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地域における実践活動から
森 正美
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E17-
発行日: 2016年
公開日: 2016/04/23
会議録・要旨集
フリー
課題発見力、コミュニケーション力、資料分析考察力など現在の大学教育で注目されるPBLなどのアクティブラーニングと人類学の学問的手法が合致する点は多い。またフィールドの実情を重視した住民との関係性構築という点においても人類学が地域で貢献できることは少なくない。本報告では、京都府宇治市を中心とする多様な地域主体との活動実践を検証し,人類学の全体性・横断性という視座の可能性を論じる。
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愛知県立大学国際関係学科「旅の写真展」の実践報告
亀井 伸孝
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E18-
発行日: 2016年
公開日: 2016/04/23
会議録・要旨集
フリー
近年の大学および学生を取り巻く環境の変化を受け、フィールドワーク教育いかに構想していくかについて、実践事例をもとに検討する。愛知県立大学国際関係学科では、2011年から実施しているフィールドワーク・フェスタ「旅の写真展」の実践を通じ、フィールドワークの振興を図っている。フィールドワーク教育においては、学生たちがすでにもっているモノなどに着目し、その潜在能力を引き出して活かすことも重要であろう。
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エデュケーションにおける応答の人類学
飯嶋 秀治
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E19-
発行日: 2016年
公開日: 2016/04/23
会議録・要旨集
フリー
水俣は、公式確認から60年経った現在でも病という言説と結びつけられている。県外ではそれ以外は知られてないとさえ言えよう。その理不尽を滲ませる出身者にもしばしば会う。ではポスト罹災地の住民が、来訪した研究者にどのような視線を投げかけるか。一般にフィールドと研究者の信頼形成は重視されるが、教育場面ではそれを指導する立場となる。本発表では応答する身体のエデュケーション作業を論じる。
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共同体ガバナンスにおける普遍的道徳基盤研究の可能性
竹川 大介
p.
F01-
発行日: 2016年
公開日: 2016/04/23
会議録・要旨集
フリー
ソロモン諸島のイルカ漁をめぐり国際社会と地域社会の間に起きた葛藤事例を元に、紛争/葛藤(conflict)解決における共同体ガバナンスのありかたについて、応報的正義/司法(justice)と修復的正義/司法のふたつの側面から分析をおこない、そこにみられる普遍的道徳基盤研究の可能性を提案する。
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バヌアツ共和国エロマンガ島の疫病の語りと葛藤の事例から
大津留 香織
p.
F02-
発行日: 2016年
公開日: 2016/04/23
会議録・要旨集
フリー
バヌアツ共和国エロマンガ島では、19世紀後半から20世紀前半にかけて流行した疫病の理由が、北部ではキリストの天罰、南部では島民の先祖が呪術によってお互いに戦ったためであるとされている。疫病に関する人々の語りからは、現在の状況にあわせて歴史的経緯をいわば資源としてどのように活用するかという視点が垣間見える。また現在、伝統文化の正統性についての南北の対立が起こっており、その紛争について報告・考察する。
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保津川におけるNPOの活動から
手塚 恵子
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F03-
発行日: 2016年
公開日: 2016/04/23
会議録・要旨集
フリー
ダムの稼働により漁業などの生業が廃業を余儀なくされ、またダムの建設に伴って水没せざるを得ない集落が生じるなど、ダムの建設が日本の地域社会に大きな問題を与えたことは広く知られている。本報告は日吉ダムの稼働後に始まった大堰川(保津川)流域の3種類のNPOの活動を示しながら、ダム稼働後の流域の再生において研究者が果たしうる役割について検討するものである。
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カナダのブリティッシュ・コロンビア州中央部における土地権原裁判を事例に
永井 文也
p.
F04-
発行日: 2016年
公開日: 2016/04/23
会議録・要旨集
フリー
本報告の目的は、「先住民族」という概念が内包する政治性に鑑み、経験的な実地調査による民族誌的記述を行っている人類学者が、先住民族権利運動において果たしうる貢献の可能性を考察することにある。 特に、カナダのブリティッシュ・コロンビア州中央部に居住するチルコーティン(Tsilhqot’in)と呼ばれる先住民族集団が起こした土地権原を求める訴訟を事例に、その過程で人類学者が担った役割を主な考察の対象とする。
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高野 さやか
p.
