 隕石をはじめとして多くの研究成果が報告されているが、CK コンドライトに関してはそのサブグループとしての認知が比較的に新しい事もあり、まだ研究例はCV コンドライトに比べて少ない。本研究ではCK コンドライトの全岩化学組成を調べ、元素組成の点からCK コンドライトの特徴を明らかにする事を目的とした。
  • 横山 立憲, 三澤 啓司, 岡野 修
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: 宇宙惑星化学(全般)
    セッションID: 3C10 18-02
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/30
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    本研究では、アルカリ元素に富む岩片の岩石鉱物学的研究をおこない、さらにRb-Sr同位体系を用いた年代学、および微量元素組成分析を基にして、これらの岩片の形成過程とアルカリ元素分別の過程を解明することを目指した。
    Bhola, Krbg, Y-74442に含まれるアルカリ元素に富む岩片の産状は良く似ており、バルク組成は一致した。これは、岩片の起源物質が同じであり、岩片が共通の過程を経て形成されたことを示唆する。また、Bhola, Y-74442の全岩試料からRbの過剰が認められた。このことは、形成された岩片が母天体での角礫岩化作用により粉砕され、大小様々な岩片としてBhola, Y-74442に取り込まれたことを示唆する。
  • 荒井 朋子, 佐伯 和人, 荒木 博志, 石原 吉明, 大竹 真紀子, 唐牛 譲, 小林 直樹, 杉原 孝充, 春山 純一, 本田 親寿
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: 宇宙惑星化学(全般)
    セッションID: 3C11 18-03
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/30
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    日本の次期月着陸探査計画SELENE-2 の月着陸候補地点検討会議では、月惑星科学における第一級の課題解決のため、SELENE-2 探査が目指す科学目標を明確に設定し、目標達成のためにはどの地点に着陸し、どのような戦略で観測を行うべきかについて議論を進めてきた。本講演では、月惑星科学の本質的課題解決に直結する、優先度の高い科学目標を目指す探査計画案と着陸候補地点、及びその選択根拠を説明するとともに、今後引き続き進められる着陸地選定方針について紹介する。
  • 楠野 葉瑠香, 福岡 孝昭, 松崎 浩之
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: 宇宙惑星化学(全般)
    セッションID: 3C12 18-04
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/30
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    26Alによる隕石の落下年代を求めるには、宇宙空間で生成された26Alの量を推定する必要がある。
    26Alの生成量は宇宙線の標的になる主成分元素の含有量や宇宙線のフラックスから推定することができる。
    これまでに報告された隕石の26Al生成量の推定式はchondrite隕石に基づいた式がほとんどなので、HED隕石に適用すると26Alの生成量が高く見積もられる傾向があった。本研究ではHED隕石にもchondrite隕石にも適用できる推定式を作成した。
    本研究では、落下時の26Al含有量をもつ19個のfalls隕石(11個のHED隕石、8個のchondrite隕石)の26Al含有量と主成分元素組成の相関関係を利用して経験的に隕石の26Al生成量を推定する式を作成した。
  • 新原 隆史, 三澤 啓司, 堀江 憲路, 海田 博司
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: 宇宙惑星化学(全般)
    セッションID: 3C13 18-05
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/30
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    本研究では、シャーゴッタイトの結晶化年代を明らかにするために、RBT 04261に含まれるバデレアイトの産状を岩石鉱物学的に観察すると共に、二次イオン質量分析計(SHRIMP II)を用いてウラン–鉛年代測定を行った。今回得られたバデレアイトの若いウラン–鉛年代がシャーゴッタイトの結晶化年代であることを示している。
  • 中村 明博, 三村 耕一
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: 宇宙惑星化学(全般)
    セッションID: 3C14 18-06
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/30
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    衝撃波は、隕石や小惑星等の天体同士などの衝突現象によって発生し、伝播する際に物質を高温、高圧状態にする性質を持っている。天体中に有機物が存在している場合はもちろん、有機物をまとった星間微粒子同士が衝突する際も、発生する衝撃波により有機物が何らかの影響を受けるはずである。今回の実験では、宇宙で最も豊富な有機分子のひとつであると考えられるPAHs(polycyclic aromatic hydrocarbons)の構成単位であるベンゼンを出発有機物に用い、宇宙の低温環境を再現した液体窒素温度下で衝撃波を加えることにより、生成物と衝撃圧力の関係について考察することを試みた。同定された生成物の総量は、圧力と共に増大し、衝撃圧力25.7GPaのときに最大となった。また今回の生成物の中で、衝撃圧力の高さに関わらず異性体が、ナフタレンの場合は2-位に、ビフェニルの場合は3-位(m-位)に置換基を持つ物質が多く生成されていることがわかった。
初期太陽系円盤の宇宙化学
  • 巻出 健太郎, 永島 一秀, クロット アレクサンダー, ハス ゲイリー, ヘルブランド エリック, ガイド エリック, チェスラ フレッド ...
