会計プログレス
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2011 巻, 12 号
選択された号の論文の3件中1~3を表示しています
  • 阪 智香, 大鹿 智基
    2011 年 2011 巻 12 号 p. 1-12
    発行日: 2011年
    公開日: 2021/09/01
    ジャーナル フリー
     気候変動問題は国際的な最重要課題として認識されており,京都議定書の目標を達成するためにも,温室効果ガスの削減が急務となっている。温室効果ガス削減のための各種対策は,企業に投資や費用を課し,短期的な業績を悪化させるが,一方で,排出削減やその情報開示を積極的に進める企業は将来の負担を回避できる。そこで,本研究では,売上高一単位あたりのCO2排出量に着目し,企業のCO2排出量およびCO2関連情報開示と株式時価総額の関係,さらにCO2排出量の変化と株価リターンの関係を実証的に検討した。
     分析の結果,CO2排出量が株式時価総額に対して有意な負の影響を有すること,CDPを通じた企業のCO2関連情報開示によってその負の影響が緩和されることが示された。さらに,CO2排出量が増加(減少)した企業の株価リターンが低い(高い)ことを確認した。本研究の分析結果は,企業のCO2排出効率情報とCO2関連の情報開示が投資家の意思決定に利用されていることを証拠づけており,より迅速かつ網羅的な情報開示の必要性を示唆している。
  • 中村 英敏
    2011 年 2011 巻 12 号 p. 13-27
    発行日: 2011年
    公開日: 2021/09/01
    ジャーナル フリー
     本稿の目的は,金融負債の公正価値測定の問題を解決するための一つの視点を提起することである。金融負債を公正価値で測定すると,信用リスクが高まった場合に直観に反する評価益が計上されることが問題となる。しかし,公正価値測定を支持する見解からは,公正価値で測定しなければ,株主が有する請求権の価値の減少が過大に示されるということが問題とされる。このような問題に対しては,資産の測定値と負債の公正価値とのマッチングが重要になると考えられる。
     そして,マッチング原則に照らし合わせると,公正価値で測定される資産のみから弁済される金融負債は,公正価値で測定すべきということになる。また,弁済にそのような限定のない金融負債については,公正価値ではなく信用リスクの変化を反映しない測定値を適用し,信用リスクの変化を財務諸表で示すのではなく,信用リスクの変化による影響について財務諸表利用者の評価に委ねるべきである。
  • 矢澤 憲一
    2011 年 2011 巻 12 号 p. 28-44
    発行日: 2011年
    公開日: 2021/09/01
    ジャーナル フリー
     本稿は,コーポレート・ガバナンス、監査報酬と利益管理の関連性を検証している。分析の結果は次のとおりである。第一に,ガバナンスの独立性と監査報酬は正の関連性がある。第二に,リスクとガバナンスの交差項は監査報酬と有意な相関を示さなかった。第三に,投資家から経営者への圧力が強いと考えられる企業ほど,ガバナンスの独立性と監査報酬が高い傾向がある。第四に,ガバナンスの独立性と監査報酬は,目標利益達成行動と有意な負の相関が発見された。第五に,ガバナンスの独立性と監査報酬がともに高い場合に目標利益達成行動との負の関連性はみられなかった。追加分析からは,第一に,ガバナンスの独立性の水準と監査報酬が正の関連性があること,第二に,所有構造の違いはガバナンス構造および監査報酬と関連性があることを示唆させる証拠が発見された。以上の結果は,わが国でも外国人投資家や機関投資家を背景としてガバナンスの独立性が強化されているとともに,独立性の高いガバナンスはそのツールとして会計士監査を用いていることを示唆させる。
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