F05-
発行日: 2016年
公開日: 2016/04/23
会議録・要旨集
フリー
「法と開発」をめぐっては、地理的にも対象としても近い領域を扱っている法学者と文化人類学者の間に、往々にしてすれ違いが見られる。本発表では、なぜ、どのようにこうしたすれ違いが生じているのかについての背景も含め、法と開発の諸問題について検討する。
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ホーチミン市を事例として
グエン ティ ホアイ チャウ
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F06-
発行日: 2016年
公開日: 2016/04/23
会議録・要旨集
フリー
ベトナムにおいては、戦争が多かった独自の歴史の中で、血縁による民族の団結が強化されたり、また紀元後2000年以上、祖先祭祀を重視する儒教を積極的に受容してきた背景があることからも、祖先祭祀は重要視されている。従って、ベトナム民族の文化基盤を成す重要な要素の一つとしての祖先祭祀は重要な研究テーマになっている。 本論文は、都市化が進み、祖先祭祀を支える基盤である親族集団等を取り巻く環境が変わりつつある現代ベトナムにおいて、特に儒教との関係で、現在進行しつつある祖先祭祀の変容のあり方を明らかにすることを目的とする。この中では、まず、今までの先行研究にあまり言及されなかった儒教の核心とする「孝」原理を表わす父系血縁原理に重点を置き、祖先祭祀の従来のあり方を確認する。これを踏まえて、仏教化や儀礼の簡素化、さらに祀られる対象の「双系化」等といった祖先祭祀の変容のあり方、さらに祖先祭祀の今後の方向性を論じる。
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鹿児島県沖永良部島の「祖先崇拝」と高齢者福祉を事例として
菅沼 文乃
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F07-
発行日: 2016年
公開日: 2016/04/23
会議録・要旨集
フリー
沖永良部島の老年者観に高齢者福祉が与える影響について検討する。「祖先崇拝」の対象とされるウヤホーは、直系の死者に限らず「尊敬の対象である古老・地域共同体の先人」をも含むが、高齢者福祉の導入によってその性質は「年長者として敬うべきウヤホー」から「社会的に支援すべき高齢者」へ、また「祖先崇拝」の場も「伝統的」な地域共同体だけでなく、「社会福祉」というフィールドまで緩やかに拡大していることを指摘する。
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沖縄本島北部X区の嫁(ユミ)たちの語りに着目して
吉田 佳世
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F08-
発行日: 2016年
公開日: 2016/04/23
会議録・要旨集
フリー
沖縄は祖先祭祀におけるジェンダーのあり方についてのフェミニズム的な議論が重ねられてきた地域である。しかし、今日でも多くの女性が祖先祭祀に従事しており、なかにはこうしたフェミニズム的な議論を「何も分かっていない」と一蹴する女性たちも少なくない。本発表では彼女たちの視点から祖先祭祀がいかなる空間であるのかを検討していくことで、女性にとって不利なものにみえる慣習になぜ女性が従事するのかを考えてみたい。
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沖縄県宮古島市島尻の仮面祭祀「パーントゥ」を事例として
佐藤 純子
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F09-
発行日: 2016年
公開日: 2016/04/23
会議録・要旨集
フリー
本研究は日本の民俗社会で伝承されてきた伝統的祭祀を、地域共同体における道徳的思考と倫理的行動体系を再生産する重要な装置の一つとして再検討するものである。我が国でも東日本大震災で被災した伝統的祭祀の復活が核となり、地域社会に対する道徳的行動が再構築されつつある。パーントゥ儀礼における住民の行動やその説明をとおして、共同体における道徳的思考・倫理的行動を分析し、島尻共同体の再構築について考察する。
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ウガンダの難民居住地における南スーダン難民の小農経済と社会経済関係
村橋 勲
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F10-
発行日: 2016年
公開日: 2016/04/23
会議録・要旨集
フリー
本発表の目的は、ウガンダのキリヤドンゴ難民居住地を事例とし、南スーダン難民の生計における難民の「自立」と依存を考察することである。ウガンダは、1955年から現在に至るまで、多くの(南)スーダン難民を受け入れてきた。発表では、ウガンダの難民政策の下での難民の生計活動とホスト社会の形成に注目し、生計における難民の「自立」が、個々の生計活動だけでなく、ホスト社会との社会経済関係に依存していることを示す。
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米国メリーランド州での調査報告
石井 洋子
p.
