会計プログレス
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2018 巻, 19 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • 機能的固定仮説への反証
    竹原 均
    2018 年 2018 巻 19 号 p. 1-16
    発行日: 2018年
    公開日: 2021/09/01
    ジャーナル フリー
     合理的期待仮説の検証においては,ベンチマークとするアセットプライシングモデルを固定しなければならない。このため会計発生高が株価形成に合理的に反映されているのか,それともミスプライシングかの検定は,前提としたアセットプライシングモデルに依存する。本研究では複数のベンチマークプライシングモデルの下で会計発生高アノマリーについて再検証する。実証結果からは機能的固定仮説は支持されず,会計発生高は合理的にプライシングされている可能性があることが示唆された。
  • 山矢 和輝, 生方 裕一, 岡田 幸彦
    2018 年 2018 巻 19 号 p. 17-32
    発行日: 2018年
    公開日: 2021/09/01
    ジャーナル フリー
     サービス産業は,わが国GDPの約7 割を占めており,生産性と収益性の向上が重要な課題とされる。そして意思決定支援機能を高めると,サービス企業の競争優位性が高まる可能性が実証的に示されている。そこで本研究は,会計情報システムを活用するための組織能力としてのダイナミックAISケイパビリティが,意思決定のための会計情報提供プロセスの質及び組織業績に与える影響を明らかにすることを目的とする。わが国サービス企業に対する郵送質問票調査に基づく共分散構造分析の結果,ダイナミックAISケイパビリティを構成する3 要素である「システムの柔軟性」,「BIシステムの活用」,「会計担当者のIT能力」が高いことは会計情報提供プロセスの質の向上に貢献し,会計情報システム及びERPの効果が高まり,組織業績が向上する因果メカニズムが実証的に示された。
  • 四半期データによる経験的検証
    新井 康平, 廣瀬 喜貴, 牧野 功樹
    2018 年 2018 巻 19 号 p. 33-47
    発行日: 2018年
    公開日: 2021/09/01
    ジャーナル フリー
     本研究は,不確実性のために売上高の変動が大きくなり,その分散が拡大する状況では,一般的な理解とは異なり,むしろ企業は固定費化をすすめるという先行研究を精緻化し,拡張している。先行研究では,年度単位の売上高の分散と固定費化を検証していたが,これは売上高の分散の大きさを不確実性の代理変数として捉えていた。そこで本論文では,売上高の分散の内訳に着目し,季節変動のように企業にとって予測可能な分散とそうではない分散が,固定費化に異なった影響を与えるという仮説をたて,四半期データによって検証した。状態空間モデルを用いて分散成分を分解した結果,売上原価については季節変動が固定費化に影響しないこと,販管費については季節変動が固定費化をすすめること,予測不可能な変動は売上原価と販管費の双方の固定費化をすすめることが明らかとなった。
  • 根建 晶寛
    2018 年 2018 巻 19 号 p. 48-63
    発行日: 2018年
    公開日: 2021/09/01
    ジャーナル フリー
     2010年6 月30日,わが国における企業会計基準委員会が企業会計基準第25号を公表した。同会計基準は上場企業に対して連結包括利益計算書に包括利益を表示することを要請した。本稿では,分配可能額とその他の包括利益の関係性が企業の配当変化額にどのような影響を与えるか検証した。その他の包括利益が正の場合でも負の場合においても,分配可能額が高いときに,同利益が配当変化額に強く影響を与えている可能性を示した。
  • 石川 徹
    2018 年 2018 巻 19 号 p. 64-79
    発行日: 2018年
    公開日: 2021/09/01
    ジャーナル フリー
     本稿は,フェア・ディスクロージャー・ルール(FDルール)の導入が企業の投資効率性に与える影響を分析した。近年,会計開示制度が企業の投資意思決定といったリアルな意思決定に与える影響が注目されている。そこで本稿では,FDルールに着目して,導入されたときの経営者の開示方針,そして企業の投資効率性に与える影響を分析した。その結果,FDルールによる経営者の開示方針の変化によって,企業の投資効率性に与える影響が異なることが明らかになった。
  • 佐藤 恵
    2018 年 2018 巻 19 号 p. 80-95
    発行日: 2018年
    公開日: 2021/09/01
    ジャーナル フリー
     使用権モデルの開発過程では,リースを「使用権の取得」と看做す定義が所与とされてきた。ASC842で基準化されたオペレーティング・リースに係る使用権資産の逓増償却は,当該定義と矛盾する処理といわれる。本稿は,IFRS16が当該償却に関して指摘した「弾力性の取得」というもう一つのリースの捉え方の存在を仮説として検証すべく,逓増償却の立論の変遷を辿り,その理論的説明の可能性を探った。本稿は,リースを「借手が残余価値相当額を非拘束化して弾力性を取得する取引」と捉えるならば,弾力性の対価たる「残余価値の資本コスト」の認識パターンによって逓増償却を説明できると結論した。そして当該説明が年金法概念と整合し,年金法の適用を正当化する根拠たり得ると論及した。
  • 上場企業の内部データに基づく検証
    中野 貴之
    2018 年 2018 巻 19 号 p. 96-112
    発行日: 2018年
    公開日: 2021/09/01
    ジャーナル フリー
     本論文は,セグメント財務報告における経営者の裁量行動について実証した。企業の内部データにより擬似セグメントを作成し,外部報告用セグメントと突き合わせた。その結果,まずマネジメント・アプローチ(MA)導入前,日本企業の経営者は,現在価値が大きく非競争的な事業,ないしは,利益率が低く現在価値が小さい事業の業績をセグメント別に報告しない傾向が強いという,プロプライエタリー・コスト(PC)仮説およびエージェンシー・コスト(AC)仮説に整合する証拠を得た。次にMA導入後の状況について調べたところ,擬似セグメントが報告される割合が有意に上昇していることを確認した。ただし,すべての事業が平等に報告されるようになったわけではなく,セグメント報告に伴うPCないしはACが大きい事業については依然としてセグメント別に報告されない傾向が強く,当該傾向が緩和されたことを示唆する証拠はほとんど得られなかった。むしろ,MA導入後,当該傾向が促進されたことを示唆する証拠が一部見出された。本研究の貢献は,日本の上場企業の内部データおよび公表データを併用し,MA導入前におけるセグメントの区分に対する経営者の裁量行動,および,当該行動に対するMA導入の効果と課題について最初の証拠を提示した点にある。
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