日本鉱物科学会年会講演要旨集
日本鉱物科学会 2010年年会
選択された号の論文の258件中151~200を表示しています
R3:地球外物質
  • 海田 博司, 小島 秀康, Goderis Steven
    セッションID: R3-01
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/06
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    2010年に第51次日本南極地域観測隊によって,南極大陸上のセール・ロンダーネ山地周辺において隕石探査がおこなわれた。この結果,鉄隕石1個,ユレイライト2個を含む635個の隕石を採集することに成功した。これらの隕石は,あすか09隕石と命名される予定である。
  • 富岡 尚敬, 丸山 誠史, 大西 市朗
    セッションID: R3-02
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/06
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    ヴィガラノ(CV3)隕石中に見いだされたCa, Al, Feに富む特異な球形の包有物(CAFI)中のCaAl2O4相の電子顕微鏡観察を行った。CaAl2O4相はCAFIのコアの主要鉱物であり、粒径が400ミクロン以下程度の化学的に均質な粒子である。EBSDによるCaAl2O4相の解析では、CaAl2O4系の相平衡実験で報告されている高圧相phase II(空間群P21/c)の菊池パターンを示した。TEM観察では、EBSDの結果とは異なり、得られたSAEDパターンは低圧相であるphase I(P21/n)でのみ指数付けが可能であった。CaAl2O4相は、原始太陽系星雲中でダストが加熱溶融してできたCa-Al-Fe-rich メルトから、グロッサイト、ヘルシナイトと共にphase Iとして結晶化し、その後の衝撃変成によって、大半がphase IIに相転移したものと考えられる。
  • 瀬戸 雄介, 藤 昇一, 坂本 直哉, 圦本 尚義
    セッションID: R3-03
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/06
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    炭素質コンドライトAcfer 094のマトリックスに存在する異常な酸素同位体組成を持つ物質COS試料について透過電子顕微鏡(TEM)による原子スケールの詳細な観察を行い、その生成条件を検討した。観察の結果、構成鉱物であるmagnetiteとpyrrhotiteは100nm程度のオーダーで虫食い状に入り組んだ組織を示していた。magnetiteとpyrrhotiteの界面は直線的ではなくスムースな曲線(面)であり、界面に非晶質相が存在せず直に接触している。構成結晶や界面の方向はランダムで結晶学的に意味のある方位関係は見られなかった。このような微細結晶が互いに入り組んだ構造は、単なる機械的な混合過程では説明が難しいため、どちらかが母相でもう一方の子相が化学的に侵食したか、あるいは両方の結晶が同時期に成長した共晶組織である可能性が高い。
  • 松本 徹, 土`山 明, 中村-メッセンジャー 圭子, Zolensky Michael, 中野 司, 上杉 健太郎
    セッションID: R3-04
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/06
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    太陽系始原物質中には有機物ナノグロビュールと呼ばれる数百nmの内部に空洞をもつ球形状有機物が見られる。この粒子の形成仮説として星間分子雲や原始太陽系円盤外縁部における氷粒子表面の光化学反応や母天体中での水質変成が考えられている。これらの仮説より、内部の空隙部分は流体で満たされている可能性があるが、破壊分析でその存在は確認されていない。流体の存在の有無を確かめるため、非破壊分析である放射光X線CTを用いて炭素質コンドライト中の有機物グロビュールの撮影を試みた。結果、隕石粒子のCT像にナノグロビュールと思われる粒子を多数確認した。撮影した一部の隕石はウルトラミクロトームにより、超薄切片に切り出し、TEM観察を行った。TEM像で確認できたナノグロビュールをCT像と比較し、CT像で確認した物体の幾つかは実際にナノグロビュールであることが分かった。またCT像でのナノグロビュールの姿について考察した。
  • 木村  眞, 山田 康一, 柴田 知美, 軽部 朋子, 高木 阿沙子, 野口 高明, 中嶋 大輔, Weisberg Michael
    セッションID: R3-05
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/06
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    炭素質コンドライトは、太陽系生成期の情報を保存する始原的な隕石であるが、その中のCHコンドライトはFe-Niメタルを多く含むこと、細粒のコンドルールが多いこと、などの特異な特徴を示す。本研究ではコンドルールの化学組成に基づいてCHコンドライト中のコンドルールの形成環境を議論する。研究試料としてはAsuka 881020、SaU 290隕石を用いた。またY-81020 (CO3.05), Sahara 97159 (EH3), Y-793408 (H3.2) 中のコンドルールと比較を行った。Pコンドルールの特徴は他のコンドライト中のものと共通の特徴を概ね示す。しかしながら、Na, Feの欠損は顕著である。このためこれらのコンドルールの前駆物質は他のコンドライト中のものより、より高温でかつ還元的環境下で形成された、と推定される。
  • 今栄 直也, Taylor Susan, 岩田 尚能
    セッションID: R3-06
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/06
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     コンドライトの化学グループとの関連に着目し、とけ残り鉱物を含む103個の微隕石をEPMAを用いて調べた。  とけ残り鉱物の判断には、組織・産状と化学組成の両方を用いた。主なとけ残り鉱物のかんらん石と低カルシウム輝石に着目し、個々の微隕石の化学組成について、コンドライトの化学グループと比較した。その結果、炭素質コンドライトと類似するのは53個、普通コンドライトと類似するのは31個、その他は19個であった。とけ残り低カルシウム輝石を含むのには、地球大気圏での溶融を免れた非溶融微隕石が圧倒的に多い。  非溶融微隕石のうち、低カルシウム輝石中に鉄ニッケル粒子を包有するポイキリティック組織を示すのが4個見つかった。いずれも約100 ミクロン径で球形をしており、CO3コンドライトのコンドリュールに類似する。また、衝撃溶融を受けたHコンドライトに類似する微隕石が1つ同定された。
  • 留岡 和重, 大西 市朗
    セッションID: R3-07
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/06
