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インドネシア・ジョグジャカルタにおける高齢者福祉施設の事例から
合地 幸子
p.
C08-
発行日: 2015年
公開日: 2015/05/13
会議録・要旨集
フリー
本発表は、インドネシア共和国ジョグジャカルタ特別州における、高齢者福祉施設で暮らす人びとに焦点を当て、老親扶養の規範の変化という観点から、高齢期の新たな暮らし方を検討する。高齢者は、子供による老親扶養に期待しつつ、老いる過程で誰にサポートを受けるかを自ら変え、変えられていくことによって、再帰的に親子の関係性を強化する。老親と子供の双方が共有してきたケアの意味づけや価値の変化について考察する。
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ラオス低地農村部における高齢期の新たな役割とケアの価値の変化
岩佐 光広
p.
C09-
発行日: 2015年
公開日: 2015/05/13
会議録・要旨集
フリー
本発表では、ラオス南部の低地農村部における高齢者の新たな暮らしとして、若い世代の国内外への「デカセギ」の増加と長期化にともない顕在化している老親による「マゴ育て」に注目し、高齢期のライフコースに組み込まれつつあるこの役割を引き受けることで生じている、老親の「ケアされない者」としての価値の高まりについて考察する。
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むらでの独居を選択するベトナムの高齢女性
加藤 敦典
p.
C10-
発行日: 2015年
公開日: 2015/05/13
会議録・要旨集
フリー
ベトナムの村落では、国内移民の増大にともない、高齢者が地元のむらに取り残される、あるいは、自ら独居を選択する状況が顕著になっている。この報告では、息子と夫の祭壇のケアを独居の理由として語るある高齢女性をとりあげる。そこから、高齢者の居住地選択の幅が拡大するなかで、選択の「いいわけ」のレパートリーが増大しつつある状況、とりわけ高齢者がケアの与え手として自己表象するようになっている状況について論じる。
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行為から集団の生成を考える
浜田 明範
p.
C11-
発行日: 2015年
公開日: 2015/05/13
会議録・要旨集
フリー
経済活動の一類型としてポランニーによって定式化された再分配は、人類学の重要な主題のひとつであった。しかし、再分配についての研究は1970年代以降ほとんど進展のないまま留まっている。本分科会では、1980年代以降の経済人類学の研究動向と、「社会的なもの」をめぐる脱領域的な議論を念頭に置きながら、世界各地の多様な再分配的な実践に光を当てることで、今、改めて再分配について人類学的に検討する意義を確認していく。
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ガーナ北部・西ダゴンバ地域の「家」における再分配
友松 夕香
p.
C12-
発行日: 2015年
公開日: 2015/05/13
会議録・要旨集
フリー
本研究では、ガーナ北部の西ダゴンバ地域を事例に、物理的空間としての一つの「家」に住まう、夫婦をはじめとした様々な関係にある人々が、労働や財のプーリングを通じ、どのように経済的共同性を生みだし、「家族」を可視化させているのかをみていく。これを通じて、家族を一つの経済単位として仮定してきた1970年代までの構造人類学と、それ以降の家族の間の競合関係を強調してきたフェミニスト人類学における家計論を再考する。
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ミクロネシア連邦ポーンペイの首長制を事例として
河野 正治
p.
C13-
発行日: 2015年
公開日: 2015/05/13
会議録・要旨集
フリー
オセアニアの一部では、いわゆる首長制にかかわる再分配が現在も実践されている。本発表では、「再分配を通じた集団の生成」という分科会テーマに即し、ミクロネシア連邦ポーンペイにおいて、再分配の実践がいかに「集団」を生みだすのかを示していく。これは、首長を中心とする集団のあり方を所与とせず、再分配の実践こそが「集団」の境界やあり方、ひいては首長を取り巻く関係性を様々に作り出す点を明らかにする試みである。
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バイア州ヘコンカヴォ地方での「ボウサ・ファミリア」の受給過程と受給の語りの考察を通して
高橋 慶介
p.