F11-
発行日: 2016年
公開日: 2016/04/23
会議録・要旨集
フリー
ケニア人の渡米は90年代以降に急増し、同時に「頭脳流出」の問題が指摘されている。そうした頭脳を母国へ戻し、自国経済の発展に役立てる試みもあるが、その帰還政策は移民の人生計画と折り合わず、開発と移民の状況を安易に結びつける事はできない。本発表では、米国で暮らしているギクユ人高技能移民の特徴を示すと同時に、近年の恩返しブームの実践例を取り上げ、国家開発とは異なる形で母国に影響を与える可能性を示す。
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カナダ、トロント市周辺のパンジャーブ移民の事例より
東 聖子
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F12-
発行日: 2016年
公開日: 2016/04/23
会議録・要旨集
フリー
本発表では、カナダのトロント市周辺にくらすパンジャーブ移民の事例から、移民による文化再興の可能性を探ることを目的とする。国境線に分断されたまま、交流することのなかったインドとパキスタンの両パンジャーブの人々が、移住先で「再会」し、同じ社会の成員として関係を築いていくなかで、パンジャーブ分断以前のような、宗教や国家の境界に依拠しないアイデンティティや文化を再興しうる可能性があることを見出したい。
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ブラジル、マト・グロッソ州における農地改革を事例として
後藤 健志
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F13-
発行日: 2016年
公開日: 2016/04/23
会議録・要旨集
フリー
発表者は、ブラジル中西部マト・グロッソ州において、国立植民農地改革院(INCRA)によって農地改革を目的に建設された入植地に関して、通算17ヶ月間の調査を実施してきた。農地改革の受益者とは、主に経済的機会を求めて、生活基盤のある複数の地点を比較的短期間のうちに遊動しながら生活している農村移民労働者たちである。彼らは入植地の開発や統治の促進を国家に対して求める一方で、その多くが入植地には定住せず、やがて土地を手放し、他所へと移っていく。今日、多くの政策研究においては「よき統治」を前提にした議論がなされているが、本発表は、そもそも「統治されない」ということが、マト・グロッソの農村で遊動生活を送る人々にとっていかなる重要性を持っているのかという問題を議論の俎上に載せる試みである。
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オーストラリア、シドニーのマラエ建設計画を例に
神山 歩未
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F14-
発行日: 2016年
公開日: 2016/04/23
会議録・要旨集
フリー
本発表は、オーストラリア、シドニーにて、当該地域に暮らすマオリによって建設計画が進められている祭祀場マラエについて、異なる国の先住民の間でみられる「先住民」ポリティクスと関連づけて考察を試みるものである。マラエをめぐりオーストラリアに移住したマオリが現地の先住民に対し講じる様々な政治的な対応が、母国でマオリが移民に求める対応の写鏡となっている可能性があると結論づける。
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中川 敏
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F15-
発行日: 2016年
公開日: 2016/04/23
会議録・要旨集
フリー
一昨年の発表(「異文化の見つけ方」)では、否定性の欠如した文化という状況からいかにして抜け出すか、すなわち、いかにして文化相対主義が可能かについて述べた。キーワードはアスペクト把握、すなわち複相把握である。去年の発表では副総把握が浅い把握、深い把握とに分けて考えるべきであることを引用を例として議論した。今回の発表は、浅い複相把握と深い複相把握の考え方を、ゲーム、虚構、フィールドワークへと広げて考えていきたい。
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日本における清酒業の現場を事例として
岩谷 洋史
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F16-
発行日: 2016年
公開日: 2016/04/23
会議録・要旨集
フリー
現代日本社会のある特定のフィールドに赴いた際、そのフィールドの人びとは、人類学者と同じような知的活動を行っている場合がある。このようなフィールドで人類学者がフィールドワークをする際に、どのように展開し、対象を記述していけばよいのであろうか?本発表は、長期にわたって関わり続けている日本国内の清酒業の現場を事例として、この問題を考察し、新たなエスノグラフィーのあり方を探る。
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エジプト・ブハイラ県バドル郡の住民Gを事例として
竹村 和朗
p.
