45才の男子の性的錯倒 (同性愛) を報告した。本例は幼少時, 実母に死別し, 継母に冷遇されたため, 女性一般に対する激しいレヂスタンスから同性愛傾向を示すに至つていたが, 偶々事業不振から不眠となつた。そのため就眠の目的を以て連用したアルコールに激されて同性愛傾向が顕在化し反倫理的行動を繰返すうち, 当院に収容せられChlorpromazineに依り精神的鎮静を得, その後Isomytalに依る催眠分析を繰返すうちに一応性衝動の鎮静と相俟つて同性愛傾向の若干消槌してゆく過程を窺知することが出来た。かかる症例は従来, 余り報告されないものであるので報告する。
抄録全体を表示