C14-
発行日: 2015年
公開日: 2015/05/13
会議録・要旨集
フリー
ブラジルで実施されている「ボウサ・ファミリア・プログラム(PBF)」は、低所得者層に対して、一定の受給条件を課した上で、現金を家族単位で給付する制度である。PBFの具体的な受給過程や受給の語りでは、受給を恥ずかしく思う、いわゆる「社会福祉のスティグマ」が極めて乏しいことがわかる。PBFは、低所得者層の所得を増大させるだけでなく、彼らと国家を直接結びつけることで、両者の関係をも変容させている。
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カール・ポランニーを再活用する
西垣 有
p.
C15-
発行日: 2015年
公開日: 2015/05/13
会議録・要旨集
フリー
本発表の目的は、ポスト社会主義の人類学的研究におけるカール・ポランニーの位置づけの変化をとりあげ、ポランニーの今日的な活用法を示すことを通して、再分配研究の拡張可能性について検討することである。
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福祉国家再編期のフィンランドにみる施設介護の分配
高橋 絵里香
p.
C16-
発行日: 2015年
公開日: 2015/05/13
会議録・要旨集
フリー
本発表は、地域福祉という再分配の論理が強く働く場面に注目し、分配の対象と適用範囲がどのように決定されているのか、つまり制度の機能する全体はどのように作り出されているのかを考察していく。具体的には、フィンランドにおける高齢者介護施設への入居者の割り当てプロセスを事例として、群島町という地理的・制度的領域内部の均衡を保とうとする試みが、どのように社会福祉の再分配を道徳的に支えているのかをみていく。
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木村 周平
p.
C17-
発行日: 2015年
公開日: 2015/05/13
会議録・要旨集
フリー
本分科会は「一時性」(temporariness)に対して人類学的なスタンスからどのように捉えることができるかを、複数の事例を通じて検討するものである。これは同時代的なるもの(the contemporary)の時間性(temporalities)を問うひとつの試みである。
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「復興」を作り上げる複数の時間性
木村 周平
p.
C18-
発行日: 2015年
公開日: 2015/05/13
会議録・要旨集
フリー
本発表では、発表者が調査を続けている岩手県大船渡市において、とくに区画整理を含む中心市街地の「復興」に焦点を絞り、それを取り巻く時間性について考えたい。
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韓国におけるカンボジア人移住労働者団体設立を事例に
ベル 裕紀
p.
C19-
発行日: 2015年
公開日: 2015/05/13
会議録・要旨集
フリー
本発表は「一時性の認識」を鍵概念として用い、移住労働者の権利をめぐる運動を、カンボジア人労働者団体が設立される過程を例に、記述するものである。それは移住労働者が、韓国において一時的な存在である「わたし」という認識に加え、永続的な存在としての「われわれ」という認識を作っていく過程であり、同時に、現行の制度や社会を一時的なもの、変更可能なものとして認識し、これに関与していくようになる過程でもある。
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映像インスタレーションを用いたフィールドワーク展を事例に
丹羽 朋子
p.
C20-
発行日: 2015年
公開日: 2015/05/13
会議録・要旨集
フリー
本発表は、発表者が企画・制作を担当した「窓花・中国の切り紙」と題するフィールドワーク展を事例として、フィールドワークで得た知見や経験を、現地のモノや調査映像を用いて「展示」するという人類学的実践について、そこに内包される複数の時間性に焦点をあてて考察する。
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スペイン・サンティアゴへの道における散策的側面に着目して
土井 清美
p.
C21-
発行日: 2015年
公開日: 2015/05/13
会議録・要旨集
フリー
本発表は、計画性や目的達成などから外れた経験が作り出す一時性と、そこから獲得される日常性について考える。より具体的には、イベリア半島の北部を東西に貫く約800kmの「サンティアゴへの道」とよばれるルートを歩く旅を素材に、散策的な旅のなかに、立ち止まり、自明性から脱し、総じて日常的な世界の中にいる感覚が作り出される様相を検討する。
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ラオス北東部フアパン県サムヌア・サムタイ地方の事例から
伊藤 渚
p.
