廃棄物資源循環学会論文誌
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25 巻
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論文
  • 多島 良, 大迫 政浩, 田崎 智宏
    2014 年 25 巻 p. 1-15
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/01/30
    ジャーナル フリー
    本稿は,東日本大震災における災害廃棄物処理の進捗に対して,通達等の行政内規を含む諸制度が与えた影響を明らかにすることを目的とした。このために,制度の特徴を整理したうえで,政策実施プロセスモデルを用いて実際の制度運用実態を分析した。その結果,国の処理戦略の提示と許可・届出の簡素化は行政マネジメントに,処理方法の緩和と要求,および適正保管の依頼は処理プロセスに,委託制約の緩和と国庫補助の枠組み構築に関する制度対応は行政マネジメントへの作用を介して処理プロセスに影響することで,処理進捗に影響したことがわかった。また,国による制度対応に加え,各市町村で柔軟な制度運用が行われたことで,処理が進捗したことも明らかとなった。さらに,一部の制度対応に起因する事務負担増大が招く処理進捗への悪影響を回避する上で,発災後の迅速な制度対応や,自治体の事務対応能力向上が有力であると示唆された。
  • 長谷 知哉, Md Azhar Uddin, 加藤 嘉英, 福井 雅康
    2014 年 25 巻 p. 16-24
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/01/30
    ジャーナル フリー
    都市ごみ中の有機塩素の熱分解挙動の把握のために,粉砕したRDFに水分を加えた試料を用いて,過熱水蒸気による試料の乾燥と熱分解挙動を検討するとともに,試料温度または含水率のどちらかを用いて他方を予測する熱・物質移動モデルを,試料温度が373K未満の凝縮期間,373K一定である定率乾燥,および373Kを超える減率乾燥期間に分けて構築し,実験結果と比較した。試料温度または含水率の経時変化に関して,乾燥の各期間ともに同一パラメータを用いた計算値は実験値と大略一致した。過熱水蒸気の温度が高いほど,含水率の減少速度と試料温度の上昇速度が増大した。
    試料温度473K近傍で有機塩素の熱分解が始まり,523K一定の過熱水蒸気で60min処理することで有機塩素の約90%が熱分解した。試料中のヘミセルロースとセルロースの熱分解によって,炭素,水素,酸素が減少したことにより,低位発熱量は乾物収率の減少とともに減少した。
  • 中村 謙吾, 米田 稔
    2014 年 25 巻 p. 25-35
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/03/28
    ジャーナル フリー
    蛍石を用いた精錬工程で発生する製鋼スラグを用いて,溶媒pHおよび温度変化による製鋼スラグの溶出量の検討を行った。また,溶出試験と同条件から粒径別の溶出量を検討した。溶出試験の結果,フッ素の溶出量は溶液のpHが影響していた。また,粒径別の溶出試験より表面からの深度に対する溶出領域と比較した場合,粒径が小さいほど推定溶出量と測定溶出値の差が大きくなった。一律推定溶出量と測定溶出量を比較すると,粒径を1.625-2, 0.425-0.5mmとした場合は各元素で0.1~10倍となった。試料粒径0-0.045mmの推定溶出量は,測定溶出量と比較して小さく (1/1000~1/10,000) なることが推測された。試料粒径0-0.045mmからの溶出は,溶出試験の溶出量に寄与しないことが示唆された。また,見かけ上製鋼スラグの溶出には,表面の1~0.1%の成分が関わっていることが示唆された。
  • 泉 優佳理, 白井 義人
    2014 年 25 巻 p. 36-44
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/04/15
    ジャーナル フリー
    東日本大震災で発生した放射能汚染の恐れのある災害廃棄物の広域処理の受け入れを検討した自治体ではさまざまなリスクコミュニケーションが展開されている。広域処理を受け入れた自治体の一つである北九州市は,タウンミーティングおよび住民説明会における参加者アンケートの結果等をHP上に公表しており,そのアンケートの自由記述欄のテキストデータをコンピュータソフトKH Coderを用いて分析した結果,共起ネットワーク図よりタウンミーティングと住民説明会での参加者の意見の異同が明らかになった。共起ネットワーク図に他の説明会よりも強い反対意見が表れているタウンミーティングでは,住民説明会と比較して基調講演,来場者との意見交換が「よくわからなかった」と答えた人の割合が高かった。その際参加者の年齢層は低く,市外からの参加者を35%含み,居住地から会場までの推定移動距離は長く,受け入れの判断基準が異なることが示唆された。
  • 蒲原 弘継, 藤平 淳, 後藤 尚弘, 藤江 幸一, 橘 隆一, 大藪 千穂, 杉原 利治
    2014 年 25 巻 p. 45-56
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/06/05
    ジャーナル フリー