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: 初期太陽系円盤の宇宙化学
    セッションID: 3C15 13-01
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/30
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    始原的隕石の酸処理残渣に微量ながら含まれるマイクロンサイズのコランダム粒子を、二次イオン質量分析器を用いて酸素及びマグネシウム同位体の分析を行った。コランダム粒子の酸素同位体組成はすべて16Oに富むのに対し、26Al/27Alの初期値は、26Mgの過剰を示すものと 、分析誤差を超える26Mgの過剰が検出されないものと双峰性の分布を持つことがわかった。コランダムは初期凝縮物であることから、初期太陽系形成時において26Alの不均質が存在していたことを示唆し、本発表ではその要因となる可能性について議論する。
  • 橋爪 光, 高畑 直人, 奈良岡 浩, 佐野 有司
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: 初期太陽系円盤の宇宙化学
    セッションID: 3C16 13-02
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/30
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    始原隕石中には有機物が豊富に含まれるが、それらの起源は明らかではない。隕石有機物の少なくとも一部は、太陽系形成時の「冷たい宇宙空間」、星雲外周部や星雲の前身である分子雲で進行した物質形成過程を理解するための格好のプローブになり得るかもしれない。有機物はCHONSと書きならわされるように、安定同位体を複数持つ多数の元素から構成される。これらの同位体情報を組み合わせることにより、有機物の形成環境を詳しく理解することを目指した。我々は南極産炭素質コンドライト隕石 Yamato-793495 (CR2) から抽出した酸不溶有機物(IOM)を用いて分析を進めた。東京大学・大気海洋研究所に備わるNanoSIMS50 を用い、IOM中の同じ領域中の水素・窒素・炭素・酸素の同位体イメージングを進めた。
  • 丸山 誠史, 富岡 尚敬
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: 初期太陽系円盤の宇宙化学
    セッションID: 3C17 13-03
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/30
    会議録・要旨集 フリー
    ヴィガラノ(CV3)隕石中にCa, Al, Feに富む特異な球形の包有物(Ca-Al-Fe-rich inclusion: CAFI)が見いだされた。CAFIは6.5 x 5.8 mmほどのほぼ球形の包有物でigneousな岩相を持つ。その半分以上の部分が、ほぼ端成分に近い組成を持つ粗粒のヘルシナイトで占められている。CAFIはグロッサイトやペロブスカイトといった、通常のCAIに含まれる鉱物も含んでいるが、メリライトやスピネルは、極めて少量しか含まれていない。CAFIの大きな特徴の一つは、コア部分に存在する粗粒のドミトリイワノバイト(phase II)であり、前駆物質の溶融物中で結晶化したCaAl2O4の低圧相(phase I)が、衝撃変成により形成されたと考えられる。CAFIの鉱物学的特性は、CB/CHコンドライトと、CAFIが密接な関係を持っている可能性を示唆している。
  • 片山 樹里, 伊藤 正一, 圦本 尚義
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: 初期太陽系円盤の宇宙化学
    セッションID: 3C18 13-04
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/30
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    Fluffy TypeA CAIのメリライト結晶の鉱物学的組織を解析し,固溶体成分の累帯構造に基づき,酸素同位体非平衡を再検討したので報告する.逆累帯構造をもつメリライト結晶を8個発見し,どの結晶も連続的にオケルマナイト成分(ak5)が3-25%の範囲で変化していた.Wark-Lovering (WL)リムに接していない鉱物間では,それぞれ異なるak組成範囲を示していたが,鉱物間の酸素同位体組成は,分析誤差範囲内でどれもほぼ均一な組成を示した.一方,WLリムに接している結晶3個は、鉱物内に酸素同位体非平衡な分布を示した(Δ17O= -20~ -5‰)。本講演では,累帯構造に基づいて単結晶内に存在した酸素同位体分布の変化に注目し, Fluffy Type A CAIの成因を評価していく。
  • 小嶋 稔
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: 初期太陽系円盤の宇宙化学
    セッションID: 3C19 13-05
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/30
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    太陽系元素同位体組成の推定は、非揮発性元素についてはCIコンドライトの分析値、揮発性元素とりわけ希ガスや酸素の同位体比組成は太陽風(月表層砂やGenesis―試料)の分析から推定されている。後者の場合、太陽の平均同位体組成(つまりは初期太陽系星雲)を結論するには太陽風と太陽間の同位体比分別を知る事が前提となる。現在この同位体分別はよく分かっていない。本講演では希ガスと酸素の場合につき太陽風―太陽間の同位体分別そして同位体比進化につき新たな提案を行う。
  • 寺田 健太郎, 増田 洋介, 梶尾 寛, 岩本 信之, 青木 和光, 吉田 敬
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: 初期太陽系円盤の宇宙化学
    セッションID: 3C20 13-06
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/30
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    天然に存在する鉄よりも重い元素の約半数は、太陽のような中小質量星の進化末期のAGB星内He層で起こる遅い中性子捕獲反応(以下、s-process)で生成されたと考えられている。本研究では、s-process核種(Ba, Zr, Moなど)同位体比の温度-密度依存性を調べ、過去に報告されたプレソーラーSiC個々の同位体比、及び隕石酸残渣の同位体比(solarとs-processのmixing)と比較する事で、s-processの環境変数の普遍性/多様性について議論する。
  • 横山 哲也, アレキサンダー コーネル, ウォーカー リチャード
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: 初期太陽系円盤の宇宙化学
    セッションID: 3C21 13-07
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/30
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    近年コンドライト全岩試料における様々な重元素安定同位体異常が報告されており,太陽系前駆物質が原始太陽系星雲内で同位体的に不均質分布していた可能性が指摘されている.しかしコンドライトは母天体上の二次的プロセスにより,必ずしも初期情報を保持しているとは限らない.本研究ではコンドライトから抽出された耐酸性残渣の精密Os同位体分析を行い,その同位体異常の程度から原始太陽系星雲内で生じたプロセスやその後の母天体プロセスの影響について考察した.炭素質および普通コンドライトではOs同位体比と隕石の岩石学タイプに強い相関が見られた.これは熱変成によりプレソーラーSiCが,水質変成によりr-過程のOsに富むキャリアが選択的に破壊されたためである.一方,エンスタタイトコンドライトの耐酸性残渣は同じ岩石学タイプでは炭素質・普通コンドライトより高いOs同位体比を持つ.これはEC母天体の還元的環境で熱変成が起きたことが原因である.
