労働安全衛生研究
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8 巻, 2 号
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巻頭言
労働安全衛生の新技術 特集 (3)
原著論文
  • —補助金属板FP法による二酸化チタン測定—
    鷹屋 光俊, 山田 丸, 篠原 也寸志
    2015 年 8 巻 2 号 p. 71-78
    発行日: 2015/09/30
    公開日: 2015/10/08
    [早期公開] 公開日: 2015/07/01
    ジャーナル フリー
    軽量で,電池による駆動が可能なハンドヘルド型蛍光X線分析計(HHXRF)を用い,作業環境空気中の二酸化チタン濃度を迅速に測定する方法を検討した.二酸化チタンのブタノール懸濁液をメンブランフィルターでろ過して調製した模擬試料を測定試料とし,精密測定可能な卓上型蛍光X線分析計(卓上型)とHHXRFの測定結果を比較した.HHXRF測定は,合金種判定用のファンダメンタルパラメータ(FP)計算を行う機種を使用し,フィルター試料をチタンを含まない金属板(補助金属板)の上にのせ,チタンを補助金属板の微量不純物と装置に認識させ測定する方法で測定を試みた.予備検討により,補助金属板として銅を選択した.卓上型とHHXRFの測定結果はほぼ一致した.HHXRFによる測定結果は,メンブランフィルターの素材の影響を受けたが,二酸化チタンの粒径,ルチル型とアナタース型の違いによる有意な結果の差はなかった.HHXRFの測定値の相対誤差が10%未満となる点を定量下限とすると,フィルターあたり25 µgのチタンの分析が行えた.これは,現在提案されているナノ二酸化チタンの日本産業衛生学会の許容濃度0.3 mg/m3を超えているかどうかをばく露濃度測定用の2.5 L/minサンプラーを用い,33分の捕集時間で判定可能であることを示しており,HHXRFによる測定によりばく露リスクのスクリーニングが十分可能であるという結論が得られた.
研究紹介
  • 時澤 健, 岡 龍雄, 安田 彰典, 田井 鉄男, ソン スヨン, 澤田 晋一
    2015 年 8 巻 2 号 p. 79-82
    発行日: 2015/09/30
    公開日: 2015/10/08
    [早期公開] 公開日: 2015/06/26
    ジャーナル フリー
    暑熱環境における作業は体温上昇をまねき,熱中症の発症を誘発する.作業中には身体冷却の方法が制限されることや,作業による筋活動の熱産生を抑えることは難しいことから,作業前や休憩中に身体冷却を行い,体温を低下させておくことが重要となる.我々は,労働現場で実施することが可能な実用的で簡便な方法による身体冷却について最近研究を行ってきた.従来,実験的な身体冷却方法は冷水への全身浸漬であり,大量の冷やした水とバスタブが必要であった.これは少数人に施す前提で大きな装置を必要とし,身体への寒冷ストレスが大きいというデメリットがあった.したがって,労働現場において多くの作業者が限られたスペースで実施でき,さらに寒冷ストレスがマイルドな身体冷却方法を考案する必要があった.本文では,扇風機とスプレー,少量の水による手足の浸漬とクールベストの着用の組み合わせによる身体冷却方法が,深部体温をどの程度減少させ,作業中の暑熱負担を軽減させるかについて我々の研究成果を中心に述べる.
