日本歯科医学教育学会雑誌
Online ISSN : 2433-1651
Print ISSN : 0914-5133
33 巻 , 2 号
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原著
  • 小田 陽平, 小野 和宏, 藤井 規孝, 小林 正治, 前田 健康
    2017 年 33 巻 2 号 p. 65-73
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/12/14
    ジャーナル フリー

    抄録 近年, 歯学部・歯科大学では技能教育の改善が求められ, 診療参加型臨床実習の実践が推奨されている. 本学では以前より, 学生が直接歯科医療行為に参加する臨床実習を実施しているが, その学習成果, すなわち, 現実的な状況で知識や技術を使いこなせる統合的な能力としての 「臨床能力」 を, いかにして直接評価すべきか対応に苦慮してきた. また, 学生が実際の診療の中でどのようなことを感じ, 学習し, どのような指導を受けたか, という学習過程そのものが, 必ずしも整理された形で実体化されていないという問題点があった. そこで, 臨床能力を評価するためのルーブリックを定め, 学生の臨床能力を客観性のある到達レベルとして把握するとともに, 日々の臨床実習での学習活動を記載するポートフォリオと組み合わせて運用することにより, 臨床実習で行っている教育そのものを経時的に記録・評価し, 実体化するという発想にいたった. このような背景から電子ポートフォリオの開発と運用を開始したが, 学生・教員の受け入れはスムースであった. 臨床実習が進むにつれ, ポートフォリオに記載された教員による学生の評価は向上しており, 経験を積むことによる学生の臨床能力向上が反映されたものと推察された. 以上のことから, 臨床実習における電子ポートフォリオの導入は, 学生自身の振り返りや教員の学生指導にとって有用であると考えられた.

  • 大倉 義文, 黒木 まどか, 古野 みはる, 栢 豪洋
    2017 年 33 巻 2 号 p. 74-85
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/12/14
    ジャーナル フリー

    抄録 学修成果の可視化を目的として, 平成26年度歯科衛生学科1年次生 (n=99) を対象とした大学間で汎用性のある設問事項を設定した質問紙調査 (IR学生調査) を実施し, 代表的なIR学生調査の結果 (大学IR群) と比較検討した. 本学学生と大学IR群の2群間の統計解析は, 独立な標本間の比率の差の検定であるχ2検定を用いた.

     本学の全般的な学修状況について, 大学IR群と比較すると, 「専門教育の実践」 に関する肯定的回答は有意に高い比率 (p<0.0001) であったが, 「文献や資料を調べる学習」 や 「自分の考えや研究の発表」, 「学生同士の議論」 は低い比率 (それぞれp<0.0001) であった. 「学生生活の充実度」 や 「全体的な授業の質」, 「前向きな学修態度」 等の教育の質保証に関連した教育要素では, 肯定的な回答の比率は有意に高かった (それぞれp<0.05, p<0.01, p<0.001). また, 初年次教育の 「大学生活への適応」 において重要な教育要素である大学教員や他の学生とのコミュニケーションについても, 高い肯定的な回答の比率が認められた (p<0.05).

     汎用的なIR学生調査の結果を検討することで, 多面的な学修成果の可視化と教育課題の把握を促進し, 歯科医学関連領域の初年次教育の質保証につながる可能性が示唆された.

研究報告
  • 有地 淑子, 木瀬 祥貴, 鈴木 一吉, 友田 篤臣, 千田 彰, 中田 和彦, 有地 榮一郎
    2017 年 33 巻 2 号 p. 86-92
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/12/14
    ジャーナル フリー

    抄録 事例を用いた医療倫理教育のアンケート結果より, 医療倫理の教育効果を検討することを目的とした. 対象は1年次歯学部学生131名. 事例をJonsenらの4分割表を用いて分析し, 事例の検討および対応を議論した. 事例を用いた医療倫理の授業の始業時に未来像, 知識の程度, 医療倫理に関して, 終業時には参加の程度, モチベーション, 習得度の評価, 授業の工夫, 医療倫理に関してアンケート調査を行った.

