要旨:現在,トルコのボスポラス海峡に沈埋工法による鉄道トンネルを施工中である。ボスポラス海峡は,黒海から流入する淡水系の上層流とマルマラ海から逆流入する塩水系の下層流の二層流となっており,その流れは非常に変わりやすい。そこで本研究では,施工時の精度と安全性を確保するため,流況予報システムを開発した。本システムでは,流速,水位,気圧,風の常時観測値と,気象サービスから得られる風,気圧の予報値から,将来の流況をリアルタイムで予測する。まず,風,気圧の予報値から海峡両端の水位を予測し,これに二層流界面の位置による補正を加えて流況を予測する。予測手法の開発においては結果の速報性を重視し,高度な数値計算モデルではなく,入力(風や気圧)と出力(水位や流速)の関係を現地観測と三次元数値シミュレーションの結果をもとにモデル化する回帰モデルを採用した。本手法による予測は現地の流況を精度よく再現しており,現在,実際の施工で利用中である。