原著論文
  • 北條 理恵子, 柳場 由絵, 鷹屋 光俊, 土屋 政雄, 安田 彰典, 小川 康恭
    2015 年 8 巻 2 号 p. 83-90
    発行日: 2015/09/30
    公開日: 2015/10/08
    [早期公開] 公開日: 2015/07/01
    ジャーナル フリー
    最近の職場における健康問題は,ごく低濃度の化学物質のばく露が原因で引き起こされることがほとんどである.有機溶剤等の化学物質は許容濃度以下の低濃度でにおいを生成する場合があり,その影響が過敏症状等の発症に関連する可能性も懸念されている.においによる病的状態の発症機序として,家庭あるいは職場環境に由来する化学物質のばく露によって種々の健康影響がもたらされた際,その時に嗅いだにおいが苦痛や恐怖心とともに記憶され,後に同様なにおいをわずかでも嗅ぐと不快な症状が誘発されるという「嗅覚嫌悪条件づけ仮説」があるが,実証実験はほとんど行われていない.そこで本研究ではラットを使用し,低用量の有機溶剤による嗅覚嫌悪条件づけが成立しうるのか,また,有機溶剤が条件刺激(conditioned stimulus, CS)として機能しうるのかをキシレンを用いて検証した.その結果,従来の味覚刺激をキシレン水溶液による「におい」刺激に置き換えても,嫌悪条件づけ手続き後の嗜好テストにおいてCSへの回避反応が生じており,「におい」を条件刺激とする嫌悪条件づけが成立する結果が得られた.すなわち,本実験で使用した濃度であればキシレン水溶液もCSとして有効に機能することが示唆された.今後はさらに検討を重ね,条件づけ仮説の検証のみならず本研究法を応用し,未知の化学物質の毒性の見極め,様々なCSの使用による有効性の検討,嫌悪条件づけ成立後の「におい」に対する閾値変動の有無を客観的に調査する方法等の模索も視野に入れ,研究を進めていく予定である.
調査報告
  • 菅間 敦, 大西 明宏
    2015 年 8 巻 2 号 p. 91-98
    発行日: 2015/09/30
    公開日: 2015/10/08
    [早期公開] 公開日: 2015/07/01
    ジャーナル フリー
    脚立が起因物となって発生した労働災害(脚立起因災害)の頻発が問題視されているが,これまでに調査報告はなく,その実態が明らかにされていない.本研究では,日本国内における脚立起因災害の実態を把握するため,労働災害事例について調査を行った.分析は,厚生労働省の休業4日以上の労働者死傷病報告のうち,平成18年に発生した34,195件(全災害の25.5%)を対象とした.そして,業種,傷病,傷病部位,休業日数,被災者年齢,性別,経験年月数の項目についてそれぞれ整理した.調査の結果,992件(うち死亡災害6件)を抽出し,年間発生件数は3,896件(95%CI: 3,657–4,135)と推計された.これは当年の全労働災害の2.9%(95%CI: 2.7–3.1)に該当していた.また,被災者の68.6%が骨折し,64.9%が31日以上休業していたことから,脚立起因災害は重篤な負傷につながりやすいことが明らかとなった.脚立起因災害の特徴としては,70.4%が脚立上での作業中に発生し,19.4%が脚立を下りる際に,7.9%が上る際に発生していた.業種別の内訳では,建設業が45.5%,製造業が15.5%,商業が12.3%であり,建設業と製造業では経験20年以上の高年齢労働者が多いのに対し,商業では経験1年以下の被災者が多く,31.1%が女性であるなど,業種によって被災者の属性に違いが見られた.本研究の結果から,重篤な負傷が発生しやすい脚立起因災害の防止に向けた取り組みが必要であることが示された.
  • 伊藤 和也, 吉川 直孝
    2015 年 8 巻 2 号 p. 99-106
    発行日: 2015/09/30
    公開日: 2015/10/08
    [早期公開] 公開日: 2015/07/01
    ジャーナル フリー
    東日本大震災とほぼ同時期に始まったニュージーランド・カンタベリー地震後の復旧・復興について,現状の把握とともに,ニュージーランド政府や関連機関の安全衛生に関する取組みについて情報収集を行うため,ニュージーランド政府機関の一つであるWork Safe NZおよびCanterbury Rebuild Health and Safety Programme(CRHSP)と建設業の安全衛生の向上を目的とした非営利団体であるSite Safeを訪問し,担当者と意見交換を行った.その結果,震災からの復旧・復興工事中の労働安全衛生に関する重点項目は我が国と同じであり,その対策についても両国に差異は見受けられなかった.一方,資格の更新制度や安全衛生に関する評価を入札制度に組み込むことや発注者・施工者・規制官庁のパートナーシップなどのような我が国でも参考となる取組みもあった.
労働安全衛生研究編集委員会規程
2015年投稿論文索引
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