会計プログレス
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2022 巻, 23 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • 福嶋 誠宣, 加藤 大智, 濵村 純平
    2022 年 2022 巻 23 号 p. 1-14
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/01
    ジャーナル フリー
     管理会計や原価計算の教科書では,高い営業レバレッジ(すなわち,固定費が多いコスト構造)を採用すると,利益変動が大きくなるという意味で企業リスクが高まると教示される。こうした教示と整合的に,需要の不確実性が高い状況では,相対的に固定費が少なく変動費が多いコスト構造が選好されるという考え方が従来から存在する。しかし,近年の実証研究は,需要の不確実性が高いほど相対的に固定費が多く変動費が少ないコスト構造が選択されると主張している。このように,需要の不確実性がコスト構造に与える影響については,相反する2 つの考え方が存在する。そこで本論文では,経営者によって予測される需要変動に着目し,コスト構造との関連性を経験的に検証した。その結果,経営者によって予測される需要の変動性が高いほど変動的なコスト構造が採用され,需要変動の予測可能性が低いほど硬直的なコスト構造が採用されることが明らかになった。
  • 支払手段の視点からの雑所得または譲渡所得にすべきかの理論分析
    野坂 和夫, 松本 実, 福田 正樹
    2022 年 2022 巻 23 号 p. 15-30
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/01
    ジャーナル フリー
     暗号資産に関する所得区分のわが国の取扱いは,国税庁によると暗号資産を支払手段と据えるため原則として雑所得に区分されている。しかし,暗号資産の種類及び取引は多種多様であるため,多種多様な暗号資産の特徴に応じて所得税法上の適正な所得区分を該当させる必要がある。以上から,本論文では,暗号資産をその特徴ごとに体系的に分類したうえで,暗号資産それぞれの所得税法上の適正な所得区分を探究して明らかにすることを目的とする。  本論文の理論分析で得られた結論は,支払手段に分類される暗号資産の売却等による利益は雑所得に区分され,支払手段に分類されない暗号資産の売却等による利益は譲渡所得に区分されるということである。
  • 向 真央, 乙政 正太
    2022 年 2022 巻 23 号 p. 31-47
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/01
    ジャーナル フリー
     本稿では,社債市場の反応を日次ベースの社債価格の変化で測定し,決算発表に対する社債市場の反応について調査する。分析の結果,以下の2 点が明らかにされた。第1 に,社債市場はバッドニュースに対してのみ反応しており,その反応はグッドニュースに対する反応よりも大きいことが示された。また,社債市場は決算発表前の期間からバッドニュースを価格に織り込み始めていることが明らかとなった。これらの証拠は社債市場における利益情報の有用性を示している。第2 に,経営者予想利益の正確度が低い企業で,バッドニュースに対する社債市場の反応がより大きくなることが示された。これは,社債投資家が利益情報を基に投資意思決定を行う際の1 つの判断材料として,経営者予想利益の正確度を活用していることを示唆する。
  • 有価証券報告書における記述情報を用いて
    金 鉉玉, 矢澤 憲一, 伊藤 健顕
    2022 年 2022 巻 23 号 p. 49-67
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/01
    ジャーナル フリー
     本稿では有価証券報告書におけるMD&A・事業等のリスク・対処すべき課題を対象とし,経営者交代が記述情報の変化に与える影響を実証的に分析した。その結果,経営者交代によって記述情報が変化することが明らかになった。具体的に,経営者交代によって記述情報のスティッキネス(過年度の記述情報の再利用度合い)が低下するとともにその可読性が向上すること,さらに記述情報のトーンがポジティブになることが,本稿の分析から示された。このような変化は,有価証券報告書の提出まで十分な時間があり,新任の経営者がその作成手続に実質的な影響を及ぼすことが可能であると考えられる,交代後第2 期目に提出される記述情報において顕著に観察された。さらに,経営者交代による記述情報の変化は新任経営者の属性や記述情報の記載されるセクションによって異なることも明らかにされた。このような本稿の発見は,経営者が有価証券報告書における記述情報を通じて投資家とコミュニケーションを行っていることの証拠といえる。
  • 北浦 貴士
    2022 年 2022 巻 23 号 p. 69-83
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/01
    ジャーナル フリー
     本稿は,1930年代前半に日本興業銀行(以下,興銀とよぶ)から役員を派遣された企業(以下,派遣先企業とよぶ)において,減価償却がどのように変化したのかを明らかにしている。新聞・雑誌から,興銀は鉄道会社・電力会社などの非財閥企業14社に対して,役員を派遣したことが確認できる。派遣先企業では,興銀の役員派遣を契機として, (1)継続的な減価償却の開始,(2)減価償却額の増加と利益償却率及び総資産償却率の上昇,(3)派遣1 期後における多額の減価償却の計上,(4)償却対象の拡大が見られた。この1930年代前半の派遣先企業における減価償却の変化は,(1)債権者の存在による減価償却の促進によるものであり,(2)企業の減価償却に対する認識が変化していったことを意味している。
  • 原口 健太郎, 丹波 靖博
    2022 年 2022 巻 23 号 p. 85-102
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/01
    ジャーナル フリー
     本稿では,わが国の地方公共団体に導入された統一的な基準に基づく公会計財務諸表が有する増分情報と地方債スプレッドとの関連性分析を行った。OLS分析の結果,負債に関する増分情報(退職手当引当金等)は地方債スプレッドと有意な関連性を有することが明らかになった。この結果は,公会計財務諸表の地方債市場に対する意思決定有用性の存在可能性を示唆するもので,公会計導入の意義の一端の解明に貢献するものである。
  • 中小企業を対象とした疑似実験
    尻無濱 芳崇, 地多 佑介, 岡田 幸彦
    2022 年 2022 巻 23 号 p. 103-117
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/01
    ジャーナル フリー
     本研究では,中小企業の業績管理会計実践度と利益率の水準・利益率の統制の関係を分析した。分析の結果,中小企業において業績管理会計に取り組むことが高い利益率の達成に結び付いていることを示唆する傾向は確認できず,統計的に有意な結果は得られなかった。また,中小企業が業績管理会計に取り組むことで利益率が統制される傾向も統計的に有意な差は確認できなかった。追加的な層別分析の結果は,組織規模の違いにより,業績管理会計の実践度と利益率の関係が変わることを示唆している。
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