D01-
発行日: 2015年
公開日: 2015/05/13
会議録・要旨集
フリー
本発表では、ラオス北東部フアパン県サムヌア・サムタイ地方のタイ系諸民族の村において、贈られたり交換されたりする様々なものを比較することによって、女性が生産する織物の位置づけを検討する。また、そこから、当該社会における織物生産がいかなる特徴を持つ活動であるのかを考えてみたい。
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ティエンザン省の歴史におけるクメール人とベトナム人の古民家の位置づけ
渋谷 節子
p.
D02-
発行日: 2015年
公開日: 2015/05/13
会議録・要旨集
フリー
ベトナム・メコンデルタのティエンザン省カイベー県には、かつての大土地所有者たちが所有していた古民家がいくつか残されている。本研究では、その所有者たちがいつどこからこの地域に移り住んできたのか、またそれ以前、この地域には誰が暮らしていたのかを明らかにした。その結果、クメール人が暮らしていた地域に19世紀を通じてベトナム各地から人々が移り住み、現在の農村社会を形成してきたことがわかった。
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国境を国境たらしめる物質的基盤とその限界
難波 美芸
p.
D03-
発行日: 2015年
公開日: 2015/05/13
会議録・要旨集
フリー
本発表では、国境が国境たることを可能にする物質的基盤を問題の中心に置き、ラオスとタイの間を流れるメコン河の国境インフラとしての機能に注目する。ラオス政府、「国際社会」、そして本発表で扱うラオス首都ヴィエンチャンでくらす人々には、それぞれに異なるメコン河とのかかわり方があり、その差異によってメコン河の国境インフラとしての機能の可変性と重層性が生み出されている様相を明らかにする。
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北部タイ農村におけるHIV/AIDS治療を事例として
日野 智豪
p.
D04-
発行日: 2015年
公開日: 2015/05/13
会議録・要旨集
フリー
本発表は、「薬」がいかに人に、そしてコミュニティに影響しているのかについて、北部タイ農村におけるHIV/AIDS治療を事例に検討することを目的とする。取り上げる「薬」は薬草、抗HIVウィルス薬、精力剤である。そして、議論は報告者が2004年から現在までの約30カ月間、チェンマイ県近郊の農村で断続的に実施してきた文化人類学的定着調査に基づくものである。
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ポスト遊動狩猟採集民・ムラブリの社会関係にみる癒着と乖離
二文字屋 脩
p.
D05-
発行日: 2015年
公開日: 2015/05/13
会議録・要旨集
フリー
本発表は、タイ北部にて唯一の狩猟採集民として知られるムラブリを事例に、彼らの「お前次第だ」という台詞とその周辺に位置づけられる民族誌的事例から、彼らの社会関係のあり方を癒着と乖離を手がかりに考察検討することを目的とする。さらに本発表では、ムラブリの社会関係からの問いかけとして、排他的なブロックへと切り分けられた匿名性にある個人を支配システムに配置する西洋近代における社会観の再考を試みる。
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タイ北部、ユーミエン(ヤオ)社会における新たな宗教現象に関する中間報告3
吉野 晃
p.
D06-
発行日: 2015年
公開日: 2015/05/13
会議録・要旨集
フリー
タイ北部のユーミエン(ヤオ)社会の新しい宗教現象において、女性シャマンが〈歌〉によって儀礼を執行するようになった。従来、〈歌〉は儀礼とは異なる分野を構成しており、使用言語、詠唱法も異なる。そうした〈歌〉の歌謡言語と詠唱法について詳しく説明し、その儀礼への応用のありかたを報告する。
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タイ国における大乗系漢文経典の知識
片岡 樹
p.
D07-
発行日: 2015年
公開日: 2015/05/13
会議録・要旨集
フリー
本報告は、タイ国における大乗系漢文経典を用いた読経方法、およびその知識の継承方法に関する調査の中間報告である。タイ国では漢文経典の読み方として最も普及しているのが、「五音」と俗称される特殊な人工言語によるものである。本報告では「五音」のタイ国での普及過程、および念仏会や寺廟儀礼での「五音」経典の用いられ方を検討することで、タイ国における漢文リテラシーの所在の一端を明らかにすることを試みる。
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用途と造形をめぐって
角南 聡一郎
p.