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    CV3隕石から発見した8つのコンドリュールと含水マトリックスからなるクラストを報告する。このクラストの発見は,この隕石母天体には,マトリックスがすべて含水層状ケイ酸塩に置き換えられるような大規模な水質変成が起こった領域があったことを示唆している。このクラストの存在は,この隕石のリム形成に関して我々が提案した次のことを支持している。個々のコンドリュール/リムに見られる水質変成は,ホスト隕石が固化する以前に母天体のホスト隕石があった所とは別の領域で起こった。水質変成を受けた個々のコンドリュール/リムは,母天体上で角礫岩化の際にできたクラストである。
  • 井上 美幸, 瀬戸 雄介, 留岡 和重, 平島 崇男, 下林 典正, 野口 直樹, 大井 修吾, 小林 記之
    セッションID: R3-08
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/06
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    CK隕石は炭素質コンドライトとしては例外的に強い熱・衝撃変成を受けている。CK隕石の鉱物学的特徴はその複雑な熱・衝撃履歴を反映していると考えられているが、詳細については明らかになっていない点が多い。本研究ではCK隕石の熱・衝撃履歴を解明することを目的に、強い熱変成を受けたLEW87009隕石の斜長石についてその鉱物学的特徴を調べた。LEW87009隕石中には大規模な衝撃溶融脈が存在し、その付近には斜長石ガラスが観察された。ガラス部分には、結晶部分に存在する割れ目が存在しないことなどから、斜長石ガラスは衝撃加熱により斜長石の一部が溶融・急冷して生じたと考えられる。LEW87009隕石はコンドリュールとマトリックスの組織的違いが認識できないほど熱変成が進行しているが、溶融脈付近の斜長石ガラスには熱変成による再結晶化が見られない。したがって、斜長石ガラスを形成した衝撃は熱変成が進行した後に起こり、その後、熱変成は起こらなかったと考えられる。
  • 三河内 岳, Zolensky Michael, Goodrich Cyrena, Hoffmann Viktor, 武田 弘
    セッションID: R3-09
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/06
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    小惑星2008TC3の落下から回収されたAlmahata Sitta隕石の鉱物学的研究の結果、この隕石が粗粒~細粒の異なった組織を持つユレイライト岩片から構成されていることが明らかになった。カンラン石、輝石の化学組成、離溶組織から、Almahata Sitta隕石の冷却速度は、0.2-5度/時間と推測され、母天体がまだ高温の際に衝撃により破壊され急冷されたと言うユレイライトの一般的な熱史と一致する結果が得られた。小惑星2008TC3は、元々あったユレイライト母天体が高温時に衝撃破壊を受け、その際に生じた異なった急冷の熱史を持つ小天体が再集積し、さらに天体表面上で角レキ化により、緩く結合したような部分を起源とすることが示唆される。
  • 山口 亮, 伊藤 元雄, Barrat Jean-Alix
    セッションID: R3-10
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/06
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    ダイオジェナイトは、HED隕石と呼ばれるグループの一つであり、小惑星ベスタの地殻起源とされる。その岩石学的成因には大きく二つあり、初期に存在したマグマ大洋の底部に沈積した集積岩であるというもの、また、複数の母マグマが存在し前に形成した地殻に貫入したというものである。本研究では、鉱物学的研究からダイオジェナイトの熱史を詳細に検討した。その結果、ダイオジェナイトの中に、最初の結晶化時に急冷されたものが見つかった。これは、ダイオジェナイトが深成岩であるという事実に反する。急冷されたダイオジェナイトは、地表地殻で結晶化したと考えられる。これは、ダイオジェナイトの岩体は初期に形成されたユークライト地殻に貫入したというモデルと調和的である。
  • 栗原 大地, 三河内 岳, 大西 市郎, 鈴木 俊明
    セッションID: R3-11
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/06
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    NWA1950は典型的なレールゾライト質シャーゴッタイトの一つであり、同グループの他の隕石と似た性質を持っているが、一般的なレールゾライト質シャーゴッタイトに含まれるカンラン石は薄片上でほぼ無色であるのに対して、NWA1950に含まれているカンラン石は茶色から黒色を呈している。カンラン石結晶内には方位のそろっている黒色の筋が存在しており、結晶内で色の濃い部分には多くの筋が集合しており、色の薄い部分にはそのような筋が少ない。透過型電子顕微鏡観察の結果、幅200-500 nmの筋が並行に走っている様子が観察された。筋の内部は数十 nm程度の微小な結晶の集合体となっており、その結晶学的性質は周囲のカンラン石結晶とは若干異なっていた。筋の内部には直径10-20 nmの鉄に富んだナノパーティクルが観察された。ナノパーティクルにはニッケルが含まれておらず、高速フーリエ変換像からヘマタイトであると考えられる。
  • 佐竹 渉, 三河内 岳, 宮本 正道
    セッションID: R3-12
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/06
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    シャーゴッタイトは、火星隕石最大のグループである。 本研究では、Enrichedな化学的特徴を持つシャーゴッタイトに注目し、これらの隕石において、親マグマと考えられる隕石のバルク組成を元に結晶化過程の考察を行った。 Enrichedな化学的特徴を持つシャーゴッタイト9個を試料として用いた。このなかで、バルク組成が親マグマと一致していると考えられる隕石のバルク組成を出発物質とし、MELTSを用いてシミュレーションを行い、結晶化過程を考察した。 この結果、今回用いた4種類の出発物質全てにおいて、1110~1140度の残液の組成が、バルク組成が親マグマと一致していると考えられる2つの隕石とよく一致した。また、これらの残液から取り除かれる輝石組成が1140度以下の際に、集積岩の特徴を持つ玄武岩質シャーゴッタイトの輝石組成と似た値を示すことも明らかになった。 これらの結果から、Enrichedなシャーゴッタイトは、一連のマグマの活動からできた可能性が考えられる。
  • 武田 弘, 山口 亮, 大竹 真紀子
    セッションID: R3-13
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/06
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    月高地の斜長岩地殻および小惑星4ベスタの地殻は、太陽系の初期に形成された物質が認められる。ベスタから来たと言われる分化した隕石中の輝石にはその形成と冷却の歴史をひも解く鍵を秘めている。45.4億年の形成年代を持つ集積岩ユークライトにはピジョン輝石から斜方輝石への転移のメカニズムを示す組織が保存されている。月高地の斜長岩の起源と進化について、最近「かぐや」によって明らかにされた事実と、アポロ月試料によって長年の間推定されていたモデル、近年発見された月起源隕石によってもたらされた事実には、一部に矛盾が見られる。オマーン砂漠で見つかった月裏からの月隕石グループはトリウムと鉄が低いことよりこの地域より来たとされている、マトリックスの中にはカンラン石の破片が多く、斜方輝石の破片は少ない。離溶したピジョン輝石は一粒見出された。HED隕石およびその角レキ岩中にはダイオジェナイト等斜方輝石が多くある。
