廃棄物資源循環学会論文誌
Online ISSN : 1883-5899
Print ISSN : 1883-5856
ISSN-L : 1883-5856
28 巻
選択された号の論文の20件中1~20を表示しています
論文
  • 山口 東洋司, 冨田 洋平, 白毛 宏和
    2017 年 28 巻 p. 1-12
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/02/06
    ジャーナル フリー
    新規に開発した汚泥減量化システムについて,し尿処理場への適用を検討した。本減量化システムは化学処理と微生物処理を組み合わせたもので,第1段階ではアルカリ処理によって減量化され,後段の微生物処理によってさらなる減量化が進行する。2か所のし尿処理場より採取した汚泥について,まずアルカリ回分処理により,その減量化特性を評価した。次に,微生物処理も組み合わせた連続処理を実施し,30~50 %の汚泥減量化率が得られた。この結果は,本技術のし尿処理場への適用可能性を示唆するものと考えられた。
  • ――層内浸入水量が浸出水の塩類濃度に及ぼす影響――
    田中 宏和, 香村 一夫
    2017 年 28 巻 p. 13-25
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/02/10
    ジャーナル フリー
    塩類洗い出しは最終処分場の安定化における重要なメカニズムの一つである。本稿では,埋立時期が異なる管理型最終処分場埋立区画における浸出水中の各種イオン濃度をモニタリングし,層内浸入水量との関係を評価した。層内浸入水量と各種イオン濃度との相関分析により,複数の有意な相関が確認された。しかしながら,各種イオンの相関関係は埋立区画により異なり,また,同じ区画の浸出水でも,イオン種により相関が異なった。この理由として,各埋立区画の埋め立ての進捗状態や,埋立廃棄物層内の不均質性に由来する透水性の偏在,有機物分解による埋立層内雰囲気の変化に伴う生物化学的反応の影響が示唆された。
  • 竹田 航哉, 亀井 裕次, 松藤 敏彦
    2017 年 28 巻 p. 26-38
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/03/18
    ジャーナル フリー
    国内における廃棄物発電ボイラは高効率化に対して高い潜在能力を有しているものの,高温腐食によるボイラ管,特に過熱器管の腐食速度が増大する懸念があるため,なかなか導入が広がっていない。
    高効率ボイラを普及させていくためには,精度高くボイラ管の余寿命を予測することとともに腐食速度を抑制する技術が望まれる。そのため,運転中における腐食速度に影響を及ぼす腐食環境の挙動に関する知見・情報が重要となる。
    そこで,交流インピーダンス法を用いた腐食センサをガス温度の異なる2箇所の過熱器管近傍に設置し,腐食速度の連続モニタリング試験を実施した。
    試験の結果,運転中の腐食速度は変動しているが,その挙動は計測位置で異なっていた。また,腐食速度が速い領域では,腐食速度と乾燥段への供給空気量とに有意な相関が認められ,乾燥段空気量の増減から腐食速度が変化するまでに約8時間の差があることを示した。
  • 石森 洋行, 遠藤 和人, 山田 正人, 大迫 政浩
    2017 年 28 巻 p. 39-49
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/04/11
    ジャーナル フリー
    放射性物質に汚染された廃棄物の焼却灰はその濃度によって埋立方法が異なるものの,放射性物質の拡散防止対策として土壌吸着層の設置は義務付けられており,その性能評価は重要である。本研究では,放射性セシウムに対する土壌や廃棄物,吸着材等の吸着特性を把握するために,放射能汚染飛灰から作製した4 種類の飛灰溶出液を溶媒として,22種類の試料を対象に吸着試験を行った。その結果より分配係数を評価し,その影響因子を検討した。また試料に吸着した放射性セシウムの脱着特性を調べるために,純水,1 mol/L 酢酸アンモニウム,人工海水,飛灰溶出液を溶媒とした溶出試験を行い溶出率を評価した。
  • 桑原 智之, 山本 祥平, 吉田 俊介, 西 政敏, 帯刀 一美, 佐藤 利夫
    2017 年 28 巻 p. 50-57
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/04/18
    ジャーナル フリー
