環境化学
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16 巻, 4 号
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  • 津田 泰三
    2006 年 16 巻 4 号 p. 567-584
    発行日: 2006/12/25
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    河川及び湖沼の水質ならびに魚類について, 代表的な7種類の除草剤による汚染状況を文献調査データにより明らかにするとともに, 河川及び湖沼に生息する魚類についてこれらの除草剤の濃縮性及び汚染の評価を加えた。日本と諸外国の調査データを比較すると, アトラジンについては日本は河川及び湖沼のいずれにおいても低濃度・低検出頻度であったが, 米国, 中国, ブルガリア等の河川あるいは五大湖のオンタリオ湖およびエリー湖では高濃度・高検出頻度であった。シメトリンについては日本の水田地域において高濃度・高頻度で検出されているが, 国外では中国のみに報告例が見られ, 検出濃度は低かった。モリネート及びベンチオカーブについても日本の水田地域において高濃度・高頻度で検出され,国外では米国及びイタリアの河川おいて比較的高濃度・高頻度の検出例が報告されている。メフェナセット及びプレチラクロールについては国外では報告例が見当たらなかった。シマジンを除く6種類の除草剤について,実験データとフィールドデータとの比較により,河川,湖沼等における魚類の汚染が実験データ(Laboratory BCF)と同様の傾向を示すことが明らかとなった。
  • ―プレ・スクリーニング手法の開発と初期リスク評価結果による検証―
    佐渡友 秀夫, 平井 祐介, 伊藤 愛, 村田 麻里子, 松崎 寿, 高久 正昭, 横山 泰一
    2006 年 16 巻 4 号 p. 585-603
    発行日: 2006/12/25
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    本研究では, PRTR制度対象化学物質の初期リスク評価を効果的に実施するために, 評価の優先順位づけを行う方法を提案し, その有効性を確認した。この方法では, 有害性の強さとPRTR排出量を暴露の程度としてそれぞれ評点化して表し, その積で優先度をつけている。
    そして, 有害性評点と暴露量評点を軸とする簡易リスクマップを作成し, 物質問の位置関係を俯瞰的にレビューすることで, 初期リスク評価の優先順位づけが効果的に実施できていることを確認した。
    また, 本方法の特徴は, ヒト健康影響と生態影響を分離して扱い, PRTR排出量データを媒体別に考慮したことである。そして, 本方法をPRTR対象100物質の初期リスク評価結果により検証した結果, 優先度評点の高さと評価結果との対応関係が極めて良好であった。
    したがって, 本方法が優先順位付けだけでなく, プレ・スクリーニングの方法として有効であることが確認された。さらに, 本方法が単純な原理に基づき透明性の高いやり方で的確に評価結果を予測できることから, 簡易リスク評価手法として一般的に適用できるものと考える。
  • 長浜 剛, 山崎 剛, 佐藤 大祐, 丸田 俊久, 森田 昌敏
    2006 年 16 巻 4 号 p. 605-613
    発行日: 2006/12/25
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    焼却施設を対象にしたダイオキシン類迅速分析方法について検討した。本方法は, ばいじん, 焼却灰, 排出ガスにおいて, 試料からの抽出及び精製操作の合理化, 定量対象異1生体を選択して測定を行うもので, 公定法との相関性が高いことが明らかとなった。
    廃棄物処理に関連する焼却施設へのスクリーニング的活用が期待できる。また, 迅速さと低廉性, 所要の精確さを兼ね備えており, ダイオキシン類削減対策の効果的推進に貢献できる可能性がある。
  • 本山 充希, 古閑 豊和, 野見山 桂, 中川 修平, 松尾 英樹, 篠原 亮太
    2006 年 16 巻 4 号 p. 615-626
    発行日: 2006/12/25
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    下水汚泥または畜産廃棄物コンポスト中のエストロゲン及びアンドロゲン残存量の調査を行った。コンポスト26サンプル中からE1はすべてのサンプルから検出され, E2は21サンプル, E3は1サンプルに検出された。EE2は検出されなかった。テストステロンは21サンプル中18サンプルに検出された。酵母Two-hybridアッセイによる内分泌攪乱性調査の結果, エストロゲン活性はコンポスト21サンプル中13サンプルから確認され, アンドロゲン活性は2サンプルに確認された。本研究結果から, 一般に市販される下水汚泥または畜産廃棄物コンポスト中から性ホルモンが検出され, その半数以上にエストロゲン活性が確認された。
  • 高木 敬彦, 船田 時行, 加藤 行男, Alexandre Tomomitsu OKATANI, 光崎 研一, 中島 大介, 白石 不二雄 ...
