会計プログレス
Online ISSN : 2435-9947
Print ISSN : 2189-6321
ISSN-L : 2189-6321
2020 巻, 21 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
  • 北川 教央
    2020 年 2020 巻 21 号 p. 1-16
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/01
    ジャーナル フリー
    本稿の目的は,企業が採用する事業戦略と業種内における決算発表の情報波及効果との関係について検証を行うことである。本稿ではBentley et al.( 2013)の手法に基づき,企業の事業戦略を3つのタイプ(防衛型,探索型,および分析型)に分類したうえで,当事企業の事業戦略の類似性やタイプによって,決算発表から生じる情報波及効果の大きさに違いが生じるのかについて検証を行った。その結果,同一業種かつ事業戦略のタイプが類似している企業間における決算発表の情報波及効果は,事業戦略のタイプが異なる企業間におけるそれと比較して顕著に観察されることが明らかとなった。また,同一業種で事業戦略のタイプが類似している企業間であっても,両者の事業戦略が製品差別化を志向する探索型に分類される場合には,決算発表の情報波及効果は観察されないことが確認された。本稿は,業種内における決算発表の情報波及効果の決定要因に関する新たな証拠を提示したことで,会計情報の伝達プロセスに関する先行研究に貢献しうる。
  • 51年間の文献調査に基づいて
    横田 絵理, 乙政 佐吉, 坂口 順也, 河合 隆治, 大西 靖, 妹尾 剛好
    2020 年 2020 巻 21 号 p. 17-31
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/01
    ジャーナル フリー
     本研究では,1965年から2015年までの文献調査を基礎として,わが国マネジメント・コントロール研究がどのように展開されたのかを明らかにする。具体的には,会計関連雑誌7 誌(會計,会計プログレス,企業会計,産業経理,原価計算研究,管理会計学,メルコ管理会計研究)に掲載された論文を対象とする書誌学的方法を用いた引用分析を通じて,わが国マネジメント・コントロール研究の蓄積状況を明示しつつ,今後の研究の方向性を提示する。
  • 工場内アンケート調査に基づく考察
    岩澤 佳太
    2020 年 2020 巻 21 号 p. 32-45
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/01
    ジャーナル フリー
     本研究の目的は,コストマネジメントに活用される原価情報の特性を,利用者個人レベルに焦点をあてながら解明することである。この目的を果たすため,本研究は原価情報品質のフレームワークを援用し,原価情報に求められる特性の網羅的かつ体系的測定を可能とした。加えて生産関連部門のマネジャーを対象とした工場内アンケート調査を実施した。その結果,原価情報の活用にあたっては,先行研究の中心であった正確性を含む固有品質次元よりも表現・文脈品質次元が優先されることや,固有品質次元は,必要条件であるが十分条件ではないことなどを示した。
  • 岡田 慎太郎
    2020 年 2020 巻 21 号 p. 46-62
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/01
    ジャーナル フリー
     銀行業における貸出金や預金の時価情報については,時価を売却可能価格としてその差額を評価 することはビジネスモデルとは整合せず,将来利益の関係において,保有を前提としたリスク管理 の実務が大きな影響を与えると考えられる。本研究では,このような視点に基づき,投資家は貸出金と預金の時価情報を金利変動が将来利益に与えるリスク量として用いると仮定した。結果,貸出金,預金と満期保有の債券の時価と簿価(貸出金は貸倒引当金考慮後の簿価)の差額(以下,評価差額)の純額の純額の係数は有意に負となり,当該純額とヘッジ会計の適用状況を示す変数との交差項の係数は有意に正となった。係数の符号について,投資家は現在の低金利下において,保有が前提となる貸出金と預金の評価差額の純額は,今後金利が上昇した場合に将来利益にマイナスの影響を与えると評価,ヘッジ会計の適用は当該影響の軽減が期待できることから,プラスに評価していると解釈した。一方,保有目的の異なるその他有価証券の評価差額の係数は有意に正であった。投資家は金融商品の時価情報について,保有目的により異なる取り扱いをしていることが示唆された。
  • 石田 惣平
    2020 年 2020 巻 21 号 p. 63-79
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/01
    ジャーナル フリー
     本研究は2005年から2013年までに日本の株式市場に上場している企業を対象として,経営者の在任期間と業績予想の正確度との関係を検証している。分析の結果,経営者の在任期間と業績予想の誤差との間にはU字の関係があることが確認されている。また,経営者の在任期間と業績予想の誤差との関係は経営者の年齢やコーポレートガバナンスの質に応じて変化することがわかっている。本研究の発見事項は,経営者は就任して一定期間までは自社を取り巻く経営環境や社内にある様々な経営資源に関する知識の収集に努めるため,業績予想の正確度が改善する一方で,一定期間をすぎるとエントレンチメントが支配的となり,経営者には業績予想の正確度を高めようとする動機がなくなるため,業績予想の正確度が低下することを示唆している。
  • 臨床会計学アプローチを用いた実証分析
    黒木 淳, 市原 勇一, 地多 佑介, 岡田 幸彦
    2020 年 2020 巻 21 号 p. 80-94
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/01
    ジャーナル フリー
     管理会計の実践度を高めることは中小企業の業績向上にポジティブな影響を与えることが先行研 究によって明らかになっている。しかし,すべての中小企業において管理会計が高い水準で実践されているわけではないのはどうしてであろうか。本稿では,財務業績の実績値がアスピレーション・レベルを超えていることから中小企業経営者が財務業績の実績値に満足している,あるいは関心を持たない状態を「アスピレーションの欠如」として定義する。そして,このようなアスピレーションが欠如した中小企業では,管理会計の実践度を高めることを含む財務業績を改善するような取り組みが行われなくなることを予想する。臨床会計学アプローチによる調査にもとづき得られた483社の中小企業データを用いた実証分析の結果,経営者の財務業績に対するアスピレーションの欠如は管理会計の実践度と負に関連していることを発見した。本稿はアスピレーションの欠如という,中小企業の管理会計の実践度が高まらない新たな障壁効果に関する証拠を学術的にはじめて示した点で管理会計研究に貢献している。
feedback
Top