    竹チップ燃料の燃焼残渣からカリウム(K)を高効率かつ低コストで回収するため,抽出条件(抽出液の種類と固液比),回収方法(加熱濃縮-温度差析出法)について検討した。抽出液が 1.0 mol L−1 HCl,固液比が1:10 の条件で高効率に K を抽出でき,このとき抽出液から K を 85.4 wt% で回収できた。ただし,薬品コストを考慮すると 0.01 mol L−1 HCl がより妥当であると考えられ,さらに燃焼残渣を微粒化することで抽出率を 65.5 wt% に維持することができた。回収物は水溶性 K を 53.7 wt% 含有しており,回収物の K の化学形は KCl であったことから,肥料としての適用性について検討した。その結果,肥料取締法に基づく KCl 肥料としての含有率の基準を満たしていた。また,As, Cd, Cr, Ni, Pb についても,同様に実験した結果,肥料取締法に基づく焼成汚泥肥料における許容含有量を下回った。よって,竹チップ燃料燃焼残渣からの回収物は K 肥料として使用可能なことが明らかとなった。
  • ―― 仙台市民の10年間の変化 ――
    篠木 幹子
    2017 年 28 巻 p. 58-67
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/04/18
    ジャーナル フリー
    本研究では,2005 年 11 月および 2015 年 11 月に宮城県仙台市で実施した調査データを使用して,10 年間にごみ問題についての住民の意識と行動がどのように変化したのかを把握し,分別行動および減量行動に影響を与える要因が行動ごとに異なるのかどうかを検討する。分析の結果,2005 年と 2015 年を比較すると,分別行動はどの項目に関しても資源化に協力的な行動をとる人が増えているが,買い物袋の持参以外の減量行動はそれほど進んでいないことが明らかになった。また,ごみ問題に対する考え方は,例外はあるものの全体的にみると否定的な方向に動いている。一方,分別の手間は 10 年間の「慣れ」によって低減していた。加えて,分別行動と減量行動に影響を与える要因はそれぞれ異なり,分別行動にはごみを出さずに暮らしたいという考え方や年齢の高さが,減量行動にはごみ問題に対する考え方に加えて,地域における活動が影響を与えることが明らかになった。
  • 池尾 陽作, 米澤 敏男, 加納 純也, 石原 真吾
    2017 年 28 巻 p. 68-75
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/04/18
    ジャーナル フリー
    解体コンクリートの再資源化のためにコンクリートから再生骨材を製造し,再利用することが求められている。本研究では,連続遊星ミルでの再生細骨材製造に関して,実験および離散要素法によるシミュレーションを行い,ミル内の粒子挙動および再生細骨材製造時の消費動力を推定した。その結果,消費動力は,連続遊星ミルの公転速度・自転速度が高いほど,また原料の供給速度が高いほど大きくなること,一方,連続遊星ミルで製造される再生細骨材の吸水率は,製造時の単位量あたりの消費動力が増加するほど低下する傾向があることがわかった。シミュレーションの結果から,連続遊星ミル内の粒子挙動が明らかになるとともに,シミュレーションから求めた消費動力が実測の消費動力とほぼ一致したことから,装置のスケールアップ時の消費動力についても推測できる可能性が示唆された。
  • 土田 大輔, 清水 美佐子, 松村 洋史, 田中 和樹
    2017 年 28 巻 p. 76-86
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/04/28
    ジャーナル フリー
    本研究では,福岡都市圏を対象として,紙おむつを使用する事業所である介護施設,成人対象医療施設,乳幼児対象医療施設,および保育施設からの使用済み紙おむつ発生量を推計した。紙おむつ使用実態を踏まえた推計方法とするため,福岡都市圏内の事業所に対して,使用状況アンケート調査や紙おむつ分別回収調査を行った。調査により,要介護度別,病床種類別,年齢別の紙おむつ使用人数割合,1人1日あたり使用枚数,および業種別の使用済み紙おむつ1枚あたり重量を把握し,業種別の推計式に反映した。また,他の自治体等でも簡易に適用できる推計式にするため,公表資料である定員数や病床数のみからも推計できるよう考慮した。推計値を分別回収調査結果と比較したところ,おおむね一致した。推計式を福岡都市圏 (対象事業所数 980 件) に適用した結果,12.6 千 ton/y の事業系紙おむつが発生し,事業系可燃ごみの 4.4 % を占めると推計された。
  • ――実践知の蓄積と普及のために――
    稲葉 陸太, 田崎 智宏, 小島 英子, 河井 紘輔, 高木 重定, 櫛田 和秀
    2017 年 28 巻 p. 87-100