F17-
発行日: 2016年
公開日: 2016/04/23
会議録・要旨集
フリー
本発表は、個人の語りを書くことについて考察する。録音された対話をそのままテクストにしたドゥワイヤーの実験的民族誌の手法と異なり、発表者は、Gの語りを録音せず、わずかなメモと記憶にもとづき会話の後に記したフィールドノートを材料とする。この違いにもとづき、個人の語りを書く人類学者の役割は、「立ち聞きする者」でも「対話者」でもなく、聞いた話を自ら解釈し再構成する「ノンフィクション作家」であると論じる。
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旦過市場「大學堂」の運営の事例から
木下 靖子
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F18-
発行日: 2016年
公開日: 2016/04/23
会議録・要旨集
フリー
発表では、学生がフィールドワークをおこなうにあたって必要な経験知を得るための学習方法として、学外に開設したコミュニティスペースの運営を学生がおこなう取り組みについて報告する。大學堂の活動と実践に関する機能は、①通常店舗として開店〈インフォーマントに出会うトラップ〉、②企画の運営、商品開発〈研究、社会実験の実践〉、③シンポジウム、ワークショップの開催〈研究の成果を語る場〉、以上3点である。
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資源としてのメソアメリカ文明
鈴木 紀, 禪野 美帆, 杓谷 茂樹, 小林 貴徳, 本谷 裕子
p.
G01-
発行日: 2016年
公開日: 2016/04/23
会議録・要旨集
フリー
本分科会は、メソアメリカ文明に由来する事物の資源化という現象に焦点を当てる。メキシコにおける地域住民と遺跡との関わり、グアテマラ先住民族の織布技術の伝承、およびメソアメリカ文明の美術館展示等を手がかりに、多様なアクターがメソアメリカの文化遺産をどのように意味付け、資源化しているかを提示する。さらに、こうした事例から、メソアメリカ文明は先スペイン時代に栄えた古代文明であるという言説の再考を試みる。
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展示の詩学と政治学
鈴木 紀
p.
G02-
発行日: 2016年
公開日: 2016/04/23
会議録・要旨集
フリー
本発表は、メソアメリカ文明の資源化の事例として美術館展示に焦点を当てる。メソアメリカの遺物を展示する4つの美術館を比較し、それぞれの展示がこの文明をどのように表象しているか(展示の詩学)、その表象の背景にどのような関心が働いているか(展示の政治学)を検討する。この比較から示唆されるのは、メソアメリカ文明の資源化が、文化の表象行為の常として、「部分的な真実」の構築にすぎないということである。
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禪野 美帆
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G03-
発行日: 2016年
公開日: 2016/04/23
会議録・要旨集
フリー
メキシコの首都には、元は先住民村落だった地区が多数存在する。その内部には様々な由来を持つ者が居住しているが、多くの場合「地元民」を自称する人々が存在している。本報告で取り上げる旧先住民村落、市南西部のサン・ベルナベ・オコテペック地区に接する共同利用地には、後古典期前期の小さなピラミッドがメキシコの国立研究機関によって一部復元されている。それは誰によって、どのように資源化されているのか明らかにする。
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メキシコ、チョルーラの大ピラミッド遺跡を含む都市景観をめぐって
小林 貴徳
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G04-
発行日: 2016年
公開日: 2016/04/23
会議録・要旨集
フリー
本報告では、メキシコ中央部の都市域に位置する古代遺跡を舞台に繰り広げられる、行政による観光開発と、それに対する地域住民の抵抗活動という、官対民のせめぎ合いに焦点を当て、文化的景観がどのように形成、保護、創出されるのか考察する。文化の資源化をめぐる行政と地域住民との隔たりを浮かび上がらせるため、遺跡を内包する都市景観に向けられた「活用すべき資源」と「守るべき遺産」という異なるまなざしに着目する。
