鼻副鼻腔疾患に対する内視鏡手術の発展は著しく,特に悪性腫瘍を含めた鼻副鼻腔腫瘍の切除における内視鏡下手術の適応が拡大されている。当科においても適応を十分に検討した上で,鼻副鼻腔悪性腫瘍症例に対して,前頭蓋底切除を含めた鼻内内視鏡下手術を施行している。本稿では,前頭蓋底の合併切除を要する鼻副鼻腔悪性腫瘍に対して内視鏡下手術の利点と有茎鼻中隔粘膜弁の有用性を活用し,(1)開頭手術では難しいと考えられる嗅覚の温存,(2)前頭蓋底と眼窩内側壁の再建に対し両側の鼻中隔粘膜弁の利用,更に(3)前頭洞底への到達が不可能と考え,これまで内視鏡下手術の適応外とした鼻骨への浸潤例に対する新たなアプローチ法について検討した。(1)嗅神経芽細胞腫症例では,患側前頭蓋底の切除の際に,内視鏡を用いて健側の頭蓋底の嗅上皮領域を確実に温存した。(2)篩骨洞原発の扁平上皮癌の照射後残存例に対しては,前頭蓋底欠損に対して患側の鼻中隔粘膜弁を使用し,眼窩内側壁の骨欠損に対しては鼻中隔軟骨および骨付きの有茎粘膜弁を用いた。(3)更に上顎洞扁平上皮癌の鼻腔内再発例では患側の鼻骨を合併切除し,鼻根部皮下を剥離した後に前頭洞前壁を削開してから前頭洞の後壁に到達し,その後壁を切離することで前頭蓋底の合併切除を遂行した。内視鏡下手術の利点と鼻中隔粘膜弁の有用性を更に生かすことで,鼻副鼻腔悪性腫瘍に対しての内視鏡下手術の適応範囲を更に拡大できると考える。
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