1999年に施行された「ダイオキシン対策特別措置法」の効果がヒトにどの程度影響を及ぼしているかを明らかにするため, 母乳汚染の観点から, 年推移を通じて考察した。大阪府健康福祉室精神健康疾病対策課の協力の基, 試料提供了解の承諾 (インフォームド・コンセント) を得た25~29歳初産婦の乳脂肪を, 各年度毎に等量混合 (各年度13~33人) , 1サンプルとして, その年度の試料とし, WHOによりTEFが定められている, PCDDs, PCDFsおよびCo-PCBs, 29化合物をHRGC/HRMSを用いて測定した。農薬やPCBs製品中の不純物が主な汚染源と思われる, 高塩素PCDDs, PCDFs, 低塩素PCBsは, 1974年を最高に2004年度まで年々大きく減少したが, 塩素化合物の燃焼が主な汚染源である, TEF値の高い5塩素化および6塩素化PCDDsの減少率は少なく, 特に6塩素の1, 2, 3, 6, 7, 8-HxCDDは, 1970年代から1980年代後半にかけて増加しており, 塩素数が同じでも他のHxCDDとは異なった。しかしながら, 「ダイオキシン対策特別措置法」の施行により排出規制された2年後の2001年度からは, 母乳中ダイオキシン類の毒性等量 (TEQ) に対する各化合物の寄与率の変化が現れはじめた。総TEQに対して最も寄与率の高い5塩素PCDDsが大きく減少し, 総TEQに与えるダイオキシン類それぞれの寄与率が2001年以降変化していることが認められた。これらの結果から, 1999年に施行された「ダイオキシン対策特別措置法」により, TEF値の高いダイオキシン類による母乳汚染, 人体曝露は徐々に低減しており, その効果は着実に現れていると推察された。また, WHO2005TEF再評価で
mono-oythoPCBのTEF値が大きく減算されたため, 母乳中ダイオキシン類濃度はTEQレベルで約20%少なくなった。
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