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チチェン・イツァ遺跡公園における露店商の選択
杓谷 茂樹
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G05-
発行日: 2016年
公開日: 2016/04/23
会議録・要旨集
フリー
本発表では、メキシコのユカタン州にあるマヤ遺跡、チチェン・イツァで10年以上続いている地元露店商不法侵入問題を取り上げ、この遺跡公園に関与する様々なステークホルダーの、マヤを「資源化」しようとする思惑に満ちたまなざしが常にぶつかり合い、また交叉する公園内の状況の中で、そうした思惑に対峙して自分たちのポジションを確保してしまった、地元露店商たちの姿勢について考察したい。
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本谷 裕子
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G06-
発行日: 2016年
公開日: 2016/04/23
会議録・要旨集
フリー
本発表は、先スペイン期起源の織機(後帯機・こうたいばた)、織布、その織布で衣を作り装う女性に焦点を当て、資源化の解釈という視座から、布に織られる紋様、紋様の複製を介して形成される女性間のインフォーマルなネットワークとその変容を考察する。国内外の博物館が収蔵する実物資料(19世紀末~2000年)と現地調査を連動させた研究成果に、二週間の短期調査(2015年)の結果を加え、ネットワークの変容を辿る。
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牧畜および生業間比較を中心として
尾崎 孝宏
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G07-
発行日: 2016年
公開日: 2016/04/23
会議録・要旨集
フリー
本分科会の目的は、市場経済の浸透に伴い市場向けの商品生産として家畜を飼養する傾向を強化している牧畜民の現状を出発点とし、比較研究によって脱生業化時代における生業論の再検討を目指す。具体的には、はモンゴル高原における事例報告をベースに地域間比較と生業間比較を通じ、生産や消費に加えて流通を生業論に組み込む試みの可能性を提示することで、生業論における着目点の変化を提起したい。
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南モンゴル、シリンゴル盟の事例および地域間比較より
尾崎 孝宏
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G08-
発行日: 2016年
公開日: 2016/04/23
会議録・要旨集
フリー
馬乳酒は内陸アジアのモンゴル系・トルコ系牧畜民に製造されるアルコール度数の低い酒である。馬乳酒はその特性より、少なくともモンゴル高原においては、従来(2000年ころまで)大規模な流通の対象物ではなかったが、市場経済の浸透に伴い、北モンゴルに続き南モンゴルにおいても商品化が進んでいる。ただし両者には相応の差異が見いだされ、その由来には利用可能な技術のほか、従来的な生業活動としての連続性が推測される。
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工場製の実用品とハンドメイドのおみやげ
風戸 真理
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G09-
発行日: 2016年
公開日: 2016/04/23
会議録・要旨集
フリー
モンゴルの国家体制や市場の変化のもとで、羊毛からフェルトを生産する技術と製品のあり方を具体的に記述した。現代モンゴル国には、フェルト生産技術には伝統的/機械的の2つ、製品には「壁フェルト」、「伝統雑貨」、「フェルト小物」の3種類がある。壁フェルトと伝統雑貨は文化内で消費され、両技術で生産されていた。他方、フェルト小物は文化外へ輸出され、伝統的な技術で作ることでハンドメイドという価値を構成していた。
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波佐間 逸博
p.