  • 佐伯 和人, 荒井 朋子, 荒木 博志, 石原 吉明, 大竹 真紀子, 唐牛 譲, 小林 直樹, 杉原 孝充, 春山 純一, 本田 親寿
    セッションID: R3-14
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/06
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    日本の次期月着陸探査計画SELENE-2は、「かぐや(SELENE)」の後継計画として、2010年台半ばの打ち上げを目指して計画されている。SELENE-2の科学的成果を最大にする着陸候補地点を選ぶために、2010年3月に月着陸候補地点検討会議が発足した。検討会議では、月科学に関心のある国内の研究者の協力を得て、科学テーマと着陸候補地点を洗い出し、今日もっとも優先すべきサイエンスを実行するための、複数の着陸候補地とモデルミッションを作成した。講演では、現在の着陸候補地点とその選択理由、今後のさらなる調整の方針について紹介する。
  • 三浦 保範
    セッションID: R3-15
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/06
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    月面斜長石の主要成分は化学量論的な空隙があるが、この不足の主要成分は、破砕岩に多くなる軽元素と考えられる。アポロ玄武岩と破砕岩の斜長石のEPMA分析値の組成解析より、破砕岩はSi-O四面体組成欠陥が多くなり、海の玄武岩はCa量の多いSi-O四面体組成欠陥とCa量が超過しないSi-O四面体組成欠陥に分けられる。主要成分欠陥の多いのは炭素などが衝突性形成時に残存して月の形成時の情報を示す。月のサイズでは地球型ダイヤモンド炭素が生成できないが、深部に残存した炭素含有物から月震による衝撃により形成されまた表層部の衝突時の圧力でナノサイズのダイヤモンドが生成できると考えられる。月面には植物化石や大気衝撃性の球粒連結鉄酸化物はないが、炭素源(隕石母体、古期地球との巨大衝突時起源)があると、月にナノサイズの組識(ナノバクテリア状組織、炭素含有鉄酸化物)が形成されていると考えられる。
  • 三浦 保範
    セッションID: R3-16
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/06
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    微惑星起源の石質隕石の主要元素は、コア3成分、 マントル3成分とクラスト11成分からなり、1)隕鉄成分がEからC型に減少、鉄酸化物成分が逆に増加する集合体であり、2)衝突時に残存しやすい炭素・水成分は分子成分を生成し、C型石質隕石で急増し、Ca量が炭素の多い隕石に多くなる。数種の石質隕石の炭素含有微粒子のFE-ASEMデータから、南極隕石には球粒中に百ナノサイズの炭素含有Si-O構造内に存在し、タギッシュ(炭素質)隕石中の百ナノサイズの炭素含有粒子はFe, Mg, S量とは無関係で、微量のCa量に関係する。ハヤブサ探査機に探査したイトカワ小惑星には、隕石や人工物のASEM観察と比較して、普通石質隕石に残存すると同じ百ナノサイズの炭素含有Si-O構造が存在し、衝突時に形成される百ナノサイズ炭素含有微粒子が、小惑星形成時のものと、表層付着時のものとに組成と組織から分けられると考えられる。
  • 丸山 誠史, 富岡 尚敬
    セッションID: R3-P01
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/06
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    ヴィガラノ(CV3)隕石中にCa, Al, Feに富む特異な球形の包有物(Ca-Al-Fe-rich inclusion: CAFI)が見いだされた。CAFIは6.5 x 5.8 mmほどのほぼ球形の包有物でigneousな岩相を持つ。その半分以上の部分が、ほぼ端成分に近い組成を持つ粗粒のヘルシナイトで占められている。CAFIはグロッサイトやペロブスカイトといった、通常のCAIに含まれる鉱物も含んでいるが、メリライトやスピネルは、極めて少量しか含まれていない。CAFIの大きな特徴の一つは、コア部分に存在する粗粒のドミトリイワノバイト(phase II)であり、前駆物質の溶融物中で結晶化したCaAl2O4の低圧相(phase I)が、衝撃変成により形成されたと考えられる。CAFIの鉱物学的特性は、CB/CHコンドライトと、CAFIが密接な関係を持っている可能性を示唆している。
  • 福島 聡一郎, 中井 泉, 大石 昌弘
    セッションID: R3-P02
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/06
    会議録・要旨集 フリー
    地球・宇宙科学試料中に含まれる元素の2次元分布を調べる手段として、これまではEPMAによる分析が行われてきた。しかし微量元素に対する分析感度は低く、唯一放射光蛍光X線イメージングが高い感度を有していたが、微量重元素の分析は困難であった。今回の研究では高感度分析が可能であるLA-ICP-MSを応用し、隕石中に含まれる白金族や希土類元素といった宇宙地球科学的に重要な微量重元素の2次元イメージングを行った。その結果、石質隕石に含まれる白金族や希土類元素の分布を明らかにすることができた。LA-ICP-MSによる元素イメージングは、微量な重元素と軽元素の分布を得ることが可能であることから、宇宙・地球科学試料の強力な分析手段となることが期待される。
R4:変成岩及びマグマプロセス
  • Md Fazle Kabir, Akira Takasu
    セッションID: R4-01
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/06
    会議録・要旨集 フリー
    The Onodani area in the Besshi district, Sambagawa metamorphic belt, is located about 1 km west of the Sebadani area, and a western extension of the Seba eclogitic basic schists. The Onodani area consists mainly of basic, pelitic and siliceous schists. Eclogites within the Seba basic schists are usually found as lenticular bodies or layers ranging from centimeters to a few meters in thickness. These eclogites experienced three different metamorphic episodes during multiple burial and exhumation cycles.