  • 山川 茜, 山下 勝行, 牧嶋 昭夫, 中村 栄三
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: 初期太陽系円盤の宇宙化学
    セッションID: 3C22 13-08
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/30
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    ユレイライトは始原的な特徴を持つ、ユニークなエコンドライトである。しかし、ユレイライトはK, Rb, U, Th, 希土類元素に乏しいため、その精密な年代測定は困難である。本研究では、新たに開発された分析法を用いて、モノミクトユレイライトのMn-Cr年代測定を行った。本研究では2つのユレイライト(NWA 766とNWA 1241)を段階的に分解し、それぞれのアイソクロンを求めた。その結果、ユレイライト母天体の形成が約4565Maには始まり、少なくとも数百万年は続いたことが明らかになった。
惑星・衛星・小惑星の宇宙化学
  • 長島 加奈, 奈良 雅之, 松田 准一
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: 惑星・衛星・小惑星の宇宙化学
    セッションID: 3C23 14-01
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/30
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    【序論】エイコンドライトの一種であるユレイライト隕石は、その大半がケイ酸塩鉱物結晶から成っていて、それらの結晶の隙間を埋める様に、炭素質の脈を含んでいる。炭素質脈は、グラファイト・ダイヤモンド・鉄-ニッケル合金・硫化鉄などから成る。その酸素同位体組成は他のエイコンドライトとは異なり、始源的な様相を呈していることが知られているが、珪酸塩鉱物は火成起源のようである。このように珍しい隕石であるユレイライトは、その特徴である炭素質脈をどのように内包するに至ったのか、脈中のダイヤモンドはどのように形成されたのかが度々議論されている。本研究で、我々はユレイライト中のダイヤモンドの形成要因を探ることを最終目的とし、顕微ラマン分光法を用いてユレイライト中のダイヤモンドとグラファイトのスペクトルを測定し、それについて議論を行った。
    【結果】得られたダイヤモンドのスペクトルは、Miyamoto et al. (1993)で示されている、CVD合成ダイヤモンドのスペクトルと同様のピーク位置、半値幅であった。しかし、ダイヤモンドのスペクトルのピーク位置・半値幅とグラファイトのスペクトルのピーク位置・半値幅を比較したとき、それらの挙動は逆であるように見えた。このことは、ユレイライト中のダイヤモンドが衝撃起源であることを示唆しているように考えられる。
  • 深海 雄介, 木村 純一, 入澤 啓太, 横山 哲也, 平田 岳史
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: 惑星・衛星・小惑星の宇宙化学
    セッションID: 3C24 14-02
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/30
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    IIIAB鉄隕石と石鉄隕石のパラサイトメイングループ(PMG)は化学組成や酸素同位体組成により、その起源について強く関連があると考えられている。本研究ではこれら隕石の金属部分のタングステン安定同位体組成をレニウム添加による外部補正法を用いて多重検出器型誘導結合プラズマ質量分析計により測定した。また、W濃度の測定を同位体希釈法により行った。IIIAB鉄隕石のW安定同位体比には質量に依存する同位体分別による変動幅が存在し、また、W安定同位体比とW濃度の間には強い相関が見られた。これらは母天体上での金属核固化過程に伴う同位体分別である可能性が示された。PMGの金属相のW安定同位体組成からはPMGの起源がIIIAB鉄隕石の母天体と関連があることが示唆される。
  • 梶川 岳彦, 寺田 健太郎, Anand Mahesh
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: 惑星・衛星・小惑星の宇宙化学
    セッションID: 3C25 14-03
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/30
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    1970年代以降、アポロ、ルナ計画によって持ち帰られた試料により月の理解は飛躍的に向上した。しかし、隕石等の衝突によって破砕変形を受けた角礫岩化した試料の年代測定は、これまで困難とされてきた。KREEP、カコウ岩(GNT)、Very-Low-Ti(VLT)玄武岩クラストが含まれていることが報告されているアポロ17号計画によって採取されたポリミクト角礫岩中のリン酸塩鉱物に着目し(Ryder et al., 1975)、高感度高分解イオンマイクロプローブ(SHRIMP)による局所年代分析を行った。
    VLT玄武岩起源、KREEP起源、GNT起源のリン酸塩鉱物を特定し、それぞれ3.963±0.11Ga、3.919±0.055Ga、3.906±0.02Gaの形成年代が得られた(誤差;2σレベル)。KREEP、GNTの結果はこれまでアポロ、ルナ計画によって持ち帰られた試料によって報告された年代と調和的である。一方本研究で得られたVLT年代3.963±0.11Gaはこれまでのアポロ、ルナ試料中のVLTの報告年代よりも0.6Gaほど古く、VLT玄武岩の火成活動が約11億年(4.0~2.9Ga)継続していたことを示唆する。
  • 三浦 亜由美, 斎藤 裕子, 田澤 雄二, 福岡 孝昭