G10-
発行日: 2016年
公開日: 2016/04/23
会議録・要旨集
フリー
本発表では、ウガンダ共和国北東部、カラモジャ地域におけるドドス社会での調査にもとづき、東アフリカの生業牧畜の固有性が、近代化とグローバル化にともなって急速に浸透している市場経済とどのように絡みあっているかを、牧畜民たちがおこなう家畜取引の事例を参照することによって、具体的に解きほぐしてみたい。
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中国大興安嶺のエヴェンキ族らの事例から
卯田 宗平
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G11-
発行日: 2016年
公開日: 2016/04/23
会議録・要旨集
フリー
本発表では、中国大興安嶺においてトナカイ飼養を続けるエヴェンキ族らを対象に、①トナカイの役割が狩猟時の荷駄運搬用や騎乗用といった「生産の手段」から角を採取するための「生産の対象」に変化するなか、彼らの技術的な対応の実際を報告する。そのうえで、②トナカイ飼養が引き続き可能になった背景を検討する。この作業を通じて、脱生業化時代の生計維持の可能性について技術論の側面から考察を加える。
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E. ヴィヴェイロス・デ・カストロにおける存在論の含意と射程
相原 健志
p.
H01-
発行日: 2016年
公開日: 2016/04/23
会議録・要旨集
フリー
本発表は、ブラジルの人類学者E. ヴィヴェイロス・デ・カストロの多自然主義に含まれる身体の存在論の含意と射程を析出することを試みる。その記述を辿ると、多自然主義の機制における存在者間の食人的関係は、スピノザ哲学に由来するコナトゥス概念において捉えられる。そしてコナトゥスは、食人のみならず、「翻訳」といった人類学者の実践をも、つまり他者と人類学者のあいだの差異を横断する力として思考されている。
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Epeli Hau’ofaの視点からサーリンズの仕事を捉え直す一考察
早川 和哉
p.
H02-
発行日: 2016年
公開日: 2016/04/23
会議録・要旨集
フリー
本発表はイペリ・ハウオファの視点からM.サーリンズ理論を捉え直すことを目的とする。詳細にはサーリンズ理論の軌跡を各々の時代状況への介入という視点から捉え直すことで、ハウオファがサーリンズの理論を元に自らオセアニアの人々をいかに鼓舞してきたかを明らかにする。そしてサーリンズ理論が従来の伝統の創造論や表象の政治の議論の帰結とは異なるハウオファによるオセアニア・リージョナリズムを促したことを指摘したい。
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『経済と自由』を中心に
佐久間 寛
p.
H03-
発行日: 2016年
公開日: 2016/04/23
会議録・要旨集
フリー
カール・ポランニーの思想を、「ポランニー2・0」とも評される近年の研究動向、とりわけ新たに公刊された論集『経済と自由:文明の転換』の読解をふまえて考察し、その多面的思想のなかに、自由という理念を特殊近代的な経済の枠組みから解き放つことへの一貫した関心が内包されていたことを論じる。
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ネパール・ソルクンブ郡エベレスト南麓地域における道のアレンジメントについて
古川 不可知
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H04-
発行日: 2016年
公開日: 2016/04/23
会議録・要旨集
フリー
本発表では、ネパールのエベレスト地域を対象に、険しい山岳地帯において人々の移動はいかにして可能とされてきたかを明らかにする。ネパール語の「道」概念と人類学的インフラ研究を手掛かりに、当地における「道」とは他者や自己の身体をも含み込んだ配列であると議論する。さらにこの配列は歴史的に、また個々の身体に応じて、異なったものであることを明らかにする。
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南仏・巡礼祭におけるジプシーたちの歩き方に着目して
左地 亮子
p.
H05-
発行日: 2016年
公開日: 2016/04/23
会議録・要旨集
フリー
これまで、マイノリティや日常世界を生きる人々の「記憶」のあり方は、主に「想起」という視点から論じられてきた。これに対して、本報告は、語りや記念行為を通した共同的「想起」を行わないがゆえに、歴史や過去の出来事に「関心をもたない」、それらを「忘却する」といわれてきたジプシーたちの「過去の生き方」に着目し、過去の想起や表象、そして忘却に抗うことで彼らが生きる過去と現在との関係を明らかにする。
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例と例外としてのダイオキシン・ホットスポット
上杉 健志
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H06-
発行日: 2016年
公開日: 2016/04/23
会議録・要旨集
フリー
本発表では、私がベトナム中部トゥア・ティエン・フエ省のアルーイ盆地で行った枯葉剤被害に関する調査を基に、「不確実性」として「ブラック・ボックス」化されがちな予測不能性、不安、(意図的な)無知などの現実を解体し、化学汚染とともに生きることによる不安や不確実性の経験を構成する細やかな戦術や美学を考察する。
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高垣 雅緒
p.
