日本文化人類学会研究大会発表要旨集
Online ISSN : 2189-7964
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日本文化人類学会第52回研究大会
選択された号の論文の187件中51~100を表示しています
個人発表 D6-D12
  • モロッコにおける小浄儀礼(ウドゥー)と聖/清潔の語彙
    山口 匠
    セッションID: D12
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/05/22
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    本発表は、ムスリムの日常において「聖/清潔さ」に関する語彙が、いかなる実践(またはその欠如)と結び付けられる形で用いられているかを通じ、そうした語用の中で立ち上がる種々の境界のあり方を明らかにする。この目的のため、「タハーラ」と「ニザーファ」という概念的カテゴリーを導入し、イスラーム諸学の知見を適宜参照しながら、モロッコにおけるフィールドワークにおいて収集した語りのデータを検討する。
分科会5 帝国日本をめぐる歴史認識
  • 韓国と台湾のフィールドから
    上水流 久彦
    セッションID: E1-0
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/05/22
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    帝国日本を巡る歴史認識の実態と形成要因を①一般的な歴史認識上、対照的な韓国と台湾の比較、②植民地体験者から生まれる認識と学術的研究の成果とのズレ、③日本の植民地支配の特殊性、の3つの関心から議論を行い明らかにする。具体的には台湾の若年層の歴史認識、台湾東海岸の神社を巡る記憶、植民地者の記憶と学術的成果のズレ、済州島の植民地支配、4・3事件、朝鮮戦争を巡る記憶、台湾先住民の権利回復運動を取り上げる。
  • 戦後第三世代にみる歴史認識と支配の重層性
    上水流 久彦
    セッションID: E1
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/05/22
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    これまであまり論じられてこなかった台湾の若年層の歴史認識と前の世代の歴史認識との関係性を明らかにする。若年層の日本の植民地支配に対する言い回しの特徴が「客観的に評価する」というものである。これは日本、国民党という重層的支配によって肯定と否定という異なる日本への歴史認識が生まれ、社会を分断することに対する応答といえ、韓国にみない重層的支配は台湾の歴史認識の形成において重要な決定因子である。
  • 台湾東部における植民地経験をめぐる記憶と記録の諸相
    西村 一之
    セッションID: E2
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/05/22
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    先住民族アミと漢民族が混住する台東県C町で起こった先住民族アミと日本警察の衝突をめぐる住民たちの記憶と記録をめぐる人類学研究である。台湾東海岸の小さな町で2000年代に入って作られた「神社」と「抗日事件」に関する記憶と記録は、「親日」というラベリングを超えた異なる言説と動きを住民の中に生んでいる。
  • <在朝日本人(帰還者)>と<韓国人>の語りにみる戦時期と<民族の境界>の生成
    鈴木 文子
    セッションID: E3
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/05/22
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    日本帝国下の朝鮮半島における植民地経験を、平凡な日常を生きる人々がどのように認識し、また支配者、被支配者の関係を記憶してきたか、梶村秀樹が批判した「体験的実感」 にみる植民地とはどのようなものだったか、特に戦時期の政策を中心に、多様なポジショナリティ―にいた日韓双方のインフォーマントのライフストーリーをもとに生活世界の記憶から考察する。
  • 韓国・済州島民の経験と記憶
    伊地知 紀子
    セッションID: E4
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/05/22
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    本報告では、韓国・済州島民が経験した植民地支配、済州4・3事件、朝鮮戦争によって生まれた加害と被害の様相を検討する。これら歴史経験による反日/親日、反託/賛託、武装隊/討伐隊、南/北といった対立は、個々の人生のなかで複雑に絡み合い、村の人間関係にも影響する。幾重にも織り込まれていく加害/被害に人びとはいかにして折り合いをつけようとするのか、フィールドからの知見を踏まえて考えたい。
  • 日本の植民地統治に関わる台湾原住民の諸事例からみえてくるもの
    石垣 直
    セッションID: E5
