日本歯科医学教育学会雑誌
Online ISSN : 2433-1651
Print ISSN : 0914-5133
36 巻, 2 号
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研究報告
  • 野村 みずき, 佐藤 拓実, 中村 太, 原 さやか, 石﨑 裕子, 伊藤 晴江, 奥村 暢旦, 塩見 晶, 長谷川 真奈, 藤井 規孝
    2020 年 36 巻 2 号 p. 63-70
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/20
    ジャーナル フリー

    抄録 今回, 圧力センサー付マネキン (以下, マネキン) を歯科治療時の力のコントロールの教育に応用することを試みた. 被験者は新潟大学病院臨床研修歯科医21名とし, 下顎全部床義歯の適合診査を対象処置とした. 初めに被験者にマネキンに装着した全部床義歯に対する力の加え方と力の目安は50Nであることを説明し, 力の大きさを計測した (F0). 次に11名のⅠ群と10名のⅡ群に分け, Ⅰ群にはマネキンに表示される下顎全体にかかる力の大きさを確認しながら体験学習を行わせた. 続いて, Ⅰ, Ⅱ群の被験者をⅠA, ⅠB, ⅡA, ⅡBの2群ずつとした後, ⅠA, ⅡAには写真のみ提示し, ⅠB, ⅡBには写真を用いて調整を要する強接触部の確認方法を説明し, 再度力を計測した (F1). すべての計測は義歯内面に適合診査材料を塗布した状態で行い, 計測後に各被験者に強接触部を回答させてあらかじめ無歯顎模型に設けた凸部と照合し, 正答率を算出した. また, 各被験者が圧接した義歯内面について補綴を専門とする教員に同様の判定を依頼した. 得られたデータを統計的に解析したところ, Ⅰ群ではF0, F1に有意差を認め, Ⅱ群では認めなかった. 適合診査の判定はA, Bグループ間に差は認めなかったが, 教員が評価した強接触部の数と被験者が加えた力の大きさには相関を認めた. 以上の結果から, さらに工夫を加えれば本装置は下顎全部床義歯の調整に有用な教育ツールになりうることが示唆された.

  • 佐藤 拓実, 中村 太, 林 豊彦, 奥村 暢旦, 藤井 規孝
    2020 年 36 巻 2 号 p. 71-80
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/20
    ジャーナル フリー

    抄録 歯科における臨床技能教育は, 技術職的要素を多分に含むことやさまざまな材料や機器を適切に扱う必要があることなどから簡単ではなく, 現状で歯科臨床技能の効果的な学修方法が確立しているとはいえない. 本研究は, この課題を解決するため, 身体動作計測の手法を用いて, 診療姿勢や診療動作を定量的に解析することを目的とした.

     対象は, 歯科医師群として新潟大学医歯学総合病院勤務の男性歯科医師7名, 学生群として新潟大学歯学部歯学科6年男子学生9名の合計16名とした. 光学式モーションキャプチャ・システムを用いて, タービンハンドピースにダイヤモンドポイントを装着使用した場合のⅠ級インレー形成時の動作解析を行った.

     歯科医師と学生では窩洞外形に相当するダイヤモンドポイント先端の軌跡は明らかに異なり, 切削に掛かった時間は歯科医師が明らかに短かった. 歯科医師のほうが切削中の手首, 肘の関節の角度の変化が少なく, 頭部, 頸部に比べて胸部が人工歯から遠いため, 切削中姿勢や上肢を安定させ, 一方で学生は覗き込むような姿勢で, 手首や肘でエアタービンをコントロールしていることがわかった.

     本研究において, 動作解析により, Ⅰ級インレー窩洞形成時のエアタービン, 上肢, 体幹の客観的評価を行うことができ, 臨床的示唆が得られた.

  • 友田 篤臣, 鈴木 一吉, 冨士谷 盛興, 武部 純, 本田 雅規
    2020 年 36 巻 2 号 p. 81-92
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/20
    ジャーナル フリー

    抄録 愛知学院大学歯学部では, 2016, 2017, 2018年度の3年間にわたり, 歯学部と薬学部の5年生を対象に合同IPE 「Interprofessional Education (多職種連携教育) 」 を実施している. そこで, 3年間の実施概要と学生に対するアンケート結果について報告する.

     本IPEは, 両学部生をランダムに少人数グループに分けたPBL形式で行った. 参加人数は, 2016年度 : 歯学部110名, 薬学部121名 (計231名), 2017年度 : 歯学部90名, 薬学部140名 (計230名), 2018年度 : 歯学部99名, 薬学部136名 (計235名) であった. 講義時間については, 2016年度は90分間であったが, 学生の希望に応じ, 2017年度からは120分間に変更した. IPEの内容としては, 事前に模擬患者に関する情報を各学部生に配布し, 当日は患者の問題点抽出, 職種間の質問・依頼事項の発表, 職種間の情報共有について, 合計3回のセクションに分けて討議する構成とした. 討議後, グループごとにディスカッションシートを作成させ, 無作為に抽出した数グループが全体発表を行った.

     アンケート結果より, 各年度ともに 「今回のIPEは有意義であったか」 の問いで7割を超える歯学部生が 「たいへん有意義」 「有意義」 であったと返答があり, 本学IPEが学生にとって有効であることが示唆された.

  • 永松 有紀, 永松 浩, 清水 博史
    2020 年 36 巻 2 号 p. 93-102
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/20
    ジャーナル フリー

    抄録 九州歯科大学口腔機能学講座生体材料学分野では, 歯学科6年次生の要望に応え, 国家試験対策を主目的とした補習講義 「生体材料学演習」 (以下, 補講) を年間8回実施している. 本研究では補講の改善を目指し, 平成29年度の補講後の受講学生に対するアンケート調査から, 学生の受講態度と補講に求める講義内容を調べた.

     全8回を総括すると対象学生の97.8%が1回以上受講した. 全補講を受講した学生は22.0%, 平均受講率は67.2% (標準偏差 : 8.6) であった. 演習問題の事前解答率は回答者の65.3% (15.8) であり, 補講回により大きく変動した. 補講の気づきとして, 回答者の95.9% (4.1) から 「見落としていた点に気づいた」 「間違いやすい箇所がわかった」 「解答の仕方がわかった」 などが挙げられた. 受講の理由・目的としては, 回答者の半数以上から 「集中的に学修する時間を作るため」 「自己学修ではまとめにくいため」 などが挙げられた. 以上のことから, 補講に対する学生の捉え方を考察すると, 個々の国家試験の準備状況に応じた自己対処を目的に, 不安を振り払うために受講していることが認識された. 今後の補講において, 学生の心理・受講態度を踏まえたうえでの有効な学修支援となる学習目標の設定と学習プログラムの組み立ての必要性が示唆された.

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