廃棄物資源循環学会論文誌
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32 巻
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若手研究者特集 2021
  • 松田 渉, 高原 晃里, 萩原 健太, 大渕 敦司, 池田 智, 中村 利廣, 小池 裕也
    2021 年 32 巻 p. 128-135
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/09
    ジャーナル フリー
    都市ごみ焼却灰の溶出液 (環境庁告示第 13 号試験液) を固相抽出法で前処理し,その溶離液中の Pb を全反射蛍光 X 線分析 (TXRF) で定量する方法を検討した。溶出液をキレート樹脂で固相抽出処理することで,測定試料となる溶液の乾燥痕上への塩の析出を抑えることができた。この乾燥痕を TXRF で分析したところ,K, Ca, Cl および Br 等のマトリックス成分の X 線強度が 1/100 に減少した。Ga 内標準法で Pb を定量したところ,Ga と Pb の強度比の相対標準偏差は,20.7 % から 2.2 % まで減少し,精度が大きく向上した。固相抽出を併用した場合の検出下限は,0.007 mg L−1 で,用いなかった場合の 0.07 mg L−1 の約 1/10 となり感度は著しく向上した。固相抽出法と TXRF を組み合わせた分析法は,溶出試験により得られた焼却飛灰溶出試験液中の Pb を迅速かつ簡便に,精度良く定量できることが明らかになった。
  • 辻井 張希, 中村 祐太, 塩田 憲司, 藤森 崇, 大下 和徹, 高岡 昌輝
    2021 年 32 巻 p. 136-146
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/02/12
    ジャーナル フリー
    放射性物質に汚染された廃棄物の熱処理では,含有されるセシウム (Cs) が飛灰へ移行するため,飛灰中 Cs の不溶化が必要である。本研究では,カオリン試薬の熱的変化やアルカリ溶液への Al, Si の溶解特性を調査した。さらに,焼成したカオリン試薬を用い,模擬飛灰中 Cs のジオポリマーによる不溶化処理を行なった。その結果,メタカオリンは焼成パイロフィライトと比較して,アルカリ溶液に溶解しやすく,作製した固化体の Cs 溶出率は低くなった。Si/Al のような材料構成比では,アルミノケイ酸塩の種類や NaOH 濃度による Cs 不溶化への影響の評価は困難であったが,Sidissolved/Aldissolved を用いることで,Cs 不溶化に直接寄与する Al, Si のバランスの変化が明確になった。本研究より,アルミノケイ酸塩のアルカリ溶液への溶解特性は,ジオポリマーによるCs不溶化性能を制御する重要な指標となることが示唆された。
論文
  • ――地上デジタル化前後のテレビ製品の廃棄挙動を例として――
    髙橋 一彰, 平井 康宏, 酒井 伸一
    2021 年 32 巻 p. 1-10
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/03/06
    ジャーナル フリー
    デジタル放送化等の影響も踏まえ日本国内でのテレビの使用・廃棄状況の推計を的確に行うための手法について検討すべく,使用年数の長期化の影響を考慮した解析を行った。解析はワイブル分布を用いた使用年数分布について,製品種の区分の有無により 2 つのモデルを設定して比較検討を行った。その結果ブラウン管テレビと薄型テレビで使用年数分布を同一としたモデルに比べ,種類によりテレビの使用年数分布が異なるとしたモデルが保有台数の推移の再現性が高いことがわかった。また後者のモデルについて,ワイブル分布を用いた使用年数分布から平均使用年数 (出荷から廃棄までの平均年数) を算出すると,ブラウン管テレビでは 12.8 年だったのに対し,薄型テレビでは 15.1 年と違いがみられた。近年普及している薄型テレビの使用年数がブラウン管テレビより長く,テレビの使用年数の長期化が考えられた。
  • 小林 信介, 立花 友麻, 神谷 憲児, 板谷 義紀, 須網 暁, 中川 二彦
    2021 年 32 巻 p. 11-19
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/03/06
    ジャーナル フリー