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/05/22
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    本報告は、日本による植民地統治と関わる台湾原住民の「歴史認識」に関する複数の研究成果の関係性・補完性を再考することを通じて、台湾原住民の事例からこの主題を扱う際の分析枠組みを整理することを目指す。こうした作業によって、「帝国日本」をめぐる韓国と台湾の「歴史認識」を論じる本分科会のみならず、「歴史認識」に関わる他の諸事例の分析ならびに比較に対しても、議論のひとつの土台を提供することが可能となる。
個人発表 E6-E12
  • 宗教人類学において物質を扱う一考察
    二ツ山 達朗
    セッションID: E6
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/05/22
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    本発表は、オリーブが「不死の樹」や「神の恩寵」として信仰の対象となっている事例をもとに、宗教人類学において物質を考える一試論を行うことを目的とした。チュニジア南東部で行った参与観察をもとに、オリーブの樹と農民の相互作用によるオリーブの樹の変容と、それにより不死の樹や神の恩寵であるとみなされ、宗教実践の対象となっている様態について考察した。
  • 経済発展下のカンボジア農村における脆弱性の拡大と宗教実践の多様化
    小林 知
    セッションID: E7
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/05/22
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    本発表は、上座仏教を信仰するカンボジア農村の一部の人々が最近になって新たに始めたサンガハという仏教儀礼を取り上げ、その儀礼を行う人々の近年の生活の変化と、その儀礼自体の特徴をあわせて検討する。それにより、経済発展の進展と共に増大する人々の生活のなかの脆弱性の問題と、それへの対応として人々が生みだす宗教実践の多様化の関係性を明らかにし、社会変化と文化実践という文化人類学の研究分野に資することを目的とする。
  • アルゼンチンの世俗的ユダヤ人と日常的実践
    宇田川 彩
    セッションID: E8
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/05/22
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    本発表ではアルゼンチン・ブエノスアイレスのある家庭におけるフィールド調査に基づき、特に女性と食の視点から<法・伝統・実践>の論理が引き合う様を明らかにする。コード化・概念化されたユダヤ法、「法」とは異なるという否定形によってはじめて相対的に位置づけられる「伝統」、そして世俗的なユダヤ人としての日常的実践は、互いに競合・協調し合いながらブエノスアイレス的なユダヤ性を形作る。
  • 医療・介護関係者からの評価と家族介護の困難性を中心に
    林 美枝子, 永田 志津子
    セッションID: E9
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/05/22
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    多死社会の到来により、増加する死に場所難民に対応するため、国は在宅での看取りを誘導する政策をとっているが、現在の日本の家族介護力は極めて低い。本研究は当事者への聞き取り調査の結果を踏まえ、家族介護の困難性に関する医療・介護の専門職への聞き取り調査の資料から、家族介護力の低下以外の困難性の要因を考察する。
  • フィリピンにおけるプレグナンシーロスをめぐる言説を通して
    久保 裕子
    セッションID: E10
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/05/22
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    現在のフィリピンにおいて、一部の医療機関に生殖技術が導入され、先進国での先例に基づき、ある一定の年齢層に対して出生前診断が推奨されている。他方、中絶行為自体は違法であるが、一部の避妊法の保証と(中絶後の)母体の保護を認めるリプロダクトヘルス法が2012年に制定された。これは社会問題となっている10代の妊娠や貧困女性の中絶の実情を考慮してのことといわれている。フィリピンではネオリベラリズムを背景に、「胎児」をめぐる社会的規範と実態とが多層的に矛盾している状況だ。本発表の目的は、「胎児」をめぐる問題の背景にある、錯綜したいくつかの言説、すなわち「権利」や「倫理」といった言説の歴史的変遷を確認し、そうした言説を辿っていくなかで、フィリピンにおいて「胎児」そのものは不在であったという発表者の仮説について検証するものである。
  • 高齢者ケアからみた人類学的風土論にむけて
    高橋 絵里香
    セッションID: E11
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/05/22