D08-
発行日: 2015年
公開日: 2015/05/13
会議録・要旨集
フリー
台湾原住民族のヤミ族の製作する土偶は、鳥居龍蔵によってはじめて紹介された時より、宗教的な意味はなく玩具であると定義付けた。しかしながら、本当に当初からそうであったのだろうか。この疑問に迫るべく、日本をはじめとした東アジアや東南アジアの資料との比較を試みる。ヤミ族の土偶はよく知られた存在であるにも関わらず、本格的に研究されたことがない。そこで、国内所在の土偶を中心に分析を試みる。
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モーラコット台風復興過程におけるリスク評価と移住政策について
山西 弘朗
p.
D09-
発行日: 2015年
公開日: 2015/05/13
会議録・要旨集
フリー
2009年8月に台湾中南部に豪雨と土砂災害をもたらしたモーラコット台風の復興過程におけるリスク評価と移住政策について、先住民の1つであるブヌンの村落を取り上げ、復興政策の後ろ盾となったリスクの概念や、被災した先住民の言説を分析することで、これまで災害研究で注目されてきた「脆弱性(vulnerability)」と「復元=回復力(Resilience)」の内容について、その多層性とゆらぎを明らかにする。
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韓国・旧南洋群島との比較から
上水流 久彦
p.
D10-
発行日: 2015年
公開日: 2015/05/13
会議録・要旨集
フリー
韓国や旧南洋群島の現況を補助線に台湾の植民地期の建築物の利活用の現状分析を通じて、それが台湾の歴史や消費文化の一部となっている要因を明らかにする。その作業を通じて複数の地域での旧植民地の在り様を視野におさめることで、植民地支配の現在を構築主義的に理解する。なお、要因として日本との緊密な関係に基づく日本への親近感の醸成や中華文明と日本的近代化の相克、戦勝国且つ戦敗国という中華民国の有り様等がある。
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ポストインペリアリズムの視座
沼崎 一郎
p.
D11-
発行日: 2015年
公開日: 2015/05/13
会議録・要旨集
フリー
本発表は、旧帝国出身の人類学者が旧植民地を対象として研究を行う際、フィールドで遭遇する帝国的過去とどう向き合うべきかを明らかにするために、台湾という日本の旧植民地を研究する発表者が台湾で日本の帝国的過去とどのように出会ったかを反省的に考察するとともに、台湾における日本の帝国的過去をめぐる日本人の論争を読み解くことによって、ポストコロニアリズムと対話しうるポストインペリアリズムの視座を提示する。
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岡正雄の民族研究所構想との関連で
中生 勝美
p.
D12-
発行日: 2015年
公開日: 2015/05/13
会議録・要旨集
フリー
戦前から戦後に日本民族学会に大きな影響力を与えてきた岡正雄は、2度目のウィーン滞在で、ウィーン大学日本研究所所長、バルカン問題の研究者、日独文化協議会委員として重要な役割を果たして来た。その時期のアーネンエルベという研究組織はあまり知られていない。今回の発表では、岡の民族研究所構想に影響を与えたとおもわれる、ナチス政権下の民族研究を分析したい。
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ルソン島北部山岳地域ハパオ村の伝統祭礼プンノクの復活
日丸 美彦
p.
D13-
発行日: 2015年
公開日: 2015/05/13
会議録・要旨集
フリー
1970年代のフィリピンのマルコス政権下で途絶したイフガオ州フンドゥアン郡ハパオ村の伝統祭礼プンノクの復活(1998年)を取り上げ、伝統文化の創造再生の過程と地域共同体の変容を考察する。特に伝統文化の創造再生と先住民族の伝統文化教育との関係性に着目する。
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東マレーシア・ドゥスン族社会の酒宴から
三浦 哲也
p.