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/05/25
    ジャーナル フリー
    電子付録
    バイオマス地域循環に関する既存の指針等では検討が不十分であった重要な活動や戦略を提示するため,地域循環事業を 「導入」,「実施」 および 「展開」 の3段階に区分し,事業の活動について経営学分野の研究を参考にして 「構想・計画」,「実践・認識」,「人材・組織」 および 「交渉・調整」 の4つの戦略的分類を設定した。これらをふまえ,生ごみ資源化の3事例について関係主体へのヒアリング調査を行い,事業の経緯を分析した。その結果,重要な活動として,導入段階での 「構想・計画」 に分類される 「主導主体によるビジョン提示」,実施段階の 「実践・認識」 に分類される 「生ごみ利用肥料や農作物の出口の確保」 等が抽出された。また,活動数の傾向から導入段階での 「構想・計画」,実施段階での 「実践・認識」 に分類される活動の充実が重要と考えられた。
  • 松島 輝幸, 葭田 真昭
    2017 年 28 巻 p. 101-113
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/01
    ジャーナル フリー
    電子付録
    酸処理による石綿の化学的分解処理の実用的可能性を調べるために,できるだけ多くの実試料を用いて酸との反応を総合的に比較検討した。その結果,分解処理の必要な6種類の石綿すべてが酸で化学的分解できることを確認した。
    蛇紋石族のクリソタイルは強酸 (塩酸,硫酸,硝酸) のみで化学的に分解でき,クリソタイルを硫酸処理する場合,成形材は吹付け材より多くの石灰質を含み反応効率が低下するため,吹付け材より硫酸量を多く必要とした。塩酸処理の場合は,吹付け材と成形材とで反応効率にほとんど差が生じなかった。
    角閃石族の石綿は,クリソタイルと反応の仕方が異なり,強酸とともにフッ化水素酸を用いることで,5種類すべてが化学的分解できた。また,フッ化水素酸は単独より強酸とともに用いたほうが,分解反応効率が高かった。
    実用化に向けてスケールアップの可能性や酸処理の経済性も検討した。
  • ――経過時間と埋立層から溶出するイオン種の関係についての一考察――
    田中 宏和, 香村 一夫
    2017 年 28 巻 p. 114-127
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/02
    ジャーナル フリー
    最終処分場の安定化において,塩類洗い出しは重要なメカニズムの一つである。本稿では管理型最終処分場を対象とし,埋立時期が異なる区画からの浸出水中の各種イオン濃度を比較することで塩類溶出特性を評価した。廃棄物を埋め立てている期間は,新たな埋立物に含まれる塩分が保有水に継続的に供給されるため,すべてのイオン種は時間経過とともに濃度が増加した。ただし,その濃度増加の挙動はイオン種により異なった。埋立終了後については,易溶出性といわれるイオンが指数関数的に濃度減少したが,それぞれの溶出速度に差異がみられた。易溶出性イオン以外については連続的な濃度変化が確認できなかった。イオン種間で溶出性に相異がみられた原因として,イオンが有する電気的な特性や,有機物分解の生成物,埋立層内の雰囲気変化による生物化学的・物理化学的反応の影響が考えられた。
  • 袖野 玲子, 高岡 昌輝
    2017 年 28 巻 p. 128-139
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/01
    ジャーナル フリー
    電子付録
    2013年に採択された水銀に関する水俣条約を受け,従来有価物であった水銀が廃棄物化する事態が将来想定され,処分体制の整備にあたり,回収水銀量の見通しを把握することは喫緊の課題である。このため,条約による国内水銀マテリアルフローへの影響を踏まえ,主要排出源である工業過程と水銀使用廃製品からの水銀排出量を2010年度から2050年度まで推計し,水銀バランスを考慮して,大気,廃棄物 (埋立処分),水銀回収への排出量を算出した。この結果,水銀使用製品由来の水銀排出は急減しており,今後数年は,特に蛍光ランプおよび血圧計の回収に注力すべきであることが示唆された。工業過程では,最大排出源である非鉄金属製錬業において排出増加が予測された。改正大気汚染防止法による大気排出抑制効果は約 8 % と試算され,条約の趣旨どおり,将来の水銀排出先は大気と埋立が減少する一方,水銀回収が増加し,回収量は毎年 50 ton 強と推計された。
  • 竹田 航哉, 松藤 敏彦
    2017 年 28 巻 p. 140-151