    2006 年 16 巻 4 号 p. 627-633
    発行日: 2006/12/25
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    土壌の変異原性物質の深さ方向の分布を調べることを目的として, 表層から深度1mまでを20cm間隔で5段階に分けて, 土壌の試料を採取し, その溶媒抽出物の変異原性をネズミチフス菌TA100, TA98株およびYG1024株を用いたAmes法で測定した。10地点で採取した試料を測定した結果, 土壌重量当りではYG1024 (±S9mix) およびTA98 (-S9mix) で表層土 (0~20cm) の方が高い値を与える場合もあったが, 表層土と深部の各試料間には大きな差は認められなかった。一方, 土壌有機物重量当りではかなり高い変異原性 (10, 000rev./mg以上) を示す場合があることや深くなるほど変異原性が低くなる場合や, 逆に高くなる場合など試料間に大きな差が認められた。
  • 吉田 寧子, 村上 高行, 竹田 菊男, 鈴木 茂, 堀 雅宏
    2006 年 16 巻 4 号 p. 635-641
    発行日: 2006/12/25
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    メラミン (2, 4, 6-トリアミノー1.3, 5-トリアジン) はメラミン樹脂原料として用いられ, 環境の一つの有機汚染源と考えられる。我々はLC-MSを用いた定量メソッドを開発し, 浸出水あるいは土壌溶出水のような水質試料に適用した。対象化合物は固相抽出カートリッジにより抽出した。分析法の検出下限は7回繰り返し測定の結果から求めた。算出した分析法検出下限, 平均回収率, RSDはそれぞれ0.018μg/l, 93.4%, 2.5%であった。廃棄物処分場の浸出水, 不法投棄現場の土壌溶出水などの廃棄物関連試料を用いて実際に定量分析を行った結果, 全ての実試料からメラミンが検出された。
  • 小倉 光夫
    2006 年 16 巻 4 号 p. 643-649
    発行日: 2006/12/25
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    環境省が土壌汚染対策法で定めた土壌中のふっ素全含有量分析方法を検討し, いくつかの問題点が見出されたため, 改良点を提案した。固体試料1.00gを550℃で灰化後, 炭酸ナトリウム-炭酸カリウムの等モル混合融剤 (融解合剤) 5.00gで40分間融解した。温浸後溶液に (1+1) 硫酸を加えて微酸性とした。ふっ素の水蒸気蒸留では, JIS法で定めた200mlでは不十分で, 4~5ml/min.で260ml留出させることにより定量的に回収できた。これらの改良によって, 環境標準試料中のふっ素を分析したところ, 多くの試料でその暫定値または推薦値と一致した。この結果から, 提案した融解合剤法はより幅広い試料に適用可能なふっ素分析法であることが明らかになった。繰り返し分析精度は, 1.0~2.4%であった。
    神奈川県内の河川底質中のふっ素濃度は115~176μg/gで, 平均150μg/gであった。
  • 小野寺 祐夫, 藤原 舞, 大井 恒宏
    2006 年 16 巻 4 号 p. 651-660
    発行日: 2006/12/25
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    臭素イオン共存下の4-n-アルキルフェノール水溶液を各種実験条件でモデル塩素処理した。それらの塩素処理液から得られたエーテル抽出物のGC/MS分析により, 酸性処理液中にハロゲン化アルキルフェノール, および強変異原1生物質のハロゲン化アルキルセミキノンの存在が示された。臭素イオン無添加の塩素処理に比べて, 臭素イオン共存の塩素処理はハロゲン化アルキルセミキノン生成能を約10倍高めることがわかった。4-n-アルキルフェノールのハロゲン置換反応, およびこれに続く酸化反応によるハロゲン化アルキルセミキノンの生成は, アルキル鎖の長さに加えて, 溶液のpH, 共存臭素イオン量および活性塩素量に強く依存することが分かった。
  • 房家 正博, 藤間 翔穂子, 大浦 健, 雨谷 敬史
    2006 年 16 巻 4 号 p. 661-667
    発行日: 2006/12/25
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    LC/MSを用いなくても簡便にしかも高感度でBPA.とAPsを測定しうる方法を開発した。この手法はHPLCによるアルデヒド類の高感度分析に用いた手法で, 試料をHPLCに大量注入することで高感度なHPLC分離分析を行う手法である。溶媒はアセトニトリルでもメタノールでも可能であり, HPLCに400μl注入して分離・分析しても, ピークの半値幅やリテンションタイムにほとんど影響を及ぼさないことがわかった。また, 今回は蛍光検出器で計測することでさらに高感度 (BPAの定量下限値0.047ng) とすることができた。今回開発した手法は, 大気・水質の調査以外に室内環境などにも応用できると考える。
  • 高木 総吉, 宮野 啓一, 小泉 義彦, 安達 史恵, 渡邊 功, 織田 肇
    2006 年 16 巻 4 号 p. 669-676
    発行日: 2006/12/25