D14-
発行日: 2015年
公開日: 2015/05/13
会議録・要旨集
フリー
東マレーシアのドゥスン族社会においては、「酒」はかならず複数人で飲むものである。儀礼に伴う酒宴だけでなく、日常的なコミュニケーションの場に「酒」は無くてはならないものである。また、酒宴は人を繋ぐ契機になり、人と人との新しいつながりをもたらし、そのつながりを維持・調整する場となる。当該社会において、酒は単なる嗜好品ではなく、酒がさまざまな人間関係を取り持っていることを明らかにする。
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宗教現象理解のための試論
青木 恵理子
p.
D15-
発行日: 2015年
公開日: 2015/05/13
会議録・要旨集
フリー
19世紀後半から20世紀初頭において、カトリック修道女たちは、東インドネシア・フローレス島の人々の真っただなかにくらし、極めて父権的な植民地支配とカトリック教会に対し「声」を挙げることなく、しかし自律的に時にはそれら父権的権力の意向を無視して活動した。本発表は、彼女たちのゆるぎない「声なき行動」を理解するために、宗教的営みをそれ以外に還元しない研究の方向を提示する。
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バリ島の演劇における「障害」の模倣表現とその受容
吉田 ゆか子
p.
D16-
発行日: 2015年
公開日: 2015/05/13
会議録・要旨集
フリー
インドネシア・バリ島の演劇では、「障害者」を模倣する演技が頻繁にみられる。役者(通常は健常者)が歪んだ顔や口唇裂のある仮面をかぶり、麻痺のある不規則な歩き方や吃音を模倣した滑稽な村人役を演じ、人々はこれを躊躇なく笑う。本発表では、バリ演劇における、特異なる身体をめぐる表象の特徴を指摘する。その上で、そうしたコメディの内容とそれを受容する人々の態度が反映する、バリの身体観・障害観を考察する。
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―バリ島の聖なる鉄琴・スロンディンの撮影プロジェクトより―
野澤 暁子
p.
D17-
発行日: 2015年
公開日: 2015/05/13
会議録・要旨集
フリー
本発表では、2014年に実施したインドネシア・バリ島の聖なる鉄琴「スロンディン」の撮影プロジェクトを事例に、文化の当事者にとって身体伝承である音楽文化を記録するという行為が今日直面する危機と意義を問い直す。
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歌芝居アルジャにおける役者と音楽家の事例から
増野 亜子
p.
D18-
発行日: 2015年
公開日: 2015/05/13
会議録・要旨集
フリー
インドネシア、バリ島のググンタンガン演奏において、音楽家の身体は音響の知覚と統合された独自の身体性を要求される。音楽家は共演する他者(他の演奏者や舞踊家)の身体との関係性の中で、他者の身体や音と連動し、相互作用し、共鳴する身体技法と感受性を要求される。本発表では歌芝居アルジャにおける役者(兼歌手、舞踊家)と音楽家の相互的な身体認識と相互作用がどのように構築されるかを論じる。
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バリ宗教合理化論の再考
吉田 竹也
p.
D19-
発行日: 2015年
公開日: 2015/05/13
会議録・要旨集
フリー
本発表は、クリフォード・ギアツの論考「同時代のバリにおける「内在的改宗」」に示される宗教合理化論を、ヴェーバーの宗教合理化論の論理と対比させつつ、批判的に再検討しようとするものである。この議論は、発表者が意図する、バリあるいは広く楽園観光地の宗教と観光の合理化に関する研究の一環をなす。 当該のギアツのバリ宗教合理化論は、(a)ヴェーバー合理化論の要約、(b)「伝統的なバリ宗教」の実態の要約、(c)戦後のバリ宗教の変容の素描、という3つの部分から構成される。発表者は、すでに(c)の批判的検討を行ったことがあり、本発表では(a)の検討が焦点となる。ギアツの議論の検討を通してヴェーバー合理化論の可能性を再確認し、ヴェーバー合理化論の論理をさらに推し進める理解の展望について、バリ宗教に関する民族誌的事実にも若干触れつつ、考察を加える。
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訪問看護ステーションひなたの活動と看取り
西 真如
p.