  • 高須 晃, Kabir M.F., 櫻井 剛, 岡本 康亜, 平下 奈奈, 須藤 実名子
    セッションID: R4-02
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/06
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     別子地域三波川帯のエクロジャイト岩体の詳しい変成履歴の解析の結果,以下のような変成作用が識別できる.(1)高圧変成作用に先行する相対的に高温・低圧の変成作用(五良津東部岩体ではグラニュライト相,瀬場谷エクロジャイト質塩基性片岩では角閃岩相.両者は異なる変成イベントである可能性もある).(2)複数回のエクロジャイト変成作用(昇温期-エクロジャイト相ピーク-降温期)(両岩体ではそれぞれ2回のエクロジャイト相変成作用が識別できる).(3)藍閃石片岩相~緑れん石角閃岩相変成作用(五良津東部岩体ではエクロジャイト相からの変成圧力の低下に伴う緑れん石角閃岩相変成作用,瀬場谷エクロジャイト質塩基性片岩では藍閃石片岩相から緑れん石角閃岩相への昇温変成作用(いわゆる三波川変成作用).別子地域のエクロジャイトにはエクロジャイト相変成作用を中心に(1)-(3)の変成作用の一部が認められる.
  • 土谷 成輝, 平島 崇男
    セッションID: R4-03
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/06
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    三波川帯徳島県高越地域の藍閃石エクロジャイト(KT23)から三種類の組成累帯構造を示すザクロ石を見出した.タイプ1は細粒(直径約100μm)自形結晶で,Mn成分は釣鐘型組成累帯構造を示す.中心部にチリ状の包有物を多く含む.タイプ2は比較的粗粒(直径約1,000μm)自形結晶で,Mn成分は釣鐘型組成累帯構造を示す.Mnに富む中心部の包有物は主として石英であり,外縁部にのみオンファス輝石包有物が見られる.タイプ3は比較的粗粒(直径約1,000μm)他形結晶で,組成累帯構造はほとんど示さない.その組成はタイプ1及び2の外縁部とほぼ一致し,結晶全体にオンファス輝石包有物を含む.タイプ1と2は粒径が異なるにも関わらず組成累帯構造が相似型を示す.母岩は赤褐色層と濃緑色層の互層からなり,タイプ1は赤褐色層に,タイプ2と3は濃緑色層に存在する.上記のことから,藍閃石エクロジャイト(KT23)が累進変成作用を受ける過程で,比較的低温の時にタイプ1と2のザクロ石のMnに富む中心部が核形成し,エクロジャイト相の最盛期まで結晶成長が続いたが,タイプ3のザクロ石はエクロジャイト相の最盛期に核形成と結晶成長が起こったと考えられる.
  • 堤 之恭, 宮下 敦, 堀江 憲路, 板谷 徹丸, 白石 和行
    セッションID: R4-04
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/06
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    静岡県西部・天竜地域に分布する三波川帯の西部・東部両ユニットからそれぞれ砂質片岩を採取し,同一資料に対して白雲母K-Ar年代及び砕屑性ジルコンのU-Pb年代測定を行った.その結果は,西部ユニットの試料の白雲母K-Ar年代は70 Maを示した.ジルコン年代は、年代分布は93~96 Maで,それらの平均は94 Maを示す.一方で,東部ユニットの試料の白雲母K-Ar年代は55 Maを示し,砕屑性ジルコンの年代はいくつかのピークを持ち,最も若い年代は73 Maを示す.それぞれの年代値を考慮すると,西部ユニットが変成していた時点で,東部ユニットは堆積段階であったことが示される.これは,堆積―変成年代の異なる複数のユニットの存在を示すものと思われる.また,天竜地域に於いても付加年代が後期白亜紀である事が明らかになり、いわゆる「120 Ma変成岩」の存在は確認できなかった.
  • 吉本 紋, 小山内 康人, 中野 伸彦, 足立 達朗, 米村 和紘, 石塚 英男
    セッションID: R4-05
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/06
    会議録・要旨集 フリー
     黒瀬川構造帯は,九州~関東山地にわたり,蛇紋岩メランジ帯として断続的に分布する.黒瀬川構造帯の構成岩類のなかでも,低温高圧型変成岩である青色片岩は,広域的に分布することが報告されている.本研究では,黒瀬川構造帯の九州・五木村,四国中部・円行寺,四国東部・勝浦,紀伊半島東部・鳥羽に産する青色片岩を調査し,さらに黒瀬川構造帯の青色片岩と比較するため,八重山変成岩類である沖縄・石垣の青色片岩の調査を行った.ここでは,上記各地の青色片岩について,岩石記載および全岩化学組成の比較を報告する.
