日本鼻科学会会誌
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50 巻, 1 号
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原著
  • 吉田 剛, 金谷 佳織, 鈴川 佳吾, 中屋 宗雄, 近藤 健二, 山岨 達也
    2011 年 50 巻 1 号 p. 1-6
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/04/28
    ジャーナル フリー
    当科で治療を行い経過に差が生じた後天性後鼻孔狭窄・閉鎖症の2症例を報告する。
    症例1は69歳の女性。以前から鼻閉があり, 当科を受診した。鼻腔ファイバー所見とコンピューター断層撮影 (CT) で後天性後鼻孔狭窄症の診断となり, 経鼻的に手術を行った。手術においては狭窄病変を切除し, 再狭窄予防として鼻中隔の後端を切除した。1年後の受診時には後鼻孔がやや狭窄している所見を認めたが, 鼻閉などの症状は消失した。
    症例2は72歳の女性。両側の耳閉感と鼻閉を訴えて当科を受診した。鼻腔ファイバー所見, CT, 核磁気共鳴 (MRI) 画像で後天性後鼻孔閉鎖症の診断となり, 症例1と同様, 経鼻的に手術を施行した。しかし, 術後1ヶ月で後鼻孔が再狭窄したため, 外来で再度, 外科的処置を施行した。その後も狭窄・閉鎖を繰り返したため, 最終的には後鼻孔にシリコン製ステントを留置した。ステント留置後数日は軟口蓋の周囲に異物感を訴えたが, 次第に気にならない程のものとなった。現在, 後鼻孔は開存し比較的良好に経過している。
  • 竹野 幸夫, 中下 陽介, 石野 岳志, 宮原 伸之, 呉 奎真, 野田 礼彰, 平川 勝洋
    2011 年 50 巻 1 号 p. 7-12
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/04/28
    ジャーナル フリー
    医療用レーザーを用いた下鼻甲介粘膜焼灼術は, 多くの施設より良好な臨床成績が報告されており, 鼻アレルギーの手術療法としてほぼ確立した方法といえる。今回我々は, 通年性HD鼻アレルギー症例で炭酸ガスレーザーによる下鼻甲介粘膜焼灼術を施行し, 最終治療後5年以上の経過時における状態が評価可能であった35例について臨床成績を検討した。自覚鼻症状と重症度の改善度 (有効以上の割合) は, 治療後6ヶ月後でくしゃみ77.2%, 鼻汁62.9%, 鼻閉60%, 全体重症度では68.6%であり, 5年後でくしゃみ48.5%, 鼻汁54.3%, 鼻閉62.8%, 全体重症度では40%であった。このように鼻閉についての効果は持続した一方で, 鼻汁とくしゃみ症状については, 再増悪する傾向が認められた。またSymptom medication scoreは治療前の平均スコアが3.94に対して, 治療6ヶ月後では1.57, 5年経過後では2.54であった。レーザー焼灼術の長期予後に関する情報を提示できることはEBMの観点からも有益なものと思われる。今回得られた5年経過後における, 消失と著明改善を合わせた有効率40%と, medication scoreが0の割合65.7%, 効果持続の実感45.7%, という数値はそのひとつの参考になるものと考えられた。
  • 湯田 厚司, 荻原 仁美, 宮本 由起子, 佐橋 紀男, 竹内 万彦
    2011 年 50 巻 1 号 p. 13-18
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/04/28
    ジャーナル フリー
    スギ花粉症の初期療法は有用で, 広く浸透している。薬剤投与開始日は薬剤で異なるが, スギ花粉開始予想日に左右される。適切で効率よい初期療法を行うには, 適確な飛散開始日予測が必要だが, その予想方法は見いだされていない。そこで, 三重県津市におけるスギ花粉飛散開始日の予測方法を検討し, その結果から全国的な予想に応用できるかを検討した。【方法】気象庁ホームページから収集した気象データをもとに三重県津市のスギ花粉飛散開始の予測が可能かを検討した。その結果を基に, 既報で公開された全国のスギ花粉飛散開始日のデータを参照して, 全国の飛散開始日予想を試みた。【結果】津市の飛散開始日は11月中旬平均気温 (p=0.0027, r=0.67), 平均最高気温 (p=0.0011, r=0.70) と有意に正に相関した。11月中旬が寒いと花粉飛散が早まった。全国30都市を調査した結果, 全国的に11月中旬平均気温との相関が良く, 福岡市, 広島市, 徳島市, 西宮市, 東大阪市, 和歌山市, 大垣市, 静岡市, 中央市, 八王子市, 埼玉県坂戸市の各市と東京都が有意に相関した。名古屋市, 水戸市は平均最高気温のみ相関した。岡山市, 米子市, 松山市, 高松市では相関がなかった。また, 関東以北や日本海側の都市でも相関がなかった。九州から関東の太平洋岸都市を中心に11月中旬平均気温から飛散開始日が予想できると考えた。【結論】飛散開始日予想は初期療法開始日決定に有用であり, 誰でも収集可能な気象情報からの予想は有用度が高い。
  • 唐木 將行, 秋山 貢佐, 森 望
    2011 年 50 巻 1 号 p. 19-25
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/04/28
    ジャーナル フリー
    副鼻腔手術は鼻腔が狭くなるに従い難易度が上がり, さらに骨組織が硬く厚い症例での手術は鉗子操作だけでは困難である。そのため, 骨組織の肥厚した症例では骨組織の削除のためにパワーのあるドリルによる手術操作が必要になる。今回我々は4歳男児の先天性後鼻孔閉鎖症例, 69歳女性の術後性蝶形骨洞嚢胞に対してハイスピードドリルeMAX2plus® を用いて手術を行ったのでその経験について報告する。
