会計プログレス
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2021 巻, 22 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
  • 安酸 建二
    2021 年 2021 巻 22 号 p. 1-16
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/01
    ジャーナル フリー
     決算早期化は,経営成果の迅速なフィードバックを可能にする。そのため,決算早期化を実現する企業は経営環境の変化へ迅速に対応し,この結果として高業績を達成する可能性が経営実務で指摘されている。しかし,この可能性は,学術的には十分に研究されていない。本研究では,企業グループを対象として,連結決算が公表されるまでの営業日数とROAの関係を実証的に明らかにする。分析結果は,決算早期化が財務業績の向上に寄与することを示している。
  • 公益法人を対象とした実証分析
    夏吉 裕貴
    2021 年 2021 巻 22 号 p. 17-31
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/01
    ジャーナル フリー
     近年,日本を代表する非営利組織である公益法人のガバナンスが注目を集めている。本稿では,公益法人ガバナンスとパフォーマンスの関連性を明らかにすることを目的とする。本稿は米国非営利組織における最高意思決定機関である理事会を対象にして実証分析を行ったAggarwal et al.(2012) の理論と証拠を参考として,日本の公益法人を対象とした実証分析を行う。ただし,日本の公益法人制度では,米国非営利組織における理事会のような最高意思決定機関は社員総会/評議員会となっており,公益法人のパフォーマンスに対して社員総会/評議員会との関連性を検証することが妥当である。2013年から2017年における25,370公益法人×年度データを用い検証を行った結果,公益法人の社員総会/評議員会のサイズは公益法人のパフォーマンスと関連を有していた。一方,社員総会/評議員会のサイズを所与とした場合,理事会のサイズは公益法人のパフォーマンスとの関連がみられなかった。本稿は,寄附者などの主要なモニタリング主体が欠如している環境において,社員総会/評議員会が有効なモニタリングメカニズムとなる証拠を提示することで,非営利組織の経営者,規制者に対して知見をもたらしている。
  • 北川 教央
    2021 年 2021 巻 22 号 p. 33-49
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/01
    ジャーナル フリー
     本稿では,マクロ経済の不確実性と経営者による損失回避行動との関係を明らかにする。経営者による損失回避行動が株式市場に動機づけられていることを前提とすると,マクロ経済の不確実性と経営者による損失回避行動との間には,正と負,両方の関係を予想することができる。そこで本稿では,平均的にどちらの関係が観察されるのかについて検証した。具体的には,マクロ経済の不確実性に関する代理変数として日経平均ボラティリティ・インデックスを利用し,経常利益と調整前利益(裁量的発生高を控除した経常利益)の度数分布の比較,および固定効果ロジット・モデルの推定による分析を実施した。その結果,マクロ経済の不確実性が高い状況であるほど,企業が損失回避行動をとる確率は低くなることが示された。
  • 組織内および組織間コントロールの二重構造の視点から
    大浦 啓輔
    2021 年 2021 巻 22 号 p. 51-66
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/01
    ジャーナル フリー
     本研究では,組織間コントロールがどのような要因によって規定されているか,その影響要因を特定するとともに,サプライヤーの境界連結者が認知する役割葛藤や役割曖昧性にどのような影響を与えるのかを検証する。サプライヤーの境界連結者は,バイヤーからの価格,品質,機能等の多様な要求に対応することが求められる一方で,自部門の会計責任を果たすべき存在として行動することも求められる。このようにサプライヤーの境界連結者は,組織内および組織間の重複的なマネジメント・コントロールの影響下に置かれることになる。それゆえ,サプライヤーの境界連結者が板挟みの状況に陥る可能性もあり,こうしたコントロールの二重構造が役割ストレスの原因となっているかどうかを検証する。
  • 尾関 規正
    2021 年 2021 巻 22 号 p. 67-85
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/01
    ジャーナル フリー
     本稿の目的は、不正会計の発覚に起因して修正再表示を行った企業において,その発覚後に生じる会計的裁量行動の変化を明らかにすることである。企業の会計的裁量行動を反映する異常会計発生高について,日本における不正会計に起因して修正再表示を行った企業と不正を開示していない企業の差に生じる開示前後の変化(difference-in-differences)を分析した。その結果,不正会計を開示した企業では,開示期とその翌期及び翌々期で異常会計発生高がマイナス方向へ有意に変化することを発見した。一定の会計的な影響をもつ不正会計の開示が,企業にとって過去の会計的裁量行動の反転をもたらす転機となり,その後も会計的裁量行動が抑制されることを意味する。不正会計が発覚した企業では,信頼を回復するために財務報告の品質改善をシグナリングする行動をとることが示唆される。
  • 若林 利明
    2021 年 2021 巻 22 号 p. 87-104
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/01
    ジャーナル フリー
     本稿は,ロボティック・プロセス・オートメーション(RPA)のようなITを利用した業務プロセス効率化の投資・支出は,どの程度の金額で,本部と事業部のいずれが投資意思決定権を有するべきであり,それに伴い業績評価はどうあるべきかを,事業リスクと組織成員のITリテラシーの観点から契約理論に依拠した数理モデルを用いて明らかにする。すなわち,個人属性,組織マネジメントおよび事業環境の視点からIT投資・支出について理論研究を行う。分析の結果,本稿は,RPA等の導入と業績評価システムを統合的に,かつ業務や事業特性に応じて考えるべきであること,本部の方が事業部よりもITリテラシーが低かったとしても,RPA等の導入の決定権を本部が留保した方が良いケースが存在し,この傾向は事業リスクが高いほど高まることなどを示した。
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