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: 惑星・衛星・小惑星の宇宙化学
    セッションID: 3C26 14-04
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/30
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    本研究では約12万年前の南極ドームFujiコアの切削氷(氷の削りカス)を用いて宇宙塵の降下量を求めた.この切削氷からは30μm以上の宇宙塵は確認できないが、宇宙塵は常に降下しているので,30μm未満の宇宙塵として存在する可能性を考え、微小な宇宙塵が付着していると考えられるフィルターごとINAA(機器中性子放射化分析)で化学分析し、宇宙塵に特徴的なIrの濃度に基づいて地球への降下量を求めた。結果(0.12±0.03)×106 kg/yrと推定された。この降下量は南極裸氷帯で推定された年代約3万年前で(16±9.1) ×106kg/yrよりも100倍少ない。しかし6千年から1万年前のGreenland Ice Project2のコアを用いた約20μm以下の降下量は約(0.32±0.21)×106 kg/yrとなり,本研究と近い値であった
マントル物質の化学とダイナミクス
  • 下田 玄
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: マントル物質の化学とダイナミクス
    セッションID: 3D01 08-01
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/30
    会議録・要旨集 フリー
    マントルの地球化学的進化や不均質性を考える指標としてマントル端成分が提案されている。マントル端成分の起源は、海洋地殻や大陸地殻の形成、そのリサイクリングに関連していると考えられている。特に高濃度で液相濃集元素を含む大陸地殻の形成とそのリサイクルは、マントルの元素収支を考える上で重要である。大陸地殻物質のリサイクルに関連していると考えられているマントル端成分は、EM1とEM2と呼ばれている。また、大陸地殻は、主に原生代以前の沈み込み帯で形成したと考えられている。そこで原生代以前の沈み込み帯における過程とEM1とEM2の関連を、地球化学的モデルにより調べた。
  • メシェシャ ダニエル, 新城 竜一
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: マントル物質の化学とダイナミクス
    セッションID: 3D02 08-02
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/30
    会議録・要旨集 フリー
    北東アフリカのアファー・プルームに関連した、始新世から第四紀の玄武岩類のSr-Nd-Pb同位体比やインコンパティブル元素組成から、プルーム物質の地球化学的特徴を検討した。プルームには4つの端成分が関与しているらしい。1)同位体的にdepleteしているが、微量元素に富んだ成分、2)HIMUに近いPb同位体比が高い成分、3)enriched マントル類似の成分、4)高いHe同位体比で特徴づけられる成分である。我々は、下部マントルに端を発するアフリカ・スーパープルームの上昇流の中に、いくつかの小規模なplumeletがあって、これらが北東アフリカ大陸下へ衝突するモデルを提案する。plumeletは、4)の成分のマトリックス中に他の成分が斑点状に散在していると考えられる。
  • 城森 由佳, 南 雅代, 鈴木 和博, 竹内 誠
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: マントル物質の化学とダイナミクス
    セッションID: 3D03 08-03
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/30
    会議録・要旨集 フリー
    四国・紀伊半島地域における87Sr/86Sr同位体比地球化学図を作成したところ、付加年代が新しい四万十帯の南帯において、一番高い値(0.718~0.720)が得られた。付近に分布するジュラ紀付加体を考慮しても、そこまで値が高められるとは考えにくく、大陸起源の砕屑物の影響を考えたほうが自然である。そこで四万十帯中に古い年代をもつ砕屑性ジルコンが存在するかを明らかにするため、四国東部の四万十帯北帯・南帯の累層ごとに砂岩を採取し、砂岩中のジルコンのCHIME年代測定を行った。その結果、南北両帯において1100Maや2000Maなどのジルコンの年代値が得られ、四万十帯の源岩として大陸基盤岩が含まれていることが示唆された。またそれにより87Sr/86Sr同位体比の値が高められていると考えられる。
  • 遠山 知亜紀, 村松 康行, 山本 順司, 角野 浩史, 中井 俊一, 兼岡 一郎
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: マントル物質の化学とダイナミクス
    セッションID: 3D04 08-04
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/30
    会議録・要旨集 フリー
    ハロゲン元素は揮発性元素であるため、地球形成時の脱ガス作用により地球内部からそのほとんどが放出されたと考えられてきた。しかし、マントル起源の鉱物中には地球生成時から存在していたと推定される同位体組成をもつ希ガスも見つかっており、地球内部には現在も地球生成時に取り込まれた揮発性元素が存在すると予想される。
