廃棄物資源循環学会論文誌
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22 巻, 3 号
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論文
  •  
    笹尾 俊明
    2011 年 22 巻 3 号 p. 157-166
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/05
    ジャーナル フリー
    全国47都道府県のパネルデータを用いて,産業廃棄物税導入による産業廃棄物の排出抑制効果について,課税方式別に分析する。併せて,経済状況が排出量に与える影響についても分析する。分析の結果,多くの県で導入されている最終処分業者特別徴収方式の場合,導入3年目以降に一定の削減効果が確認される。一方で,その他の課税方式では有意な排出削減効果は確認されず,特に三重・滋賀両県で導入されている排出事業者申告納付方式では,むしろ排出増加が確認される。また経済状況に関しては,すべての経済活動指標が排出量にプラスに働くことが確認される。最後に,産業廃棄物税導入による排出抑制効果が一部にとどまっている要因について考察する。
  • ――建設資材系製品を対象とした温室効果ガス排出削減効果――
    佐伯 孝, 山口 直久, 大迫 政浩
    2011 年 22 巻 3 号 p. 167-177
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/05
    ジャーナル フリー
    現在,多くの道府県で運用されているリサイクル製品を認定するリサイクル製品認定制度による温室効果ガス (GHG) 排出削減効果について,ライフサイクルアセスメントの手法を用いた評価を行った。
    アスファルト混合物,コンクリート二次製品,インターロッキングブロックの3品目について評価を行った結果,各品目においてGHG排出量の削減効果を確認し,循環資源の単位配合率あたりのGHG排出削減量を環境負荷削減係数として算出した。また,リサイクル認定製品の利用実績や循環資源の配合率,販売・調達実績等を調査し,循環資源利用量およびGHG排出削減効果について推計を行った。推計から得られたリサイクル製品の利用による人口あたりGHG排出削減量が最大の県と同等の利用が全国で行われると仮定すると,全国でのGHG排出削減量は約66万ton-CO2と推計された。
  • 福島 正明, 伊部 英紀, 若井 慶治, 杉山 英一, 安部 裕宣, 呉 倍莉, 北川 希代彦, 鶴賀 重徳, 志村 勝美, 小野 栄一
    2011 年 22 巻 3 号 p. 178-189
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/05
    ジャーナル フリー
    一般市民から資源ごみとして出される使用済みプラスチック製容器包装の熱分解油化技術において,ポリ塩化ビニル (PVC) 等の塩素含有プラスチックの熱分解によって脱離する塩素の効率的処理が,再生製品の品質改善の課題となっている。本研究では二軸押出機方式による脱塩素の滞留時間が短いことに着目し,一軸押出機を使用した脱塩装置の開発を行い,一軸押出機は二軸押出機と同様に脱塩素率が高く,脱塩素時間 (滞留時間) も短いという結果を得た。
    本実験結果を基に10倍にスケールアップした一軸押出機 (脱塩装置) を使用した商用熱分解油化プラントを2000年北海道札幌市東区中沼町に建設し,2009年度で運転10年目を迎えている。使用済みプラスチック製容器包装油化リサイクルにおける脱塩素技術の開発成果を報告する。
  • 坂本 篤, 西垣 誠, 横田 季彦
    2011 年 22 巻 3 号 p. 190-200
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/05
    ジャーナル フリー
    キャピラリーバリア型覆土の砂代替材として産業副産物を有効利用することができれば,砂の枯渇問題と廃棄物の減量化に貢献でき,循環型社会の形成の一助になるものと考えられる。そこで,数種の産業副産物を対象にキャピラリーバリアの性能試験を実施した。その結果,数種の産業副産物は天然砂と比較して粒度分布と側方排水性に相関がみられないこと,締固め度によって側方排水中の有害物質濃度が変化することが明らかになった。これらの結果より,産業副産物が利用できることがわかり,国内の最終処分場にフェロニッケルスラグを砂の代替材として使用したキャピラリーバリア型覆土を建設し,側方排水が一律排水基準を満足することが明らかになり,フェロニッケルスラグを用いたキャピラリーバリア型覆土を実用化した。これらの結果から,キャピラリーバリア型覆土の砂層材料に産業副産物を用いるときの設計手順を提示した。
  • ――食品系バイオマスの特性――
    大西 龍, 神山 まや, 野々垣 賢一, 福田 裕司, 中原 弘一, 東野 孝明, 池田 英男
    2011 年 22 巻 3 号 p. 201-209
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/05
    ジャーナル フリー
    主に食品関連事業者より発生する食品系バイオマスは,地域に広く薄く散在していることや,性状が不均一であるなどの理由によって利用が進んでいない。筆者等は,炭化による新しいリサイクルシステムを開発するため,まず食品系バイオマスの特性を調査した。食品系バイオマスは,食品関連事業者の業種および発生する季節にかかわらず,3つの主要な構成要素 (穀類,植物性残渣,動物性残渣) を85~95%の割合で含んでいた。これらの構成要素はいずれも,水分を多量に含み,乾重量あたりの可燃分が90%以上を示し,50%前後の炭素を含んでいた。各構成要素を500℃で炭化した結果,炭の収率は25~30%であり,固定炭素率は60~80%であった。炭化によって,各構成要素が含む炭素のうち30~55%を炭に固定することが可能であり,炭化が地表の二酸化炭素の削減に有効な手段となることが示唆された。
  •  
    中谷 隼, 鈴木 香菜, 平尾 雅彦
    2011 年 22 巻 3 号 p. 210-224
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/05
    ジャーナル フリー
    プラスチック製容器包装のリサイクルシステムにはさまざまな利害関係者が関与しており,問題点を認知している主体自身に限らず,他の利害関係者による意思決定要素も考慮することで問題解決の可能性が広がるが,客観的な評価に基づいて問題解決の方向性を議論することが不可欠である。本稿では,ライフサイクル評価に基づく利害関係者間の問題解決の支援方法を提案および実践した。ヒアリング調査および現地調査によって,リサイクル事業者が自身では解決が困難な問題点を抽出し,問題解決の方向性を示すシナリオを設定して,作業環境や製品品質といった問題点を顕在化させている側面に加え,ライフサイクル評価による地球環境への影響の評価結果に基づいて問題解決に向けた提言をまとめた。市町村に対して提言を示し,実行可能性についてヒアリング調査を行い,実行が不可能とされた提言は,それを妨げている制約を特定し,さらなる問題解決の方向性を検討した。
研究ノート
  • 和田 芳彦, 野呂瀬 幸政, 岩渕 和則, 谷黒 克守
    2011 年 22 巻 3 号 p. 225-230
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/05
    ジャーナル フリー
    食品廃棄物は飼肥料としての利用に加えて,バイオマスエネルギー原料としても利用可能な有機物が豊富であるが,廃棄物系バイオマスの中で最も利活用されていない。そこで食品廃棄物から燃料または肥料として利用可能な炭の作成に関して検討を行うため,ここでは,食品廃棄物の熱分解特性を熱重量 (TG) の計測と示差熱分析 (DTA) を同時に行うことができる熱分析機器を用いて調べた。また熱分解によって発生するガスを同定するためTG-DTA/MSとTG-DSC/FTIRを用いて測定した。その結果,酸化熱分解は3段階の重量減少と2つの顕著な発熱ピークを発生させた。一方無酸素下での熱分解は2段階の重量減少を示したが顕著な発熱ピークは発生しなかった。主な発生ガスはH2O,COおよびCO2であり,ガス成分の発生ピークの特徴は擬似Air下と無酸素下で異なった。
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