H07-
発行日: 2016年
公開日: 2016/04/23
会議録・要旨集
フリー
福島第一原発事故後の低レベル放射線環境を異文化と捉え、震災後その異文化地帯と化した被災者の住空間が再文化化する過程で、そこに被災者が軟着陸する方策を知的実践を通して被災者に寄り添って模索し、さらには人類学を超えて支援すること。その成果を民俗誌として記述することで人間の他の社会実践と関連付けを導く。本発表では福島で活動する科学者たちの知的実践への参与観察を通して被災者目線での復興について考究する。
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再生医療プロジェクトの事例から
鈴木 和歌奈
p.
H08-
発行日: 2016年
公開日: 2016/04/23
会議録・要旨集
フリー
本発表は、幹細胞を使った再生医療プロジェクトにおける多様な時間性に焦点をあて、アクターネットワーク理論で見過ごされて来た時間やリズム、ケアについて考察することを目指す。細胞の時間、社会的な時間、病気の時間などにどのようにプロジェクトが関わっているかについて「先取りの作業(Clarke forthcoming)」の概念をもとに、分析を行う。
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ラオスにおける電気自動車の導入プロジェクト計画を事例に
難波 美芸
p.
H09-
発行日: 2016年
公開日: 2016/04/23
会議録・要旨集
フリー
本発表では、日本の政府開発援助による電気自動車を活用したラオスにおける新たな低公害型交通システムの導入を目指すプロジェクトの調査・計画段階の事例を取り上げる。本事例を通して、インフラストラクチャーが持つ象徴性と物質性の絡み合った関係、そしてインフラ開発現場における支援する側とされる側の間にあるテンポラリティの差異について検討する。
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―ミャンマー都市部ヤンゴンにおける精霊信仰の事例から―
山本 文子
p.
H10-
発行日: 2016年
公開日: 2016/04/23
会議録・要旨集
フリー
本発表ではミャンマー都市部ヤンゴンにおける精霊信仰を事例に、人が霊媒になるにあたって何が重要とされているかを報告する。具体的には、現在ヤンゴンの霊媒においては、従来言われているような精霊との結婚よりも、「闘鶏の踊り」と呼ばれるアクロバティックな踊りが「できる」ことが重視されていることを指摘し、その上でミャンマーにおける憑依について考察する。
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その歴史性と現代性
福浦 一男
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H11-
発行日: 2016年
公開日: 2016/04/23
会議録・要旨集
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須弥山世界を体現する北タイ、チェンマイの都市計画と精霊信仰、さらには旧ラーンナー王国の精霊信仰と国家権力は互いに密接な関係を持つ。社会生活空間の随所に精霊が宿るという信仰は今でもかなりの程度保持されており、近年の現地でも最大規模の霊媒集団による新たな互助団体組織の試みは、彼らの自律性と独自性の現れである。精霊信仰全般に関与する現代の霊媒たちは、地域社会の儀礼的エイジェントの役割を引き受けつつある。
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東北タイにおけるサックヤンにみる可視と不可視
津村 文彦
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H12-
発行日: 2016年
公開日: 2016/04/23
会議録・要旨集
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タイ王国では現在も若者を中心にタトゥーが流行し、大きくファッション・タトゥーと呪術タトゥーに二分できる。呪術タトゥーは、通常黒色インクを用いて、文様や動物、神々、経文を身体に刻みこむ。しかしときにインクを用いない「見えないタトゥー」が実践される。本報告では、東北タイのタトゥー事例を通して、「見えるタトゥー」との比較のもと、「見えないタトゥー」を取り巻く物質的、宗教的、および社会的状況を検討する。
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龍井地域のM村で発見した巫堂のノートを中心に
許 銀珠
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H13-
発行日: 2016年
公開日: 2016/04/23
会議録・要旨集
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本発表は、中国朝鮮族社会における依頼者の視点からみた巫堂の養母としての社会的役割を考察する試みである。調査地は、中国延辺朝鮮族自治州にある龍井地域である。龍井地域にあるM村は、朝鮮人移民時代に形成されており、巫堂たちも朝鮮半島から移住し、活躍していた地域である。M村で2004まで活躍していた女性の巫堂は、当事者たちを養子・養女として依頼者にメモを書かせていた。それらの文字資料を分析データとして用いる。