D20-
発行日: 2015年
公開日: 2015/05/13
会議録・要旨集
フリー
釜ヶ崎においては近年、生活保護を受給しながらいわゆる福祉アパートに単身で暮らす高齢者が増加している。ひなたは、釜ヶ崎を拠点に活動する訪問看護事業所のひとつであり、社会的孤立や医療・福祉への不信といった種々の困難を抱えながら終末期を迎えようとする単身高齢者のケアを積極的に受け入れている。本報告では、ひなたの訪問看護師が看取ってきたいくつかのケースについて考察する。
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ルーマニア・トランシルヴァニア山村の事例から
杉本 敦
p.
D21-
発行日: 2015年
公開日: 2015/05/13
会議録・要旨集
フリー
本発表では、トランシルヴァニア地方の一山村を対象に、老親ケアに注目して、相続様式の変化、家族構成や親子関係の変化と持続の問題を扱う。具体的には、老親世帯と子ども世帯との間でどのような身体的相互作用が行われ、それがどのような親の終末期および死後のケアに発展していくのかを検討し、そこに伝統的な家族の理念型が維持されていることと、それを実現するための戦略、不可能な場合の選択肢の幅について明らかにする。
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ある「多重障害者」の線の一生
中谷 和人
p.
D22-
発行日: 2015年
公開日: 2015/05/13
会議録・要旨集
フリー
本発表では、デンマークの「知的障害者のための美術学校」に所属していた一人の男性生徒のバイオグラフィーと、それを織りなしてきた彼のドローイング制作について検討する。「語るように描く」ことを本性とするそのドローイングのあり方を、そこに同伴してきたとりわけ一人の他者の存在、そしてその根底にあった「家族の物語」に光を当てながらみていくことで、彼の「線の一生」を辿りなおす。
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ポスト・フォスター期の西・中部アフリカろう者コミュニティ動態史
亀井 伸孝
p.
D23-
発行日: 2015年
公開日: 2015/05/13
会議録・要旨集
フリー
20世紀中葉以降の西・中部アフリカ9カ国のろう者コミュニティ形成史に関する文化人類学的研究を概括し、言語と身体をめぐる諸資源の結合現象という枠組みによってこの歴史を理解するとともに、1987年以降の同地域における手話言語集団の動態を複数のモデルによって整理し把握しようとする。諸国の集団を「ろう者主導/聴者主導」「政府主導/民間主導」のふたつの指標をもって分類し、資源人類学の観点から分析を加える。
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フィジーにおける障害児学校およびろう者コミュニティを事例に
佐野 文哉
p.
D24-
発行日: 2015年
公開日: 2015/05/13
会議録・要旨集
フリー
本発表の目的は、オセアニア地域、とりわけフィジー諸島共和国(以下フィジー)における手話をとりまく状況を報告し、「民族」や「国家」、「障害」といった枠組みを飛び越えて、あるいはそれに抗して存在する手話および手話使用者のあり方と、逆に「手話」や「ろう者」といったキーワードのもとにそうしたカテゴリー化を促そうとする現代的な変化について考察することである。
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清真の制度化および中国福建省のムスリムと非ムスリムの食実践
砂井 紫里
p.
E01-
発行日: 2015年
公開日: 2015/05/13
会議録・要旨集
フリー
本発表では、中国福建省に暮らすムスリムの清真食品消費をめぐる言説と実践の事例から、清真とハラールの諸相を明らかにし、複数のアクターが織りなす現代的ハラールの一端を考察する。宗教・民族・地域の要素が重なり合う清真のイメージは、グローバルなハラール市場を視野に政府、産業レベルで新たな経済価値を醸成する。一方、人びとの清真認識、個人の食実践は多様であり、サービス提供者の誠実さが重要な役割を果たしている。
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インドネシアにおけるジルブッブ言説の広まりと「イスラーム的なるもの」の所在
荒木 亮
p.