    キンバーライトはH2O, CO2などの揮発性元素に富み、ダイヤモンドの包有岩として知られ、そのマグマ源は少なくとも150kmより深いところにあると推定されている。このことから、キンバーライトやその捕獲岩のハロゲン元素組成とその特徴を調べることにより、マントルでのハロゲン元素分布などに関する知見を得られる可能性がある。今回は、外部からの汚染を除去する方法の検討を行い、これまで発表してきたデータの信頼性を確かめた。また、分析元素をIとBrだけでなくClまで拡充し、グリーンランド産試料の元素分析の結果も合わせて発表する。
ナノジオケミストリー・地球科学にまつわる基礎化学
  • 田中 万也, 鈴木 義規, 姜 明玉, 宇都宮 聡, 大貫 敏彦
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: ナノジオケミストリー・地球科学にまつわる基礎化学
    セッションID: 3D05 09-01
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/30
    会議録・要旨集 フリー
    微生物と水溶液中に溶解した元素とが相互作用する細胞表面及びその近傍である“バイオ反応場”は鉱物生成場として注目されている。本講演では微生物が関与する鉱物化について幾つか紹介する。
  • 姜 明玉, 大貫 敏彦, 田中 万也, 香西 直文, 上石 瑛伍, 宇都宮 聡
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: ナノジオケミストリー・地球科学にまつわる基礎化学
    セッションID: 3D06 09-02
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/30
    会議録・要旨集 フリー
    酵母によるYbのリン酸塩鉱物化について研究を行った。Ybを含む水溶液(pH3,4,5)に酵母を接触させた結果、酵母表面にYbリン酸塩ナノ鉱物の形成が観察された。これは酵母から排出されたリンと細胞表面に吸着したYbが反応した結果生成したものと考えられる。
  • 吉野 徹, 鍵 裕之
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: ナノジオケミストリー・地球科学にまつわる基礎化学
    セッションID: 3D07 09-03
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/30
    会議録・要旨集 フリー
    原子間力顕微鏡を用いたその場観察により求めたステップ速度から、カルサイトの溶解における各素過程に生体分子がどのような影響を及ぼすのか見積もった。
  • 丸山 浩司, 吉野 徹, 鍵 裕之
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: ナノジオケミストリー・地球科学にまつわる基礎化学
    セッションID: 3D08 09-04
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/30
    会議録・要旨集 フリー
    非晶質炭酸カルシウム(ACC)は、結晶質の炭酸カルシウムの前駆体として重要な物質である。ACCは熱力学的に準安定な状態であるが、酸性の合成有機ポリマーを用いたACCの安定化が報告されている。本研究では、より直接的な相互作用を調べるために、モノマーであるアスパラギン酸(Asp)を用いてACCの合成を試みた。
    Asp 25 wt%、水酸化カルシウム10 wt%の水溶液をメタノールで濃縮し、二酸化炭素を通したものを乾燥させることで透明な物質を得た。また、比較実験として、窒素を代わりに通し、二酸化炭素を含まないものも合成した。
    合成した物質は、XRDパターンやRamanスペクトルによりACCを含んでいることが確認された。また、元素分析やICP-MSの結果から、Aspを65 wt%、CaCO3を13 wt%、H2Oを13 wt%程度含んでいることが分かった。以上より、AspでもACCを安定化できることが分かった。
  • 宇都宮 聡, 仲松 有紀, 金子 誠, 古川 雅志, Zhouqing Xie
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: ナノジオケミストリー・地球科学にまつわる基礎化学
    セッションID: 3D09 09-05
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/30
    会議録・要旨集 フリー
    Interaction between nanoparticles and biological tissues strongly depend on the speciation and form of constituent elements. In these several years, we have been focusing on the speciation of metals particularly associated with fine fraction of PM to elucidate the toxicity of those particles. State-of-the-art electron microscopy and synchrotron-based X-ray absorption fine structure have been utilized to characterize urban aerosols. The results obtained from these samples reveal the complex mixing state of toxic metals and the size-dependent phase heterogeneity bearing the elements of interest. This presentation summarizes our recent projects particularly focusing on the speciation of metals: Fe, Pb, Cr, and Mn.
