ノンプロフィット・レビュー
Print ISSN : 1346-4116
7 巻, 1 号
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研究論文
  • 森山 智彦
    2007 年 7 巻 1 号 p. 1-12
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/08/29
    ジャーナル フリー
    本稿は,Menchik and Weisbrod(1987)の議論を下に,NPOスタッフの活動動機を消費的動機と投資的動機に分類し,それらを満たすことが活動の継続を促しているかについて,計量的に推定している.特に,投資的動機を強く持ち,かつどのような教育訓練を受講した人が活動を継続しているのかを中心に検証している.推定に用いたデータは,2198人の有給職員・ボランティアの個票データである.
    主な結果は,次の2点である.(1)消費的動機は,大半のスタッフが兼ね備えて活動に参加し,また満たされていることから,活動継続に不可欠なものである.(2)投資的動機を強く持ち,かつ会計等の専門業務に関する講座の受講歴がある人は,長く活動している.これは,「NPO特殊的」なスキルへの投資行動を行う人材が存在することを示唆している.従って,そのような人材を見極めた上で,NPOに関する専門的な教育訓練の機会を提供することは,組織の基幹的人材の育成に有効であると考えられる.
  • ―京都府城陽市の事例から―
    平岡 俊一
    2007 年 7 巻 1 号 p. 13-23
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/08/29
    ジャーナル フリー
    本研究は,地方自治体での市民参加型の環境政策形成においてコーディネーターが果たす役割,並びにそれを環境NPOが担う理由について,京都府城陽市での環境基本条例策定の事例をもとに考察するものである.本事例からコーディネーターは,異なる主体間の「橋渡し」,政策形成に参加する市民の「支援者」などの役割を担っていることが明らかになった.コーディネーターがこうした役割を担っている背景には,市民参加型の環境政策形成の実践に,当事者である行政,市民とも不慣れであるという現状がある.市民セクターの一主体であり,かつ環境問題・政策,議論手法・技術に関する専門性を持ち合わせることなどから,環境NPOはこうした役割の担い手として適格な主体であると捉えられる.環境NPOにとっても,こうした役割を担うことは,自らの社会的役割・意義をさらに多様化,発展させることにつながる.
  • ―政策実施過程から政策形成過程ヘ―
    浅野 昌彦
    2007 年 7 巻 1 号 p. 25-34
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/08/29
    ジャーナル フリー
    NPOとの協働は政策実施過程だけではなく,政策形成過程でも重要であるが,この点に取り組んだ研究はほとんど見られない.本稿はNPO参加の政策形成での意義を理論的に明確にすることを目的とした.まず,Dahlの「資源」概念を用いて過去の事例から,NPOの用いた資源を推察した.次に政策中でのNPOの役割に着目し,政策を類型化した上でそれぞれの類型での資源を考察した.さらに,これらの資源が政策過程で影響力を有する理由を「構造の穴」理論により説明を試みた.NPOの資源は構造の穴を埋め,社会と政策形成過程を繋げる役割を果たすことで公益性を有し,政策過程で魅力的な資源となっている.これが,NPOが政策形成過程で影響力を持つことができる源泉であることを明らかにした.またこのようなNPOの資源を活用することで,より公益性の高い政策策定が可能となる.
  • ―都市システム論の観点から―
    埴淵 知哉
    2007 年 7 巻 1 号 p. 35-46
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/08/29
    ジャーナル フリー
    本研究は,日本におけるNPO法人の地理的不均等分布について報告するものである.まず分布の全体的構造を明らかにするために,分野別・規模別に集計されたNPO法人数のデータを用いてジニの集中度係数を算出した.また,分布構造の背景を理解するために,都市システム論に基づき,都市階層別の分布と地域間の結合関係を分析した.これらのデータから,東京一極集中を特徴とする地理的不均等分布が顕著であり,それは活動分野や財政規模によっても著しく異なることが示された.そして分析結果から,NPO法人の不均等分布は都市階層に影響されたかたちで展開しており,さらにその組織展開は東京を中心として近接的・階層的に拡がっていることが分かった.結論として,NPO法人の地理的分布は政府・企業組織が形成してきた既存の垂直的・階層的都市システムに従ったものである可能性が示された.
  • ―情報流通ネットワークと知のボトムアップ・パワー―
    露木 真也子
    2007 年 7 巻 1 号 p. 47-56
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/08/29
    ジャーナル フリー
    本稿では,社会システム理論とネットワーク科学理論を主な理論的背景として,現代日本社会を,高度にデジタル化した情報ネットワークにより大量の情報が流通する知的創造システムと捉える.その上で,さまざまな専門分野においてボランティアが重要なアクターであった江戸時代の情報ネットワークに着目し,ノンプロフィット・セクターを源泉とする知のボトムアップ・パワーが知識創造サイクルを活性化させ,情報流通を文化形成に結びつけた事例として教育と自治の2分野を取り上げる.さらに,江戸時代と現代の日本の情報ネットワークの特徴を比較し,その特徴の違いから,知のボトムアップ・パワーを強め,あるいは弱める要因を特定するとともに,知のボトムアップ・パワーの源泉としての現代のノンプロフィット・セクターに期待される役割を明らかにする.
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