  • Mohamed Zaki Khedr, Shoji Arai
    セッションID: R4-06
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/06
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    We found possible prograde deserpentinized peridotites from the Happo complex central Japan. High-P and low-P prograde peridotites show differences in their field relation and mineral assemblage. The high-P prograde peridotites have a mineral assemblage, Opx + Olv + Tlc + rare edenite and phlogopite. Olivine has low Fo91, in contrast to olivine in the low-P deserpentinized peridotites from the talc zone, due to a reducing environment. Their bulk chemistry confirms serpentinites as a protolith. The low-P, high-T peridotites metamorphosed by Cretaceous granitic intrusion from the talc zone are composed of prograde tremolite, metamorphic olivine, antigorite and talc. Prograde tremolite is very low in Al2O3,Na2O,Cr2O3,Li,La,Ce,Sr,Ti,Yb,Sc,and V, but is high in SiO2 and Mg# relative to retrograde tremolite. This depletion of mobile elements is due to their mobility during deserpentinization process, whereas immobile-element depletion is related to the parental source. Olivine containing opaque inclusions is high in Fo, 93.5 to 96.4. It is enriched in B,Sc,Ti,Y,Zr,Nb and Ni relative to mantle olivines because of its opaque inclusions.
  • Weimin Li, Akira Takasu, Yongjiang Liu
    セッションID: R4-07
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/06
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    Three types of high-P/T metamorphic rocks, i.e. garnet-barroisite schists, glaucophane aegirine-augite scishts and epidote-glaucophane schists, from the Heilongjiang Complex in the western margin of the Jiamusi Massif have been petrologically investigated. The peak metamorphic conditions obtained here for the high-P/T type rocks of the Heilongjiang Complex vary in different lithologies and areas, from the epidote blueschist facies to the epidote amphibolite facies. The petrological and geochronological characteristics of the high-P/T Heilongjiang metamorphism may be compared to those high-P/T metamorphic rocks in the Suo belt, SW Japan, suggesting the Suo metamorphic belt is a possible southern extension of the Heilongjiang Complex at the time before Japan Sea opened.
  • 中村 大輔, 平島 崇男
    セッションID: R4-08
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/06
    会議録・要旨集 フリー
    中国東部・蘇魯地域のTaohangで採集されたエクロジャイトの上昇履歴を推定した。先ず、ザクロ石のコアとオンファス輝石のコアの組成に地質温度圧力計を適用すると、約700°C, 3.4 GPaの温度圧力条件が得られた。またザクロ石のリムとそれに隣接する場所のオンファス輝石のリムの組成に温度計を適用すると1.5 GPaにおいて566±54°Cの温度が得られた。以上のように、減圧時の温度は最高圧力時の温度より明瞭に低く、このエクロジャイトは冷却されながら上昇したと考えられる。  しかし、これまでの推定では、蘇魯地域の超高圧変成岩の上昇パスは等温減圧となっている。こうした等温減圧の履歴は、超高圧変成岩が厚さ数十kmの大きな岩体として上昇し、その中心部に位置していた為、周りからの熱の影響がなかったことを示唆している。一方、本研究地域のエクロジャイトは上昇している超高圧変成岩体の縁に位置していた為、周りからの冷却を受けたと推測される。
  • Rustam Orozbaev
    セッションID: R4-09
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/06
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    The occurrence of complete and atoll-shaped garnets in garnet amphibolites in the Aktyuz complex, northern Kyrgyz Tien-Shan has been described. Based on the mineral textures and chemical compositions of minerals, the possible mechanism of formation of atoll garnets has been discussed. It is suggested that the atoll garnets were formed by breakdown of pre-existing inclusion-rich, Ca- and Mn-rich garnet core (incipient of garnet resorption from the core) by infiltration of fluids along fractures during the prograde HP-HT metamorphism.
  • Asel Altymyshovna Togobaeva, Akira Takasu, Michio Tagiri, Azamat Alm ...
    セッションID: R4-10
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/06
    会議録・要旨集 フリー
    The Akdjon Group is divided into the structurally lower Makbal Formation and the upper Neldy Formation. Coesite and quartz pseudomorphs after coesite included in the garnets have been found in the garnet-talc-chloritoid schists and meta-quartzites in the Makbal Formation. Eclogite blocks across occur as lenses within the meta-quartzite, garnet-talc-chloritoid schists, marbles and pelitic schists in the Makbal Formation. The Neldy Formation is composed mainly of pelitic schists (garnet-phengite-quartz-albite schists), chlorite-carbonate rocks with minor amounts of marble and meta-quartzite. Eclogites are preserved in the central parts of the garnet-amphibolite bodies are intercalated in the pelitic schists of the Neldy Formation. The metamorphism of the Neldy eclogites is divided into three events, (1) precursor metamorphic event (amphibolite facies), (2) first high-P (eclogite facies) metamorphic event, (3) second high-P (epidote amphibolite facies) events.
  • 河上 哲生, 柚原 雅樹, 上久保 寛, 小山内 康人
    セッションID: R4-11
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/06
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    タイ中部Pranburi~Hub Kapongに産する変成岩類を記載した。Pranburiに産する泥質変成岩はザクロ石+珪線石±菫青石+黒雲母の組合せをもち、稀に紅柱石も含む。2段階成長を示す電気石やディモルティエ石の存在は、泥質変成岩の面構造を切って貫入する含電気石優白質花崗岩起源の含ホウ素流体が泥質変成岩に浸透し、後退変成作用を及ぼしたことを示唆する。Hua Hin付近に産する変花崗岩は面構造が珪線石+黒雲母で定義され、ザクロ石+珪線石+黒雲母組合せを有する。これら2地域に分布する変成岩の最高変成条件は白雲母+石英の高温限界を超えていたであろう。全体として、黒雲母+白雲母組合せを有する泥質片岩を産する北西のHub Kapongから南東のPranburiへと変成度が高くなる。後退変成の影響が著しいため、変成年代の制約には、ジルコンやモナズ石を用いた年代測定が重要となる。
  • Thanh Ngo Xuan, 板谷 徹丸
    セッションID: R4-12
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/06
    会議録・要旨集 フリー
    新しく発見されたクロムスピネルの化学組成と既存の地質岩石学データーからラダックヒマラヤには2つの独立した北方への白亜紀沈み込み帯が見いだされた.ショック海洋地殻のカラコラム塊下への沈み込みとテチス海洋地殻のラダック弧下への沈み込みである.それぞれの沈み込み作用によって,ラダック島弧やカラコラム陸弧が形成された.