     始業時のアンケートでは, 約半数が未来像が想像できるとし, 8%のみが知識があると回答した. 「医療倫理で想像すること」 の質問に対して, 患者の意思を尊重すること, 医療人としてのモラル, 人間の命に対する定義という回答が得られた. 終業時のアンケートでは, グループ活動には約80%が参加できたと回答したが, グループ活動で目立った活躍をしたのは限られた学生という回答であった. 終業時には, 知識の程度を除いたその他の質問に対して約半数 (54~63%) が肯定的な回答をした. グループ活動によく参加できた学生ほど授業への興味や事例への興味に高いスコアを与えた. 始業時と比較して, 終業時のモチベーションと知識の回答スコアは上昇し, 医療倫理を深く考える契機となったことが示唆された. 早期の倫理教育が求められているが事例選択が難しく工夫が必要である.

  • 大倉 義文, 黒木 まどか, 古野 みはる, 前田 豊美, 力丸 哲也, 栢 豪洋
    2017 年 33 巻 2 号 p. 93-105
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/12/14
    ジャーナル フリー

    抄録 学生が自身に関する学修成果物を収集していくポートフォリオは, それらを用いて学修到達度を自己評価し, 次に取り組むべき課題を見つけ, 大学生活の中でステップアップを図りながらキャリア形成を支援していく教育ツールである. 今回, 経年的なポートフォリオの取組の中で, 「自己理解・自己管理」 やキャリア形成に関する教育効果や 「自己理解・自己管理能力」 に関連する汎用的能力の自己評価の特徴を明らかにすることを目的に, 歯科衛生学科卒業予定者 (3年次) を対象に平成26年度と27年度の卒業前に質問紙調査を実施し, 得られた学生自己評価データの経年的な変化を分析・検討した.

     自己理解・自己管理やキャリア形成において, 「『自己管理』の重要性を再認識することができた」 「大学生活の目的意識が高まった」 に関する肯定的回答は, 平成27年度に6割程度に増加し, 平成26年度と比べ有意に増加していた (それぞれ, p<0.05). また, 平成27年度の自己管理能力に関連する汎用的能力は, すべての能力において平成26年度と比べて肯定的回答比率が増加していた.

     学修の自己理解・自己管理を高める手段であるポートフォリオの実施を通して, 在学中のキャリア形成が促進されるとともに, ポートフォリオの改善に伴い自己管理能力に関連する汎用的能力が向上する可能性が示唆された.

  • 秋葉 奈美, 長澤 麻沙子, 小野 和宏, 前田 健康, 魚島 勝美
    2017 年 33 巻 2 号 p. 106-114
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/12/14
    ジャーナル フリー

    抄録 本邦では, 社会の急速な高齢化に伴い, 高度な治療が求められる患者や全身的な疾患を有する患者が増加している. また, 患者の意識変化によって, より質の高い治療を求められることが多くなっている結果, 臨床実習に協力していただける患者が減少している. このような背景から, 学生は限られた患者を対象に臨床技能の習得をし, 卒業時には相応の知識と臨床能力を確保しなければならない. この問題を解決するための手段として, 新潟大学歯学部では1つの模型の中に様々な病態を具備した6種類のオリジナルの模型を開発し, 治療計画立案を含めた統合的な模型実習を導入している. 実習は臨床実習直前の5年前期に実施され, 基礎模型実習と臨床実習をつなぐと共に, 不足する臨床実習を補完する役割を果たす. 模型には歯石除去必要部位, 抜歯, 充塡, 歯内治療, 分割抜歯適応歯および歯冠修復, 不良補綴歯, 欠損補綴適応部位を含む. 学生は診断・治療計画立案から歯科処置までをファントムに装着した模型上で実際の臨床をシミュレートする形で行う. 現在, 本実習の評価はルーブリックを用いて行っているが, 評価方法に関しては今後も継続的に検討する必要がある. 実習後の学生アンケートからは実習が有意義なものであったとの回答を得ており, 知識や技術を使いこなす統合的な能力の育成に有効であることが示唆された.

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