E02-
発行日: 2015年
公開日: 2015/05/13
会議録・要旨集
フリー
本発表では、客体化/オブジェクト化/対象化されたイスラームが如何なるものであり、さらにはそれらと人々との関係がどのようにあるのかについて、以下の点から検討をすすめるものである。1.インドネシアを賑わした「ジルブッブ」言説/現象と人々の語りを事例とする。2.「操作性と拘束性」および「世俗化と反世俗化」(*ここでは「世俗」を「欧米的なもの」、そして「世俗性(化)」を「欧米的なものの受容」とする)という視点をてがかりに検討を進める。3.社会的な言説(メディア)と人々の語りとを対比的に検討する。
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シャハバグ運動とポストコロニアルの二重拘束
外川 昌彦
p.
E03-
発行日: 2015年
公開日: 2015/05/13
会議録・要旨集
フリー
本報告では、バングラデシュの国民統合とイスラームの問題を、バングラデシュ憲法における国家原則としてのセキュラリズム理念の変遷や、近年の民衆運動におけるイスラームの問題を通して検証する。特に、独立戦争とイスラームをめぐる近年の民衆運動を、インドとパキスタンとをめぐるポストコロニアル的状況の二重拘束という観点から分析することで、これまで二律背反的状況として理解されてきたイスラームと独立運動の精神という二項対立図式を克服し、ひとつの国民文化を形成してゆく過程として捉え直す可能性を検証する。
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イランの宗教儀礼におけるマッダーフを事例に
椿原 敦子
p.
E04-
発行日: 2015年
公開日: 2015/05/13
会議録・要旨集
フリー
本発表では、身体の動きや感情の起伏を反復して行うことで身体的・精神的反応(感性)が一定の方向に導かれるという「感性の規律化」論に基づき、イランのシーア派の宗教儀礼におけるマッダーフ(宗教的哀悼歌手)の詩歌がどのように儀礼参加者の感性を方向付ける技術となり得ているのかを明らかにすることを通じて、感情の記述の可能性について検討する。
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イエメンの地方都市におけるカート商人の比較
大坪 玲子
p.
E05-
発行日: 2015年
公開日: 2015/05/13
会議録・要旨集
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カートは、イエメン及び東アフリカ諸国で栽培・消費される嗜好品で、その新鮮な葉を噛むと軽い覚醒作用が得られる。イエメンの首都サナアで消費されるカートは、非常に効率的に流通している。発表者はサナアでの調査から、カート商人は信頼関係に依存しない“浮気性”であることを論じた。本発表では、イエメンの地方都市ホデイダやタイズのカート商人が、サナアのカート商人よりも“浮気”できない理由について検討する。
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アレヴィー・ベクタシの文化および願かけを中心に
佐島 隆
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E06-
発行日: 2015年
公開日: 2015/05/13
会議録・要旨集
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イスラーム文化が卓越していると考えられるトルコのクルバン(犠牲)について、ハジュベクタシ町を中心にしてその多様な意味を明らかにしてみたい。クルバン(犠牲)についてはイスラームの文脈で説明されることが多いが、当該地域で観察すると、それ以外の方が多いことが、統計資料からも明らかになった。そこで個人や家族による願かけやアレヴィー・ベクタシの文脈行われるクルバンを中心にして報告する。
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エジプトからクウェートへの出稼ぎ者の事例から
岡戸 真幸
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E07-
発行日: 2015年
公開日: 2015/05/13
会議録・要旨集
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本発表は、エジプト人の社会的ネットワークが国境を越えて、複数の場所を持ち、相互につながりを維持しながら、かつ情報を発信するような多場所的な人間関係へといかに展開するかを、クウェートへの様々な階層の出稼ぎ労働者を対象として、エジプトと双方向から理解する試みであり、複数の現場を拠点とする者たちが故国と結ぶ関係を国境にとらわれずに、多元的に検討し、同時代に生起する現象として彼らのネットワークを分析する。
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エチオピア北部オロモ系農耕民ライヤにおける移住物語を事例として
大場 千景
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E08-
発行日: 2015年
公開日: 2015/05/13