  • 小山内 康人, 野木 義史, 豊島 剛志, 外田 智千, 馬場 壮太郎, 中野 伸彦, 足立 達朗, 大和田 正明
    セッションID: R4-13
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/06
    会議録・要旨集 フリー
    東南極ドロンニングモードランドにおけるゴンドワナ超大陸形成期の大陸衝突帯について,変成作用および重力モデルから解析した.
  • 川嵜 智佑, 小山内 康人
    セッションID: R4-14
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/06
    会議録・要旨集 フリー
    1気圧から20キロバ-ルまでの圧力範囲で,800 °Cから1500 °Cまでの温度範囲での高温高圧実験により,ルチルと共存する石英中のTi含有量がRTlnX=-8504-4.975T-39.7Pと求められた.ここでXは石英中のTiモル分率である.この結果はTi固溶量の圧力依存性はあまり大きくないことを物語っている.WarkとWatson (2006)による実験結果は今回の結果よりも系統的にTi固溶量を小さく見積もっている.このためにWarkとWatsonの温度計は,我々の温度計よりも200 °C程度高温の変成温度を導くことになる.
  • M. Satish-Kumar, Noriyoshi Tsuchiya, Tetsuo Kawakami, Masahiro Ishikaw ...
    セッションID: R4-15
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/06
    会議録・要旨集 フリー
    Peak metamorphic temperature condition using calcite-graphite carbon isotope thermometry in marble layers from a regionally rehydrated high-grade terrain of Sor Rondane Mountains. Carbon isotope fractionation between calcite/dolomite and graphite range between 2.2 to 3.8, correspond to metamorphic temperatures between 1000 and 680 C were estimated for the marbles.
  • 板谷 徹丸, 柳 善榮
    セッションID: R4-16
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/06
    会議録・要旨集 フリー
    火山岩には大気アルゴン同位体比からの質量分別作用を経験した異常なアルゴン同位体比を持つ場合がある.いつ,どこで,どのように質量分別作用が生じたかを議論する.
  • 柳 善榮, 兵藤 博信, 板谷 徹丸
    セッションID: R4-17
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/06
    会議録・要旨集 フリー
    伝統的なK-Ar年代測定法では,初期アルゴン同位体比を大気の同位体比を仮定している.歴史溶岩のアルゴン同位体比分析結果は初期アルゴン同位体比は大気から質量分別していることを明らかにした.それは感度法による年代測定を必要としている. ニュージーランドのプレート内火山岩,バリ島の島弧火山岩,マリアナ火山海域のドレッジ試料のアルゴン同位体比分析を実施した.得られた年代は報告されている年代より古く良い結果であった.
  • 川本 竜彦, 三部 賢治, 黒岩 健一, 柴田 知之, 小木曽 哲
    セッションID: R4-18
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/06
    会議録・要旨集 フリー
    SPring-8のBL04B1に設置されているマルチアンビル高温高圧発生装置を使用した。実験には高Mg安山岩組成に10種類の元素化合物を混合した試料を用いた。実験圧力は1.5GPaで行った。高Mg安山岩質マグマと共存する純水流体には、CsとPbがマグマよりも多く分配された。一方、NaClとKClをそれぞれ2.5モル/1kg H2O含む塩水流体には、CsとPb以外、Baも溶け込んだ。また、そのほかの元素(LaからYbまでとTh)はマグマ中には確認できたが、塩水流体には確認できなかった。Keppler (1996, Nature)は、私たちと同じ圧力条件で、ほぼ同量の(Na, K) Clを含む水溶液と安山岩メルトの元素の急冷実験を報告している。私たちのその場観察結果と同様の傾向を示す。その場観察実験を行なった結果、微量成分の分配実験は、スラブ流体が塩水流体であることを示している。
  • 星出 隆志, 小畑 正明
    セッションID: R4-19
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/06
    会議録・要旨集 フリー
    結晶沈積はマグマの分化を引き起こしうる重要なプロセスであると考えられている。この効果を明らかにする上で、元から存在する斑晶と、マグマ貫入後に晶出した結晶との区別が必要であるが、それは深成岩では一般に困難である。そこで今回、室戸岬斑れい岩体においてクロムスピネルの産状と化学組成の垂直変化を調査した。その結果、かんらん石のモード、サイズ、数密度から認定された「結晶集積部」のかんらん石・斜長石中に包有されるクロムスピネルの組成的特徴は、貫入後に新たに晶出したものでなく、貫入時に既に晶出していたことを示すことがわかった。つまり、クロムスピネル包有物は、斑晶の沈積ゾーンを認定するのに有用なマーカーとなりうる。
  • 中村 文, 河上 哲生
    セッションID: R4-20
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/06
    会議録・要旨集 フリー
    長石中ではリンは非常に拡散が遅く、長石形成時の情報を保存し得る。この特徴を利用し、黒雲母ザクロ石片麻岩中の、ザクロ石から黒雲母+長石インターグロウスが形成する過程の素過程制約を試みた。インターグロウス部とマトリクスの長石の間には、(1)長石一粒子中に、パーサイト組織を呈する部分とアンチパーサイト組織を呈する部分が隣接する組織、(2)黒雲母が鋸歯状組織をもち、長石のOr相に突き出す組織、が観察される。(1)は750-825℃、(2)は(1)より低温で長石中のカリウムを消費し、黒雲母が成長することにより形成される (中村ほか, 2009)。拡散距離の観点から、インターグロウスは(1)の形成前の750-825℃以上で、ザクロ石とメルトが反応して形成された。またマトリクスの長石は、リンに乏しいコアとインターグロウス中の斜長石と同程度にリンを含むリムをもつ。この部分は斜長石と同時期にメルトから結晶化した。
  • 佐藤 大介, 松本 一郎, 柴田 知之
    セッションID: R4-21
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/06
    会議録・要旨集 フリー
    中国地方山陰側中央部に位置する和久羅山デイサイトは,後期中新世~鮮新世の珪長質溶岩である.今回,全岩化学分析とSr-Nd-Pb同位体比分析を行った結果,和久羅山デイサイトはアダカイト(Defant and Drummond, 1990)と考えられている大山火山と類似した組成を示す.これは,和久羅山デイサイトの起源マグマとして大山火山同様,フィリピン海プレートの部分溶融が考えられる. 今まで山陰では,第四紀火山からアダカイト質マグマが認められたことから,フィリピン海プレートのアダカイト質岩の発生源は2 Ma以降に山陰下に到達したと考えられてきた(Kimura et al., 2005).しかし,和久羅山デイサイトが大山火山と同様,プレートの部分溶融を起源とするなら, 5 Maにはすでにプレートのアダカイト質岩の発生源は山陰下に到達し,アダカイト質岩の生成に関与していたと考えることができる.