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    大阪府内の水道原水・浄水および淀川水系における1, 4-ジオキサンの実態把握を行った。その結果, 府内浄水場の原水・浄水における1, 4-ジオキサンは高濃度汚染のあった1ヶ所を除いて<0.05~1.8μg/lであり, 水道水質基準値の50μg/l以下であった。高濃度汚染 (>50μg/l) のあった1ヶ所は取水源である地下水が1, 4-ジオキサンの汚染を受けていた。1, 4-ジオキサンの浄水処理による除去率は低く, 既存の浄水処理では1, 4-ジオキサンの除去は難しいことがわかった。また, 府内の主要な水源である淀川水系における1, 4-ジオキサンの検出濃度は0.08~0.91μg/lであった。
  • ―「ダイオキシン類対策特別措置法」の効果―
    小西 良昌, 田中 之雄, 堀 伸二郎, 多田 裕
    2006 年 16 巻 4 号 p. 677-689
    発行日: 2006/12/25
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    1999年に施行された「ダイオキシン対策特別措置法」の効果がヒトにどの程度影響を及ぼしているかを明らかにするため, 母乳汚染の観点から, 年推移を通じて考察した。大阪府健康福祉室精神健康疾病対策課の協力の基, 試料提供了解の承諾 (インフォームド・コンセント) を得た25~29歳初産婦の乳脂肪を, 各年度毎に等量混合 (各年度13~33人) , 1サンプルとして, その年度の試料とし, WHOによりTEFが定められている, PCDDs, PCDFsおよびCo-PCBs, 29化合物をHRGC/HRMSを用いて測定した。農薬やPCBs製品中の不純物が主な汚染源と思われる, 高塩素PCDDs, PCDFs, 低塩素PCBsは, 1974年を最高に2004年度まで年々大きく減少したが, 塩素化合物の燃焼が主な汚染源である, TEF値の高い5塩素化および6塩素化PCDDsの減少率は少なく, 特に6塩素の1, 2, 3, 6, 7, 8-HxCDDは, 1970年代から1980年代後半にかけて増加しており, 塩素数が同じでも他のHxCDDとは異なった。しかしながら, 「ダイオキシン対策特別措置法」の施行により排出規制された2年後の2001年度からは, 母乳中ダイオキシン類の毒性等量 (TEQ) に対する各化合物の寄与率の変化が現れはじめた。総TEQに対して最も寄与率の高い5塩素PCDDsが大きく減少し, 総TEQに与えるダイオキシン類それぞれの寄与率が2001年以降変化していることが認められた。これらの結果から, 1999年に施行された「ダイオキシン対策特別措置法」により, TEF値の高いダイオキシン類による母乳汚染, 人体曝露は徐々に低減しており, その効果は着実に現れていると推察された。また, WHO2005TEF再評価でmono-oythoPCBのTEF値が大きく減算されたため, 母乳中ダイオキシン類濃度はTEQレベルで約20%少なくなった。
  • Hideaki KITAMI, Yoshimi ISHIHARA
    2006 年 16 巻 4 号 p. 691-696
    発行日: 2006/12/25
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    A suppressed ion method for the determination method of eight organic acids (formic, malonic, lactic, acetic, malefic, citric, fumaric, and propionic acid) has been studied for reversed-phase high-performance liquid chromatography (RP-HPLC) with a new triacontyl groups (C30) column, coupled with an ultraviolet detector (UV) at 210 nm. A 50 mM ammonium dihydrogenphosphate (NH4H2PO4) aqueous solution (pH 2.0) containing phosphoric acid (H3PO4) was used as an optimal mobile phase for the separation of eight organic acids. A good linearity of the calibration curve was obtained in the concentration range of 5 mgl-1 to 100 mgl-1 (|r| =0.9999-0.9994) . The detection limit based on S/N=3 were 3.8 mgl-1 for formic acid, 3.5 mgl-1 for malonic acid, 3.1 mgl-1 for lactic acid, 3.4 mgl-1 for acetic acid, 1.1 mgl-1 for maleic acid, 3.4 mgl-1 for citric acid, 3.3 mgl-1 for fumaric acid, and 3.6 mgl-1 for propionic acid. This analytical method was successfully applied to the determination of eight organic acids in sake and wine.
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