  • 太田 充恒, 久保田 蘭, 鍵 裕之, 石橋 秀巳
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: ナノジオケミストリー・地球科学にまつわる基礎化学
    セッションID: 3D10 09-06
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/30
    会議録・要旨集 フリー
    独)産業技術総合研究所では、高濃度の重金属元素の分布が自然由来か人為汚染によるものかを評価する際の基準を提供するべく、河川・海洋堆積物を用いた広域地球化学図の作成に取り組んできた。しかし、地球化学図は「濃度の高い・低い」の情報しか示さない。より実用的な情報を提供するため、これら堆積物中の元素について、形態別に起源や成り立ちを考慮する必要がある。これまで逐次溶解法を用いた河川堆積物中の重金属元素の形態分析の結果について報告してきた(太田・今井、2005)。しかし、逐次溶解分析法は化学的手法に基づく破壊分析法であり、目的としている化学形態を正しく分析しているのか不明な点がある。そこで、逐次溶解法を用いて化学形態毎に抽出した試料を、XAFS法で測定し、目的としている抽出形態であるのか確かめた。
  • 月村 勝宏, 鈴木 正哉, 鈴木 庸平, 村上 隆
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: ナノジオケミストリー・地球科学にまつわる基礎化学
    セッションID: 3D11 09-07
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/30
    会議録・要旨集 フリー
    ナノ粒子は一般に結晶性の低い物質であるために微量元素を固溶し易い。しかし、時間とともに結晶に変化して、固溶していた微量元素は水溶液中に吐き出す。このためにナノ粒子の結晶化速度に関する実験が多数行われている。しかし、温度・pH・不純物濃度が同じだとしても、実験で得られた結晶化速度の値をそのまま天然に適用できるとは限らない。それは、ナノ粒子の大きさ、撹拌の有無、系の大きさなどが結晶化速度に関係しうるからだ。本研究では、これらの条件が結晶化速度に与える影響を明らかにするために、ナノ粒子の結晶化速度についての理論を提案する。
  • 野口 直樹, 篠田 圭司
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: ナノジオケミストリー・地球科学にまつわる基礎化学
    セッションID: 3D12 09-08
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/30
    会議録・要旨集 フリー
    水鉱物中の水素の自己拡散は先行研究が少なく、その微視的な機構については明らかになっていない。ポートランダイト Ca(OH)2は層状水酸化鉱物で、その結晶構造は[CaO6]八面体層と蜂の巣格子状にOH基が配列したプロトン層が交互の積み重なることによって構成される。このような単純な構造のために、ポートランダイトは水素の自己拡散の微視的機構を明らかにするうえで適切なターゲットであるといえる。また、プロトン層の水素の配列は珪酸塩鉱物の水和した粒界に類似すると考えられ、ポートランダイトの水素の拡散係数から、水和した粒界中での水素の拡散速度を大まかに見積もれるはずである。本研究ではポートランダイトの結晶に重水素を拡散させ拡散係数を決定し、拡散の活性化エネルギーから水素の拡散の微視的機構を明らかにした。
  • 山口 祐, 飯塚 理子, 小松 一生, 鍵 裕之
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: ナノジオケミストリー・地球科学にまつわる基礎化学
    セッションID: 3D13 09-09
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/30
    会議録・要旨集 フリー
    水は地球内部において岩石の溶融、レオロジー、元素の分配といった種々の現象に極めて重要な役割を果たしている。そのため、地球深部における水の役割、特に鉱物と水の相互作用を明らかにすることは地球のダイナミクスを理解する上で最も重要な課題の一つである。異極鉱は亜鉛の含水ケイ酸塩鉱物であり、結晶構造の空隙に水分子が一分子ずつ存在する特異な構造を有する。そのため、水分子と鉱物の相互作用や鉱物中での水素結合の挙動を調べる上でモデル的な物質となり得る。しかし、地球内部での挙動を議論するのに不可欠な高圧条件下における報告はなされていない。本研究では、高圧下での振動スペクトル測定およびX線回折測定を行い、異極鉱の構造および水素結合の圧力応答を調べた。
  • 川邊 岩夫
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: ナノジオケミストリー・地球科学にまつわる基礎化学
    セッションID: 3D14 09-10
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/30
    会議録・要旨集 フリー
    ランタニド二水素化物のラカーパラメーター(E1, E3)のランタニド3価自由ガスイオンに対する相対値を,四組効果を示すランタニド二水素化物の生成熱データをヨルゲンセンー川邊式を用いて解析した.その結果,ランタニド二水素化物のラカーパラメーターはランタニド3価自由ガスイオンに比べて,かなり小さいことが判った.Ln-H結合は,相対的に大きな共有結合性を示し,特異な四組効果を示す.
水-鉱物界面の地球化学
  • 柏原 輝彦, 高橋 嘉夫
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: 水-鉱物界面の地球化学
    セッションID: 3D15 11-01
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/30
    会議録・要旨集 フリー
    海水‐鉄マンガン酸化物間の固液分配は、微量元素の海水中の溶存濃度および同位体組成を規定する重要なプロセスである。本研究では、Wの鉄マンガン酸化物表面における吸着構造を調べ、固液分配挙動について考察を行った。
    その結果、タングステンは水酸化鉄およびマンガン酸化物の両方に対して、八面体の内圏錯体を形成することが明らかとなった。この結果を基に、これまでに明らかになっているMoの構造情報との比較から、Moとの分配挙動の違いについて考察した。また、溶存種と吸着種の構造の違いから、これまで報告のないW同位体比の変動についても予測した。
  • 中田 亮一, 高橋 嘉夫, 鄭 国東, 清水 洋
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: 水-鉱物界面の地球化学
    セッションID: 3D16 11-02
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/30
    会議録・要旨集 フリー
    希土類元素(REE)は主に3価の陽イオンとして存在しており,また最外殻電子数が同じであるため,相互に類似した化学的性質を持っている.一方でランタノイド収縮により,LaからLuにかけて原子番号が増えるとともにイオン半径が連続的に減少していくため,イオンポテンシャルが系統的に増加する.このような特徴から,REEの相対存在度であるREEパターンは優れた地球化学的トレーサーとして用いられている.