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/02
    ジャーナル フリー
    廃棄物発電ボイラでは高温腐食によるボイラ管の腐食損傷が大きな課題となっている。この高温腐食は,排ガス中のばいじんの一部が形成する管付着灰に含まれる溶融塩によって引き起こされる。
    本研究では,一般廃棄物を処理対象とするストーカ式焼却炉ボイラにて飛散中のばいじんを粒径別に採取し,ばいじんの粒径別特性について調べた。また,粒径別のばいじんの灰塗布による高温腐食試験を行うとともに,試験前後の灰中に含まれる化合物の形態を分析した。さらに,実機にて粒径別にばいじんの発生と1次空気量との関係について調べた。
    その結果,粒径が約 6 μm よりも小さなばいじんはNaやK, Clの割合が高く,強い腐食性を有していることが明らかになった。試験中に灰が硫酸塩化していること,ならびにCa化合物の割合が増えると腐食を抑制する可能性が示唆された。さらに1次空気量が,腐食性の強いばいじんの割合に影響を及ぼすことが示された。
  • 土手 裕, 関戸 知雄
    2017 年 28 巻 p. 152-159
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/07
    ジャーナル フリー
    養豚廃水1次処理水中に高濃度で含まれる窒素 (N),リン (P),カリウム (K) をMAP (MgNH4PO4) およびMPP (MgKPO4) として同時回収するための最適条件を得ることを目的として回収実験を行った。その結果,pHの増加に伴い,残存P濃度は低下した。Mg/Pを増加させることにより残存P濃度は低下したが,Kの回収率も低下した。またP/(N+K) を増加させることによってK回収率は増加した。Nの回収率はいずれの条件でも 95 % 以上であった。K, Pの最大回収率はそれぞれ 80 %,99 % であった。Pの残存濃度が一律排水基準を満足し,かつKの回収率が最大となる条件はpH=9.0,Mg/P=1.35,P/(N+K)=1.5であり,このときの残存P濃度は 15 mg/L,K回収率は 45 %,Pの正味の回収率は 22 % であった。想定した反応式,平衡定数を用いて1次処理水濃度から残存濃度を予測できることがわかった。
  • 小林 信介, 水野 翔太, 浜辺 久, 須網 暁, 板谷 義紀
    2017 年 28 巻 p. 160-167
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/16
    ジャーナル フリー
    有機廃棄物水熱処理固体残渣の性状評価およびアンモニア吸着能評価を行った。実験では下水汚泥およびドックフードを原料とし,異なる水熱処理条件で得られた固体残渣の比表面積測定および表面官能基測定を行うとともに,アンモニア吸着能の評価を行った。その結果,有機廃棄物水熱処理固体残渣にはアンモニア吸着能があり,特に汚泥残渣については 30 mg-N/g-sorbent 以上の吸着能があることがわかった。また水熱処理温度が高くなるとともに固体残渣の比表面積は増大し,比表面積はアンモニアの吸着能と強い正の相関関係があることが明らかとなった。ただし,比表面積とアンモニア吸着能の関係は廃棄物原料により大きく異なり,単位比表面積あたりのアンモニア吸着量は汚泥残渣のほうが多いものの,水熱処理により固体残渣表面に OH 基および C=O 基が増大するドックフード残渣のほうが単位比表面積増加量あたりのアンモニア吸着増加量が大きかった。
  • 徳永 晴樹, 廣畑 昌章, 大川 正晃, 坂本 孝広, 保田 武彦, 入佐 英紀
    2017 年 28 巻 p. 184-198
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/20
    ジャーナル フリー
    熊本県内の事業所から,産業分類 (19分類) ごとに 10 % となるよう抽出し,水銀含有製品ごとの購入量,保有量,廃棄量等をアンケート調査した。また,県下を11地域に分け,約2,700人を対象に,家庭における水銀含有製品の保有量を調査した。アンケート調査の結果および既存の調査・統計資料を活用し,①県内への水銀流入量,②県内における水銀存在量,③県内における廃棄量および環境への水銀の排出量を推計した。
    県内への水銀の流入量は,水銀を含む原燃料や水銀含有製品の入荷等で約 0.22 ton /年と推計された。存在量は,事業所約 1.3 ton,家庭約 2.1 ton の計約 3.4 ton であり,事業所,家庭ともに計測器が約 8 割を占めた。廃棄量は,約 0.038 ton /年であり,その 8 割強を事業所からの廃棄量が占めた。
    これらの結果を基に,熊本県内における水銀のマテリアルフローを作成した。
