好酸球性副鼻腔炎(eosinophilic chronic rhinosinusitis: ECRS)はtype2炎症が関与する難治性の副鼻腔炎である。近年,type2炎症を抑制する生物学的製剤が開発され,抗IL-4/13受容体抗体であるdupilumabが鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎に対して適応となっている。dupilumabのECRSに対する効果は高く安全性も高いとされているが,時に重篤な副反応を呈することがある。今回われわれはECRSに対してdupilumab投与中に好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(eosinophilic granulomatosis with polyangiitis: EGPA)を発症した症例を経験したので報告する。
症例は37歳女性,重症喘息に対するbenralizumab(抗IL-5受容体抗体)の投与中止から14か月後にECRSを併発した気管支喘息に対してdupilumabの投与を開始した。投与後速やかに嗅覚は改善し,dupilumab開始から4週後に全身性ステロイドを中止した。dupilumab開始後20週に血中好酸球の著明な増加および咳嗽の悪化がみられ,dupilumabを中止した。22週に筋肉痛,両手足のしびれ,皮疹,両肺の浸潤影が出現し,EGPAの診断で入院となった。全身性ステロイドを漸減投与し全身状態は改善,28週時点で退院した。
DupilumabによるEGPA発症の機序は解明されていないが,抗IL-5製剤からの切替や全身性ステロイドの中止により急激な好酸球の増加が誘発され,好酸球による組織浸潤,血栓塞栓などがEGPAを引き起こした可能性が考えられる。ECRSに対しdupilumabを投与する際はEGPA発症のリスクを念頭に置き,血中好酸球のモニタリングに加え咳嗽や手足のしびれなどの症状の慎重な経過観察が求められる。
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