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    本発表は「風土」という概念をいまいちど現代的な議論の枠組として用いるための試論である。フィンランド西南部の島嶼地域における高齢者の抑鬱に対するケア実践から、「鬱」・「孤独」・「自立」という相互に親和的な概念群をめぐる解釈が、天候の季節的な変動と、それに基づく地域的な生活環境の変化に連動する形で揺れ動く様を描写する。こうした民族誌的記述を、風土に再帰していくような集合的な自己の形成過程として理解する。
  • ―特別養護老人ホームの傾聴ボランティアを題材に―
    芳賀 遥
    セッションID: E12
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/05/22
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    本発表では、青森県の特別養護老人ホームの傾聴ボランティア活動を事例に、傾聴ボランティアが施設の高齢者と接する上で、何が傾聴活動の実践を可能にしているのかを明らかにする。傾聴ボランティアの実践に見られる「日常の自分から傾聴者への移行」と「役割の限定」を手がかりに、傾聴活動というコミュニケーションを成立させる仕組みについて考察する。
分科会6 ハンセン病者・回復者の実践と共生
個人発表 F5-F11
  • 中国雲南省モンの事例から
    宮脇 千絵
    セッションID: F5
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/05/22
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    本発表の目的は、中国雲南省のモンの装いを事例として、商品化によって登場した「新款(新しいスタイル)」と呼ばれる服が、モンの服飾をめぐるカテゴリーにいかに位置づけられるのかを考察することである。それにより、モンの服飾観に「晴れ着」という新たなカテゴリーが創出されていること、およびそれがモンの装いに変化をもたらしていると同時に、逆説的にその「民族衣装」性を高めることを明らかにする。
  • モンゴル国の銀製アクセサリー
    風戸 真理
    セッションID: F6
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/05/22
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    本発表では、モンゴル国で先祖から継承される銀製アクセサリーの使用やメンテナンスと、それを媒介する鍛冶師の役割を検討する。分割・融合・再形成が可能な銀の性質は、家族の記憶と審美性という二つの要求を満たし、男性財と女性財の境界を融解し、ネットワーク的に広がる家族の記憶を支えていた。銀製品にみられるこのような分離・融合と変形の自在性には、家畜群や遊牧キャンプの離合集散性に通じる牧畜民らしさがみいだせる。
  • モノ素材の通時的変化と近現代における多様化に関わる諸問題
    角南 聡一郎
    セッションID: F7
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/05/22
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    人類史上、生活や信仰と関わる物質文化は不可欠の存在である。ヒトの身体の進化や、技術や思想等の発展により、モノの素材はより利便性の高いものへと推移していった。本研究では、この素材が代用され転換するという点に注目し、通時的にどのようなモノがどういう形で変化し、「本物」と化していったか、また代用品のままであったかについて概観をし、主に近現代の素材の多様化ととれに伴う諸問題について検討を試みる。
  • 佐久間 香子
    セッションID: F8
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/05/22
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    近年、親族研究のリバイバルともいえる家族・親族のかたちを問い直す研究が相次いで出版された[e.g. 櫻田ら2017、信田ら2013、吉原ら2000]。土台となる議論や切り口は違えど、家族的な「つながり」を再考を企図するこれらの研究が目の当たりにしているのは、複数の国や地域に拡散する親族ネットワークのグローバル化、血縁/非血縁的な集団、あるいはLGBTの婚姻に関する法整備など、昨今ますます多様化する「家族」である。こうした「家族」のかたちや親族のつながりを、人類学の重要なテーマとして考察する視座として、モノの贈与交換からみる人間関係の濃度や、情動やコミュニケーションを含めたオラリティを通じた共在の様態と動態を捉えられないだろうか。

    その試みとして本発表では、香港在住の東南アジア華人社会におけるモノの贈与交換に注目して、その具体的な実践の様態を報告する。対象とするモノは、ツバメの巣をはじめとする、薬効が期待される特殊中華食材である。ここで「特殊」とする理由は、これらが日常的に消費される食材というより、初潮、結婚、妊娠などを機に女性が健康と美の増進のために積極的に摂取することが望ましいと考えらているがゆえに、贈与の対象となるモノだからである。中華料理において、何らかの薬効が認められる、あるいは期待される食材は枚挙に遑がないため、本研究では、非日常性と、薬効の対象が女性の身体あるいは生命力に充てられている食材に限定する。