  • 久保田 洋, 繁泉 恒河, 山田 裕己, 野口 俊太郎, 佐藤 研一
    2017 年 28 巻 p. 199-212
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/21
    ジャーナル フリー
    異なる地域の4種類の一般廃棄物等焼却灰 (主灰) を用いて,それらの物理・化学特性を調べるとともに,散水・通気処理がそれぞれの焼却灰の溶出性に及ぼす効果や影響についての検証を行った。試験では散水強度や通気量の影響についても評価するため,同じ液固比で異なる処理時間 ( 1 日,約 50 日) の処理区をそれぞれ設けた。散水処理 (液固比 0.5~0.6 ) の結果,Na や TOC に関しては焼却灰によって散水強度の調整が必要であるが,液固比 10 の JLT13 法とほぼ同等の洗い出し量が得られた。約 50 日間の通気処理を加えることによって Cl は洗い出しを促進,TOC は抑制される傾向のあることが示唆された。特に Cl は,焼却灰の初期の化学組成や鉱物組成が洗い出し量に影響を与える可能性のあることが示された。Pb, Ca は散水処理での洗い出しは難しく,通気処理による炭酸化が溶出抑制に効果的であることも確認された。
  • 藤井 健悟, 大渕 敦司, 岩鼻 雄基, 萩原 健太, 小池 裕也
    2017 年 28 巻 p. 213-220
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/22
    ジャーナル フリー
    福島県で採取された都市ごみ焼却飛灰で放射性セシウム分析用標準試料を調製した。元素組成,均一性,保存性を検討することで,都市ごみ焼却飛灰中放射性セシウム分析用の標準試料として利用可能であるかを評価した。元素分析の結果から調製した試料はカルシウムを主とした組成であり,自己吸収補正を施した値付けを最初に行うことで,以降の分析が容易になる。Cochran 検定および分散分析の結果から調製した標準試料は等分散であり,相対標準偏差 (n=25) が 134Cs で 3.0 %,137Cs で 0.94 % と均一な試料であった。提案した標準試料は実試料をベースに各施設で調製可能であるため,放射性セシウム濃度の品質保証に活用できると考える。放射能測定用の焼却飛灰標準物質は現在のところ頒布されておらず,調製した標準試料は放射性セシウムを含む都市ごみ焼却飛灰研究に応用できると考えられる。
研究ノート
  • 栗岡 理子
    2017 年 28 巻 p. 168-177
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/06
    ジャーナル フリー
    ノバスコシア州は,カナダで唯一埋立ごみ半減に成功した州である。現在も目標を定め,ごみ減量に熱心に取り組んでいる。同州の廃棄物政策の中核には,飲料容器のハーフバック・デポジット制度が据えられている。筆者は,同制度が廃棄物政策に果たしている役割を調査するため,ノバスコシア州を訪れた。その結果,ハーフバック制は環境対策財源機能を有した環境賦課金制度であり,それにより得られた資金は廃棄物政策に役立てられていた。すなわち,ハーフバック制では,リターナブル容器のデポジットは全額返金されるが,ワンウェイ容器は半額しか返金されない。その未返却デポジットは制度運営に使われ,余剰はごみ減量努力に応じて自治体へ分配されるなどしている。
    また,ハーフバック制を図示し経済学的に考察することにより,ハーフバック制には賦課金的性格があることを確認した。
  • 小林 淳哉, 下野 功
    2017 年 28 巻 p. 178-183
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/07
    ジャーナル フリー
    電子付録
    ホタテガイ貝殻の有効利用を目的に,蛍光体および抗酸化物質としての有用性を検討した。蛍光体としては,食品に直接印字する蛍光マーカーとしての用途を考え,希土類元素を用いることなく貝殻のみを原料として蛍光色をコントロールすることを目指した。このため,本研究では,ホタテガイ貝殻をオートクレーブによる水熱抽出物を賦活剤原料としてホタテガイ貝殻粉末に含浸し,二酸化炭素雰囲気にて焼成することで蛍光体を合成した。ホタテガイ貝殻は,白色と褐色で一対をなしているが,母体および抽出物として利用する貝殻の色の組み合わせと抽出物量によって青色から赤橙色に蛍光色を制御することができた。また,水熱抽出物を凍結乾燥させた乾燥試料は緑色の蛍光を示し,弱いりん光も発することを見いだした。さらに,抽出物はローズマリーの約 70 % の抗酸化性をもつことも明らかにした。
feedback
Top