  • 大和田 正明, 亀井 淳志, 小山内 康人
    セッションID: R4-22
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/06
    会議録・要旨集 フリー
    西南日本内帯の白亜紀花崗岩類は大陸縁辺部に貫入し,大陸地殻の形成に重要な役割を担った.中・北部九州と領家帯に産する花崗岩類は貫入順序によって2回の時期に区分される.これら2回の花崗岩マグマの活動は,いずれの時期もマントル起源の玄武岩マグマの上昇を熱源として生じた.両地域の花崗岩類のSr-Nd同位体比組成の特徴は起源物質に関与した大陸地殻物質の量によって規制されたと推察される.
  • 斉藤 哲, Brown M., Korhonen F.J., McFadden R.R., Siddoway C.S.
    セッションID: R4-23
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/06
    会議録・要旨集 フリー
     西南極マリーバードランドに分布するフォスディックミグマタイト-花崗岩複合岩体は、白亜紀のゴンドワナ大陸分裂に伴い隆起・削剥した東ゴンドワナ大陸古太平洋縁辺部の中~下部地殻と考えられている。当岩体には小規模な花崗岩体とミグマタイト化した片麻岩類に伴って、苦鉄質岩脈や閃緑岩の小岩体が分布している。本研究から得た苦鉄質貫入岩類のジルコンU-Pb年代は白亜紀を示した。また苦鉄質貫入岩類は中カリウム~高カリウム系列で塩基性~中間組成を持つ。微量元素パターンはLIL元素に富み、Nbの不異常を示すことからスラブ由来物の汚染を受けた岩水マントル起源と考えられる。Sr-Nd同位体データもエンリッチマントル起源を示唆する。本研究結果から、苦鉄質岩類はマントルプルーム活動に由来するのではなく、背弧拡大に関連した陸弧下マントルの融解起源と考えられる。
  • 金丸 龍夫, 古川 邦之
    セッションID: R4-P01
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/06
    会議録・要旨集 フリー
     浅間火山天明噴火による降下軽石について,磁気岩石学的な検討を行った.これらによると,噴火初期と噴火の最盛期で,マグマ溜りプロセス,火道内でのマグマの上昇速度,噴火機構などが変化した可能性がある.
  • 石橋 秀巳
    セッションID: R4-P02
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/06
    会議録・要旨集 フリー
    本研究では西南日本福岡地域に産する新生代玄武岩質溶岩中に含まれる磁鉄鉱の産状と化学組成について記載し、その晶出の相対的タイミングについて検討した。本研究対象である溶岩はFeに富む玄武岩質であり、斜長石斑晶を欠き、オリビンと磁鉄鉱が共存するという特徴的な斑晶鉱物組み合わせを示す。磁鉄鉱は独立な斑晶としてだけでなく、部分的または全体がオリビンに囲まれた包有物としても見られる。これらの磁鉄鉱とホストオリビンについてEPMA分析を行ったところ、ホストオリビンのMg含有量の減少に伴い、磁鉄鉱包有物中のMg、Cr、Al含有量が減少し、Ti含有量が増加した。これらの事実は、磁鉄鉱包有物が外来結晶ではなく、オリビンと同時に結晶化した初生鉱物であること、それ故に、この玄武岩質マグマで磁鉄鉱の早期晶出がおこったことを示唆する。本研究ではさらに、玄武岩マグマ中で磁鉄鉱の早期晶出がおこる物理化学条件について議論したい。
  • 亀井 淳志, 藥師寺 亜衣, 柴田 知之
    セッションID: R4-P03
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/06
    会議録・要旨集 フリー
    島根県奥出雲町尾原周辺には石英閃緑岩とトーナル岩とがミングリングした混成岩が広く分布し,優白質花崗岩がこれに伴う.本研究では,混成岩および優白質花崗岩の詳細な地質調査を行い,岩石記載,岩石化学分析,およびRb-Sr全岩年代測定を実施した.