    最近,Akinlua et al. (2008) は原油のREEパターンが原油の分類に有効であるとし,また,Zhang et al. (2009) は,原油のREEパターンによってその起源の推定が可能であると主張している.しかしながら,現在までに報告されている原油のREE存在度のデータは限られており,全てのREEに対するなめらかなREEパターンは未だに報告されていない.そこで本研究では原油に含まれる全てのREE濃度を定量し,そのCI隕石規格化パターンを報告するとともに,原油と接していた水試料と原油間でのREEの分配についての議論を行う.
  • 河村 雄行
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: 水-鉱物界面の地球化学
    セッションID: 3D17 11-03
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/30
    会議録・要旨集 フリー
    鉱物-水・水溶液の分子シミュレーションについて解説する。鉱物表面構造の解析、鉱物-水・水溶液系の構築、原子分子間相互作用モデルについて、最近の計算例をもとに解説する
  • 三谷 駿介, 江藤 真由美, 飯塚 毅, 岡上 吉広, 横山 拓史
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: 水-鉱物界面の地球化学
    セッションID: 3D18 11-04
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/30
    会議録・要旨集 フリー
    ケイ素は地殻を構成している元素であり、その多くはケイ酸塩やシリカとして存在している。ある種の植物や微生物はケイ酸を利用してシリカの精巧な構造を作っているが、構造形成反応の詳細はわかっていない。有機物とケイ酸との錯体が生物中におけるケイ酸の摂取と輸送に関与しているという観点から、ケイ酸錯体は活発に研究されてきが、自然界の条件ではほとんど見い出されていない。最近、我々の研究グループはカテコール誘導体であるタイロンとのケイ酸錯体が見い出した。本研究では、自然界におけるケイ酸と有機物の相互作用に関する研究の一環としてカテコールとシリカとの間には相互作用があると考えられるため、カテコールおよびカテコールを含む高分子の水溶液におけるシリカの溶解度および初期溶解速度を測定し、タイロンの場合と比較した。
  • 片山 智弘, 鹿園 直建, 高谷 雄太郎, 加藤 泰浩
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: 水-鉱物界面の地球化学
    セッションID: 3D19 11-05
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/30
    会議録・要旨集 フリー
    CO2地中貯留は近年注目され、研究や実地試験が行われている。しかし、CO2の地下挙動に不明な点が多く、圧入されたCO2の地表への漏洩やどれくらいの時間で貯留が可能かといった安全性の面で課題がある。
    そこで、安全に貯留するため化学反応を利用したトラッピングが考えられており、本研究では玄武岩を貯留地の母岩として想定し、玄武岩とCO2を圧入した系での水との溶解実験を行い、溶解反応速度定数を算出した。また、それを用いてCO2 地中貯留のシミュレーションを行い、玄武岩帯水層がCO2を何年で貯留できるかについての検討をした。
    溶解反応速度定数は過去の花崗岩での先行研究の10倍程度大きな値になり、その溶解速度定数を用いたシミュレーションでは約25年後にCO2が炭酸塩鉱物として固定され始め、約300年後にはCO2の94.41%が固定されたので、玄武岩は母岩としてCO2を安全に貯留できると考えられる。
  • 神谷 奈津美, 角森 史昭, 鍵 裕之, 野津 憲治
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: 水-鉱物界面の地球化学
    セッションID: 3D20 11-06
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/30
    会議録・要旨集 フリー
    動的光散乱法を用いることで炭酸カルシウムの結晶成長初期過程における粒径分布を観測した。また、不純物効果を及ぼす物質の1つとしてカルサイト単結晶の結晶成長および溶解に阻害効果を与えるランタンイオンに着目し、不純物効果が表れるタイミングを明らかにすることを目的とした。粒径成長観測結果より、ランタンイオンの存在によって炭酸カルシウムは核発生段階から生成の抑制を受けることがわかった。また、ファーテライトとして存在すると考えられる結晶成長初期段階より結晶成長速度が減少していたことから、ランタンイオンはカルサイトだけではなくファーテライトの結晶成長にも影響を及ぼすことが示唆された。
  • 吉野 徹, 鍵 裕之
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: 水-鉱物界面の地球化学
    セッションID: 3D21 11-07
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/30
    会議録・要旨集 フリー
    アスパラギン酸水溶液中でカルサイトの結晶成長過程を原子間力顕微鏡を用いてその場観察し、ステップ速度を求めた。また、結晶表面のアスパラギン酸分子を直接的に観察する手法として、成長後の結晶表面を飛行時間型二次イオン質量分析法で測定し、結晶表面におけるアスパラギン酸分子の分布及び深さプロファイルを行った。
    本発表ではこれら2種類の分析法から得られた結果を基にアスパラギン酸によるカルサイト結晶成長の阻害メカニズムが果たして何なのか、議論する予定である。
  • 横山 由佳, 高橋 嘉夫
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: 水-鉱物界面の地球化学