  • 谷 亜希子, 多田 靖宏, 三浦 智広, 鈴木 輝久, 野本 美香, 西條 博之, 小野 美穂, 小川 洋, 大森 孝一
    2011 年 50 巻 1 号 p. 26-30
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/04/28
    ジャーナル フリー
    副鼻腔真菌症は保存的治療で改善が乏しいことが多く, 外科的治療が第一選択となる。今回2000年から2009年までに当科で手術治療を行い, 上顎洞真菌症の確定診断を得た38例について評価を行った。年齢は30歳から80歳, 性別は男性19例, 女性19例であった。術前のCT検査は全例に施行されており, 32例で石灰化病変を認めた。MRI検査は28例で行われ, 全てにおいてT1強調画像で低信号, T2強調画像で低信号を示し, 真菌症に特徴的な画像が得られた。
    全症例で内視鏡下手術が行われた。上顎洞へのアプローチ方法は中鼻道経由の自然口開大を行った症例が15例, 自然口開大と下鼻道経由の対孔作成を行った症例が23例, 対孔のみ作成した症例は再手術例の1例であった。再発所見は4例に認めた。2例は初回手術で自然口開大を行ったが閉鎖してしまったため再手術を行い, 2例は初回手術に作成した対孔からの局所処置で対応が可能であった。
    当科では上顎洞へのアプローチ法を決定する際に術前のCT, MRIで評価している。真菌塊の位置を確認し, 自然口付近にあるものは自然口の開大のみ, 上顎洞前壁や底部に存在するものは対孔も作成する方針としている。対孔からの術後処置が有用であることから対孔を開存させるよう心掛けている。下鼻道粘膜で粘膜弁を作成し, 骨露出部を覆うことで対孔の閉鎖が回避でき, 対孔の開存率は88.9%と改善した。
  • 村下 秀和, 田渕 経司, 星野 朝文, 原 晃
    2011 年 50 巻 1 号 p. 31-34
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/04/28
    ジャーナル フリー
    近年, 下垂体部腫瘍手術においては内視鏡手術が主流となっている。筑波大学でも平成21年11月より耳鼻咽喉科医と脳神経外科医による内視鏡下経鼻的下垂体手術を開始した。手術方法は両側鼻腔アプローチでの4 hands surgeryにて行った。メリットとしては左右の鼻腔から内視鏡および手術器具を挿入することが可能なため器具が干渉することが少ないことが挙げられる。手術中の耳鼻咽喉科医の役割は手術操作野の確保であるが, 広い手術操作野を作るためには, 鼻, 副鼻腔の構造はより開放および切除したい。しかし, 術後の鼻, 副鼻腔機能維持の観点からは, できるだけ鼻腔内の侵襲は少ないほうがよい。そこで我々は術前CTを使用し, オノディ蜂巣の存在を認めた症例にのみ上鼻甲介の部分切除と後部篩骨洞の開放を行った。58.8%の症例で上鼻甲介の温存が可能であった。副鼻腔発達のバリエーションにより鼻, 副鼻腔構造の開放および切除範囲を決定することが重要と考えた。鼻, 副鼻腔内の内視鏡操作は耳鼻咽喉科医の専門分野であり, 耳鼻咽喉科医が脳神経外科医と連携し積極的に手術に参加するべきと考える。
第49回日本鼻科学会記録
第46回鼻科学基礎問題研究会 総説
  • 亀倉 隆太, 小島 隆, 高野 賢一, 黒瀬 誠, 郷 充, 澤田 典均, 氷見 徹夫
    2011 年 50 巻 1 号 p. 38-45
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/04/28
    ジャーナル フリー
    Thymic stromal lymphopoietin (TSLP) は, 主に上皮細胞から産生されるIL-7様サイトカインで, 樹状細胞の機能調節に関与し, 気管支喘息やアトピー性皮膚炎といったアレルギー性疾患発症の起点としての役割が注目されている。
    今回我々はTSLPの鼻粘膜上皮における役割を解明するために, アレルギー性鼻炎患者の鼻粘膜におけるTSLPの発現と上皮内樹状細胞の活性化との関係, 鼻粘膜上皮産生TSLPの発現誘導のメカニズム, さらにはTSLPによる培養鼻粘膜上皮細胞および樹状細胞のタイト結合蛋白への影響について検討した。その結果, アレルギー性鼻炎患者の鼻粘膜上皮ではTSLPの発現が亢進しており, 炎症性サイトカインやToll-like receptorリガンドの刺激で培養鼻粘膜上皮細胞からTSLPの産生が誘導された。また, TSLP処理した培養鼻粘膜上皮細胞では, タイト結合蛋白の発現が増加し, バリア機能が増強した。さらに樹状細胞に対してTSLPを処置したところ, 上皮細胞と同様にタイト結合蛋白の発現が増加した。これらの結果から, 上皮構造が比較的保たれている正常またはアレルギー性鼻炎発症の初期段階では, 鼻粘膜上皮から産生されたTSLPは鼻粘膜上皮や樹状細胞のタイト結合の発現を増強する働きを持っており, 鼻粘膜上皮自らのバリア機能を維持することで鼻腔内の抗原が無秩序に上皮下に侵入することを防ぎ, 樹状細胞による選択的な抗原取り込みを助けるという, TSLPによる鼻粘膜特有の自然免疫を介した生体防御機構の存在が示唆された。
第46回鼻科学基礎問題研究会
第39回鼻科学臨床問題懇話会
臨床セミナー I
手術手技セミナー
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臨床セミナー II
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シンポジウム II
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