会計プログレス
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2014 巻, 15 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
  • 伊藤 和憲, 関谷 浩行, 櫻井 通晴
    2014 年 2014 巻 15 号 p. 1-13
    発行日: 2014年
    公開日: 2021/09/01
    ジャーナル フリー
     本研究の目的は,コーポレート・レピュテーションが財務業績に及ぼす影響,および財務業績に影響するメカニズムを実証することにある。具体的には, 3 つの仮説を検証する。仮説1 は,コーポレート・レピュテーションの構成要素は,組織価値,社会価値,顧客価値,経済価値からなる。仮説2 は,組織価値は社会価値に,社会価値は顧客価値に,顧客価値は経済価値に影響を及ぼす。仮説3 は,コーポレート・レピュテーションを高めることが財務業績の向上に有効である。第1 の仮説に関しては,探索的に因子分析を行った結果, 5 つの因子が発見できた。第2 の仮説は,共分散構造分析を行った結果,検証された。第3 の仮説は, 2 つのグループ間の平均値に有意な差がないという帰無仮説に対してt検定を行った結果,帰無仮説を棄却することができなかった。
  • 非営利組織での管理会計の有効性評価
    荒井 耕, 尻無濱 芳崇, 岡田 幸彦
    2014 年 2014 巻 15 号 p. 14-25
    発行日: 2014年
    公開日: 2021/09/01
    ジャーナル フリー
     管理会計実践度を異にする各医療法人群の財務業績を分析することにより,医療界での責任センター別損益業績管理の効果を明らかにし,その活用の妥当性を検証した。管理会計実践度が高い方が,医業利益率の平均値は高く,そのばらつきも小さい傾向が見られた。また分散分析及び多重比較の結果,管理会計実践度と医業利益率には有意な関係性が確認された。さらに重回帰分析により,採算性に影響を与えると考えられる他要因の影響を統制しつつ分析した結果,管理会計の実践は医業利益率を高めている可能性が高いことが明らかになった。
  • 回帰分析による固定費推定の問題
    福嶋 誠宣, 新井 康平, 松尾 貴巳
    2014 年 2014 巻 15 号 p. 26-37
    発行日: 2014年
    公開日: 2021/09/01
    ジャーナル フリー
     CVP分析では,組織の活動量との関連という基準によってコストを固定費と変動費に分解する分析モデルが様式化された知識となっている。しかし,このコストの分解に回帰分析を用いると,負の固定費といった実態からかけ離れた異常値が推定される場合があるという欠点が指摘されてきた。その要因を探求するため,我々は実際の工場から提供を受けた財務データを用いて経験的な検証を行った。その結果,利益と関連した自由裁量費が,固定費の過小推定に影響していることが明らかとなった。
  • 佐藤 幹
    2014 年 2014 巻 15 号 p. 38-48
    発行日: 2014年
    公開日: 2021/09/01
    ジャーナル フリー
     本稿の目的は,日本の地方自治体の運営の改善のために,地方自治体予算をマネジメント・コントロール・システム化するための課題を明らかにし,地方自治体の幹部職員等へのインタビューなどの結果を踏まえて,その解決の糸口を探索しようとするものである。
     探索にあたって,諸外国の地方自治体では予算が議会議決予算と経営予算の2 つに区別されるという点に着目するとともに,経営予算の1 つでもある業績予算に焦点をあて,インタビュー結果を分析した。その結果,業績予算のように予算編成方式として経営予算の考え方を取り入れるのではなく,内部報告会計の観点から議会議決予算を経営予算として作り直して活用すべきではないかということを示唆するものである。
  • 二村 雅子, 野口 晃弘
    2014 年 2014 巻 15 号 p. 49-58
    発行日: 2014年
    公開日: 2021/09/01
    ジャーナル フリー
     本稿の目的は,かつて,単体の財務諸表を念頭に議論された発行持分説と主体持分説を,連結レベルで論じることにある。経済的単一体説を前提とすれば,連結財務諸表における支配持分と非支配持分の関係は,単体の財務諸表における普通株式と優先株式の関係と同様に捉えることができる。本稿では,両者の会計処理を整合的に論じるという発想が,株式種類別経理についても適用可能なことを明らかにする。連結上の会計処理に発行持分説を適用するだけではなく,連結貸借対照表における表示にもそれを反映させるのであれば,非支配持分についても支配持分と同様に払込資本と留保利益を区分して表示することが必要になる。
  • イトーヨーカ堂における事例を通じて
    前田 陽
    2014 年 2014 巻 15 号 p. 59-73
    発行日: 2014年
    公開日: 2021/09/01
    ジャーナル フリー
     本研究は資本予算のマネジメントプロセスの観点から,イトーヨーカ堂の出店投資プロセスを考察した。本研究では同社の稟議プロセスでは資本の懐妊期間中,従業員の仮説検証により出店計画の利益目標の実現可能性を高める微調整がなされていること。管理会計システムにより現場の仮説検証が促進され,現場の仮説検証が新店全体の利益目標へと統合されていることを明らかにした。本研究の意義は,資本の懐妊期間中に微調整がなされる仮説検証型の出店投資プロセスを示したことである。
  • 髙須 悠介
    2014 年 2014 巻 15 号 p. 74-86
    発行日: 2014年
    公開日: 2021/09/01
    ジャーナル フリー
     本稿の目的は,期待損失の増加と減少に対する経営者の貸倒引当金計上行動に非対称性が見られるか否かについて検討することにある。その分析から以下の点を発見している。第1 に,期待損失の増加に対しては貸倒引当金を引き当て,期待損失の減少に対しては貸倒引当金の取り崩しを限定的に留める計上行動の非対称性が確認された。第2 に,貸倒引当金のなかでも裁量性が高いと考えられる個別貸倒引当金に関して,不良債権の増加と減少に対する計上行動の非対称性が顕著に現れることが確認された。本稿の結果は,近年関心が高まっている期待損失に対する貸倒引当金計上行動の経済的帰結を分析する上での示唆を有していると考えられる。
  • 古賀 裕也
    2014 年 2014 巻 15 号 p. 87-100
    発行日: 2014年
    公開日: 2021/09/01
    ジャーナル フリー
     本稿は,リース会計基準の変更によって投資家による企業評価に影響があったか否かを検討する。分析の結果,企業がリース会計基準変更後にファイナンス・リースを減少し,オペレーティング・リースを増加させた場合,そのようなオンバランス化回避行動は株主価値評価に負の影響を与えている可能性があることわかった。さらに,当該行動前の負債比率が高い企業においては,そうした影響が顕著であることを示している。本稿は会計基準の変更に伴う企業行動の変化が負の経済的帰結を生じさせる可能性があることを示唆している。
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