会計プログレス
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2013 巻, 14 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • 新井 康平, 福嶋 誠宣
    2013 年 2013 巻 14 号 p. 1-13
    発行日: 2013年
    公開日: 2021/09/01
    ジャーナル フリー
     本論文では,CVP分析に代表されるコスト・ビヘイビアの分析モデルについて,利益予測の会計的技法として使用した場合の有用性を検討する。この目的のため,(1)コストを固定費と変動費に分解する基本的な「CVPモデル」,(2)コストおよび売上高の当期と前期の差分に基づいて分析する「差分モデル」,(3)コストの下方硬直性を考慮する「非対称モデル」という3 つの分析モデルについて経験的に検証を行った。その結果,「CVPモデル」に比べて,「差分モデル」が精度の高い利益予測を,また,「非対称モデル」が不偏性の高い利益予測を行うことが明らかとなった。
  • 真田 正次
    2013 年 2013 巻 14 号 p. 14-25
    発行日: 2013年
    公開日: 2021/09/01
    ジャーナル フリー
     本稿は,原則主義とIFRSの普及との関係を正統性の観点からとらえるとともに,それを言説,すなわち書かれたもの,語られたものといった言語表現の総体としてとらえ,言説としての原則主義の意味を明確化するとともに,IFRSの採用のグローバルな拡大の中でそれがどのような機能を担っているのか明らかにすることを目的としている。原則主義の意味を明確化する中で,原則主義と細則主義は概念的な二項対立の関係にはないこと,仮に原則主義会計基準と細則主義会計基準という理念型を両端とするスペクトラムの中で両者の概念的位相をとらえた場合,原則主義と細則主義は現実的には,程度の問題および/または相対的な位置関係の問題となること,が明らかとなった。にもかかわらず,原則主義という言説があたかもある種の実体を伴ったものとしてその優位性が主張されることを本稿はレトリックとしてとらえ,①原則主義は米国基準に対するIFRSの優位性を主張するためのレトリックである,および②原則主義はIFRS採用国による翻訳的適応の可能性を示唆するレトリックである,という2 つの仮説を導出し,現実の会計現象に関する新たな解釈の可能性を提示する。
  • 鈴木 智大
    2013 年 2013 巻 14 号 p. 26-39
    発行日: 2013年
    公開日: 2021/09/01
    ジャーナル フリー
     本研究では,積極的・保守的な業績予想を行う経営者の動機やインセンティブの一端を明らかにするとともに,どのような時に経営者は予想方針の見直しを行うのかについて検証を行った。分析結果をまとめると,経営者が報酬面で高株価の恩恵を受ける企業,財務困窮企業,株式市場のプレッシャーが強い企業,予想期に株主から資金調達を行う企業は積極的な予想を,債権者のプレッシャーが強い企業は保守的な予想を公表する傾向にあることが観察された。また経営者交代時に前任者が経常利益を計上している企業は予想の積極性の程度を弱めるのに対し,経常損失を計上している企業は積極的な予想を公表することが判明した。さらに前期に正の大きな予想誤差を計上した企業は予想の積極性の程度を弱めるのに対し,負の大きな予想誤差を計上した企業は積極的な予想を公表するという結果も観察された。
  • ミニプロフィットセンターに関する実験研究
    福島 一矩, 妹尾 剛好, 新井 康平
    2013 年 2013 巻 14 号 p. 40-53
    発行日: 2013年
    公開日: 2021/09/01
    ジャーナル フリー
     我が国の工場などで観察されるMPC(ミニプロフィットセンター)で用いられる利益は,計算上擬似的なものであることが多い。本研究では,なぜこのような擬似的な利益が用いられるのかについて,実験室実験による説明を試みる。本研究では,これまで想定されてきた擬似的な利益による属性フレーミング効果を支持する結果が確認されなかったが,理解可能な平易な言語情報を追加して提供することで情報の受け手の行動に影響を与える可能性が示唆された。
  • 電気機器メーカーA社の部門収益の計上方法を中心として
    渡辺 岳夫
    2013 年 2013 巻 14 号 p. 54-67
    発行日: 2013年
    公開日: 2021/09/01
    ジャーナル フリー
     AMSでは,組織構造的にはコストセンターである組織単位に対して,収益を管理会計上設定することで利益責任を持たせ,それに対する意識づけを高めようとしている。この点が,AMSにおける会計上の最大の特徴であるといってよい。しかしながら,収益計上処理の具体的な内容や,その処理方法がもたらす様々な効果については,必ずしも十分に明らかにされてこなかった。そこで本稿では,電気機器メーカーA社のAMS実践を取り上げて,製造,営業,および技術の各部門における収益の計上方法の具体的な内容を明らかにした。また同時に,それらの方法が,いかなる行動的効果を目指し,いかなる基本原理のもとに形成されてきたのかについても考察した結果,A社では,収益計上方法のデザインにあたって,努力に見合った適切で公平な収益配分を基本原理としつつも,部門間インタラクションの生起など,組織成員に対する一定の行動的効果を意図していたことが分かった。
  • 2000年代後半におけるFASBの規制環境・基準化戦略・組織構造
    小形 健介
    2013 年 2013 巻 14 号 p. 68-81
    発行日: 2013年
    公開日: 2021/09/01
    ジャーナル フリー
     本稿は,政治的パワーの観点から基準設定機関の行動原理の解明を試みるものである。そのために,本稿では,分析視角として,基準設定機関は中長期的に,基準設定環境を認識すると,基準設定戦略を策定し,その遂行のために組織構造を変化させ,基準開発を行う,との前提にもとづいた行動モデルを提示し,社会ネットワーク分析を使った組織構造分析を通じて,2000年代後半におけるFASBの基準開発活動を対象に,かかるモデルの妥当性を検証している。かかる分析では,自己の存続にとって危機的な状況下にあったFASBが,投資家との同盟関係の構築を図るために,規制機関と投資家を中心的アクターに位置づけるネットワークを形成し,新規的で投資家指向性の強い会計処理だけを認める基準の開発を積極的に行った,ことが明らかになっている。こうした行動は,本稿で提示したモデルのうち,「向かい風型規制行動」に相当し,当該モデルによってFASBの行動が概ね説明されることを確認した。
  • 姚 小佳
    2013 年 2013 巻 14 号 p. 82-95
    発行日: 2013年
    公開日: 2021/09/01
    ジャーナル フリー
     本稿は,収益認識プロジェクトで提案された公正価値モデルの生物資産・農産物への適用を試み,生物資産・農産物の収益認識における公正価値モデルの適用の意義を検討しようとするものである。まず,IASBとFASBが提案した公正価値モデルの特徴を明らかにする。次に,IAS41号における生物資産・農産物の認識・測定について説明し,公正価値測定の規定を明確にする。最後に,公正価値モデルに基づいて生物資産・農産物の収益認識がどのように行われるかを検討したうえで,生物資産・農産物の収益認識に公正価値モデルを適用することの意義を闡明化したい。
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