沿岸域学会誌
Online ISSN : 2436-9837
Print ISSN : 1349-6123
27 巻, 3 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
論文
  • 小川 雅人, 坪井 塑太郎, 畔柳 昭雄
    2014 年27 巻3 号 p. 29-40
    発行日: 2014/12/31
    公開日: 2023/04/17
    ジャーナル フリー

    要旨:津波避難ビルは緊急的・一時的な避難施設として,その有効性が期待されている。特に,東日本大震災以降は全国の沿岸自治体において津波避難ビル指定の取組みが急増している。しかし,津波避難ビルのほとんどは既存施設の指定によるものであるため,現状における有効性については懸念がある。本研究は,先進的な指定取組みを行っている静岡県沼津市を対象に立地分析を行い,津波避難ビルの充足状況や施設現況との関係を視覚的・定量的に捉えた。その結果,津波避難ビルの集積が必ずしも地域的な充足には結びついていないことが明らかになった。また,施設用途によって収容能力や立地的特徴等に差異が見られ,各施設のカバーエリアの差異に起因していることが明らかになった。

  • 東 和之, 大田 直友, 河井 崇, 上月 康則
    2014 年27 巻3 号 p. 41-50
    発行日: 2014/06/30
    公開日: 2023/04/17
    ジャーナル フリー

    要旨:徳島市沖洲地区にある人工干潟は,埋め立てられる既存干潟の代償措置として造成されたが,既存干潟の貝・カニ類相を再現出来ていなかった.貝・カニ類個体数密度(特に表在性)が極端に少なく,決定的な違いはホソウミニナBatillaria cumingiの有無であった.筆者らは,「ホソウミニナが人工干潟で生息できないのは餌不足のためである」という仮説を検証するために,ホソウミニナの野外飼育実験を行った.しかし,餌量およびホソウミニナ成長量は干潟間で有意差が確認されず,仮説は却下された.ところが飼育実験中に,人工干潟でのみホソウミニナの死亡や過度の消失がみられ,野外実験によって底質表面の物体が底質へ沈み込んでいること(=「沈み込み」現象)が確認された.沈み込み現象が,人工干潟におけるホソウミニナの生息を妨げている可能性が示された.

  • 武田 淳, 及川 敬貴
    2014 年27 巻3 号 p. 51-62
    発行日: 2014/12/31
    公開日: 2023/04/17
    ジャーナル フリー

    要旨:本稿は、コスタリカにおいて見られる「環境による統治」を国家と地域の両側面から分析することを目的とする。そのアプローチとして、Foucaultの統治性概念を応用したエコ統治性論に基づき、国家レベルの資源管理体制が構築されるプロセスを整理すると共に、それに対する地域の反応を明らかにする。事例として取り上げるオスティオナル村は、ヒメウミガメの産卵地として知られ、住民と保護区による協働資源管理が行われてきた。この管理体制が構築される過程を、地域の視点から明らかにする作業を通じて、地域社会を「上からの統治性」の客体として捉えていた従来のエコ統治性論を再考する。

  • 鈴木 武
    2014 年27 巻3 号 p. 63-73
    発行日: 2014/12/31
    公開日: 2023/04/17
    ジャーナル フリー

    要旨:IPCC第5次評価報告書に示された2050年と2100年の世界平均の気温上昇量と海面上昇量を使い,それに人口変化と海岸防護施設の天端を高める適応を加味し,高潮浸水による被害リスクの全国の空間分布と2100年までの50年間隔の変化を推計した.その結果,三大湾,瀬戸内海および有明・八代海沿岸で被害リスクが大きくなること,人口変化に比例して被害リスクが変化すること,想定した適応では2050年までは被害リスクが減少するがその後の50年間で増加することが分かった.

  • 鈴木 武, 江口 信也, 木俣 陽一, 田谷 全康, 山崎 智弘, 高橋 栄悦, 古賀 大三郎
    2014 年27 巻3 号 p. 75-85
    発行日: 2014/12/31
    公開日: 2023/04/17
    ジャーナル フリー

    要旨:除染廃棄物や除去土壌の貯蔵・処分には様々な陸上処分技術の適用が検討されてきた.海面処分は海域拡散や地震津波被害等が懸念される一方で大規模処分や公衆隔離等の優れた点を持つが,放射性廃棄物等への適用に関する研究はほとんどない.そのため放射性廃棄物等を海面処分する技術の実用可能性の分析を行った.レベル2地震動への耐性を考慮した200万m3規模の管理型海面処分場を試設計し,整備費用と放射線曝露リスクを見積もり,陸上の検討事例と比較した.分析の結果,海面処分は必要な基準を満足できるとともに,比較した範囲では陸上と同等か優位の性能を持つことが分かった.

  • 斎藤 宏大, 多部田 茂, 中村 義治, 関根 幹男, 関 いずみ, 武藤 弘晃
    2014 年27 巻3 号 p. 87-95
    発行日: 2014/12/31
    公開日: 2023/04/17
    ジャーナル フリー

    要旨:地域における水産物販売の現状や6次産業化のような新たな施策を評価し、将来にわたって持続可能な販売のありかたを検討することを目的として、伊勢湾沿岸地域の水産物の販売ポテンシャルの評価を行った。具体的には各種統計データベースとGISを用いて、愛知県と三重県における人口分布や購買力、交通の利便性を考慮した販売ポテンシャルをモデル化し、現在水産物販売額の大半を占めている既存のスーパーマーケットのポテンシャルを評価して現状把握を行った。また、将来の人口減少や年齢構成の変化、魚の消費量の変化によりポテンシャルの変化を推定した。さらに、6次産業化の取り組みのうちの一つである直販所のポテンシャルを評価しその可能性について考察した。

  • 陳 放, 婁 小波, 川辺 みどり
    2014 年27 巻3 号 p. 97-106
    発行日: 2014/12/31
    公開日: 2023/04/17
    ジャーナル フリー

    要旨:1937年に制定された日本の漁船保険制度は漁船損害等補償法を根拠法として、漁船につき不慮の事故などによる損害や費用負担への補てんをスムーズに行えることを通じて、漁業経営の安定に資することを目的とされ、現在漁業共済制度とともに漁業経営のセーフティネットのもっとも重要制度的枠組の一つとして位置づけられている。本稿では、2011年の東日本大震災によって甚大な被害を受けた漁船への保険支払い実態を検証して、日本漁船保険制度が如何なる枠組みの下でどのように機能し、政策保険とし如何なる役割を果たしたかについて分析するとともに、どんな課題に直面しているかについて検証を行った。その結果、巨大な自然災害による事故に対して保険機能を十分に果たしてきたと評価できると同時に、既存の制度的枠組みの下では今後その役割は限定的とならざるを得ず、相互保険の機能を一層強化させることなどが必要であるとの結論を得た。

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