    セッションID: 3D22 11-08
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/30
    会議録・要旨集 フリー
    地下水中で過飽和に溶存するカルサイトは、ヒ素やセレンといった有害元素を共沈反応によって取り込むことにより、その移行挙動に影響を与えると考えられている。本研究では、室内実験によりヒ素およびセレンの価数別の分配係数を求めると同時に、XAFS法とHPLC-ICP-MS法を用いたスペシエーションとサイクリックボルタンメトリーを用いた溶存化学種の安定性解析に基づき、ヒ素およびセレンのカルサイトへの共沈挙動を解析した。その結果から、AsおよびSeのカルサイトへの共沈挙動の価数による違いを考察した。
    結果的に、ヒ素はAs(III)よりもAs(V)の方が、セレンはSe(VI)よりもSe(IV)の方がカルサイトに取り込まれやすかった。地下水中におけるヒ素の主要形態はAs(III)であり、セレンの主要形態はSe(IV)である。そのため、地下水中で起こるカルサイトとの共沈反応は、ヒ素の移行挙動にはほとんど影響しないが、セレンに対してはその移行を制限する働きを持つことが予測される。
  • 斉藤 拓巳
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: 水-鉱物界面の地球化学
    セッションID: 3D23 11-09
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/30
    会議録・要旨集 フリー
    水圏・地圏における金属イオンの環境動態を考える上で,錯生成や沈殿,吸着,酸化還元などの多様な地球化学反応の理解とモデル化が重要となる.特に,有機・無機のコロイドや岩石表面への吸着反応は,その吸着メカニズムに応じて,表面錯体形成モデルやイオン交換モデルとしてモデル化され,その適用性の検証やパラメータセットの構築が続けられている.一方,実環境中には,異種のコロイドや表面が共存しており,それらの間の相互作用が金属イオンの吸着に影響を及ぼし,モデルの加算性が成立しない例も指摘されている1.本研究では,代表的な有機コロイドである腐植物質(HS)とゲータイト(α-FeOOH)の相互作用が6価ウラン(UO22+)の吸着に与える影響を3元系および UO22+/HS,UO22+/ゲータイト2元系における吸着実験結果の比較とEXAFS法によるU局所構造の変化から考察した.
  • 光延 聖, 村松 千尋, 高橋 嘉夫, 坂田 昌弘
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: 水-鉱物界面の地球化学
    セッションID: 3D24 11-10
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/30
    会議録・要旨集 フリー
    アンチモンは工業製品に大量に使用されており、近年環境中への汚染が問題視されている有害元素である。しかしながら、その環境動態に関する研究は他の有害元素に比べ遅れており、今後更なる研究が必要である。本研究ではアンチモンの土壌や堆積物中でのホスト相と考えられている水酸化鉄鉱物への取り込みメカニズムについて研究を行なった。特に水酸化鉄鉱物が相転移する際のアンチモンの局所構造の変化をXAFS法で観察し、水相への溶出挙動とあわせて考察した。
  • 青山 和樹, 福士 圭介
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: 水-鉱物界面の地球化学
    セッションID: 3D25 11-11
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/30
    会議録・要旨集 フリー
    】酸化物表面への元素の吸着は、土壌や水域環境において元素の濃度や移動性を支配する重要なプロセスである。長期的な吸着挙動を評価するには、溶存元素の酸化物表面への吸着における挙動と機構を明らかにする必要がある。河川や土壌などの水溶液系で一般的に見られる硫酸イオンは、共存する他の無機陰イオンや微量金属、有機酸の吸着性に影響を与えており、広大な比表面積と高いZPCが特徴的である低結晶性鉄水酸化物のフェリハイドライト(Fh)は、その有効な吸着媒体と考えられる。本研究では、表面錯体モデリング手法の一つであるExtended Triple Layer Model(ETLM)を用いてFhへの硫酸吸着挙動を解析することを目的とする。
  • 菊池 早希子, 光延 聖, 牧田 寛子, 高橋 嘉夫
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: 水-鉱物界面の地球化学
    セッションID: 3D26 11-12
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/30
    会議録・要旨集 フリー
    Bacteriogenic Iron oxides(BIOS)へのSeおよびCsの吸着反応を無機水酸化鉄と比較した。実験で用いるBIOSは島根県三瓶温泉で採取した。一方比較対象として用いた無機水酸化鉄は、0.2 μmのフィルターでろ過した三瓶温泉水から自発沈殿させることにより得た。SEM観察, TEM観察, XAFS解析を行った結果、BIOSにはフィラメント状の有機物が含まれるが無機水酸化鉄には含まれないという点において両者は異なった特性を持つが鉱物種には違いはみられなかった。また吸着実験では、陽イオンであるCs、陰イオンであるSeの両者において同等の吸着率を示した。両者の沈殿形態・有機物の含量に違いがあるにも関わらず、CsやSeの吸着挙動には違いが生じないことから、CsやSeの吸着を決定づけるのは鉱物としての水酸化鉄が持つ性質であり、BIOSに含まれる有機物はCsやSeの吸着挙動には影響を与えないと考えられる。
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