    本研究では樹脂系乾燥促進剤の添加が無機汚泥の乾燥に与える影響を明らかにするため,乾燥促進剤として樹脂エマルジョンを混合した無機汚泥の乾燥実験を実施した。実験ではアクリル系樹脂エマルジョンを無機模擬汚泥に 0.8 wt% 添加し,エマルジョンの添加が汚泥の乾燥挙動に与える影響,および乾燥温度や汚泥サイズ等の乾燥条件が乾燥速度に与える影響について評価を行なった。乾燥促進剤の種類により汚泥乾燥挙動は異なるものの,無機汚泥においても少量の乾燥促進剤の添加により汚泥乾燥促進が可能であった。中でもアクリル系樹脂エマルジョン (DA10) の添加は汚泥中の水分移動速度低下を抑制させるため,比表面積が小さい大球試料において高い乾燥促進効果が得られることがわかった。一方で,汚泥への乾燥促進剤の添加は汚泥表面での水分の蒸発速度を抑制するため,乾燥促進剤の利用においては乾燥温度や汚泥乾燥試料形状等の最適化が極めて重要であることがわかった。
  • 小柴 絢一郎, 平井 康宏, 酒井 伸一
    2021 年 32 巻 p. 20-30
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/03/11
    ジャーナル フリー
    本研究では,国内で行われてきた PCB 対策による排出削減量をシナリオ解析によって推定した。2050 年までの排出削減量は,廃棄物保管が 65.9 ton, 分解処理が 65.6 ton, 保管厳格化が 17.4 ton であった。追加の PCB 対策として仮定した処理促進では 3 ~ 23 ton が削減されると推定された。分解処理等の PCB ストックそのものを削減する対策では即座に排出量が減少するとともに将来の排出リスクも減少する。一方で廃棄物保管はストックが維持されることで,長期的には排出量の減少傾向が小さくなる可能性がある。さらに,保管が長期化する場合には将来的に排出量が増加するリスクを伴い,紛失率の増加を仮定したシナリオでは累積排出量が 60 ~ 110 ton 程度増加すると推定された。以上から,PCB 廃棄物を保管することによって排出量は一時的に削減できるが,将来的な排出リスクも減少させるために分解処理が重要であることが示唆された。
  • ――平成 30 年 7 月豪雨の倉敷市の事例より――
    多島 良, 森嶋 順子
    2021 年 32 巻 p. 31-42
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/03/13
    ジャーナル フリー
    本研究は,家の中の片付けに伴う災害廃棄物 (以下,片付けごみ) が仮置場以外に排出され,災害廃棄物の処理に支障をきたすことを予防することに向け,仮置場以外に排出する被災者の行動実態とその要因を明らかにすることを目的とした。ごみ出し行動等に関する既往研究と,災害廃棄物処理事例の既報を参考に,距離,広報内容の理解,車両の確保,自宅前の道路幅員,発生量,記述的規範の 6 要因が影響すると想定した。平成 30 年 7 月豪雨で被災した倉敷市民を対象としたアンケート調査,多項ロジスティック回帰分析を含む調査結果の統計解析等の結果,仮置場が自宅から遠くに設置され,片付けごみを運搬するための車両が確保しにくく,広報により排出場所が理解できない場合に,仮置場以外への排出が促進されることなどが明らかとなった。これらの結果をふまえ,被災が想定される地域にまんべんなく仮置場候補地を確保することなどの事前準備について示唆を得た。
  • 劉 佳星, 重松 幹二, 為,田 一雄, 韓 佳江, 樋口 壯太郎
    2021 年 32 巻 p. 43-50
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/03/24
    ジャーナル フリー
    浸出水処理施設に脱塩処理を組み込む施設が増加している。脱塩処理を行うと,脱塩水とともに濃縮液や濃縮液を蒸発固化した乾燥塩が生成される (副生塩)。副生塩は近年,一部で凍結防止剤や電気分解により NaClO を生成させ,下水道終末処理場で消毒剤としてリサイクルされる例も出現している。しかし凍結防止剤を必要としない地域や近隣に消毒剤を使用する施設がない地域も多い。今回,リサイクル方法の選択肢の一つとしてバイポーラ膜電気透析装置 (BPED) を用いて,酸とアルカリを生成し,中和剤等として使用することを想定した開発研究を行なった。BPED は現在,有機酸塩から有機酸とアルカリを,無機塩から酸とアルカリを製造する装置として,食品,医薬分野等で使用されている。本研究では副生塩の発生源別 (一般廃棄物浸出水,産業廃棄物浸出水),排出形態別 (濃縮液,乾燥塩) に基礎的研究を行い,塩酸 (HCl) 2.82 ~ 4.23 mol/L,水酸化ナトリウム(NaOH) 1.43~3.04 mol/L を生成することができた。
  • 串山 傳, 松岡 昌志, 井ノ口 宗成, 堀江 啓
    2021 年 32 巻 p. 51-64
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/07/24
    ジャーナル フリー