  • 赤崎 英里, 亀井 淳志, 大和田 正明
    セッションID: R4-P04
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/06
    会議録・要旨集 フリー
    西南日本内帯には白亜紀花崗岩類が広範囲に分布し,その中で領家帯柳井地域は,古期花崗岩,新期花崗岩および山陽帯花崗岩から構成されている.本研究では,各岩体の形成過程などを明らかにすることを目的とし,新期花崗岩である木部岩体についての岩石記載およびSr・Nd同位体比組成を含めた岩石化学的な特徴を報告する.  木部岩体は,山口県柳井市から由宇町にかけて分布する.中粒の黒雲母花崗岩で,自形性の強い斑晶状のカリ長石を含むことで特徴づけられる.主要鉱物は石英,カリ長石,斜長石および黒雲母であり,少量の白雲母や褐れん石を含む場合がある.全岩化学組成では,SiO2含有量の増加にともなってTiO2やCaOが顕著に減少する.また,岩体周辺部の白雲母含有花崗岩のSrI値が高いことから,周囲の泥質変成岩の同化作用が示唆される.以上のことから,木部岩体は分化同化作用によって形成されたと推察される.
  • 兵土 大輔, 大和田 正明
    セッションID: R4-P05
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/06
    会議録・要旨集 フリー
     佐賀県天山地域に分布する変成岩類と蛇紋岩メランジュの帰属を明らかにするため,三郡帯に属する山口県長門構造帯の蛇紋岩メランジュとの地質学的・岩石学的に対比を試みた.長門構造帯の蛇紋岩メランジュは,ブロックとして結晶片岩,角閃岩および変トロニエム岩を含み,高角度の断層で周囲のペルム紀付加体堆積物と接する.一方,天山地域の蛇紋岩体は結晶片岩や珪長質岩を欠き,角閃岩のみを含む.また,周囲の変成岩類とほぼ水平な断層で接する.  長門構造帯と天山地域に分布する蛇紋岩の鉱物組み合わせは類似するが,クロムスピネルの化学組成は,天山地域の方がCr#に富み,TiO2に乏しい.メランジュ中の岩塊の構成や変成作用の特徴を考慮すると,天山地域の変成岩類・蛇紋岩メランジュは肥後変成帯に対比できる.
  • 宮本 知治, 榎原 彩
    セッションID: R4-P06
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/06
    会議録・要旨集 フリー
    九州中部の山鹿地域には弱変成苦鉄質岩・超苦鉄質岩体が産する。露頭ではブロック化したはんれい岩・角閃岩・単斜輝石岩・蛇紋岩・珪長質岩が混在することがある。蛇紋岩は大半を蛇紋石に占められ、残留結晶として少量の単斜輝石を伴う。単斜輝石岩、はんれい岩、角閃岩は概ね単斜輝石・角閃石・斜長石からなり、粒間には若干量のパンペリー石・緑泥石・アクチノ閃石が産する。珪長質岩は、石英・斜長石が卓越し、副成分鉱物としてジルコンが産する。そのジルコンのU-Pb年代は、489Maを示した。この年代は、山鹿はんれい岩体の源岩年代を示すと考えられる。岩石試料は、岩相と主要元素組成の特徴が調和的で、一部の元素を除き、概ね全岩組成を保存していると考えられる。HFS元素については類似した傾向を示し、おしなべて乏しい。これらの結果は、山鹿に産するはんれい岩・超苦鉄質岩がophiolite的起源を持つことを示す。
  • 宮下 敦, 辻森 樹
    セッションID: R4-P07
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/06
    会議録・要旨集 フリー
    500Ma~400Maの放射年代を持つ角閃岩類は,西南日本では木頭名地域,普甲峠地域や若桜地域に,東北日本では木呂子メランジュや母体変成岩類中に,それぞれ分布する。これらの変成岩類は,日本列島で最も古い海洋プレート沈み込みを記録した岩石で,随伴する岩石類の性質を含め共通点を持っている。日本列島形成初期の状態を調べる目的で,これらの岩体の岩石学的性質について報告する。
  • 緑川 貴裕, 大和田 正明
    セッションID: R4-P08
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/06
    会議録・要旨集 フリー
    山口県東部の岩国地域には,ジュラ紀の玖珂層群から領家帯変成岩類が連続して分布する.すなわち,岩国地域では地殻浅部から深部へ至る連続した層序・岩相を観察することができる.しかし,非変成堆積岩から変成岩への移り変わりについては不明な点が多い.そこで,玖珂層群と領家帯低変成度岩の関係について炭質物の結晶化度を用いて検討した.鉱物組合せの変化から調査地域中央部には黒雲母アイソグラットが定義され,変成度は南部へ上昇する.また,熱構造の詳細を検討するため泥質岩に含まれる炭質物を分離し,XRDで結晶化度を測定した.その結果,玖珂層群に発達する変形構造とは無関係に,南部の領家帯へ向かって変成度は累進的に上昇していることが明らかとなった.本地域に分布する玖珂層群は付加体として堆積した後,変形作用を受け,その後低圧高温型の領家帯変成作用を受けたと推察される.
  • 町田 怜史, 石渡 明
    セッションID: R4-P09
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/06
    会議録・要旨集 フリー
    東北地方中央部の鬼首―湯沢マイロナイト帯の東西で変成岩を調査し、その鉱物組み合わせや鉱物化学組成を検討して比較を行った。マイロナイト帯の東側に位置する岩手県奥州市焼石岳南麓では、角閃岩、珪長質片岩、泥質片岩、弱い変成作用を受けた粘板岩、蛇紋岩がみられる。マイロナイト帯の西側に位置する山形県最上町神室山地白川では、細粒の黒雲母片麻岩と角閃岩がみられる。焼石岳南麓の角閃岩中の角閃石は大鉢森角閃岩との間に類似性がみられる。神室山地白川の黒雲母片麻岩中のザクロ石の化学組成は阿武隈変成帯に類似し、角閃岩中の角閃石の組成は竹貫変成岩に類似する。超苦鉄質岩中のスピネルの組成は早池峰の超苦鉄質岩中のものに似る。変成岩中の鉱物化学組成の観点からマイロナイト帯の東側は南部北上帯に属し、西側は阿武隈帯に属すると考えられる。
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