  • ラオスにおけるインフラストラクチャー・フェティッシュ
    難波 美芸
    セッションID: F9
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/05/22
    会議録・要旨集 フリー
    本発表では、ラオス首都ヴィエンチャンのいたるところに存在するインフラストラクチャー・フェティッシュについて論じる。開発援助に関わる先進国側と、インフラ整備が行われるラオス側の開発当事者の語りに注目し、ウィリアム・ピーツとデヴィッド・グレーバーによるフェティシズム論を参考に、インフラ・フェティッシュがどのようにして新たな関係を結ぶためのツールとなっているのかを考察する。
  • 西アフリカ・トーゴにおける中古電子機器の再利用に着目して
    三津島 一樹
    セッションID: F10
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/05/22
    会議録・要旨集 フリー
    本発表は、トーゴにおける電子テクノロジーの修理業に着目し、先進国とは異なるテクノロジーのあり方に対する人類学的な理解のあり方を模索する。アフリカ諸国では、中国企業の生産する新品のスマートフォンに並んで、先進国から輸入される中古の電子機器が幅を利かせている。人工物を支える技術的要素と社会的要素の重層的な構成に着眼し、「警戒と監視」のないところで電子機器が同一に作動することの意味と可能性を考えたい。
  • 中国福建省西南部山岳地帯における若者の消費活動
    小林 宏至
    セッションID: F11
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/05/22
    会議録・要旨集 フリー
    改革開放政策以降、中国社会は急激な経済発展を遂げた。だがその一方、過度で過剰な消費から距離をおこうとしている現象が社会主義的市場経済を標榜する中国社会において起きている。本報告では、中国福建省西南部の客家社会における3つの事例から、消費社会から距離をおく若者の実情と、それでも彼らが躊躇なく消費するものについて議論する。
分科会7 アートなるものの人類学
  • 芸術と非芸術の《境界的領域》を考える
    登 久希子
    セッションID: G1-0
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/05/22
    会議録・要旨集 フリー
    グローバルな実践としてのアートは、展示や鑑賞、あるいは売買の対象としてのみ存在するわけではない。本分科会では、複数の文脈のあいだで成立するような作品や実践を事例に、アートなるものが偏在する現代における芸術・非芸術の二項対立及びその《境界的領域》について批判的に検討する。実践者あるいは研究者として多様なアートの現場に携わってきた各発表者とともに人類学的な芸術研究の更新につなげたい。
  • 社会性を志向するアートについての一考察
    登 久希子
    セッションID: G1
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/05/22
    会議録・要旨集 フリー
    本発表は2000年代初頭から現代美術の文脈で注目をあつめてきた「ソーシャリー・エンゲイジド・アート」や「ソーシャル・プラクティス」と呼ばれるような「社会性」を指向する芸術実践を事例に、芸術と非芸術としての日常生活(life)のあいだにいかなる《境界的領域》が生起し得るのかを人類学的に考察するものである。
  • 《Self Select: Nairobian in Tokyo》の実践から
    西尾 美也
    セッションID: G2
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/05/22
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    本発表では、世界の諸都市ですれ違う通行人と筆者が衣服を交換し一時的に着用しあうアートプロジェクト《Self Select》において、とくにナイロビ出身のデービッド・オモンディと協働で行なった二つの取り組みを事例に、筆者と非芸術家であるオモンディとの関係性のあり方を重視することから生じる「アートなるもの」を実践者の視点から明らかにし、芸術と非芸術の境界的領域およびアートプロジェクトと展示の関係性を考察する。
  • 「わざ」と「芸術」のはざまからアートの政治性を考える
    山越 英嗣
    セッションID: G3
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/05/22
    会議録・要旨集 フリー
    現代アートの文脈で、あるものが「アート」とされるのは本質的な理由によるのではなく、アート・ワールドと呼ばれる特殊な空間に組み込まれるためだとされる。アートが高度に組織化された制度と協働の産物であるならば、そこには具体的にどのようなプロセスが介在するのだろうか。本発表は、オアハカのストリート(周縁)を生きる者たちが生み出したアート(技)が、やがてアート・ワールドへと組み込まれていった事例を考察する。