    本研究では,災害廃棄物量推計精度向上を目的として解体建物および災害廃棄物の実処理量データを調査し,原単位推定を行なった。2016 年熊本地震後,益城町が処理分類して記録した災害廃棄物の実処理量データを収集し,解体建物に由来する災害廃棄物量を整理した。また,益城町の全建物に解体・現存の識別,構造,階数および延床面積を関連づけた建物データベースを作成した。解体建物延床面積と実処理量データの関係式により,構造別・組成別の延床面積あたり解体建物由来の災害廃棄物量原単位を推定した。益城町の解体建物は約 9 割が木造であり,瓦屋根の木造建物原単位 0.57 (ton/m2) と瓦屋根以外の木造建物原単位 0.51 (ton/m2) を求めた。益城町周辺 5 市町を対象に本研究の原単位推定値と解体建物棟数を推計式に適用し,実処理量に近い災害廃棄物量推計値となり地震災害時の災害廃棄物量推計に適用できることを確認した。
  • 呉 書文, 佐藤 佑樹, 松本 亨
    2021 年 32 巻 p. 72-85
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/14
    ジャーナル フリー
    電子付録
    雲南省広南県で都市部および都市郊外から排出される廃棄物を対象とし,現行の混合収集・埋め立てを行う処理方式と,廃棄物の一部を低温炭化ないし堆肥化する新規処理方式について,3 つのシナリオで処理費用,CO2 排出量,埋立場の寿命の比較を行なった。都市廃棄物を収集後に分別して新規処理を実施し,郊外廃棄物は現行処理と同じく直接埋立処分した場合,経費は増加するが埋立場寿命は延長されると見積もられた。都市部廃棄物のみ家庭で分別し,新型電動車で収集運搬した後,新規処理を行い,郊外廃棄物は現行処理と同じく直接埋立処分した場合,処理費用は削減され,埋立場寿命は延長可能だと見積もられた。一方,都市廃棄物と郊外廃棄物を家庭で分別し,新型電動車で収集運搬した後,新規処理の対象とした場合,経費は微増し,埋立場寿命は大きく延長されると見積もられた。また,埋立処理される有機物が削減され,最終的な CO2 排出量は減少することがわかった。
  • ――建設汚泥と腐植物質の性質の間に成り立つ関係調査――
    鈴木 大輔, 庄司 良
    2021 年 32 巻 p. 86-98
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/14
    ジャーナル フリー
    循環型社会の構築に際して,産業廃棄物の循環利用方法を構築することは重要な課題である。本研究では,建設廃棄物における新規の循環利用方法を構築することを目的として,建設汚泥と建設汚泥中に含まれる腐植物質の性質の間に成り立つ関係を調査した。建設汚泥の熱灼減量値,pH とフミン酸の含有量,建設汚泥の熱灼減量値と pH, ならびに pH と酸化還元電位の間に相関関係が確認された。したがって,熱灼減量値や pH 等の建設汚泥のパラメータを求めることで,含有される腐植物質の量を推定できる可能性が示唆された。3次元励起蛍光マトリクス測定より,熱水による建設汚泥の処理では,フルボ酸が選択的に抽出されることが明らかとなった。建設汚泥とフミン酸の元素分析の結果,建設汚泥に含有される窒素の分析により,建設汚泥中に含まれるフミン酸を構成する窒素の割合を推定できる可能性が示唆された。
  • 亀田 一平, 平山 修久
    2021 年 32 巻 p. 99-112
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/20
    ジャーナル フリー
    本研究では,南海トラフ地震防災対策推進地域の基礎自治体を対象にアンケート調査を実施し,基礎自治体における職員個人の当事者意識と,組織としての災害廃棄物対策の実効性との関係を検討した。その結果,職員の当事者意識が高い基礎自治体では,災害廃棄物対策の実効性が高い傾向にあることを示しえた。災害廃棄物対策における組織論的機能の一つである事案処理においては,災害廃棄物処理計画を策定していたとしても,職員の当事者意識が高くない基礎自治体においては一定以上の実効性を獲得することは困難であることを示した。すなわち,災害廃棄物処理計画策定後も,人材育成により職員の当事者意識を醸成するための継続的な取り組みが必要であるといえた。以上のことから,災害廃棄物対策に係る当事者意識と災害廃棄物対策の実効性との関連性より,定性的かつ定量的解析に基づき災害廃棄物対策における実効性向上に対する当事者意識の重要性を示しえた。
  • 齊藤 由倫, 田子 博, 飯島 明宏
    2021 年 32 巻 p. 113-127
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/25
    ジャーナル フリー
