廃棄物資源循環学会論文誌
Online ISSN : 1883-5899
Print ISSN : 1883-5856
ISSN-L : 1883-5856
20 巻, 2 号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
論文
  • ――自家処理の実態把握とその環境的・経済的効果の分析――
    田畑 智博, 井原 智彦, 中澤 廣, 玄地 裕
    2009 年 20 巻 2 号 p. 99-110
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    本研究では,岩手県県央地域を対象とし,ごみ細組成調査により自家処理の実施量や実施方法の実態把握を行った。また,地域のごみ排出特性やごみ処理構造を踏まえ,一般廃棄物処理システムからみた自家処理実施の環境的・経済的効果を評価した。ごみ細組成調査の結果,自家処理の方法の大部分は生ごみ類のコンポストであり,年間の家庭ごみ排出原単位は525g/(人・日),自家処理原単位は90g/(人・日) であった。自家処理世帯に着目した場合,現状ではごみ処理量の1.9%が自家処理されていること,さらにごみ処理量の6.9%を追加で自家処理可能であることを示した。これらを踏まえ,自家処理の実施方法に関する分析を行った結果,生ごみ処理容器で自家処理を徹底する場合,現状よりもGHG排出量を2.6%,最終処分量を6.2%,コストを6.5%削減できること,電動生ごみ処理機で徹底する場合,堆肥化時の電力消費の変動分が大きく,GHG,SOx,NOx,コストで不利になることが示された。
  •  
    立野 良, 野々上 友也, 大島 義人
    2009 年 20 巻 2 号 p. 111-118
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    医療技術の進歩や多様化に伴って多種多様な医療廃棄物が排出されるようになり,分別や保管,排出における人的負担および経済的負担が増している。本研究では感染性物質を含む医療廃棄物の処理に超臨界水酸化法を適用した新規の無害化処理システムを提案する。超臨界水酸化法は,超臨界状態の水を反応場として,有害な有機物を完全閉鎖系で高速に完全分解する技術である。感染性医療廃棄物のモデルとしてポリプロピレン製チューブおよび大腸菌を用いた基礎実験により,超臨界水酸化法によってプラスチック系医療廃棄物容器の分解と菌の死滅および,毒素の分解・不活性化を含む無害化を同時に達成できることを確認した。また,超臨界水酸化法を用いることで,ディスポーザブル注射器および採血管に関しても金属部分を除いた分解が可能であることから,複数の素材からなる医療廃棄物をそのままの状態で一括処理できる無害化システムの可能性が期待できる。
  • ――廃棄物産業連関 (WIO) 分析の応用――
    板 明果, 高瀬 浩二, 近藤 康之, 鷲津 明由
    2009 年 20 巻 2 号 p. 119-132
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    2002年にUNEPで「持続可能な消費」が取り上げられ,2003年3月には日本政府が循環型社会の形成に向けたライフスタイルの見直しに言及するなど,家計の消費活動が直接・間接にもたらす環境影響評価についての関心が一層高まってきている。消費のなかでも特に食料消費に注目すると,近年,食の中食化 (調理済み食品の利用) や外食化がすすみ,女性の家事負担が低減している。その結果,余暇時間の増加等を通じて豊かな生活を享受できるようになった。その一方で,このような食生活の変化が環境負荷にどのような影響を与えるかが懸念される。本稿では,3つの極端な食生活パターンのシナリオ別 (完全内食型,完全中食型,完全外食型) に廃棄物産業連関 (WIO) を用いて環境影響評価を行った。内食が最も環境配慮的な食生活であるとの結果が得られた。この結果によると持続可能な消費行動として,消費者は内食型の食生活を送ることが期待される。
  • 大竹 哲也, 太田 嶺, 宍戸 昌広, 安藤 則男
    2009 年 20 巻 2 号 p. 133-140
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    国内において建築廃木材は年間約460万ton回収されるが,その再利用率は熱利用も含めて60wt%程度であり,新たな利用法の開発が求められている。そこでわれわれは,建築廃木材から最近消費が伸びている調理用木炭の調製を検討した。一般に木炭の燃焼速度は比表面積と密接に関係し,高密度の備長炭の燃焼が穏やかで,火力の調節が容易なことが知られている。一方で建築廃木材は針葉樹が大部分を占め,その木炭は比表面積が大きく低密度で燃焼速度が大きい。
    本研究では,針葉樹木炭粉の成型により高密度の成型木炭を調製し,その燃焼特性を検討した。木炭粉の成型・焼成に必要なバインダーには,木酢タールおよび廃糖蜜を用いた。こうして得られた成型木炭は密度,機械的強度ともに向上し,その燃焼特性も市販の備長炭に近いところまで改善できた。また成型木炭の機械的強度および燃焼特性は,バインダーから生成する炭化物の性状に大きく影響されることがわかった。
  • 二渡 了, 坂本 直子, 乙間 末廣
    2009 年 20 巻 2 号 p. 141-149
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    わが国では,バイオマス利活用推進を目的とした「バイオマス・ニッポン総合戦略」が策定されているが,十分な利活用がなされていないのが現状である。本研究では,バイオマスタウン構想が実施されている福岡県大木町,宮崎県小林市,大分県日田市のバイオマス施設へのヒアリング調査を行い,物質,経済,環境の視点から循環システムの評価を行った。さらに,北九州市若松区を循環モデル地区とし,都市部におけるバイオマス利活用の可能性を考察した。
    3市町の循環システム運営による年間CO2削減量は,大木町3.1ton,小林市529.2ton,日田市181.2tonであった。循環システム評価により,堆肥の利活用が可能であるという条件の下で家畜排泄物を堆肥化する循環システムが高効率であるということが明らかになった。
    若松区循環モデル地区におけるCO2削減量は311tonであった。賦存するバイオマスが生ごみ中心である都市部においても,環境負荷削減が可能であるということが明らかになった。
feedback
Top