  • 他者経験の変換装置としての上映・制作表現ワークショップ
    丹羽 朋子
    セッションID: G4
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/05/22
    会議録・要旨集 フリー
    発表者がアーティストやキュレーター、多様な参加者と協働して実施してきた、人や動物の生の営みを写した記録映像群の観察をもとに、多様な素材や道具と格闘し、自らの身体をもって映像に映された行為をなぞる、上映・制作表現ワークショップを省察する。こうした実践を自他の経験を伝える変換装置として分析しながら、不和や違和を含みつつ他者の経験を分有する技法として、人類学とアートの境域的実践がもち得る可能性を考える。
  • 『大地の芸術祭』の《境界的領域》をめぐって
    兼松 芽永
    セッションID: G5
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/05/22
    会議録・要旨集 フリー
    地域型アートプロジェクトのプロトタイプとみなされる『大地の芸術祭』は文化政策、地方行政、教育、福祉、市民活動など複数領域に渡り、既存の価値や実践をずらす取り組みとして評価されてきた。本発表では、同芸術祭の拠点である新潟県中山間部における「アートなるもの」のゆらぎに着目することで、芸術と非芸術、西洋と非西洋、制度と制作実践の二項対立的議論の前提を問い直し、《境界的領域》のあり方を検討する。
個人発表 G6-G12
分科会8  オートエスノグラフィーの 可能性
  • 研究と生活の人類学的往復を通して
    沼崎 一郎
    セッションID: H1-0
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/05/22
    会議録・要旨集 フリー
    本分科会の目的は、研究技法としてだけではなく、生活技法として、特に「多文化」を生きる技法としてのオートエスノグラフィーの可能性を探ることである。オートエスノグラフィーは、語る主体としての自己を顕在化させつつ、主観と客観、自己と他者、パーソナルなものとポリティカルなものの交差する民族誌的状況を描き出すことによって、再帰的/反省的に人類学的な考察をを展開しようとする試みである。それは、いわゆる「『文化を書く』ショック」以後の人類学における「再帰的/反省的転回」の提起する諸問題を、最もラディカルかつパーソナルに受け止めようとする試みの一つである。本分科会では、各発表者が、それぞれの人生と人類学的営為とを往復しつつ、研究技法としてのみならず、生活技法として、とりわけ「多文化」を生きる技法としてのオートエスノグラフィーの可能性を探る。
  • 記憶をめぐるナラティブの構築の再考に向けて
    堀口 佐知子
    セッションID: H1
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/05/22
    会議録・要旨集 フリー
    本報告の主な目的は、ナラティブの構築と言語・情動、記憶の問題について新たな視座を示しうるものとして回顧的オートエスノグラフィーを位置付けることにある。また、文化を越境してきた報告者の経験を人類学の知見や営みとの関連で、オートエスノグラフィー・ブログの中で振り返ることで人類学者自らの他者観・文化観を再帰的に捉え、ブログというメディアを通じて人類学を社会に拓く可能性と限界について考察することとしたい。
  • オートエスノグラフィーから見える移動の人類学の課題
    リーペレス ファビオ
    セッションID: H2
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/05/22
    会議録・要旨集 フリー
    本発表の目的は、私の移動の遍歴と異文化体験を反省的に振り返るオートエスノグラフィーを通して、ストレンジャーという生き方から人類学を再考することである。私は生まれた時から特定の地域に長く留まることなく移動を繰り返してきたため、いつでもどこでもストレンジャーであった。このような「浮動するストレンジャー」の立場から、改めてストレンジャーとは何者なのか、また文化や文化の差異とは何なのかを捉え直す。
  • 日本の内なるエスニシティへの他者化と自己他者化
    川口 幸大
    セッションID: H3
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/05/22
    会議録・要旨集 フリー
    本発表では、日本の内なるエスニシティへの他者化、および、それを内面化した自己他者化のプロセスに作用する文化認識と実態の所在について、「東北地方で暮らす関西人」である発表者のオートエスノグラフィーをもとに考察する。それをもとに、文化人類学における文化の捉え方を今ひとたび考え直してみたい。
  • SNS上で紡がれる香港在住のタンザニア人たちのライフヒストリーを事例に
    小川 さやか
    セッションID: H4
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/05/22
    会議録・要旨集 フリー