    モンゴル国の地方において,適切な廃棄物処理システムの構築と排出抑制を含めた総合的な3Rの対策が求められている。本研究では,モンゴル国北部のハトガル村を対象に,ライフスタイルおよび環境意識と家庭の消費量・廃棄物発生量の関係性を明らかにすることを目的とし,2007~2009年に調査を実施した。意識調査では,家庭において環境へ配慮した行動が積極的になされていないこと,環境への意識は高いが実際行動を実践している人は少ないことが明らかとなった。消費量・廃棄物発生量調査では,季節,世帯人数の違いによって,消費量・廃棄物発生量が異なることが明らかとなった。持続可能な廃棄物処理システムの構築には,環境管理能力を高めなければならず,具体的な環境行動,たとえば生ごみのリサイクル等を示す必要がある。知識の伝達も環境管理能力を高めるが,その対象も工夫が必要である。ハトガル村では年齢が若い世帯が多いので,彼らへの情報伝達が求められる。
  • ――北海道鹿追町を事例として――
    吉田 文和, 村上 正俊, 石井 努, 吉田 晴代
    2014 年 25 巻 p. 57-67
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/15
    ジャーナル フリー
    国内最大のバイオガスプラント,北海道鹿追町環境保全センター施設を対象として,循環型社会を分析する物質循環,制度・参画者,経済の3つの視点から,その持続的操業成功の要因を分析した。物質循環では,有機系廃棄物の循環利用とエネルギー生産が行われている。制度・参画者では,地域の環境問題解決に町がリーダーシップをとり,関係者を巻き込んで入念な事前調査に基づくプラント設計,運転トラブル防止対策がとられた。経済分析では,プラントの運営収支および投資効果の分析と,公益的機能の定量的分析を通じて,以下の点が明らかとなった。FIT (再生可能エネルギー固定価格買取制度) 適用により売電収入が大幅増となっても,廃棄物処理は依然として収入の柱である。FITが適用されても初期投資の回収が十分に行われない原因は,熱利用が不十分なこと,ならびに環境保全などプラントの公益的機能が十分評価されなかったためである。バイオガスプラントへのFIT適用と補助金による支援には正当性がある。
  • 古賀 大三郎, 島岡 隆行, 崎田 省吾
    2014 年 25 巻 p. 68-76
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/11/08
    ジャーナル フリー
    海面埋立処分された廃棄物の沈降特性や堆積した廃棄物層からの汚濁成分の溶出特性は明らかになっていない。そこで,一般廃棄物の焼却灰を対象とし,海水中に投入した焼却灰の沈降,堆積状況や海水の水質変化を調査した。その結果,投入した焼却灰は「自由沈降」,「凝集沈降」,「界面沈降」,「自重圧密」を経て堆積地盤を形成した。沈降過程で発生した微細粒子は海水中でフロックを形成し,先に沈降堆積した砂礫層上に浮泥層を形成した。浮泥分の強熱減量は砂礫分の2倍程度あり,有機物を多く含んでいると推測された。さらに,浮泥層を除去することにより砂礫層から残留海水へのTOC成分の溶出量は1.6倍となった。つまり,浮泥層は砂礫層から残留海水への汚濁成分の溶出を遅らせるといえる。埋立廃棄物から残留海水への溶出を促進するためには,埋立地から浮泥分を取り除くことが有効であると考えられた。
  • 松尾 雄一, 井関 康人, 小笠原 忍
    2014 年 25 巻 p. 77-84
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/11/08
    ジャーナル フリー
    家電リサイクル法の施行により,使用済み家電4品目に再商品化処理が義務づけられ,その再商品化率の向上には,プラスチックのマテリアルリサイクルは重要な技術である。使用済み家電混合プラスチック (混合プラスチック) から選別回収したポリプロピレン (PP) は,純度99.8%以上で新材相当の機械的物性を有し,さらに金属不活性剤を添加することで新材相当の長期耐熱性を得られることから,家電製品への適用を進めてきた。
     本稿では,混合プラスチックから選別回収したアクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体 (ABS) およびポリスチレン (PS) の機械的物性および長期耐熱性を評価した。リサイクルABSおよびPSは,新材に比べて高い長期耐熱性を示し,80℃で6,800時間までは分子鎖が切断するほどの劣化に至っていないことを確認した。よって,リサイクルABSおよびPSは,家電製品に適用可能な材料であることを確認できた。
  • 上野 良平, 森 智和, 尾形(斎藤) 美貴, 橋本 卓也, 小嶋 匡人, 長沼 孝多, 木村 英生
    2014 年 25 巻 p. 85-95
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/12/12
    ジャーナル フリー
    醗酵食品残渣由来の成分に2種類の無機金属塩のみを添加した培地 (醗酵食品残渣培地) 中で乳酸菌による乳酸醗酵を行った。培養を終えた当該培地から簡便・迅速に高濃度の乳酸を分離するために,電気透析法の適用を試みた。pH調整剤として用いたアンモニアを含むLactobacillus rhamnosus培養後の醗酵食品残渣培地から,乳酸とアンモニアを分離する条件を検討した。バイポーラ膜を用いて電気透析を行うと,10%(w/v) 前後の高濃度乳酸を含む醗酵食品残渣培地から,一回の透析操作で乳酸とアンモニアを分離することができ,その分離能は透析後に行う0.5%(w/v) 硝酸洗浄によって維持された。硝酸洗浄は,いったん分離したアンモニアの逆拡散防止にも効果を発揮した。本研究で提案する手法は,微生物の生育に必要な微量成分が培養液から除去されるという,既往の電気透析醗酵法にみられた問題を解決するものと考えられる。
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