日本鼻科学会会誌
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51 巻, 2 号
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原著
  • 御厨 剛史, 橋本 誠, 竹野 研二, 山下 裕司
    2012 年 51 巻 2 号 p. 93-101
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/07/25
    ジャーナル フリー
    鼻副鼻腔悪性疾患に対する粒子線治療は高い局所制御率を示し,従来の治療法が行えない症例にとっては非常に有用な選択肢であることは疑いない。一方で治療後のフォローや合併症について対応に難渋することがある。しばしば経験されるのが壊死物質の存在や副鼻腔炎で非常に難治性である。このため炎症の眼窩・頭蓋や周囲骨への波及の可能性,FDG-PETなどのフォローアップの際に再発かの判断に困り対応が遅れる結果となりかねない。粒子線後の副鼻腔炎に対する治療方針,特に外科的治療の中心である内視鏡下鼻副鼻腔手術の技術を用いたネクロトミーに関する報告はほとんどない。そこで当科で経験した鼻副鼻腔悪性腫瘍炭素イオン線治療後の手術2例について報告する。症例1例は左上顎腺癌に対する炭素イオン線照射後副鼻腔炎の症例。照射約10ヵ月後に鼻性視神経症を発症し手術を施行した。健側の眼窩内側壁の骨欠損を認めた。症例2は右鼻腔腺癌の照射後副鼻腔炎で,高度の炎症のため再発の評価が難しいと判断し手術を施行した。照射後に患側眼窩内側壁骨欠損が生じていた。症例1・2ともに眼窩内側壁の骨欠損を認め術中に細心の注意が必要であった。以上の経験から,感染制御とフォローしやすい状態にするため内視鏡下鼻副鼻腔手術の技術を用いたネクロトミーによる早期介入が必要ではないかと考えた。
  • 安田 誠, 萠拔 陽子, 椋代 茂之, 五影 志津, 西野 健一, 久 育男
    2012 年 51 巻 2 号 p. 102-108
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/07/25
    ジャーナル フリー
    前頭洞嚢胞は感染が契機となり前頭骨骨髄炎から洞外に骨膜下膿瘍を形成し隣接臓器に合併症を来たすことがしられている。今回我々は反復する感染が原因となり上眼瞼瘻孔を形成した1例を経験したので報告する。
    症例は65歳の女性で主訴は右上眼瞼腫脹であった。繰り返す上眼瞼の腫脹・排膿のため当院皮膚科紹介となった。皮膚科で撮影したMRIで右前頭洞病変を認め当科紹介となった。当科初診時には右上眼瞼の瘢痕形成,右閉眼障害を認めた。精査の結果,右前頭洞嚢胞の感染による上眼瞼瘻孔形成と診断した。形成外科と合同で手術を行い,まず当科で内視鏡下鼻内手術にて嚢胞を鼻内に開放し,次いで形成外科にて上眼瞼瘢痕組織切除術と瘢痕拘縮形成術を行った。術後経過は良好で,治療後16カ月経過するが嚢胞には含気が得られ,また閉眼可能となり美容的にも満足が得られている。
    前頭洞嚢胞から生じる上眼瞼病変は抗菌薬治療が広まった現代ではまれな疾患といえるが,適切な診断・治療が必要である。耳鼻科以外の他科とも連携協力して対処すべき疾患であると考えられた。
  • 河村 さやか, 近藤 健二, 吉田 剛, 壁谷 雅之
    2012 年 51 巻 2 号 p. 109-114
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/07/25
    ジャーナル フリー
    グロムス腫瘍は末梢動静脈吻合部に存在するグロムス小体由来の良性腫瘍で,グロムス細胞の増殖と血管成分より構成される過誤腫とされる。四肢に好発するが,グロムス小体がほとんど存在しないとされる鼻腔での発生は稀である。今回われわれは鼻出血を主訴に受診し,病理組織学的所見から鼻腔グロムス腫瘍と確定診断された症例を経験した。症例は79歳男性。反復する左鼻出血で当科を受診され,鼻中隔左側面と左中鼻甲介の間に腫瘤性病変を認め,生検により病理組織学的にグロムス腫瘍と確定診断された。画像所見で腫瘍の基部が鼻中隔に限局していた事や,造影効果が強くなく生検の際に出血も少なかった事より,鼻中隔軟骨膜下の層で鼻中隔粘膜を剥離し腫瘍と一塊に切除すれば腫瘍本体を損傷せず安全に摘出が可能と判断し,術前に血管塞栓術を施行せずに内視鏡下鼻内手術を施行した。手術は腫瘍基部前方のやや離れた部分の鼻中隔粘膜を電気凝固・切開し,鼻中隔軟骨膜下の層で鼻中隔粘膜を腫瘍と一緒に剥離,挙上した。その後,腫瘍周囲の鼻中隔粘膜の正常組織を数mm付けて鼻中隔粘膜ごと腫瘍を一塊に完全摘出した。腫瘍摘出後に切除部後下方より中隔後鼻動脈からと思われる拍動性の出血を認めたため,電気凝固にて止血を行った。術中の出血は少量で,術後出血も認めなかった。現在,術後8カ月で明らかな再発所見は認めず,引き続き外来で経過観察中である。
  • 能田 淳平, 高橋 宏尚, 岡田 昌浩, 羽藤 直人, 暁 清文
    2012 年 51 巻 2 号 p. 115-118
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/07/25
    ジャーナル フリー
    眼窩血腫は比較的稀な疾患である。鑑別疾患は悪性腫瘍など多岐にわたり,診断,治療に難渋することが多い。今回我々は非常に稀な特発性眼窩内血腫の一例を経験した。症例は72歳女性で,主訴は急な左眼球突出および左眼痛であった。近医での画像検査より左眼窩内の腫瘍が疑われ,当科を紹介受診した。既往歴に特記すべき事項はなく,明らかな外傷歴もなかった。確定診断のため内視鏡下鼻内副鼻腔手術(ESS)を行い,血腫であることが判明した。術後左眼球突出は軽快し,視力障害などの合併症はなく経過良好である。局在部位によっては眼窩内血腫の診断,治療にESSが有効であると考えられた。
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