    本発表では、香港在住のタンザニア人交易人・仲介業者がSNS上で紡いでいるオートエスノグラフィと、彼らの商慣行やSNSに参与した結果をもとに私が紡ぐオートエスノグラフィとの違いを、「信頼」をめぐる異なる論理に着目して明らかにすることで、調査者と被調査者によるオートエスノグラフィを交差させて論じるための方法論的視座を提示することを目的としている。
個人発表 H5-H11
  • 科学技術基本法以降の大学と研究開発(R&D)
    池田 光穂
    セッションID: H5
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/05/22
    会議録・要旨集 フリー
    1995年に施行された科学技術基本法以降の、日本おける政府先導の研究開発(R&D)と大学を中心とした高等研究機関の役割、そして企業との連携の動向について、従来の科学史や科学技術社会論(STS)のアプローチとは異なる、文化分析にもとづく民族誌的調査の報告をおこなう。さらに演者が関わる大学院生むけのコミュニケーション・デザイン教育の経験をとおして、大学院教育がそれらの政策や現場での実践にどのような寄与や批判が可能なのかについて探究する。
  • Anthropology of Responce-ability:A Dialogue with Histories
    飯嶋 秀治
    セッションID: H6
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/05/22
    会議録・要旨集 フリー
    日本文化人類学会課題研究懇談会「応答の人類学」では、6年で36回の研究会を主催し、100本以上の発表に250名以上の参加者を得てきたが、そこで問題にされてきた一つが過去の「応用」「実用」「実践」の人類学との異同であった。そこで今回はその一つの試みとして、応用人類学、特に第二次世界大戦期前後のグレゴリー・ベイトソンとOSS(戦略諜報局)との関係を事例に取り上げ、おお対話を試みたいと思う。
  • メリカ・ミシガン大学日本研究の戦中・戦後
    中生 勝美
    セッションID: H7
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/05/22
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    新しい人類学史の構築を目指して、研究組織を立ち上げて共同研究を始めている。今回は、その紹介とともに、人類学の実践を歴史的観点から批判的に検討することで、現在的な問題を考えるヒントになることを提示したい。その実例として、アメリカミシガン大学の日本研究が、戦時中に対日本戦略として始まり、戦後は人類学という方法論を用いながら、大きな枠組みで戦後の国際環境と関連して進展したことを報告する。
  • メラネシアの諸事例から考える
    春日 直樹
    セッションID: H8
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/05/22
    会議録・要旨集 フリー
    近年の人類学では、身体と精神、自然と文化、人間と非人間などの西洋近代的な二分法を批判する代替的なアプローチがいくつも提起されてきた。本発表ではメラネシアの主にパプアニューギニアの民族誌に依拠して、ローカル・ノレッジをつうじたあたらしい二分法を提起する。「みえるもの」「みえないもの」というそれによって、(1)「私」という意識と物理世界との関係を呈示し直し、(2)人間の記号活動と対称性の論理とを関連づけ、(3)「呪術」についての新解釈を提起する。
  • 鹿児島大学法文学部「文化人類学実習」を事例として
    尾崎 孝宏, 兼城 糸絵, 宋 多情
    セッションID: H9
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/05/22
    会議録・要旨集 フリー
    本発表では、鹿児島大学法文学部授業科目「文化人類学実習」での経験を事例として、海外研修授業を通した人類学教育の可能性を検討する。本授業は韓国に1週間程度滞在し、学術交流協定締結校の大学生と共同で社会調査を行う正課の授業である。短期の研修で問題となるのは学生のリテラシーだが、現状では、事前情報提供や現地での解説などを極力提供しない形式などを採用することで、一定の成果を得ていると判断しうる。
  • アメリカ合衆国ナバホ保留地における感情の表出をめぐって
    渡辺 浩平
    セッションID: H10
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/05/22
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    本発表では、アメリカ合衆国ナバホ保留地に暮らす人々の日常生活における感情の表出が、いかに人々の間の社会関係を調整・維持しているかを示す。怒りや不満という感情は、人々の心身のバランスを乱す要因であるとされるナバホでは、そのような否定的な感情をコントロールすることが重要である。本発表では、人々が感情の表出を通じて、他者との関係を調整していることを示す。
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