    電子付録
    ごみ減量を目的に自治体でさまざまな啓発事業が行われているが,減量効果はもとより住民介入の種類について整理した事例はない。本研究は多様な啓発事業を客観的に分類できるか検証するため,生活系ごみの排出原単位が多い 5 市と少ない 5 市を全国の同じ人口規模の中から選定し,一般廃棄物処理計画と公式 Web サイトの掲載内容に対して計量テキスト分析を行なった。公式 Web サイトのほうが抽出語数が多く言語的傾向を分析するのに適すると考えられたため,そこに掲載されている 78 事業を詳細分析した結果,互いに介入方法が異なるものとして解釈可能な主要 14 タイプと少数独自 3 タイプが抽出された。ごみが少ない市では事業数もタイプの種類も多く,反対にごみが多い市では一方向の情報提供型のタイプに事業が偏る傾向がみられた。国内の啓発事業の全タイプを客観的に把握するには,本論の手法を多くの自治体公式 Web サイトに展開させることが効果的と考えられた。
  • 恩田 紘樹, 黒﨑 紘史, 牛木 龍二, 塚本 さゆり, 杉山 乃祐, 佐藤 和則
    2021 年 32 巻 p. 147-156
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/02/12
    ジャーナル フリー
    熱処理した窯業系サイディングの水蒸気吸着特性を検証するため,650, 700, 800, 900 および 1,000 ℃ で熱処理した窯業系サイディングの水蒸気吸着等温線測定を行なったところ,熱処理温度が高いほど水蒸気吸着量が減少した。これは熱処理により窯業系サイディングに含まれる有機物が除去され,比表面積や空隙が減少したためと考えられた。また,熱処理した窯業系サイディングに乾湿繰り返しを行なったところ,熱処理温度が 800 ℃ 以下の窯業系サイディングでは比表面積は低下し,ゲル空隙や毛細管空隙も減少したが,水蒸気吸着量は増加した。これは,Intraglobular pore のような微細空隙が形成されたためと推測された。一方,熱処理温度が 900 ℃ 以上の窯業系サイディングでは乾湿繰り返しによって水蒸気吸着量はほとんど変化しなかったことから,低吸湿性が求められる用途でリサイクルできる可能性が考えられた。
研究ノート
  • ――札幌市における店頭観察調査――
    足立 千尋, 大沼 進
    2021 年 32 巻 p. 65-71
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/08/25
    ジャーナル フリー
    本研究は 2020 年 7 月に施行されたレジ袋有料化の影響を調べるために,札幌市内のコンビニエンスストアの店頭にて次の観察調査を行なった;1-1) 有料化前後での人々の行動の変化,1-2) 有料化を導入した店舗と導入していない店舗でレジ袋辞退率の比較,2) 有料化後もレジ袋を購入する客の購買時の特徴の調査。調査 1 は 2020 年 6 月から 8 月に店頭にて実施し,観察による 554 のデータを得た。有料化前後において有料化を行なった店舗とそうでない店舗で辞退率が大きく異なっていた。調査 2 は 9 月に実施し,4,289 のデータを得た。レジ袋辞退率と購入者の属性の関連について分析を行なった。その結果,レジ袋辞退率に関して以下のような買い物客の特徴が確認された;a) エコバッグ持参率は全体的に低く,b) 弁当やそれに準ずるものを購入するときや購入点数が多いときに辞退率が低かった,c) 声掛けがない場合のほうが辞退率が高かった。
  • 八百屋 さやか, 白井 義人
    2021 年 32 巻 p. 157-166
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/02/24
    ジャーナル フリー
    福岡県飯塚市の一般家庭および事業所から回収される廃食用油の BDF (Biodiesel Fuel) 化事業は,障がい者福祉施設が主体となり廃食用油の回収・BDF 製造・販売を行い,これに行政が住民啓発や BDF 購入を行うなどの協働関係を維持しながら事業を継続した。一般的に,リサイクル事業の実施にあたっては,経済性の確保が重要であるが,公益性の高い主体が事業を行う際には,その事業の社会的便益性の検討も必要である。そこで,本研究では,当事業において経済的利益と社会的費用便益双方の分析を行なった。その結果,社会的費用便益のうち,「リサイクルに係わる要因」の純便益は負の値を示し,事業の継続には,「その他の外部便益」が大きく寄与したことが示唆された。またその外部便益による社会的費用便益は,障がい者福祉施設と行政等の参加主体の協働により高められたことを導き出した。
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