会議録・要旨集
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本発表の目的は、1)エチオピア北部に居住しているライヤと呼ばれるオロモ系農耕民の間で伝承されてきた移住物語をその背景となっている社会的、文化的コンテクストと共に読み解きながら、物語に内在する歴史的事実や当事者たちの歴史意識のあり方を明らかにすることである。2)伝承に関する分析とともに、その他の調査結果を合せてみていきながら、ライヤとよばれる人々の起源となる社会を検証的に同定することである。
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ルワンダ農村社会で曖昧なカテゴリーを生きぬくために
近藤 有希子
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E09-
発行日: 2015年
公開日: 2015/05/13
会議録・要旨集
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ルワンダでは1990年代に紛争と虐殺を経験した。凄惨な個人的経験と、「歴史」という集団的記憶表象との狭間にあって、沈黙し、静かに口を閉ざす人びとは、いかにともに生きるのか。紛争後に創出される二分的な社会カテゴリーの範疇からこぼれ落ちてしまう人びとに着目して、共住や共食といった個人の身体と集団の形成にかかわる日常実践のなかで、彼らが構築する親密な関係性と、他者の困難への応答能力の可能性について検討する。
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マーシャル諸島核実験被害賠償問題をめぐって
中原 聖乃
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E10-
発行日: 2015年
公開日: 2015/05/13
会議録・要旨集
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本発表は、アメリカ合衆国が1946年から1958年まで太平洋のマーシャル諸島共和国で行った核実験被害についての賠償や謝罪に焦点を当て、米政府とロンゲラップ共同体の人びととの間の和解がすすまない要因を考察する。おもに、両者の和解や賠償支払いを阻む、科学的な被害における「合理的説明」や謝罪の価値観の相違に焦点を当てる。
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コソボ紛争時のアルバニア人女性被害者の事例から
吉村 美和
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E11-
発行日: 2015年
公開日: 2015/05/13
会議録・要旨集
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旧ユーゴスラビア紛争における民族浄化は、大量虐殺、および組織的強姦や強制妊娠などの性暴力による排除が横行した凄惨なものであり今なお民族集団間に遺恨を残している。報告者は、コソボ紛争時にセルビア人男性からアルバニア人女性に対して行なわれた性暴力を対象に、性被害に遭遇した女性たちを支援しているコソボの民間施設を訪問し、紛争時の性被害とそれ以後の生活の実態について聞き取り調査を行った。その結果、アルバニア人の慣習法であるカヌン(Kanun)が、性暴力を受けた女性たちに大きな影響を与えていることが明らかになった。今回の報告では、先行研究とフィールドでの事例を照らし合わせながら、アルバニア人女性たちが経験した性被害の事例を3つ提示し、それらを分析することでカヌンと紛争時の性暴力の関係について考察していく。
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-台湾二二八事件にまつわる南西諸島出身の行方不明者の事例から-
高 誠晩
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E12-
発行日: 2015年
公開日: 2015/05/13
会議録・要旨集
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本発表の第一の目的は、台湾二二八事件に巻き込まれ「犠牲」になった南西諸島出身の行方不明者の家系記録を手がかりにして、遺族が、彼/彼女たちの社会的文化的な意味づけを通してどのように近親者が経験した悲劇を表現してきたかについて実証的かつ多面的に解明することにある。第二の目的は、その意味づけの過程で模索された人びとの工夫を検討することを通して、男性成員の喪失による父系出自集団維持の危機にどのように対処し、その危機を乗り越えることができたのかについて考察する。こうした父系出自集団レベルにおいて創造・蓄積し、運用されてきた記載実践から、日常生活の戦略と絡み合って行われてきた死後処理のダイナミズムを解明し、歴史に描かれることのない暴力の被害者たちの記憶を保持し継承する民衆の生活知の可能性を展望する。具体的には、遺族によって書き記されてきた除籍謄本と位牌、厨子甕上の記録についての相互比較分析を試みる。
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