要旨:鉄道線路を横断するには踏切などの施設利用に限られるため,津波発生時には線路が避難の阻害要因となる恐れがある。南海トラフ地震津波避難対策特別強化地域を持つ12県下197市町村を対象に,津波避難時線路横断が必要な地区を抽出した結果,44市町93地区が該当した。加えて,線路横断を伴う津波避難について,線路を管理する鉄道事業者と,住民の避難計画を講ずる自治体双方の対策の現状を調査した。その結果,鉄道事業者の津波対策については,沿線住民向けの対策を講じている事業者はわずかであった。自治体においても,対策の必要性は認識しているものの,実際に対策を行っている自治体はほとんど見られなかった。以上の結果を踏まえ,線路横断を伴う津波避難の課題点などを考察した。
要旨:持続可能な水産物を消費者に積極的に購入してもらうためのアウトリーチ活動に求められる方策を考察した。地産野菜および旬な野菜に対する環境配慮的な購買行動調査で用いられた手法を援用し,2017年2月にインターネットを用いたアンケートを行った(N=3,000)。因子分析の結果,「社会規範評価」,「性能評価」,「有効性評価」,「実行可能性評価」の4つの因子が抽出された。共分散構造分析の結果,水産物に対する環境配慮的な購買行動モデルは,「社会規範評価」が基底変数となり,「性能評価」,「有効性評価」,「実行可能性評価」に影響を及ぼし,それらが媒介変数となり,「購入意欲」に影響を及ぼし,最終的に「購入実践」へつながる構造にあることが示された。水産物に対する環境配慮的な購買行動の促進には,「社会規範評価」をいかに高めるかが重要になると考えられた。