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カメルーン東南部、農耕民バクエレの妖術とリアリティ分離
山口 亮太
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H14-
発行日: 2016年
公開日: 2016/04/23
会議録・要旨集
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本発表では、カメルーン東南部の農耕民バクエレの病や不調と、その原因追求過程に着目する。当事者の置かれた状況についての「物語」が検討される過程で、様々に生起する推測と疑念の連鎖が、最終的に決定を下せる権威者不在の状況で、どのように展開・収束しうるのか検討を行う。特に、妖術と関連している場合、リアリティ分離[ポルナー 1987]は容易には収束せず、それによって、妖術の疑いを遍在させることになる点を論じる。
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富裕層から貧困層への一方的贈与
奥田 若菜
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H15-
発行日: 2016年
公開日: 2016/04/23
会議録・要旨集
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本発表では、ブラジルの二つの一方的贈与を考察する。一つは富裕層から貧困層への一方的贈与、もう一つが貧困層のあいだの一方的贈与である。貧困層である路上商人は、一方的贈与によって緊張関係が生じないよう、「望ましい贈与の作法」を用いている。対照的に、富裕層からの贈与は「間違った贈与」と批判されやすい。二つの贈与をめぐる語りの事例から、富裕層から貧困層への援助の障壁を検討する。
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ミクロネシア・ポーンペイの儀礼的貢納にみる計算とモラリティ
河野 正治
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H16-
発行日: 2016年
公開日: 2016/04/23
会議録・要旨集
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本報告では、首長制社会として知られてきたミクロネシア連邦ポーンペイ(旧ポナペ)で現在もなされる祭宴や葬式を民族誌的な事例として提示する。そして、通常は「表敬」と理解される村首長への贈与が、いかにその意味づけを変えていくのかを、贈与のタイミングや手続きに着目して明らかにする。その際、単一の場にとどまらないアクター間の活動の違いに応じた、交換のタイミングの複数性に着目して議論を進める。
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ポリネシア・ツバルからみる首長のマナの現在
小林 誠
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H17-
発行日: 2016年
公開日: 2016/04/23
会議録・要旨集
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これまで、ポリネシアの諸社会において、首長のマナは島の豊穣性と関係づけられて論じられてきた。ところが、本発表が対象とするツバル・ナヌメアの事例では、首長のカタが島の豊穣性として現れるのか、島の「幸福」として現れるのかをめぐって争われていた。本発表では、ナヌメアを取り巻く政治経済的な状況の変化に位置付けながら首長のカタの新たなとらえ方を検討し、オセアニアにおける首長のマナの現状を描き出す。
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パプアニューギニア・ルイジアード諸島における交易と贈与儀礼
門馬 一平
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H18-
発行日: 2016年
公開日: 2016/04/23
会議録・要旨集
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本発表は、個々の思惑による行動がどのように制度やシステムと関連するかについて、パプアニューギニア・ルイジアード諸島における饗宴と交易の事例から考察する。当該地では、互酬性にもとづく贈与交換や、思惑を介した交易を個々人がおこなうことで、財貨が流動し、贈与儀礼において一時的に大集結する。システマティックな儀礼が、人々の思惑を介して自律的に成立していくことを明らかにする。
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