労働災害を防止する有効な手段としてリスクアセスメント(以下「RA」という.)の実施が推奨され,実施する事業場数も増加している.しかし,RA実施事業場においても労働災害が発生している.事業場において実施するRAを労働災害の防止に有効な活動とするためには,事業場のRAの実施内容を調査し,問題点を摘出して改善することが重要である.本報告では,茨城労働局労働基準部健康安全課が平成25年度~平成27年度及び平成29年度の各年度に茨城県内の労働者数50人以上の約3,200の事業場に対して提出を要請した「安全衛生管理実施状況報告書」におけるRA実施内容を調査した結果とそれらの事業場で発生した労働災害を対応させて,労働災害を発生した事業場と労働災害を発生しなかった事業場のRA実施内容を分析し,RAの導入効果及び労働災害発生事業場におけるRA実施内容の問題点を定量的根拠に基づき明らかにした.本報告で明らかにした問題点に基づいてRA実施内容を改善することにより,茨城県内の労働災害発生事業場のみでなく全ての事業場におけるRAを労働災害防止に有効な活動とすることが期待できる.
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