Oscheius属線虫は自由生活性であり、そのうちある種は昆虫病原性を持つものも存在する。昆虫病原性を示すOscheius属線虫は病原性細菌を随伴すると考えられているが、随伴する細菌とOscheius属線虫との相互関係性はまだ十分に解明されていない。本研究では、ハチノスツヅリガを用いたベイトトラップ法により野外から分離した未記載種Oscheius属線虫をKHA501株とし、この線虫感染により死亡したハチノスツヅリガから分離したSerratia marcescens bKHA501との関係性について調べた。S. marcescens bKHA501は顕著な昆虫病原性を示し、かつOscheius sp. KHA501の餌となりうることがわかった。S. marcescens bKHA501を随伴させることで、自活性のOscheius sp. KHA501に昆虫病原性が付与された。自活性のCaenorhabditis elegansはS. marcescens bKHA501を餌として利用できず、S. marcescens bKHA501の感染で死亡したハチノスツヅリガ上でも増殖できなかった。昆虫病原性細菌を利用するOscheius sp. KHA501は昆虫病原性およびスカベンジャーとしての優位性を獲得し、移動手段として線虫を活用する細菌と相利共生関係が成り立っていると考えられる。
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